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核と細胞質に局在するストレス誘導植物レクチン - J-Stage

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化学と生物 Vol. 52, No. 10, 2014

核と細胞質に局在するストレス誘導植物レクチン

ニシキギレクチン( EUL )ドメインの同定と糖鎖結合性

近年,植物はいくつかの特異的ストレス因子に応答し て,ごく微量の糖鎖結合タンパク質「レクチン」を生合 成することが明らかになってきた.興味深いことに,こ の種のレクチンの多くは植物細胞の核や細胞質に局在し ている.このように生物・非生物ストレスにより発現が 高まる「核細胞質植物レクチン」は,細胞質と核で糖鎖 と相互作用することにより,植物のストレス生理におい て何らかの重要な役割を担っているという考えが展開さ れている(1)

2004年に最初のストレス誘導性レクチンが発見され て以来,少なくとも6種類の糖鎖認識ドメイン(carbo- hydrate recognition domains; CRDs)が核細胞質植物 レクチンで同定されている.各々のCRDは,(1)それ ぞれに特徴的な固有のアミノ酸配列,(2)レクチン特異 的なフォールディング構造,(3)糖鎖結合部位の構造特 性によって特徴づけられている(2)

バイオインフォマティクス研究では,いくつかの CRDsが植物から動物,菌類や細菌に渡って広く分布す る一方で,植物に特異的なCRDsも存在することが示さ れている.しかしながら,いずれのCRDsについても植 物組織におけるレクチンの発現レベルは低いものである ことは注意すべき点である.それゆえ,植物特異的な CRDsを有する核細胞質植物レクチンは植物細胞や組織 中での,あるいは植物とバクテリアやカビなどのほかの 生物間との相互作用シグナル応答に関与しているという ことが示唆されている(1〜3).植物特異的な核・細胞質レ クチンに存在するCRDsの生理学的役割を明らかにする ことによってCRDsの発現をコントロールし,塩や乾燥 ストレスなどの環境変化に対して植物のストレス抵抗性 を昂進させることも可能となる.

ここでは,2008年にFouquaertらによって同定され たニシキギ凝集素(EEA)のアミノ酸配列と高い相同 性を有する新しい核細胞質植物レクチンファミリー,ニ シキギレクチン(EUL)ドメインについて紹介する(4). 古くからEEAはニシキギの仮種皮に高濃度で存在して いることは知られていたが,その一次構造が未同定で あったため既知のレクチンファミリーに分類されていな かった.しかしながら,精製タンパク質の生化学的解析

と遺伝子解析により,EEAはシグナル配列をもたない 17 kDaのサブユニットから構成されるホモダイマーで あり,血液型のB抗原やハイマンノース型糖鎖などさま ざまな糖鎖構造を認識することが明らかになった(4)(図1 また,EEAのGFP融合タンパク質はタバコ培養細胞中 で発現させると核と細胞質に局在することも確認されて いる(5)

一方, 解析により,EULドメインをもつタン パク質は陸生植物において単子葉植物(トウモロコシ,

イネ)や双子葉植物(シロイヌナズナ,トマト,ポプ ラ)に加えて,コケ植物(ヒメツリガネゴケ,イワヒ バ,ゼニゴケ)のような下等な植物にも遍在しているこ とが明らかになっている(4).イネにはEULドメインを1 つか2つ有するタンパク質が5種類(OrysaEULS2, Ory- saEULS3,  OrysaEULD1A,  OrysaEULD1B,  Ory- saEULD2) 存 在 し て い る.そ の 中 のOrysaEULS2

(EULドメインと56アミノ酸のN末端領域からなる)を で発現させた組換えタンパク質は,ハイ マンノース型糖鎖やラクトサミンなどに結合する(6)(図1). しかしながら,OrysaEULS2はEEAと同様に,ハイマ ンノース型糖鎖のコア構造(図中点線部)を強く認識 し,マンノースの数が増えるにつれて結合は低下す る(4, 6)(図1).OrysaEULS2は,還元末端のキトビオー ス構造をもたないハイマンノース型糖鎖に結合を示さな いため,非還元末端側のマンノース残基を認識するので はなく,還元末端側のGlcNAc残基(あるいはキトビ オース構造)を認識している可能性が考えられる(6).一 方でシロイヌナズナは,EULドメインと163アミノ酸の N末端領域から構成されるArathEULS3しか発現してい な い.ま た で 発 現 さ せ た 組 換 え ArathEULS3の糖鎖結合性は,EEAやOrysaEULS2と 異なり,ハイマンノース型糖鎖ではなく,ガラクトシル 化した糖鎖を優先的に認識し結合する(5)(図1).

これまでのところ,ハイマンノース型糖鎖を認識する EEAやOrysaEULS2などの核細胞質局在レクチンの内 在性基質(リガンド)として,分化・成長中の植物細胞 で,糖タンパク質から糖鎖遊離酵素によって切り出され た細胞質に

μ

M濃度で存在するハイマンノース型遊離糖

refer- ence

今日の話題

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644 化学と生物 Vol. 52, No. 10, 2014

鎖が考えられている(7, 8).また,ガラクトシル化したエ ピトープを認識するArathEULS3のリガンドとして,

植物糖タンパク質に結合しているルイス 抗原(Gal

β

1→3(Fuc

α

1→4) GlcNAc-)を有する植物複合型糖鎖が 挙げられる(7).しかしながら,このルイス 抗原含有糖 鎖は,細胞外空間に存在する分泌型糖タンパク質上に発 現していると考えられているため,細胞質に存在する ArathEULS3のリガンドになっているとは考えにく

(9, 10).不思議なことに,3つのEULレクチンは,動物

糖タンパク質の複合型糖鎖に見られるラクトサミン構造

(Gal

β

1→4GlcNAc-)を強く認識するが,この構造ユ ニットは植物糖タンパク質糖鎖には存在しない(植物糖 タ ン パ ク 質 糖 鎖 に 存 在 す る の はGal

β

1→3GlcNAc-構 造)(7).したがって,EULタンパク質のリガンドは,植 物細胞に内在する糖鎖ではなく,カビ,バクテリアなど が感染する際,それら侵入者が発現している糖鎖の可能 性も考えられる.

現在まで,それぞれの植物においてEULタンパク質 が(1)どのような環境条件下で特異的に発現誘導される のか,(2)植物組織や細胞内に存在する具体的な糖鎖リ ガンド,(3)植物体の表現系変化やストレス抵抗性惹起 への具体的な関与などについては不明な点が多く残され ている.しかしながら,EULタンパク質が核と細胞質 に局在することから,遺伝子発現制御などにかかわるよ うなシグナル伝達タンパク質として機能している可能性

は高く,EULの機能特性の解明に向けた生化学的・分 子生物学的研究の進展が待ち望まれる.

  1)  N.  Lannoo  &  E.  J.  M.  Van  Damme: 

1800, 190 (2010).

  2)  E. J. M. Van Damme, A. Barre, P. Rougé & W. J. Peu-

mans:  , 9, 484 (2004).

  3)  E. J. M. Van Damme, N. Lannoo & W. J. Peumans: 

48, 107 (2008).

  4)  E. Fouquaert, W. J. Peumans, D. F. Smith, P. Proost, S. N. 

Savvides  &  E.  J.  M.  Van  Damme:  , 147,  1316 (2008).

  5)  J. Van Hove, E. Fouquaert, D. F. Smith, P. Proost & E. J. 

M. Van Damme:  , 414

101 (2011).

  6)  B. A. Atalah, P. Rougé, D. F. Smith, P. Proost, Y. Lasana- jak & E. J. M. Van Damme:  , 29, 467 (2012).

  7)  E.  Fouquaert  &  E.  J.  M.  Van  Damme:  , 2,  415 (2012).

  8)  K. Nakamura, M. Inoue, T. Yoshiie, K. Hosoi & Y. Kimu-

ra:  , 72, 2936 (2008).

  9)  M. Maeda & Y. Kimura:  , 70

1356 (2006).

10)  M.  Maeda,  M.  Kimura  &  Y.  Kimura:  , 148,  681 (2010).

(前田 恵*1Els VAN Damme*2,*1 岡山大学大学院 環境生命科学研究科,*2 Department of Molecular Bio- technology, Laboratory of Biochemistry and Glycobi- ology, Ghent University)

図1EEA, OrysaEULS2およびArath- EULS3の糖鎖結合性

ここに示したEULタンパク質はラクトサミ ン構造を共通して認識する.ハイマンノース 型糖鎖の点線部はコア構造を示す.

今日の話題

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化学と生物 Vol. 52, No. 10, 2014 プロフィル

前 田  恵(Megumi MAEDA)

<略歴>2001年岡山大学農学部総合農業 科学科卒業/2003年同大学大学院自然科 学研究科博士前期課程修了/2006年同大 学大学院自然科学研究科博士後期課程修 了,博士(農学)取得/同年川崎医科大学 衛生学助手/2007年同大学衛生学助教/

2011年同大学大学院自然科学研究科助教

(特任,WTT),2012年同大学大学院環境 生命科学研究科助教(特任,WTT),現在 に至る.WTTの間にベルギー国ゲント大 学に留学<研究テーマと抱負>植物におけ る遊離糖鎖の生理機能,植物由来の抗原性 糖鎖のヒト免疫系への影響<趣味>バレー ボール,茶道

Els VAN Damme(Els VAN DAMME)

<略歴>1986 年 Plant  Sciences  at  the  Catholic University of Leuven(Belgium)

卒業/1991年Plant Sciences at the Catho- lic University of Leuven (Belgium) Ph.D. 

取 得/1992年Postdoctoral Fellow of the  Fund for Scientific Research̶Flanders/

2002年Research Professor at Ghent Uni- versity/ 現 在,Senior Full Professor at  Department of Molecular Biotechnology,  Faculty of Bioscience Engineering, Ghent  University<研究テーマと抱負>The re- search is situated in the field of plant bio- chemistry, molecular biotechnology and  glycobiology, and concentrates primarily  on the study of plant proteins with specif- ic biological activities. At present her in- terest focuses at unravelling the physio- logical  role  of  different  carbohydrate- binding proteins in plants. The ultimate  goal of the research is to exploit the pos- sibility of using these plant proteins to in- crease the stress resistance of the plant.

Copyright © 2014 公益社団法人日本農芸化学会

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