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生合成に着想を得たインドールアルカロイドの新規合成法

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化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015

生合成に着想を得たインドールアルカロイドの新規合成法

複雑な天然物の全合成における骨格多様性の実現

生物はその長い進化の過程で,さまざまな酵素反応を 駆使して比較的単純な出発原料から多様な分子を生産す る「分子組立ライン」を獲得してきた.特に,異なる酵 素の作用によって,共通の中間物質を多様な分子骨格へ と変換するしくみは,実に効率的で無駄がない.一方,

有機合成化学者は,天然物の構造的な美しさや機能に魅 せられ,その全合成に挑むのだが,通常は,単一の標的 分子の合成に特化した戦略を練り,その全合成に向けて 試行錯誤を繰り返す.その結果確立された合成法は,標 的分子と骨格を共有する類縁体の合成を可能にするが,

分子骨格そのものに多様性を与える全合成法,すなわち 骨格多様性合成法の確立には至らない.そこで最近,北 海道大学の大栗らのグループは,生合成経路として提唱 されているデヒドロセコジンのDiels‒Alder反応に着想 を得て,骨格多様性を備えた見事なモノテルペンイン ドールアルカロイドの全合成法を開発した(1)

.この研究

の着想と展開について解説したい.

1

に示すように,トリプタミン(1)とイリドイドテ ルペンであるセコロガニン(2)から,strictosidineや preakuammicineなど種々の中間体を経て合成されるデ ヒドロセコジン(3)を経由して,異なる基本骨格を有す るモノテルペンインドールアルカロイドが生産される生 合成経路が提唱されている(2)

.この仮説では,ジヒドロ

ピリジン部位と2-ビニルインドール部位を併せ持つ共通 中間体

3から,異なる様式のDiels‒Alder型[4+2]付

加環化反応(図1の囲み図参照)が進行することによ り,それぞれ 型インドールアルカロイド であるtabersonine(4

,および

型インドールアル カロイドであるcatharanthine(5)が生成すると考えら れている.一方,化合物

3のジヒドロピリジン環上のエ

チル側鎖が脱水素化された化合物6からも,異なる形式 の[4+2]付加環化反応によってandranginine(7)が 生成すると考えられている(3)

これらの分子変換を担う酵素はいまだ特定されていな いが,ジヒドロピリジン部位を有する共通中間体を分岐 点として,基本骨格の異なるモノテルペンインドールア ルカロイドを生産するしくみを模倣することにより,骨 格多様性を備えた新たな天然物合成法の創出が期待され

る.しかしながら,フラスコ内での再現には次に述べる 問題を克服する必要があった.共通中間体であるデヒド ロセコジンは不安定であり,生体内においては酵素に よって安定化されていると考えられる.実際,これまで にデヒドロセコジンの単離や合成は達成されていない.

さらに,酵素の助けを借りることなく,デヒドロセコジ ンのような複数の反応点を有する中間体から,化学・反 応位置・立体化学を高度に制御して望みの反応のみを進 行させることは極めて困難である.

そこで大栗らは,図

2

に示すジヒドロピリジン置換イ ンドール誘導体12をデヒドロセコジン(3)に対応する 合成中間体として用いる手法を考案した.生合成中間体

3では,ジヒドロピリジン上のエチル側鎖が酸化されて

重合することが懸念される.一方,合成中間体

12では,

そのエチル基の代わりに電子吸引性のアシル基(COR)

を導入することによりジヒドロピリジンを安定化すると ともに,その反応性を制御することにより,中間体12 から種々のDiels‒Alder型[4+2]付加環化反応を選択 的に進行させることができると考えた.また,アシル基 上のR部位を不斉補助基とすることで,光学活性体の合 成も可能となる.

鍵中間体12は,トリプタミン塩酸塩(1 HCl)と化合 物810との多成分カップリングにより合成されるエニ ン11から,銅触媒を用いる6- 環化反応(図2の囲 み図参照)によって温和な反応条件下で形成される(4)

この合成法では,種々のアルキニルカルボニル化合物

10を組み合わせることにより,望みの環化反応へと 

導くのに最適なアシル置換基を導入することができる.

不斉補助基Xcを有する前駆体

11a(P=H, R=Xc)を

45 Cで環化させると,生成するジヒドロピリジン

12a

ら直接[4+2]付加環化反応が進行し, 型生成物

13を2段階収率48%で与えた.このとき,インドール窒

素上の水素と2位ビニルエステルのカルボニル酸素の間 で水素結合が形成されることにより,付加環化に有利な 配座に固定されるとともに,ジエノフィルであるビニル エステルが活性化されると考えられている.環化生成物

13からは,

(−)-catharanthine(5)の不斉全合成が達成 されている.

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化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015 図1デヒドロセコジン(3)を共通中間体とするモノテルペンインドールアルカロイドの生合成仮説

図2ジヒドロピリジン(12)を共通中間体とするモノテルペンインドールアルカロイドの全合成

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化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015

一方,インドール窒素がBoc基(CO2Bu)で保護さ れた前駆体

11b(P=Boc, R=OMe)を銅触媒によって

環化させた後,ジヒドロピリジン上のより電子豊富な二 重結合を選択的に水素化することにより,単離可能なテ トラヒドロピリジン14が得られた.この化合物をマイ クロ波照射条件下180 Cに加熱することにより,Boc基 の除去とビニルインドールをジエンとする[4+2]付加 環化反応が進行し, 型生成物

15

が61%収 率で得られた.その後,4工程を経て

15

は(±)-vincadif- formine(16)に変換されている.

さらに, 型骨格の構築を達成するため,

ジヒドロピリジン上にアセチル基を導入した12c(P=

H, R=CH3)が合成された.アセチル基をシリルエノー ルエーテル(C(OTIPS)

=CH

2)へと変換すると,17か らシロキシジエンとインドール2位のアクリレート側鎖 の間で[4+2]付加環化反応が室温で進行して望みの生 成物18が得られ,最終的に(±)-andranginine(7)へと 変換された.

このように大栗らは,モノテルペンインドールアルカ ロイドの生合成における共通の中間体として提唱されて いるデヒドロセコジン(3)をモチーフとして,より安定 で反応性の制御が可能なアシル置換ジヒドロピリジン誘 導体12を開発し,これをプラットフォームとして,

型, 型 お よ び 型 骨 格 を 選択的に構築する新規合成法を創出した.この骨格多様 性を備えた合成法を駆使して,(−)-catharanthine(5

(±)-vincadifformine(16)および(±)-andranginine(7

の全合成に成功している.本研究ではさらに,光酸化還 元触媒を活用したアシル置換ジヒドロピリジン誘導体

12の環化反応にも取り組み,

型および関

連する非天然型インドールアルカロイド骨格の構築にも 成功しており,生体模倣型合成法の範疇を超えた合成展 開の可能性も示されている.この報告を契機として,骨 格多様性を追求した全合成法の研究がさらに発展すると 期待される(5)

  1)  H. Mizoguchi, H. Oikawa & H. Oguri:  , 6, 57  (2014).

  2)  A. I. Scott:  , 3, 151 (1970).

  3)  C. Kan-Fan, G. Massiot, A. Ahond, B. C. Das, H.-P. Hus- son,  P.  Potier,  A.  I.  Scott  &  C.-C.  Wei: 

, 164 (1974).

  4)  H. Mizoguchi, R. Watanabe, S. Minami, H. Oikawa & H. 

Oguri:  , 13, 5955 (2015).

  5)  J. Shimokawa:  , 55, 6156 (2014).

(川村智祥,山本芳彦,名古屋大学大学院創薬科学研究 科)

プロフィル

川村 智祥(Tomoyoshi KAWAMURA)

<略歴>2013年名古屋大学工学部化学・

生物工学科卒業/2015年同大学大学院創 薬科学研究科修士課程修了/同年同大学大 学院創薬科学研究科博士後期課程進学,現 在に至る<研究テーマと抱負>エンジイン の[2+2+2]環化付加反応を機軸とする ジアジフェノリドの全合成研究<趣味>カ メラ,動画編集

山本 芳彦(Yoshihiko YAMAMOTO)

<略歴>1991年名古屋大学工学部応用化 学および合成化学科卒業/1993年同大学 大学院工学研究科博士前期課程修了/1996 年同大学大学院工学研究科博士後期課程修 了/同年同大学工学部助手/2003年同大 学大学院工学研究科助教授/2006年東京 工業大学大学院理工学研究科准教授/2009 年名古屋大学大学院工学研究科准教授/

2012年同大学大学院創薬科学研究科教授,

現在に至る<研究テーマと抱負>独創的な 分子触媒反応を用いて生理活性物質の効率 的 合 成 を 達 成 す る<趣 味>音 楽・ 

映画鑑賞とオーディオ<所属研究室ホー  ムページ>http://www.ps.nagoya-u.ac.jp/

lab̲pages/molecular̲design/yamamoto̲

lab/index.html

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.815

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はじめに 多くの植物は季節を感知して適切な時期に花を咲かせ ることで,自らの生存・繁栄を最適化している.また, 特定の季節に咲く花は人々を楽しませ,人々に豊かな実 りをもたらす.植物の営みの理解は,自然を理解しよう とする立場のみならず,農業など産業の発展の側面から も重要であり, 植物が花を咲かせる仕組みはどうなっ ているのか?

1, 2017 ある種のシダにおいてジベレリンは時空間的なコミュニケーションツールとして使われてきた シダの性決定のしくみがわかってきた 植物ホルモンのジベレリン(gibberelline; GA)は, 種子発芽,茎の伸長,開花,果実の成熟などさまざまな 生長・発達過程において促進作用を示す1, 2.しかしな がら,これらの作用の多くは被子植物で観察されてきた