有理数体上のノルム
都築 暢夫
大学院講義「数学概論」
平成 17 年7 月4 日、11 日
「数学概論」の最後の2 回は、有理数体上のノルムを完全に決定したA.Ostrowskiの定理を紹 介する。
このノートでは、Z,Q,R,Cでそれぞれ有理整数環、有理数体、実数体、複素数体を表す。logx でx >0 の自然対数を表し、[x]で実数 x の整数部分を表す。また、00 = 0, ρ−∞= 0 (ρ >1) と する。
1. ノルムとその例
R を可換環とする。ノルムについて基本的な事柄は [Na67]の付値の章を見よ。
1.1. ノルム.
定義. (1) 次の性質を満たす関数| |:R→RをR 上の乗法的ノルムという。
(i) |a| ≥0 かつ「|a|= 0 ⇔ a= 0」 (ii) |ab|=|a||b|.
(iii) |a+b| ≤ |a|+|b|.
(2) 乗法的ノルム | |:R →R が (iv) |a+b| ≤max{|a|,|b|}.
を満たすとき、非 Archimedes的乗法的ノルムという。
(i) の条件の下、(iv) ならば (iii)が成り立つ。(ii)の条件から、乗法的という。この講義では、
乗法的ノルムを単にノルムということにする。非Archimedes的でないノルムを、Archimedes的 という。
命題 1. (1) | |をR 上のノルムとすると、| ±1|= 1 となる。
(2) R がノルム | |を持つならば、R は整域である。
ノルムを部分環に制限すると再びノルムになる。非Archimedes的ノルムの制限は非Archimedes 的である。一般の環拡大に対するノルムの延長については、このノートでは触れない。商体への 延長のみ考える。
ノルムの乗法性から、次の命題が成り立つ。
命題 2. R を整域、K をその商体とする。R のノルム| |は、K 上のノルムに一意に延びる。| | が Archimedes的ならばその延長も Archimedes的であり、非 Archimedes的ならばその 延長も非 Archimedes的である。
例 1. R を整域とする。関数| |0 :R→Rを
|a|0 =
½ 1 ifa6= 0,
0 ifa= 0
と定める。明らかに、| |0 はR 上の非 Archimedes的ノルムになる。| |0 を離散ノルムと いう。
1
定義. R 上の2つのノルム| |と| |0 が同値であるとは、ある正の実数αが存在して、|a|0=|a|α が成り立つことをいう。
例 2. 複素数体 C 上の絶対値 | |∞ は、C 上の(Archimedes 的) ノルムになる。ρ ≥0 とする。
a∈Cに対して
|a|∞,ρ =|a|ρ∞ と定めると
| |∞,ρ がノルム ⇔ 0≤ρ≤1
となる。0< ρ≤1 ならば、| |∞,ρ は | |∞ と同値である。また、| |∞,0 は離散ノルム | |0 になる。
1.2. ノルムから定まる位相. | |をR 上のノルムとする。関数d:R×R→Rを、d(a, b) =|a−b|
と定める。
命題 3. dはR 上の距離を定める。
命題 4. 同値なノルムによる距離から定まる環R 上の位相は一致する。
命題 5. (1) 加法R×R→R(a, b)7→a+b と乗法R×R→R(a, b)7→abは、距離 dから定ま る位相に関して連続である。
(2) R の乗法に関する単数群R×={a∈R| ∃b∈Rが存在してab= 1}は開集合である。
ここでは位相環や位相体は定義しないが、上の命題は R が位相環(R が体のときは位相体) に なっていることを意味する。
例 3. (1) 離散ノルムから定まる位相は離散位相になる。
(2) 0< ρ≤1のとき、複素数体 C上のノルム| |∞,ρ が定める位相はρ によらない。
1.3. 完備化. | |をR 上のノルム、dを| |から定まる距離とする。集合C(R) とN(R) を C(R) = {距離 dに関する R 上の Cauchy列(an) の全体}
N(R) = {(an)∈C(R)| lim
n→∞an= 0}
と定める。C(R)上の加法と乗法を
(an) + (bn) = (an+bn) (an)(bn) = (anbn)
と定める。また、写像 ι:R→C(R) を、ι(a) = (a, a, a,· · ·) と定数数列で定める。
命題 6. (1) C(R) は ι(1) = (1,1,1,· · ·)を単位元に持つ環になる。
(2) N(R) はC(R) のイデアルである。
(3) ι は環の単射準同型で、N(R)∩ι(R) ={ι(0)} が成り立つ。
命題 7. (1) (an)∈C(R) に対して、lim
n→∞|an|が存在する。
(2) (an)−(bn)∈N(R) ならば、lim
n→∞|an|= lim
n→∞|bn|である。
系. R 上のノルム| |は、剰余環Rb=C(R)/N(R) に一意的に延長される。
剰余環 Rb=C(R)/N(R) を、R のノルム| |に関する完備化という。Rb は完備、すなわち、任
意の Cauchy 列は収束する。ιは単射環準同型 R→Rb を導き、その像は稠密になる。完備化は、
位相環の圏の中で普遍性を満たす。普遍性から、同値なノルムによる完備化は一致する。
命題 8. R がノルムを持つ体ならば、完備化 Rb も体である。
証明 : (an) を 0 に収束しないCauchy 列とする。(an) の類の逆元を構成する。部分列をとる ことにより、an 6= 0 (∀n) とできる。点列 (a−1n ) が Cauchy 列であれば、(an) の類の逆 元が (a−1n ) の類となる。正数 M を|an| ≥ M(∀n) となるようにとる。(an) の取り方と (|an|) の極限の存在から、M は存在する。(an) はCauchy列なので、任意の ² > 0 に対 して、ある正数 N が存在して、m, n≥N ならば|an−am|< ²M2 とできる。よって、
|a−1n −a−1m |=|am−an|/|an||am|< ²M2/M2 =²
となる。したがって、(a−1n ) はCauchy 列である。 ¤
命題 9. | | を R 上の非 Archimedes 的ノルムとする。このとき、|a| 6= |b| ならば |a+b| = max{|a|,|b|}が成り立つ。
証明 : 商体の完備化を考えることにより、R をノルムに関して完備な体としてよい。ノルムの 乗法性より、b= 1,|a|<1 として|1 +a|= 1 を証明すればよい。R の中で (1 +a)−1 = 1−a+a2− · · · となる。非 Archimedes 的ノルムより1−a+a2− · · · の有限部分和の ノルムは 1 以下なので、|(1 +a)−1| ≤1 である。|1 +a| ≤1 なので、ノルムの乗法性か
ら、|1 +a|=|(1 +a)−1|= 1 である。 ¤
例 4. (1) 離散ノルムによる完備化はそれ自身になる。
(2) 有理整数環ZのArchimedes的ノルム| |∞,ρ(0< ρ≤1)による完備化は、Zである。
(3) 有理整体 Q の Archimedes 的ノルム| |∞,ρ(0< ρ ≤1) による完備化は、実数体R である。
2. p 進ノルム
素数 p を一つ固定する。
2.1. p 進ノルム. 関数| |p :Q→Rを、
|a|p =
½ p−l ifa=pl mn (p 6 |mn) 0 ifa= 0
と定める。
定理 1. | |p は、Q上の非Archimedes 的ノルムになる。
証明 : ノルムの公理 (i) と(ii)は明らか。
a=pl mn, b=ps tu(p 6 |mntu) とする。l≤sとすると、
a+b=plmu+ps−lnu
nt , p 6 |nt
なので、|a+b|p ≤p−l となる。よって、定義の(iv) の不等式が成り立つ。l ≥s の場合
も同様。 ¤
命題 10. ρ ≥0 に対して、| |p,ρ =| |ρp は Q 上の非 Archimedes 的ノルムになる。ρ >0 ならば
| |p,ρ は| |p と同値なノルムであり、| |p,0 は離散ノルム | |0 になる。
| |p,ρ(ρ >0)をQの p進ノルムという。特に、| |p を正規化された p進ノルムという。
2.2. p 進体. 有理数体 Q の p 進ノルムによる完備化を p 進体といい、Qp と表す。有理整数環 ZのQp の中での閉包をp 進整数環といい、Zp と表す。Zp は、Zの p進ノルムによる完備化で ある。
Qp の元が具体的にどう表示されるか考察する。aを0でない有理整数とする。aは一意的なp 進展開
a=a0+a1p+a2p2+· · ·+ampm (ai∈ {0,1,· · ·, p−1}, am 6= 0) を持つ。b=b0+b1p+· · ·+bnpn6= 0 なる p 進展開に対して、
|a−b|p =
½ 0 ifa=b
p−l ifai =bi(∀i < l), al6=bl
となる。ただし、ai= 0 (i > m), bj = 0 (j > n) とする。よって、Zのp進位相による完備化の各 元は
c= X∞
i=0
cipi (ci∈ {0,1,· · · , p−1})
と一意的に表されることになり、このように表される元はすべて p進整数環の元である。この表 示を、p 進整数環の元の p進展開という。
c=P∞
i=0 cipi (c0 6= 0)とp 進展開されている元に対して、n に関して帰納的に
(Pn
i=0 cipi)(Pn
i=0 dipi) ≡ 1 (modpn+1) di ∈ {0,1,· · ·, p−1}
を解くことにより、Zp の元 d=P∞
i=0 dipi を得ることができる。よって、次の命題が成り立つ。
命題 11. (1) Z×p ={c| |c|p = 1}.
(2) Zp の 0 でない任意の元は、plu(l は非負整数, u ∈ Z×p) と一意に表される。特に、
|plu|p=p−l となる。
上の命題から Zp[p−1]はZp の商体になる。Zp[p−1]の 0でない各元は c=
X∞ i=l
cipi (l∈Z, ci ∈ {0,1,· · · , p−1}, cl6= 0)
と一意的に表される。さらに、|c|=p−l とノルム| |p がZp[p−1]上に延長され、Zp[p−1]はこの ノルムに関して完備である。一方、商体の普遍性から、QはZp[p−1]に含まれ、Qのp 進ノルム
| |p は制限により Zp[p−1]のノルム| |と一致する。完備化の一意性より、Qp =Zp[p−1]となる。
3. 有理数体 Q 上のノルム
3.1. Ostrowskiの定理. 以下の定理は、A.Ostrowskiが1918年に証明[Os18]したものである。
このノートの証明は、E.Artin の証明 [Ar32] をアレンジしたものである。
定理 2. 有理数体Q上のノルムは以下の (1) - (3)のみである。
(1) 離散ノルム | |0
(2) 0< ρ≤1に対して、複素数体のノルム| |∞,ρ をQに制限したもの (3) 素数 p とρ >0 に対して、p進ノルム | |p,ρ
証明 : 商体へのノルムの延長は一意的なので、有理整数環 Z のノルムが(1) - (3) のみである ことを証明すればよい。(1) - (3)が Zの異なるノルムを与えることは明らか。
| | をZ のノルムとする。| |が(1) - (3) のいずれかになることを証明する。準備のた めに、次の 2つの補題を与える。
補題. n∈Zに対して、|n| ≤ |n|∞ となる。
補題. m >0, n≥2 に対して、|m|1/logm≤max{1,|n|}1/logn となる。
証明 : m のn 進展開を
m=a0+a1n+a2n2+· · ·+arnr (ai ∈ {0,1,· · ·, n−1}, ar6= 0) とする。このとき、r= [logm/logn]で、不等式
|m| ≤ |a0|+|a1n|+|a2n2|+· · ·+|arnr|
< n(1 +|n|+|n|2+· · ·+|n|r)
≤ n(r+ 1)max{1,|n|}r
≤ n(r+ 1)max{1,|n|}logm/logn が成り立つ。よって、
|m|1/logm ≤ {n(r+ 1)}1/logmmax{1,|n|}1/logn
である。m をmのべきms(s≥1)に変えると、[logms/logn]≤sr+ (s−1)なので
|m|1/logm ≤ {ns(r+ 1)}1/slogmmax{1,|n|}1/logn となる。{ns(r+ 1)}1/slogm→1 (s→ ∞) なので、
|m|1/logm ≤max{1,|n|}1/logn
が成り立つ。 ¤
定理の証明を続ける。
(ア) sup{|a| |a∈Z}= 1 のとき
補題. I ={n∈Z| |a|<1}はZ の素イデアルである。
証明 : 0 ∈I である。I = (0) のときは素イデアルである。I 6= (0) とする。仮定と素因 数分解の一意性より、空でない素数の集合 Ω = {p1, p2,· · · } が存在して、I はいず れかの pi ∈ Ω の倍数になる。Ω がただ一つの素数からなることを示せば I が素イ デアルになる。p, q ∈ Ω (p 6= q) とする。p と q の十分大きいべき pr, qr をとると
|pr|,|qr|<1/2とできる。pr とqr は互いに素なので、apr+bqr = 1となるa, b∈Z が存在する。
1 =|1|=|apr+bqr| ≤ |apr|+|bqr| ≤ |pr|+|qr|<1/2 + 1/2 = 1
となり矛盾する。したがって、Ωは一つの素数からなる。 ¤ I = (0)のときは、| |は離散ノルムである。ある素数pに対して、I = (p)とする。aが p と素なとき、a6∈I なので|a|= 1 である。ρ=−log|p|/logpとおく。a=pr mn (p 6 |mn) に対して、
|a|=|p|r=|p|rlog|p|/log|p|p
p =|pr|ρp =|a|p,ρ となるので、| |は| |p,ρ と一致する。
(イ) sup{|a| |a∈Z}>1のとき
m ≥2 を|m|>1 なるZの元とする。| −1|= 1 なので、このようなm は存在する。
任意の n≥2に対して、
1<|m|1/logm ≤max{1,|n|}1/logn
なので、|n|>1となり、|m|1/logm ≤ |n|1/lognである。|n|>1なので、|m|1/logm ≥ |n|1/logn も成り立つ。よって、
|m|1/logm =|n|1/logn
である。この式は、任意の m, n≥2に対して成り立つ。ρ= log|2|/log2とおくと、n≥2 に対して
|n|=|2|logn/log2=|2|ρlog|n|∞/log|2|=|n|ρ∞=|n|∞,ρ
となり、| |は| |∞,ρ に一致する。 ¤
3.2. 積公式. ノルムに関する定理を一つ紹介する。例えば類体論等において、大域的な対象の局 所的な寄与を加え得ると自明になることがよくあるが、積公式は最初の重要な例である。
定理 3. aを0でない有理数とする。このとき、有限個をのぞくすべての素数pに対して、|a|p = 1
となる。さらに、 Y
p≤∞
|a|p= 1
である。
定理の左辺の積はすべての素数に対する正規化されたp進ノルム|a|p と通常の意味での絶対値
|a|∞ すべてを渡るが、有限個をのぞいてすべてが1 なので、実質は有限積である
例. a =−14/9 とする。a= −2×3−2×7 なので、|a|2 = 2−1,|a|3 = 32,|a|7 = 7−1,|a|∞ = 14/9,|a|p = 1 (p6= 2,3,7,∞) である。
Y
p≤∞
|a|p =|a|2× |a|3× |a|7× |a|∞= 2−1×32×7−1×14/9 = 1
で、積公式が成り立つ。
上の定理は、Riemann 球面上 (複素射影直線) の留数定理の類似である。すなわち、f(z) を Riemann球面上の有理型関数とすると、f(z) は高々有限個の点p1,· · · , pr で零点か極を持ち、そ の位数をn1,· · ·, nr とすると
Xr i=1
ni = 0
となる。実際、有理数aの各素数p での np =−log|a|p/logp は、aのp での位数、すなわち、a のp 進展開
a=anppnp+anp+1pnp+1+· · · (anp6= 0)
の初項の位数を表わす。対数をとると、これらに logp を掛けたものを足し合わせると0 になる。
ただし、∞ の部分は少し異なり、単純な類似ではない。
∞ のところは可微分多様体としてのメトリックを置き、SpecZ 上の代数幾何を考察する方法
をArakerov 幾何といい、数論の重要な一分野をなしている。
3.3. 有理整数環 Z 上のセミノルム. ノルムの公理 (i) を (i)’ |a| ≥0 (∀a∈R),|0|= 0,|1|= 1
と弱くした関数| |:R→Rをセミノルムという。非Archimedes的な場合、ノルムは一様に有界 なので、極限操作はセミノルムの公理を保つ。よって、次の命題が成り立つ。
命題 12. 素数 p に対して、| |p,∞= lim
ρ→∞| |p,ρ はZ のセミノルムになる。特に、
|a|p,∞=
½ 0 ifp|a
1 ifp 6 |a である。
定理 4. 有理整数環Z上のセミノルムは以下の (1) - (4) のみである。
(1) 離散ノルム | |0
(2) 0< ρ≤1に対して、複素数体のノルム| |∞,ρ をQに制限したもの (3) 素数 p とρ >0 に対して、p進ノルム | |p,ρ
(4) 素数 p に対して、セミノルム | |p,∞
証明 : | |を Zのセミノルムとする。J ={a∈Z| |a|= 0} とすると、J は Z の素イデアル になる。実際、0∈J,16∈J であり、a, b∈J, n∈Zとすると|a+b| ≤ |a|+|b|= 0,|na|=
|n||a|= 0なので、a+b, na∈J である。また、|ab|= 0とすると |a|= 0または |b|= 0 が成り立つので、J は素イデアルである。
J = (0)とすると | |はノルムになるので、(1) - (3)のいずれかになることは既に示し た。ある素数 p に対してJ = (p) とする。a 6≡ 0 (modp) に対して、|a|= 1が成り立て ば | |は| |p,∞ と一致する。
補題. a ≡ b(modp) ならば |a|=|b|である。特に、| |の像は有限集合である。
証明 : a−b=pcとする。このとき、|a|=|b+pc| ≤ |b|+|pc|=|b|が成り立つ。同様に、
|b| ≤ |a|が成り立つ。 ¤
定理の証明を続ける。a 6≡ 0 (modp) に対して、|a| 6= 1 とする。|a| 6= 0 なので、
|an|(n= 1,2,3,· · ·)はすべて異なる。これは、| |の像が有限集合であることに矛盾する。
したがって、|a|= 1 である。 ¤
M(Z) をZ上のセミノルム全体の集合とする。任意の a∈Zに対して、
M(Z)→R | | 7→ |a|
が連続になるような最弱の位相を M(Z)の位相とする。
定理 5. M(Z) はコンパクト Hausdorff空間である。
定理は次の補題から証明できる。
補題. M(Z)の開集合は、次の(1) - (5) の集合により生成される。すなわち、それらの有 限個の共通部分の和集合になる。
(1) 素数 pと 2つの実数 0< a < b に対して、
U(a,b)={| |p,ρ|a < ρ < b}.
(2) 素数 pと実数 a >0に対して、
U(a,∞]={| |p,ρ|ρ > a} ∪ {| |p,∞}.
(3) 2つの実数 0< a < b <1 に対して、
V(a,b)={| |∞,ρ|a < ρ < b}.
(4) 正の実数0< a <1に対して、
V(a,1]={| |∞,ρ|ρ > a} ∪ {| |∞,∞}.
(5) 素数 pと 2つの正の実数 a, b(b <1)に対して、
W[0,a),[0,b)={| |p,ρ|0< ρ < a} ∪ {| |∞,ρ|ρ < b} ∪ {| |0}.
20世紀前半の代数幾何においては、(セミ)ノルム(または付値)を点と考えるやり方も重要な方 法であった。60年代に、A.Grothendieckによるスキーム論が登場して、ある意味忘れられた感が あるが、リジット解析による代数幾何の再構成(60年代のJ.Tateに始まる)により、その重要さが 再認識されてきている。ここで述べたM(Z) は、V.G.Berkovich によるZの解析空間であり、ス キームSpecZとは異なる通常の感覚の位相空間が伴っている。藤原一宏によるZariski-Riemann 空間等の拡張もあり、今後の発展が期待される分野である。
References
[Ar32] Artin, E.,Uber die Bewertungen algebraischer Zahlk¨orper, J. reine angew. Math. (1932), 157-159.¨ [Na67] 永田雅宜,「可換体論」数学選書6、裳華房、1967年
[Os18] Ostrowski, A.,Uber einige L¨osungen der Funktionalgleichung, Acta Math.¨ 41(1918), 271-284.
レポート問題 以下から、2 問以上解いてレポートを提出せよ。
締め切り: 7 月27 日(水) 15 時
提出場所: 数学事務室内の所定のボックス
1. 講義、または、このノートの定理、命題、または、例で証明の付いていないもの 2つ以上 に証明をつけよ。(5つ以上に証明をつけると、2 問解いたことにする。)
2. k を有限体とする。一変数多項式環 R=k[x]上のノルムを完全に決定せよ。
3. 数学の様々な分野でに登場する「ノルム」について、特定の分野に焦点を絞りまとめてみ よ。例えば、「Banach 空間のノルム」に関してレポートを書け。