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PDF 掲載誌 「教職研修」 2008年5月号 pp.42-45 外国語教育の充実にどう取り組むか (最終原稿は上記参照)

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掲載誌  「教職研修」  2008 年 5 月号    pp.42-45     

外国語教育の充実にどう取り組むか

(最終原稿は上記参照)

吉田研作(上智大学教授)

対応のポイント

1. 小学校に英語が導入されても、中高の英語教育の目標は変わらない。むしろ、今まで 到達できなかった目標を達成しやすくなることが期待されている。

2. 小学校に英語が導入されることにより、中学で何を教えるかがより明確になる。小学 校での英語によるコミュニケーションの体験を基に、より体系的に言語構造や文字、

読み書きを教えることが今まで以上にできるようになる。

3. 小学校英語は、英語そのものを教えるのではなく、英語によるコミュニケーションの 素地を体験的に学ばせることが目的である。

4. 小学校英語で文字を教えてはいけない、ということはない。音声言語の補助として取 り入れることは問題ない。ただし、文字や読み書きを体系的に教えてはならない。

5. 高校の英語科目は、現在の6科目が、基本的に「コミュニケーション英語」一つにまと められる。今までのスキル別の教え方から全スキルを統合的に教える教え方への転換 が示された。

はじめに

  今回の学習指導要領改訂では、小学校からの英語導入に始まり、高等学校の科目再編と いう、かなり大きな改訂が行われることになった。これは、文部科学省がここ7・8年の間、

「『英語が使える日本人』を育成するための行動計画」として実施してきた様々な取り組み のまとめとして打ち出したものだと言っても過言ではないだろう。現在の日本人が今だに 外国語が苦手で、世界の中で自らを主張できるだけの力がない、という現状を踏まえ、今 後、日本人としてどのような外国語能力を身につけなければならないかについて検討した 結果が今回の学習指導要領なのである。今までは、学習指導要領の改訂はほぼ10年ごとに 行われてきたことを考えると(今後はもっと短いサイクルで改訂を行っていく、という話 は聞くが)、日本が刻一刻と変化している激動の国際社会の一員として生きていけるかどう かを方向づける非常に大切な改訂なのである。

現状の問題点

  ベネッセが2006年に行った調査に興味深いものがある。現在、小学校に子どもを通わ せている保護者の英語・英語教育に対する意識を見たものであるが、55%の保護者が英語 が好きでない、90%以上が英語に自信がない、そして、私たち英語教育携わる者にとっ

(2)

て最も気になる結果は、80%以上の保護者が自分が受けてきた学校の英語教育は役に立 っていない、と答えていることである。もし、日本人にとって英語が実際上必要ないので あれば、これでも仕方ないのかもしれないが、55%の保護者が英語で何らかの苦労をし たことがある、という。つまり、英語の必要性を感じているにも関わらず、英語が好きで ない、自信がない、学校で習った英語は役に立っていない、と答えているのである。なぜ こんなことになるのだろう。

現在施行されている学習指導要領に基づいた英語教育には、いくつかの大きな課題が存 在する。その一つは、中学校英語の実状である。国立教育政策研究所が2004年に実施した 24万人の中学生を対象とした調査で分かったことは、中学1年では、まだ60%以上の生徒 が英語が好きと答えているが、2 年になると、その数は 50%  近くまで落ちる。反面、英 語が好きでない生徒の数は、中学1年では35%強だが、中学3年になると47%にまで増え ている。また、英語の授業が分かるか、という問に対して、中学1年では、まだ55%ぐら いの生徒が分かると答えているが、中学2年になると、47%にまで落ち込む。つまり、中 学 2 年生の半数以上が英語の授業が良くわからない、と答えているのである。しかも、中 学 3 年になると、英語の授業が分からない生徒が、28%以上になり、これは、他のどの教 科よりも高い数値である。

  どうしてこのような結果が生まれるのか。その原因の一つは、現行の学習指導要領では、

中学校では、英語の時間は週3時間になっているが、その内容は、4技能全てを含んだ実践 的コミュニケーション能力の育成となっている。とはいえ、英語の使用場面とことばの働 きで明示されているように、オーラル・コミュニケーションに重点が置かれていることが 分かる。そのため、文字コミュニケーション能力の育成に必要な文法等、言語形式の修得 がおろそかになりがちで、高校でより重視される読み書きの基礎作りがなかなかできない、

という現象が生まれている。つまり、週 3時間では、総合的に英語の4技能をすべて教え る、ということが非常に難しい、という現状が生まれている。そのため、中学と高校の間 にギャップが生まれ、高校の中には、1年目の授業内容を中学の復習に費やしなければなら ないところがあるのである。

  もう一つの問題は、高校の英語科目の設定にある。英語I、英語II、オーラル・コミュニ ケーションI、オーラル・コミュニケーションII、リーディング、ライティングという6科 目が設定されており、あたかも、技能別の科目編成になっている印象を与えている。しか し、実際には、英語I、英語IIは、統合的な科目で、4技能全てを使って教えることが目的 とされている。しかし、残念なことに、オーラル・コミュニケーションIとIIがあるため、

どうしても、英語IとIIは、昔ながらのリーダーという印象が強く、文法訳読の授業とし て扱われてしまう傾向がある。本当は、高校における「実践的コミュニケーション能力」

は、オーラル・コミュニケーションIIの目標として挙げられている次のことが、英語でで きることをいうはずだが、高校卒業までにここまでのことができる高校生はほとんどいな い、というのが現状なのである。

(3)

   

1.スピーチなどまとまりのある話の概要や要点を聞き取り,それについて自分の考 えなどをまとめる。

2.幅広い話題について情報や考えを整理し,効果的に発表する。

3.幅広い話題について,話し合ったり,討論したりする。

4.スキットなどを創作し,演じる。

  以上のような英語教育上の問題を見ると、本章の最初に挙げたアンケート調査の結果が 理解できるのではないだろうか。

新学習指導要領と問題解決への道

  このように、現在の日本の英語教育は、まだまだ「英語が使える日本人」を育成すると ころまで行っていない。今回の学習指導要領の改訂は、上記の問題を少しでも改善し、真 に「英語が使える日本人」を育成するための英語教育改革を目指している。

  上記でも見たように、中学校の英語教育の問題が指摘されるが、その解決方法として、

1)週3時間を週4時間に増やす、そして、何よりも大きいのは、2)小学校に英語を導 入することにより、中学が英語に関してゼロからの出発にならないようにする、というこ とだろう。週4時間に増やす、と言っても、現在でも、選択授業として英語を取り入れて いる学校がかなりあるので、実質的にそれほど大きな変化はないのではないか、という見 方があるが、教科書が週4時間用に書き直されること自体、意味がある。新学習指導要領 導では、この点は、たとえば、必修語数の増加などに表れている。 

  より大きなポイントは、小学校からの英語導入による影響である。今回の小学校英語の 目標は、「コミュニケーション能力の素地を養う」ことにあり、英語そのものを教えること にあるのではない。基本的なコミュニケーションの道具としての英語の表現等は指導内容 に含まれているが、それを「規則」として、あるいは、「体系」として教えることは小学校 英語の目的ではない。「外国語(英語)の音声や基本的な表現に慣れ親しませる」ことが目 的なのである。ということは、現在、中学に課せられている、実践的コミュニケーション の基本から、体系的な英語の基礎まですべて教えなければならない、という負担の内、実 践的コミュニケーションの基本的な部分を小学校段階に下ろすことにより、中学でやるべ きことをより明確にすることができるのである。中教審答申にもあるように、中学では、

小学校で経験した英語を土台に、英語の基礎をしっかり教えることが目的なのである。 

  ところで、時々誤解されているようだが、次の点について述べておく。まず、小学校で は、読み書きなど、文字を教えてはならない、と思いこんでいる人がいるが、そうではな い。内容の取扱いの項には、「アルファベットなどの文字や単語の取扱いについては,児童 の学習負担に配慮しつつ,音声によるコミュニケーションを補助するものとして用いるこ と」となっている。つまり、体系的に読み書きやアルファベットを教えてはいけないが、

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たとえば、絵カードと一緒に文字を見せても問題はない、ということであり、特に小学校 高学年になれば、音声言語に文字の補助があることは理解促進に大いに役立つ上、知らず 知らずの内に、英語の読みが身についてくることが分かっている。 

  もう一つの誤解は、小学校から英語を導入する、ということは、中学・高校の英語教育 の目標を、今以上に高くする、ということになるのではないか。そして、そうすれば、益々 英語の苦手な生徒が生まれるのではないか、というものである。今回、小学校で英語が導 入されることにより、中等教育における英語の目標がさらに高くなることはない。中教審 答申や新学習指導要領の中学英語の目標を見れば、明らかだろう。「外国語を通じて,言 語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を 図り,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を 養う」とあるが、これは、現在施行されている学習指導要領の内容と基本的に同じである。

既に見たように、現行の高校のオーラル・コミュニケーションIIの目標を達成している高 校卒業生は、ほとんどいない、ということから、小学校から英語を導入し、より早い時点 から英語に慣れ親しむことにより、現在の英語教育目標がより達成されやすくなる、とい うのである。 

  最後に、高校の英語だが、現在採用されている6科目が、基本的に「コミュニケーション 英語I、II、III」にまとめられることになる。つまり、今までのスキル別の英語教育の考 え方から、より、実践的な「統合的」な英語力の育成に力点が置かれることになったので ある。既に述べたが、現在は、「オーラル・コミュニケーション」という科目があるため に、本来は統合的な英語力の育成を目的としていた「英語I」、「英語II」が、訳読中心に 教えられていることの反省から、4技能全てを使って教えなければならない「コミュニケー ション英語」という科目にまとめられたのである。また、中学とのギャップを埋めるため に、「コミュニケーション英語基礎」という科目が設けられることになった。選択として は、「英語表現」という科目が設けられるが、口頭、また文字言語による自己表現力の育 成を目的とした科目になっている。 

 

終わりに 

  日本人が本当に英語が使えるようになるためには、何よりも、英語がコミュニケーショ ンの道具であり、この国際化された世界の中で、色々な国の人とコミュニケーションをす るために学ばれるのだということを認識することが最も大切である。日本は、益々国際化 するだろう。そして、その時に日本の運命を任されるのは、今の子どもたちであることを 忘れてはならない。 

参考文献 

第1回小学校英語に関する基本調査(保護者調査) 2007.  ベネッセ  東アジア高校英語教育―GTEC調査2006.2007.ベネッセ

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国立教育政策研究所(2005)平成 13 年度小中学校教育課程実施状況調査データ分析に 関する報告書 http://www.nier.go.jp/kaihatsu/ 13KOUKAI/HONBUN.PDF

文部科学省(2008)幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領 等の改善について(答申) http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm 文部科学省(2008)小学校学習指導要領案

    http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/news/080216/002.pdf 文部科学省(2008)中学校学習指導要領案

    http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/news/080216/003.pdf 平成15年度教育課程実施状況調査教科別分析と改善点(中学校・英語)

http://www.nier.go.jp/kaihatsu/katei_h15/H15/03001051030007004.pdf

Referensi

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