• Tidak ada hasil yang ditemukan

免疫細胞の分化過程を分子レベルで解明するための データ基盤を構築

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2024

Membagikan "免疫細胞の分化過程を分子レベルで解明するための データ基盤を構築"

Copied!
5
0
0

Teks penuh

(1)

1

免疫細胞の分化過程を分子レベルで解明するための データ基盤を構築

〜プロテオゲノミクスによる大規模データ基盤を整備〜

令和5年2月 3 日 公益財団法人 かずさDNA研究所

かずさDNA研究所は、mRNA とタンパク質の大規模解析を同時に行うことに よって(プロテオゲノミクス)、免疫細胞の分化過程を分子レベルで解明するため のデータ基盤を構築しました

免疫には、「自然免疫」と「獲得免疫」の 2 種類があります。外界からの異物に対して、

まずはマクロファージなどの自然免疫系が働き、その後、リンパ球のT細胞やB細胞が関与 する獲得免疫系が働きます。このうち、CD4+T細胞と呼ばれるT細胞には複数の種類(サ ブセット)が存在し、抗ウイルス反応やアレルギー応答、自己免疫疾患などに重要な働き をしています。このようなサブセットの分化には多くの因子が関与しており、新たな因子 を見つけるための研究が国内外で精力的に進められています。

かずさDNA研究所では、これまで別々に行われてきたmRNAとタンパク質を同時に分析 することによって(プロテオゲノミクス)、 CD4+T細胞が分化する過程で現れる 10,000 種以上のmRNA、8,000 種以上のタンパク質を検出しました。そして、これをもとに免疫 細胞が分化する過程で働く多種多様なmRNAやタンパク質を評価するためのデータ基盤

(免疫ゲノミクス基盤)を構築しました。今後、この免疫ゲノミクス基盤が、創薬や治療 法開発に必要不可欠な重要な情報を提供することが期待されます。

研究成果は国際学術雑誌DNA Researchにおいて、1 月 30 日にオンライン公開されま した。

論文タイトル:Characterization of proteogenomic signatures of differentiation of CD4+ T cell subsets

著 者 :Toshio Kanno, Ryo Konno, Keisuke Miyako, Takahiro Nakajima, Satoru Yokoyama, Shigemi Sasamoto, Hikari K. Asou, Junichiro Ohzeki, Yusuke Kawashima, Yoshinori Hasegawa, Osamu Ohara and Yusuke Endo

掲載誌:DNA Research

DOI: https://doi.org/10.1093/dnares/dsac054

(2)

2

1.

背景

CD4+T 細胞は、獲得免疫応答*1の中枢を担う司令塔としてはたらき、様々な活性化 T 細 胞サブセット(Th1、Th2、Th17、制御性 T 細胞=iTreg)へと分化することで、抗ウイ ルス反応やアレルギー応答、自己免疫疾患などの病態形成・制御に関与します。CD4+T 細 胞は、外来性の異物を認識する TCR 受容体*2により活性化し、また環境中に存在するサイ トカイン*3の種類により、どのようなタイプの活性化 T 細胞サブセットへと分化するかが 決まります。

これまでの免疫学研究により、活性化 T 細胞サブセットへの分化に不可欠なサイトカイ ンや転写因子群が同定され、病態の形成における活性化 T 細胞サブセットの重要性が明ら かになってきました。これら特定のサイトカインや転写因子群に着目した研究が数多く行 われる一方で、CD4+T 細胞の活性化により mRNA*4/タンパク質の発現がどのように変化 するかについては不明なままでした。

そこで、活性化 T 細胞サブセットの分化・誘導に関与する TCR 受容体やサイトカイン 刺激が、mRNA /タンパク質の発現へ与える影響を網羅的に解析しました。

2.

研究成果の概要

① 活性化T細胞サブセットでのmRNA /タンパク質の変化、すなわち、プロテオゲノミ クス*5の変化を評価するために、次世代シークエンサー*6および精密質量分析器*7に よる高深度マルチオミックス解析*8を行ないました。TCR受容体の活性化や様々な組 み合わせのサイトカイン刺激により、静止期にあるナイーブ CD4+T 細胞を活性化 T 細胞サブセットに分化させ、mRNA/タンパク質の発現変動を解析しました(図 1)。

② これまでの解析では、分析深度を上げるためにサンプルの分割や分画化を行っていま したが、計測法の継続的な改良により、分画なしのサンプルから高深度のmRNA /タ ンパク質の発現解析を行うことに成功し、大規模なデータを取得することができまし た(mRNA:10,000 以上、タンパク質:8,000以上)。また、サンプルの分割や分 画化の作業を省略したことにより、サンプル調製によって生じる偏りがなくなり、細 胞内の状態をより正確に反映したデータを得ることができました。今後、同様の手法 で得られた定量データについても(偏りがないことから)相互の比較検討が可能にな り、貴重な免疫ゲノミクスの基盤として活用できます。

③ 詳細な解析により、ナイーブ CD4+T 細胞が活性化T細胞サブセットへ分化する際に

(3)

3

は、サイトカインよりもTCR受容体の影響が大きく、およそ半数のmRNAとタンパ ク質の発現がTCR受容体の刺激により変化することがわかりました。また、同じ遺伝 子由来のmRNAとタンパク質の発現は、必ずしも同じように変化するわけではなく、

むしろ低い相関関係にありました。このことは、mRNA/タンパク質を同時に解析する プロテオゲノミクス解析でなければ、正確に細胞内の環境を理解できないことを示し ています。

④ 抗ウイルス反応やアレルギー応答に関与するTh1細胞、Th2細胞は、類似したプロテ オゲノミクスプロファイルを持っていることがわかりました。一方で、自己免疫疾患 の形成に関与するTh17細胞と制御性T細胞は、ユニークなmRNA/タンパク質発現 プロファイルを示しました。

⑤ 得られたプロテオゲノミクスデータセットはデータベースにて公開しています(下記

URL)。このデータベースは、活性化T細胞サブセットの分化誘導を担う分子メカニ

ズムを理解し、創薬や疾患発症機構を解析するための、ユニークで不可欠なリソース となります。

RNA:https://0-www-ncbi-nlm-nih-gov.brum.beds.ac.uk/geo/query/acc.cgi?

acc=GSE210222

タンパク質:https://repository.jpostdb.org/entry/JPST001817

3.

将来の波及効果

これまで CD4+T 細胞依存的な免疫応答の研究は、活性化 T 細胞サブセットへの分化に 不可欠なサイトカインや転写因子が発見されることで発展してきました。このデータセッ トは、既存の分子やその関連分子の枠組みを超えて、これまで着目されていなかった T 細 胞分化の制御分子の発見に繋がると期待されます。

本研究は、日本学術振興会の新学術領域研究(研究領域提案型):18H04665、基盤研究 B:20H03455、挑戦的研究(萌芽):20K21618、研究活動スタート支援:21K20766、

若手研究:21K15476、22K15502の助成を受けて実施しました。

(4)

4

用語解説

*1 獲得免疫応答:有害な病原体から生体を防護するために、生体には自然免疫応答と獲得免 疫応答の2つのシステムが備わっている。自然免疫応答は、侵入後数時間で活性化され、

抗ウイルス性 I 型インターフェロンの産生や侵入した異物の貪食(どんしょく)を行う。

獲得免疫応答は、活性化に数日かかるが、特定の病原体を認識することでより強力に病原 体の排除を行う。また一度体内に侵入した病原体を記憶することで、二度目以降に同じ病 原体へ感染した際に、より迅速に病原体の排除を行うことができる。

*2 TCR 受容体:獲得免疫応答(上記)にある、特定の病原体を認識して活性化するのに必要 な T 細胞に発現するタンパク質。自然界に存在する多種多様な病原性の抗原を認識できる よう、理論上は、1018(=100 京/けい)種類もの TCR 受容体が存在しうる。

*3 サイトカイン:細胞の増殖や分化、活性化など様々な細胞間情報の伝達に作用する液性の タンパク質。

*4 mRNA:タンパク質の設計図である DNA に保持されている情報が mRNA へとコピーさ れ、その後 mRNA の情報をもとにタンパク質が合成される。

*5 プロテオゲノミクス:細胞などの試料中に存在する情報を網羅的に解析する手法を「オミ ックス解析」と呼ぶ。オミックス解析には、タンパク質の情報に関するプロテオミクス解 析、遺伝子の情報に関するゲノミクス解析やトランスクリプトミクス解析、脂質や糖、ア ミノ酸などの情報に関するメタボロミクス解析がある。これらの手法のうち、タンパク質 と遺伝子の情報を組み合わせた解析をプロテオゲノミクス解析と呼ぶ。

*6 次世代シーケンサー:この十数年の間に急速に広まった、生物の設計図となる DNA 配列 を高速で読み出す装置。DNA 配列を読み出す能力が従来の装置よりも桁違いに多いため、

解析に要する時間やコストを大幅に短縮することができる。

*7 質量分析器:タンパク質を構成する分子の重さの違いにより、試料中に存在するタンパク 質の定性・定量的な解析を行う装置。

*8 マルチオミックス解析:5 に示した「オミックス解析」に関して、複数の手法を組み合 わせた解析を総称して「マルチオミックス解析」と呼ぶ。

(5)

5

参考となる図や写真

図1:T 細胞の分化と免疫応答・疾患

ナイーブ CD4+T 細胞は、抗原提示細胞が提示する抗原によって活性化され、周囲の環境中にある サイトカイン(IL-2/IL-4 など)や転写因子(GATA3/T-bet など)他の影響によりさまざまな種 類のヘルパーT 細胞(Th1/Th2/Th17/iTreg=制御性 T 細胞)へと分化する。

図 2 : 活性化 T 細胞サブセットのマルチオミックス解析 ナイーブ CD4+T 細胞と活性化 T 細胞サブセットを次世 代シークエンサーおよび精密質量分析器で解析すること により、mRNA/タンパク質の網羅的な発現解析を行った。

Th0 細胞は比較用のコントロール。

αCD3/αCD28 Naive

CD4+T Th0 Th1 Th2 Th17 iTreg Purified Live Cells

RNA-Seq

(Gene Expression) LC-MS/MS (Protein Expression)

3` UTR Coding sequences

(CDS)

Intensity m/z

Sample Extraction

Referensi

Dokumen terkait

細胞が,その生存が脅かされるほどの強い環境ストレスを受 けたとき,じっと耐えるもの,積極的に応答して状態を変え るもの,あるいは運良く元々適合的な状態にあったために生 き延びるものなどがいるかもしれない.そのような強いスト レスに置かれたときの個々の細胞の動態を顕微鏡下で観察で きれば,ある細胞集団が生き延びたとき,その背後で個々の

【解説】 破骨細胞は造血幹細胞に由来したマクロファージと近縁の細 胞で,生体内で骨吸収を営む唯一の細胞である.近年の研究 から,破骨細胞の分化に必須なサイトカインRANKLが発見 さ れ,RANKL受 容 体RANKの 下 流 のFos, NF-κB, NFATc1 などの転写因子が破骨細胞の分化で重要な役割をもつことが

粘膜免疫を増強するプロバイオティクス乳酸菌の発見 多くの人々を死にいたらしめる病原体のほとんどは粘膜を介 して生体内に侵入する.そのため粘膜免疫系の強化が,最も効 果的な感染防御対策に挙げられる.我々は,粘膜免疫において 主たる生体防御因子である粘膜イムノグロブリン A (IgA)抗 体に着目した.IgA は粘膜表面において,病原体,毒素,アレ

7, 2016 一細胞からの植物ホルモン質量分析法 微量な低分子化合物の内生量を細胞レベルで明らかにする 植物ホルモンは,植物自身が産生し,成長調節や環境 応答を制御する生理活性を有した植物に普遍的に存在す る(主に低分子の)化合物群であり,植物の乾燥重量 1 mg当たり数ng〜pgという極めて低濃度で作用するこ

細胞増殖と連動する核サイズの制御機構の解明 1)核サイズ異常変異体の選抜 核は,真核細胞において,正常な細胞機能の基盤となるゲノ ム情報を収納・保護する重要なオルガネラである.ほとんどの 真核細胞において,核サイズは,細胞サイズと比例関係にあり (図2),核と細胞の体積比(以降:N/C ratio)は一定に維持さ

7, 2016 細胞の「繊毛」輸送機構を解明 タンパク質リン酸化による繊毛先端部における輸送方向切り替えの制御 繊毛は細胞の表面に構成される微小管を軸とする突起 状の細胞小器官である.繊毛には気道上皮の繊毛や精子 の尾部などの「動く繊毛」と,多くの種類の細胞に存在 し細胞外からのシグナルを受容する「動かない繊毛」 (primary

11, 2015 マウス全脳 ・ 全身を透明化し 1 細胞解像度で観察する新技術を開発 アミノアルコールを含む化合物カクテルと高速イメージング ・ 画像解析を組み合わせた「 CUBIC 」技術を実現 生物としての構造と機能の最小単位は細胞である.分 子生物学の発展により細胞内システムの解析は広く研究 対象とされているが,主な対象は分離された細胞の解析

生体試料の溶液中での観察が可能である原子間力顕微鏡は, 生体分子のイメージングだけでなく,分子間相互作用や弾性 といった力学的な性質を解析する装置としても利用されてい る.さらにわれわれは,ダメージを与えずに生きた細胞を解 析できる,非常に細い針(ナノニードル)を細胞に挿入する ことで細胞内部のタンパク質を検出する手法を開発した.細