3年2組- 1 -
第3学年2組道徳学習指導案
指導者 大場 みち穂 1 主題名 親友ならどうする (友情・信頼2-(3))
(資料名「絵葉書と切手」出典「みんなのどうとく」学研)
2 主題設定の理由 (1)価値について
第3学年及び第4学年の指導内容2-(3)は,「友達と互いに理解し,信頼し,助け合う。」 となっている。これは,低学年の「友達と仲よくし,助け合う。」を受け,高学年の「互いに信 頼し,学び合って友情を深め,男女仲良く協力し,助け合う。」に発展していく。友達を信頼し,
相手のことを思って行動し,友情を深めようとする心情を育てることが今回の授業のねらいで ある。
友達同士で信頼し合い,仲良く助け合う,望ましい友達関係を築くには,互いに認め合い,
日常生活の様々な場面で助け合い,理解し合うことを通して,信頼感や友情を育てることが大 切であると考える。
この時期の児童は,集団遊びを好み,誰とでも仲良く活動することができる。一方で,少し ずつではあるが,男女を意識し始めたり,仲の良い友達との絆を深め,閉鎖的な仲間集団を作 ったりする傾向も生まれてくる。そのため,疎外感を感じるなどの友達関係における悩みも増 えてくる。誰とでも仲良く遊んだり活動したりすることのできる本来の姿を認め,互いに認め 合って協力していこうとする健全な友達関係を築いていこうとする心情を育てることがこの時 期の児童にとって重要であると考える。
以上のように考察すると,本実践を通して,友達を信頼し,素直に気持ちを伝え合って友情 を深めることの大切さに気付かせることで,子どもたちの生活の中での望ましい人間関係作り に結びつけることができるであろう。
(2)児童の実態について
本主題を実践するにあたり,次のような実態調査を行った。(男子12名 女子15名 計27名)
① 仲の良い友達がいますか。 はい 26名 いいえ 1名
② 本当の友達とはどのような人だと思いますか。(複数回答あり)
・よく遊んだり話したりする人 12名
・やさしい(親切な)人 11名
・小さいとき(幼稚園・保育園)から仲良しの人 10名
・気が合う人 3名 ・悪口を言わない人 3名 ・悩みを素直に言える人 2名
・うそをつかない人 2名 ・困ったときに助けてくれる人 2名
・約束を守る人 1名 ・登下校がいつも一緒の人 1名
③ 次のようなとき,あなたはどうしますか。理由をつけて書きましょう。
「テストを提出するときに,前の友達が名前を書き忘れていることに気がつきました。友 達に伝えますか,それとも伝えませんか。理由も書きましょう。」
3年2組- 2 - 伝える 16名
〈理由〉(複数回答あり)
・名前を書き忘れた友達が0点扱いになって困ってしまう(落ち込んでしまう)
から。 10名
・誰のテストかわからなくなってしまうから。 5名 ・友達が怒られたらかわいそうだから。 2名 ・書き忘れたのが自分だったら困るから。 1名 ・友達も自分も嬉しいから。 1名
伝えない 11名
〈理由〉(複数回答あり)
・名前もテストの一部なので,答えを教えていることと同じことになるから。 5名 ・書き忘れたのはその友達の責任だから。 3名
・書き忘れを伝えると,自分がおしゃべりをしたことになり,困るから。 3名 ・友達がいつも人を頼るようになってしまうから。 2名
・友達のためにならないから。 1名
・周りの友達も気をつけようと思わなくなるから。 1名
事前調査の結果を見ると,大半の児童が仲の良い友達がいると感じている。どのような友達 を「本当の友達」と思っているかについては,小さいときからの友達,よく遊んでいる友達と いった表面的な関係をあげる児童が多く,信頼関係があるといった価値に触れた回答はほとん ど見られなかった。相手のことを考えてどう行動するかを問う場面調査では,結果がおおよそ 半数に分かれた。本来は友達が自分でできなければいけないことというところまで考えて「伝 えない」を選んだ児童が若干下回っている。
本学級の児童は,幼稚園や保育園の頃からの友達が多く,保護者も熱心に子育てに取り組ん でいるため,仲良く学校生活を送ることができている。3年生になってクラス替えがあったが,
この二ヶ月間でお互いのことをよく理解してきたようである。気の合う友達同士の小集団化は 少し見られるが,みんなで何かしようというときには,力を合わせて活動できる。お互いに言 葉をかけ合いながら学校生活のルールを守って生活しようとしているが,時折自分たちの判断 で行動してしまうことがある。また,友達のアドバイスを素直に聞き入れることができず言い 返してけんかになってしまったり,相手のことを考えるより,自分の思いが強く出過ぎてしま って友達を怒らせてしまったりすることもある。
自我が発達してくるこの時期に,相手のことを考えた行動について深く考えさせることで,
信頼関係のある友情を築いていこうとする心情が育つだろう。
(3)資料について
本資料は,仲良しの友達から届いた定形外郵便物の料金の不足について,本人にそのことを 知らせるべきかどうか迷う,ひろ子の気持ちが綴られた話である。
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一年生の時から仲良しの親友正子は,転校していって,今は遠く離れている。ある日,正子 から料金不足の定形外の絵葉書が届く。「友達なら教えるべき」という兄と,「お礼だけにした ら」という母の意見の間で迷うが,ひろ子は教えることを選択する。
葉書を送った正子ともらったひろ子の気持ちを考えさせることで,離れてもなお相手を喜ば せようとする温かい友情を感じ取らせることができる。料金不足を伝えようか迷う場面では,
相手のことを思うがゆえに悩む気持ちや,友情を深めるには信頼する気持ちが必要であること に気付かせることができる。
ひろ子と正子の気持ちを中心に,友達を大事にし合うことの大切さについて,深く考えさせ ることでねらいに迫ることができるだろう。
(4)指導観
本実践では,ひろ子が料金不足を伝えるかどうか葛藤する場面で,ひろ子の気持ちを考えさ せることによってねらいに迫る。その際に,一人ひとりが自分の考えをもつことができるよう,
座標軸にネームプレートを置く活動を取り入れる。それをもとにして友達と意見交流をするこ とで,さらに考えを深めさせていきたい。話合い活動は,参加しやすい小グループから始める。
グループで司会進行役を決め,話合いが活発に行われるようにしていく。また,自分の考えを より正確に表すことができるように,各グループにも座標軸を用意する。話すことでは表現し きれない微妙な心の在り様を視覚化することで主体的に話合いに参加し,考えを深めていくこ とができるだろう。話合いをする際には,単に「伝える」,「伝えない」の二択ではなく,その よに行動する理由をつけて話をさせていきたい。グループでの話合いの後、全体で意見を交流 させる前に,ネームプレートを動かす機会を与え,意見の変容を受け入れる。変化の理由にも 触れていくことで,互いの意見を認め合わせることにもつなげたい。
友達との意見交流の中で,行動を決める判断基準となるものは相手を思う気持ちであるとい う価値に気付かせていきたい。友情を深めるには,相手を信頼して行動することが大切である ことに気付かせ,実践していこうとする意欲につなげたい。
3 仮説との関わり
話合いの深まる授業づくりを行えば,互いに認め合う心豊かな児童が育つだろう。
○発問の工夫について
主発問で,心の葛藤をさせ,活発な話合いになるように,主人公ひろ子の気持ちについて不足 料金を「伝える」「伝えない」の二択で考えさせる。選択する際に,理由を考えさせることで,自 分の考えをはっきりとさせたり,迷いのある部分を意識させたりする。そうすることによって,
話合いに参加する意欲を高めたり友達の意見を聞こうとしたりするだろう。また,資料の結末を 知らせないことで,どちらの行動をとるか悩むひろ子の気持ちについて,素直な気持ちで考える ことができると思われる。
○話合いの工夫について
意見を全体でまとめる前に,小グループで話し合いをさせることで,自分の意見に自信をもつ ことができ,主体的に話合いに参加できるだろう。さらに,ネームプレートで自分の気持ちを座
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標軸上に表しながら話合いをさせることで,言葉では表現しきれない気持ちを表したり,自分の 意見の変容を意識させたりしていき,話合いへの参加意欲を高めたい。
4 本時の指導
(1)ねらい
友達との心のつながりの大切さを自覚して,互いに信頼し合い,助け合おうとする態度を育て る。
(2)展開
過程 時配 学習活動(○)主たる発問(◎)
予想される児童の反応
支援及び指導上の留意点 資料
導 入
展 開
2
2
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1 本時のめあてについて話し合う。
○友達がいて良かったなと感じるのはど んなときですか。
・一緒に遊んでいるとき。
・困っているときに助けてくれたとき。
2 資料「絵葉書と切手」の前半を読んで あらすじをつかむ。
3 ひろ子さんや正子さんの気持ちを話 し合い,本当の友達について考える。
○葉書をもらったとき,ひろ子さんはどう 思ったでしょう。
・美しい景色を見せたいという正子さん の気持ちが嬉しい。
・わざわざ送ってくれるなんて,わたし のことを親友と思ってくれているの だな。
・正子さんは定形外葉書のことを知らな かったのだろうな。
・料金不足のゴム印がなければもっと嬉 しかったのに。
◎ひろ子さんは,不足料金のことを正子さ んに伝えた方がよいか伝えない方がよ いかを決めて,話し合おう。
・自由に話をさせ,温かい雰囲 気作りをすることで,緊張感 をほぐしたり学習への意欲を 高めたりする。
・状況がよく理解できるように,
資料や場面絵を活用する。
・登場人物の気持ちを想像しや すいように,ひろ子と正子の 関係について挿絵を用いて黒 板にまとめる。
・葉書をもらったひろ子の嬉し い気持ちを押さえる中で、葉 書を送った正子の気持ちにも 触れ、考えさせる。
・料金不足についてひろ子はど う考えているかということに も目を向けさせる。
・黒板の座標軸に自分のネーム プレートを置き,自分の考え を視覚化して表させ,それを もとに、話し合いをさせる。
資料 場面絵 挿絵
座標軸 ネームプ レート 消しゴム
3年2組- 5 - 終
末
1
3
2
〈伝えた方が良い〉
・伝えないと,また同じことで正子さん が誰かに迷惑をかけてしまうかもし れないから。
・ひろ子さんが伝えずに,他の人からの 話等で知ったら,正子さんが傷つくと 思うから。
・これからも友達なので,本当のことを 伝えて気持ちをすっきりさせた方が いいから。
〈伝えない方が良い〉
・伝えたら正子さんが傷つくかもしれな いから。
・68円はそれほど大きな金額ではない ので伝えなくてもよいと思うから。
・遠く離れているので,気持ちが伝わる かどうか心配だから。
4 資料の後半を読み,結末を知る。
5 自分の生活の中で,友達のことを信頼 して行動した経験を思い起こして話し 合う。
○友達のことを思ってはっきりと言って あげた経験はありますか。
・友達がそうじの時間におしゃべりをして いたので注意してあげた。
・友達に忘れ物をしたので貸してと頼まれ たが,貸さずに先生に言いに行くように 言った。
6 教師の説話を聞く。
・全体で話し合う前に,小グル ープで話し合いをさせ,自分 の意見に自信をもたせる。
・司会進行役を決めておき,活 発に話し合いができるように する。
・グループ毎に座標軸を用意し ておき,自分の気持ちを表し ながら話し合いをさせる。
・全体で話し合う前に,ネーム プレートを移動させる機会を もち,変容を受け入れるよう にする。
・どちらの意見も相手のことを 思っているということをおさ える。
・資料の結末が正しい行動だと 思って自信を失うことのない ように扱う。
・前もって経験を思い起こさせ ておき、話し合いができるよ うにする。
・友達を信頼した結果友情が深 まったという話をし、友達は いいなという学習の余韻が残 るような終わり方にする。
資料
3年2組- 6 - (3)板書計画
5 他の教育活動との関連
学校生活の中で,友達と協力し,素直に意見を述べ合ってよりよく生活しようとしている態度を認 め合い,帰りの会でコーナーを設け発表する機会を作ることで,意識させていく。
絵 葉 書 と切 手 ひろ子
正子 なかよし
葉書
定 形外
52円
120円
・ ひ ろ 子 に も 美 し い け し き を 見 て ほ し い
。
・ ひ ろ 子 に よ ろ こ ん で ほ し い
。
料金 不足 の葉 書を もら った とき の 気 持ち
・ お くっ て くれ て うれ し い。
・ ゴ ム印 が なけ れ ばよ か った の に。 お兄さん
お母さん
悩むひろ子
友 達 な ら 教 え て あ げ た 方 が い い
。 お
れ い だ け 書 い た 方 が い い
。
あい手のことを 思って
・ 正 子の た めに な る。
・ す っき り して も っと 仲 良く な れる
。
・ 正 子な ら わか っ てく れ る は ず。
・ 正 子 が 傷 つ く か も し れ な い
。
・ お 金 よ り 気 持 ち を 大 切 に し た い
。
・ 今 度 会 っ た と き に 言 え ば い い
。
座標軸
伝 える 伝
えな い