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2012 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文
なぜ 3 男はモテるのか
A0942934 小澤優太
提出日: 2013/1/15
2 目次
序章
1. 調査背景と目的
1章 素朴な疑問 1. 3男マジック 2. 素朴な疑問
2章 対人魅力 好意を抱かせる諸要因 1. 対人魅力とは
2. 3男-1女間に見られる対人魅力の形成要因 3. 考察
3章 仮説・仮説検証 1. 仮説
2. 不安説 3. 憧れ説 4. 結論
4章 まとめ
5章 終わりに 1. 課題 2. 謝辞
参考文献
付録(アンケート)
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序 章
1. 調査の背景と目的
楽しみというものが過去に比べて多様化していることが明確に示されている昨今、それでも未 だ大学生にとって恋愛は関心の高いものである。最近では「リア充」という言葉が学生を中心に ステータスとして日常的に使われるようになってきており、自分の好きなことに好きなだけ取り 組んでいることや、友人と楽しい時間を多く過ごしていることもリアルが充実していることでは あるが、リア充であることの一般的な条件は恋人がいることである。こういった言葉の誕生から も、恋愛に対する人々の関心はそこまで落ちていないことが推測される。
しかし、悲しいことに男子は余り気味なのである。2005年に行われた日本性教育委員会の第 6回青少年の性行動調査では、恋人のいる率が女子45%に対し男子が37.8%なのである(調査 対象となった男女の数は同じ)。1990年代はより顕著で、2000年代に入ってその差は縮まる傾 向にあるものの、それでもやはり未だイーブンとはなっていない。片瀬(2007)は、恋愛にお いて男性の方に不活性層が多い理由として、男女共同参画が進んだ昨今でも、恋愛や性行動にお いては男性側からのアプローチやリードが求められていることに時代変化が見られないためだ としている。では、消極的な男子には恋愛チャンスは巡ってこないのだろうか。
そんな中、大学生の間では 3 男マジックという伝説が噂される。主にサークルにおいて使用 される言葉だが、新入生である1 年生女子が、サークルや部活の執行部として奮闘する3 年生 男子にクラッときてしまう現象のことである。しかも、それまであまりモテていない人にも起こ りうるという。そして、筆者の行ったアンケートによると、あながちただの伝説というわけでも ないようである(統計データは必要な場面にて後述していく)。本論文の目的は、3 年男子と 1 年女子の間に見られる行動や背景とモテの因果関係を追及し、3年生男子が1年生女子にモテや すいという現象のメカニズムを解明することである。
ゼミ内での 3 男はモテ期であるという仮説にヒントを得た完全なる興味本位の論文だが、就 活など、心の支えが必要になる 3 年という時期において、彼女を作りやすいかもしれないとい うことを微力ながら説明できれば幸いである。
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章 素 朴 な 疑 問
1. 3男マジック
1-1 本当に3男は1女にモテているのか
まず、本稿の執筆に当たり、証明しなければならない問題がある。それは、本当に 3 男が 1 女にモテているのかという問題である。男女共学の中学・高校に通っていた者、大学生活におい てサークルや部活に入っている者には、経験的に 2 つ上の先輩はモテているというイメージが 多くの場合あると思うが、それはどの程度真なのだろうか。
今回使用する「モテ」の定義だが、何かしらの理由で魅力的だと思われたら、それは「モテ」
だという判断をする。しかし、その好意が恋愛感情だったかどうかは質問していないため、今回 は全て「恋愛につながりうるもの」という捉え方をしたい。
<アンケート>
上智大学、学習院大学のテニスサークル、音楽系サークルに所属する女子計40人に質問形式 のアンケートをとった。(アンケート内容は後のページに添付)
内訳は、1年生女子12人、2年生女子15人、3年生女子3人、4年生女子10人である。
なお、今回の調査に当たり、
①3 男マジックとは主にサークルや部活など、1~4 年生以上が混在するコミュニティ内で主 に使用される言葉のため
②サークルに所属していない人はあまり3男との接点がなかった という理由から、サークルに所属している女子のみに限定している。
9 5
20 3
1 2
1年生 2年生 3年生 4年生 5年生以上 思ったことはない
0 5 10 15 20 25
あなたがサークルに入って、最初に(一 年生のとき)魅力的だと感じた男性は何
年生でしたか?
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まず、アンケートに協力いただいた女子には、1年当時を思い出してもらい、入学してから最 初に魅力的だと感じた男性の学年を答えていただいた。すると、40人中20人が3年と答えた。
サンプル数は少ないものの、他の学年と比べて3男を魅力的だと思ったことがあることが分か った。この結果から判断すると、3男は他の学年に比べてモテやすいことが分かる。
また、ゼクシィの行ったカップルの年齢差という統計においても、2~3歳上の占める割合が、
僅差の層もあるがトップであるということからも、2~3歳上はモテやすいという事実のサポー トとなるだろう。
さらに加えて、小森らによる「女子大学生の恋愛対象年齢と性格との関連について」という論 文によれば、131名の大学1年生女子の中で、年上を恋愛対象としている者が71名でトップと なっている。年上というだけで大学3年生男子という限定されたものではないが、1.女による年 上人気の証明の一つとはなるだろう。
これらのデータから、3男は1女にモテやすい(3男は1女に対してモテ期である)というこ とを真として、本論文を進めていく。
注:以降使用する「〇男と答えた人」という表現は、「あなたがサークルに入って最初に魅力的 だと感じた人の学年は?」という問いに対するものである。
6 1-2 モテの期間
3年生男子に対して魅力を見出すとき、それはどういったタイミングで発生し、どの程度継続 するものなのだろうか。以下は3年生男子と答えた女子の(20名)、その感情はサークルに入っ てからどの程度で抱き始めたのか、どの程度継続したかという質問の回答結果である。継続期間 については、中には付き合ったという人も含まれている。
アンケートを作成した際の期間の分類については、これで良かったのかは少々疑問ではあるが、
このアンケート結果から、1女は3男に対して、サークルに入ってから3ヵ月以内という比較的 短い期間で魅力的という感情を抱き始めるようである。その継続期間についてはあまりデータ上 の偏りは見られず、おそらく個人個人の特性だと考えられる。
2. 素朴な疑問
以上のデータから、最終的な「素朴な疑問」は、「なぜ3男は、サークルに入りたての1女に モテやすいのか」である。
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
~1週間 1週間~1ヵ月 1ヵ月~3ヵ月 3ヵ月~6ヵ月 6ヵ月~
いつ抱き始めたか
人数
0 1 2 3 4 5 6 7
1ヵ月以内 1ヵ月~3ヵ月 3ヵ月~6ヵ月 6ヵ月~1年 1年以上
継続期間
継続期間
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章 対 人 魅 力 好 意 を 抱 か せ る 諸 要 因
はじめに
疑問の検証に取り掛かる前に、人が人に対して行為を抱く際の形成要因についてまとめる。
1. 対人魅力とは
対人魅力とは、言葉の通り、人の人に対する好き嫌いのことである。人はどのようなとき、他 者の魅力を感じるのか。近来の社会心理学の研究から、その要因は大きく 4 つに分かれる。以 下にまとめる4要因の解説は、『対人社会心理学 重要研究集2 対人魅力と対人欲求の心理』
を参考にしている。
1-1 他者要因
他者要因とは、相手側の要因によって、その人を好きになる場合である。例えば、ルックスや 性格特性など、相手に自分が好むような魅力がある場合である。ヘンドリックとブラウン(1971)
によれば、自分が内向的・外向的にかかわらず、外向的な性格特性を持った者が好かれる傾向に ある。
1-2 自己要因
自己要因とは、自分の性格特性、自分のおかれている状況や生理的興奮度など、自分側の特性 が、相手への好意に影響する場合である。有名な例で言えば、心臓が高鳴っている状態では相手 に好意を持ったり(吊り橋効果)、不快指数の高い場所においては相手への評価が低くなったり などが挙げられる。また、自分の相手への行動も、相手に対する評価に影響する。例えば、自分 が相手に対して施しをした場合、その相手への好意度が高まることが証明されている。
1-3 相互的要因
相互的要因とは、類似性と相補性のことである。類似性とは、2人の性格特性や好みといった ものが一致していることから、相手への好意を抱きやすいというものである。相補性とは、自分 にとって足りないものを相手が持っている場合、相手への好意につながるというものである。内 向的な人でも、外向的な相手を好みやすいというのはこの相補性によるものだという研究がなさ れている。
1-4 環境的要因
物理的、地理的環境が相手への評価に影響する場合が、環境的要因である。代表的なものでは、
二者間の物理的距離が近いほど、相手に好意を抱きやすいといった物理的近接性がある。単純接 触効果もこれに関するものである。風景が綺麗な場所では、相手に好意的になるなどの研究もな されている。
8 2. 3男-1女間に見られる対人魅力の形成要因
はじめに
上記の4つの分類を基に、サークルに入ってから3ヵ月以内に、1女が3男を魅力的と感じや すい要因を探っていく。3ヵ月以内に限定しているのは、魅力を感じ始めたのが3ヵ月以内と答 えた人が多かったため、その期間に絞って考えてみたいからである。
1. 要因まとめ
1-1 3男側の要因(他者要因)
初めて魅力的と思った人の学年という質問に、3男と答え、かつ感じ始めたのが3ヵ月以内と 答えた人(17名)の「魅力を感じた際、どういった理由で感じましたか」という質問に対して 集められた回答をまとめる。大きく分けて、3つに分類することができた。
l 実力、能力面
テニスが上手いなどといった、そのサークルにおけるメインの活動において、卓越した 能力が見られたことから魅力的だと感じたという回答の類。
l 行動面
パートリーダーとしてメンバーをまとめていた、皆から頼られていたなど、執行部とし て活躍する3男の行動を見て、魅力的だと感じたという回答の類。また、積極的に絡 んでくれた、優しく教えてくれたなどの回答もここに帰属させる。
l ルックス、趣味
単純にタイプだった、かっこよかったという3男のルックスに関する回答の類。
また、趣味が合ったという回答もここに帰属させる。
1-2 1女側の要因(自己要因)
アンケートによって性格特性や生理的興奮度を理解するのは難しかったので、1女という立場 上、入学当時に発生しているのではと思う心情について(少々誘導的ではあるが)質問した。
l 不安
「入サークルに際して、対人関係に関する不安はあったか」という質問に対して、YES と答えた人数は26名。半分以上の人は、その大小は不明だが、不安を感じていた。
「今現在はどうか」という質問に対しては、YESは0であった。
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l 憧れ
「入学当時、恋愛するなら年上がいいと思っていたか」という質問に対して、YES と答えた人数は18名。その他の考えとしては、同級生がいい、年下がいい、不問が考 えられるが、明確に年上がいいという人が全体の約43%だった。
こちらに対しても、「今現在はどうか」という質問に対し、YESは8名となった。
1-3 相互的要因
「魅力を感じた際、どういった理由で感じましたか」という質問に対し、相互的要因に帰属す る理由としては、「趣味が合ったから」という回答1つのみであった(入サークル後、初めて魅 力的だと感じたのが3男だと答え、かつそれを感じ始めたのが3ヵ月以内という人の中で)。そ のため、今回相互的要因は考えないこととする。
1-4 環境的要因
個人個人によって接触回数や物理的距離の違いはあるだろうが、同一サークルという前提で見 ているので、男性の学年間であまり差はないと予想できる。
2. 考察
<3男側の要因 他者要因>
3男側の要因としては、能力面・行動面・ルックスの3種類に分けられた。しかし、これ らの理由は、1女でなくとも感じられるものである。さらに、これらは一年中を通して見ら れるものであろう。ということは、3男という時期は、2女や3女にも魅力的と映る可能性 が高いのではないか。
そこで、2人の4年生女子(サークルは別々)にアンケートとは別に話を聞いたところ、
・3年になってからの同期カップルの誕生は少ないこと
・自分らとしてはよく分からないが、3男(当時)になって1女にモテた人がいたこと
・彼女らの3男(当時)に対する評価はどちらかというと「信頼」という気持ちが強い こと
が分かった。このことから、3男側の要因は、2女や3女に対しても魅力的であることには 変わりなさそうだが、その捉え方が入学して間もない1女とは異なるのではないだろうか。
ただし、積極的に絡むという点においては、3男が入りたての1女に対してはみせるが、
2女や3女に対しては見せない行動だと経験的に思われる。さらに、3年生は執行部という 立場から、2年生よりもサークルに入ってくれた1年生に対して積極的に接触しなければい けないという心理的プレッシャーが大きいはずである。
10 <1女側の要因 自己要因>
1女特有の要因について何があるかと考えた際、
・新しい環境に入るという不安
・つい先日までは高校というコミュニティの最年長だったため、年上への憧れ
があるのではないかと考えた。結果としては、同一コミュニティ内における対人不安と年 上への憧れは経年と共に消失すると解釈することができるだろう。
<環境的要因>
4男以上は基本的には引退しているため、同一サークルとはいっても2男や3男と比べて 接触回数が少ないため、入サークルの段階で1女に魅力的と思われる機会が少ないのだと 予想できる。しかし、2男と3男の間にはあまり環境的要因の差はない。3年生が執行部で あるという事実は、3男側の要因(他者要因)としているので、環境的要因はサークル内に おいて3男がモテやすいメカニズムにおける前提としての域を出ないと予想できる。
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章 仮 説 ・ 仮 説 検 証
はじめに
以上にまとめた考察から、仮説を導く。3男側の要因については1女だけが評価するものでは なさそうであり、環境的要因も同一サークル内ということで2男と3男に差がなさそうである ということから、1女側の要因に注目する。
今一度確認として、素朴な疑問は「なぜ3男は、サークルに入りたての1女にモテやすいの か」である。
1. 仮説
① 不安説
② 憧れ説
2. 不安説
素朴な疑問に対し、1つ目の仮説として、サークルに入ったばかりの人が多くもっている不安 が、3男の行動面のうち、「優しく接してくれる、積極的に絡んでくれる」という行動を過大に 評価させてしまうのではないだろうか、という考えが挙げられる。「優しく接してくれる、積極 的に絡んでくれる」という行動に限定しているのは、「パートリーダーとして皆をまとめていた」
というような行動は、不安の解消とは関係なさそうだと判断したからである。
2-1 検証
まず、ラタネとビドウェル(1977)によれば、大学キャンパス内での親和欲求は、女性が男 性に比べて有意に高いことが証明されている。そのため、まだ入学して間もなく、強固な友人関 係が確立していない1女にとって、不安があることは不思議ではない。
その不安を抱いていると答えた者を対象に、相手から積極的に絡んでくれることを好む人がど の程度いるかを知るため、不安下において自分から話しかけにいくタイプか、話しかけられたい タイプかという質問をした。(ここからは2回目のアンケート結果である)
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
話かける 話しかけられたい
人数
12
この結果から、話しかけてもらう方が良いと思う女子が多いことが分かった。1回目のアンケ ート結果を見てみても、3男以外と答え、かつ感じるまでの期間が3ヵ月以内だったという人も、
その理由として「積極的に絡んでくれた」という類の答えが多く見受けられた。そのため、「優 しく接する、積極的に絡む」という行動は、サークルに入って間もない1女に対して魅力的に 映る可能性が高いことが分かる。
学年を問わず「積極的に絡む」という行動が1女にとって魅力的だと感じる理由となってお り、その状況下で3男がモテているということは、3男は他の学年の男子と比べて、サークルに 入ったばかりの女子に対して、より馴染んでもらおうと積極的な行動を示しているのだろうと予 想できる。あくまでも傾向の予想としているが、4回もの新歓期を肌で感じてきた筆者の経験的 な側面からいうと、信用できるものであると考える。
不安は経年と共に消失していくという結果から、サークルに入りたての頃が不安が一番大きく、
この不安解消に努めてくれた相手に対して好意的な反応を示すことは真だと分かったが、この不 安説は、相手が特に3男でなくても良いという点から、3男が1女にモテやすいという現象に対 する仮説としては薄いので、棄却する。
ただし、不安を持つ1女に対し、3男が他の学年の男子よりも「積極的な絡み」や気遣いを大 切にしているという点は、注目すべき点であろう。
3. 憧れ説
小森(2000)によれば、知性得点の高い大学一年生女子は、相手の知性的側面を、恋愛対象 者の年齢が高いほど評価を高くしがちになることを指摘している。このことから、1女は相手の 年齢が高いほど、その相手の能力や行動を高く評価してしまうのではないだろうか。言い換えれ ば、1女は一種の憧れを年上に対して抱いているのではないかと考えることができる。この憧れ があるからこそ、3男側の要因を2女や3女とは異なる捉え方をし、高く評価してしまうのでは なかろうか。
3-1 検証
まず、1回目のアンケートにおいて、「入学当初、恋愛するなら年上がいいと思っていた」と 答えた人が18名であった。この18名に対して、「なぜそのように思っていたか」という質問を し、以下が回答結果のまとめである。(原文そのままではない)
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なぜ恋愛するなら年上がいいと思っていたか 1 頼りがいがありそうだから
2 色々と経験豊富そうだから 3 自分の成長に繋がりそうだから 4 頼りがいがありそうだから 5 包容力がありそう
6 自分にないものを持っていそうだから 7 頼りがいがありそうだから
8 同級生とは精神年齢が合わない 9 経験豊富そうで、楽しそう 10 私より頭良い人がいい 11 頼りがいがありそうだから 12 包容力がありそう
13 甘えたい(甘えられそう)
14 勉強になりそうだから
15 同級生とは精神年齢が合わない 16 包容力がありそう
17 同級生より楽そう
18 頼りがいがありそうだから
様々な回答が得られたが、注目したいのは、「~そうだから」という予測系の回答の多さであ る。中には明確に「同級生とは精神年齢が合わない」や「自分よりも頭がいい人がいい」といっ た、年上しか選択肢としてありえないと考えている人もいるようだが、多くの場合、漠然とした 自分の中の年上のイメージを理由に、年上がいいと答えている人が多いことが見て取れる。この ことから、入学当初の恋愛対象は年上と答えた人は、当時、年上に対して「良いイメージ=憧れ」
を持っていた可能性が高いと言える。(ただし、経年と共に薄れていく傾向)
次に、この18名の「最初に魅力的と感じた人の学年」を見てみると、13名が3男と回答し ている。また、その内11名が3男の行動面を、魅力を感じた理由として挙げていた。つまり、
3男と答えた人の中の55%が年上に憧れを抱き、かつ3男の行動面を評価した人である。3男 を魅力的と答えた人の中で、過半数を超えているため、有力ではなかろうか。
このことから、年上への憧れを抱いている1女に対し、3男が執行部としての責任ある行動や 自分を大切にしてくれる態度を示すことで、その憧れとマッチし、3男はサークルに入りたての 1女にモテやすいと考えることができる。また、同期にはそのモテが理解できないという現象と も合致すると思われる。
14 以上より、この仮説を採用する。
4. 結論
「なぜ3男は、サークルに入ったばかりの1女にモテやすいのか」という疑問に対し、今回 の調査の結果導いたメカニズムは、サークルに入ったばかりの1女は年上に対して良いイメー ジ(憧れ)を持っており、3男が執行部としての活躍や頼られている状況を示し、さらに1女に 対して優しく接するという態度が1女のもつ憧れ(年上の男性像)にマッチし、短期間のうち に魅力的と判断させるということである。
もちろん、憧れがあると判断される人以外にも、最初にサークル内で魅力的だと思った人の学 年は3年だと答えた人はいたため、憧れがあることだけが全てではない。人が人を魅力的だと 思う要因は幾多にもわたり、唯一のメカニズムというものはない。しかし、本論文においては、
1女がサークルに入ってからしばらくの間持つ「年上への憧れ」は、サークルを運営する立場に いて、かつ新入生に対して積極的なケアをする3男を素敵だと思わせるのだということを微力 ながら証明できたと考える。
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章 ま と め
今回の調査や小森(2000)によれば、年上の男性が良いと思っている女性は多いようである。
日常生活の中でも、それは見て取れる事実であろう。その中でも、高校1年や大学1年、そし て社会人1年目のような環境にいる女子は、特にその傾向が強いと、筆者の主観ではあるが、
感じる。「恋愛するなら年上がいい」と思っている女子が経年と共に減少したという結果から、
あながち間違いというわけでもないのだろう。ということは、一年生という特殊な状況における 何かが、年上の魅力度の評価に影響しているのではないかと考えた。そんな中、今回は最も身近 な「3男マジック」に注目した。大学3年生男子が、大学1年生女子にモテるという現象である。
確かに、筆者の同期や1つ下の後輩にも、全くモテていなかったのに、1女からは人気だったと いう男性が何人かいる(いた)。そのため、サークルというコミュニティに絞って、どのような メカニズムが働いているのだろうかと疑問を持った次第である。
3男側の行動や能力、ルックスといった要因は、女子の学年を問わず共通に評価できるものな ので、評価する側の要因だと考えた。つまり、1女という状況における特殊性は何かと考えたと き、「不安」と「憧れ」という2つの要因が浮かんだ。確かに、そのコミュニティに慣れれば、
不安はなくなるし、同じ相手と日々を過ごせばその相手への憧れという感情は薄れるだろう。そ うして、今回の調査の結果、「憧れ」という要因が3男を魅力的に見せるものだという結論が妥 当だと判断するに至った。(課題については後述)
今回の調査はサークルに絞ったものであったが、高校入学時や入社時も同じことだと考える。
自分のまだよく知らない世界において、そこで活躍している人たちはさぞ優秀なのだろうという イメージを持つのは当然のことである。異性関係で言えば、「頼りになるんだろうな」「経験豊富 なんだろうな」という勝手な(良い)イメージを持つこととなる。そのイメージを持ちつつ、実 際に相手の活躍や信頼されている場面を見、さらにその相手に優しくしてもらえることで、その 相手の魅力度が自分の中で高く評価されるということなのではないか、というのが本論文におけ る筆者の主張である。
実践的な面で言えば、1年生がある程度の憧れを持っている間に(持っていない人には効果が 薄い可能性が高い)、執行部として活躍する姿と、3年間培ってきた信頼を見せつけ、さらに1 年生が早くサークルに馴染めるように優しくかつ積極的に絡んであげることで、3男はそのモテ の可能性を引き上げることができるのではないだろうか。ぜひ誰かに実践してみてもらいたいと ころである。
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章 終 わ り に
1. 課題
サンプル数の少なさもさることながら、アンケート内容には筆者自身疑問が残る。聞き方 や質問を増やすことによって、違う側面も見えた可能性が高いが、どのような質問をすれば 疑問に対する異なる視点のヒントとなるような意見が得られるのかについて、あまりに知識 がなかったことが悔やまれる。多少強引であり、仮説ありきの検証であることが拭いきれな い。
また、今回は筆者自身が所属するサークルの女性たちが被験者の大部分を占めているため、
得られたデータが特殊なものである可能性がある。
2. 終わりに
検証不足な点や至らない点は多々あると思いますが、目標であった「何かしらの説明をす る!」というのはなんとかクリアできたのではないかと思います。現象の説明というのは、
今後働く上でも大きな力となるはずです。まだまだ未熟ではありますが、この論文をファー ストステップとして、今後とも力をつけていきたいと思います。
最後になりましたが、当初こんなことは聞いて良いのかと迷うほどのプライベートな質問 にも関わらず、調査に協力してくださった皆様に厚く御礼申し上げます。
17 参考文献
<図書・論文>
・奥田秀宇 『人をひきつける心 対人魅力の社会心理学』 サイエンス社 1997.9.10
・齋藤勇 編 『対人社会心理学重要研究集2 対人魅力と対人欲求の心理』 誠信書房 1987.5.15
・中村雅彦 『対人魅力の形成』 西日本法規出版 2003.9.1
・大前泰彦 『恋愛感情と性格特性 中学生・高校生・大学生の比較検討から』
・小森愛子 『女子大学生の恋愛対象年齢と性格との関連について』
<ネット>
・ M&W Personal Consultant
http://www.mw-personal.jp/data.html
・ ゼクシィnet
http://zexy.net/al/msnhonne/vol61.html
・ 日本性教育協会 青少年の性行動調査 http://www.jase.faje.or.jp/jigyo/youth.html
・ 日経ビジネスonline
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20080115/144643/?rt=nocnt
18 付録(アンケート)
<1回目>
1年生当時を思い出して回答してください。
なお、結果に関しては卒論に使用するだけで、一切公言いたしません。
① あなたがサークルに入って、最初に魅力的だと感じた男性の学年は?
□ 1年生 □ 2年生 □ 3年生 □ 4年生 □ 5年生以上 □ 思ったことはない
② その感情は、サークルに入ってからどのくらいで抱きましたか?
□ 1週間以内 □ 1週間~1ヵ月 □ 1ヵ月~3ヵ月 □ 3ヵ月~6ヵ月 □ 6ヵ月~
③ その感情の継続期間はどのくらいできたか?
□ 1ヵ月以内 □ 1ヵ月~3ヵ月 □ 3ヵ月~6ヵ月 □ 6ヵ月~1年
□ 1年以上
④ 魅力を感じた際、どういった理由で感じましたか?(簡潔で構いません)
⑤ サークルに入るに当たって、対人不安(友達はできるか、など)はありましたか?
□ YES □ NO
⑥ 対人不安に関して、今現在はありますか?
□ YES □ NO
⑦ 入学当初、「恋愛するなら年上が良い」と思っていましたか?
□ YES □ NO
⑧ 今現在はどうですか?
□ YES □ NO
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<2回目>
① 対人不安があったという方を対象に聞きます。
あなたは不安下で自分から話しかけるタイプですか?話しかけてきてほしいタイプです か?
□ 話しかける □ 話しかけてほしい
② 入学当初、「恋愛するなら年上が良い」と思っていた方に聞きます。
それは何故ですか?(簡潔で構いません)