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高度好塩性古細菌

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Academic year: 2024

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1.はじめに

 酸素が枯渇した地下圏などの嫌気環境,タンパク質 が瞬時に変性する海底熱水などの超高熱環境,塩田に 見られる結晶するほどの高塩環境など,一般的生物の 生息環境とは逸脱した 極限環境 は我々の周りに数 多く存在する.こういった極限環境に極限環境微生物 が生息していることは周知の事実であり,様々な極限 環境微生物が今日までに分離・培養されてきている.

主な極限環境微生物として,メタン生成古細菌を含む 偏性嫌気性微生物,超好熱性微生物,好酸性微生物,

高度好塩性微生物などが挙げられる.極限環境微生物 はその生息環境から推測されるように,様々な可能性 と付加価値が付随した活性を有しており,これら微生 物資源を適切にかつ長期的に保存することは極めて重 要である.

 極限環境微生物の培養は,それぞれの極限環境の みで増殖するという特性故に様々な手間を必要とする が,その長期保存は真正細菌に用いられる L‑乾燥法,

凍結乾燥法及び凍結法によって可能である(Rudge, 

1984; 坂根ら,1996;森地ら,1977).ただし,それぞ れの極限環境微生物に合わせて,ちょっとしたコツと 工夫が必要である.これは,その極限な増殖環境が故 に,またはその極限環境微生物が位置する系統群に共 通で見られる性状が故に行われる処置であり,これら

処置によりその生残数は飛躍的に上がる.本稿では,

高度好塩性古細菌,好熱性好酸性古細菌,メタン生成 古細菌について,著者が経験等により知り得た保存法 の注意点を中心に紹介したい.このため,一般的な各 種保存方法については過去の優れた解説書(Rudge, 

1984; 坂根ら, 1996;森地ら,1977)や本連載の「第 1  回 放線菌の長期保存方法」(田村,2006)などを参考 されたい.

2. 高度好塩性古細菌の長期保存法

 高度好塩性微生物とは,飽和に近い NaCl 濃度を増 殖に要求する微生物のことを指し,系統学的に古細菌 と真正細菌に属する.その長期保存法は,浸透圧に留 意して高塩濃度環境で常時維持することが最も重要で ある.また,高度好塩性古細菌の場合は,強度の高い 細胞壁を持っていないために,物理的な傷害を受けや すい点も注意が必要である.高度好塩性古細菌は短期 間の保存であれば斜面培地で 4℃にて数ヶ月間保存可

能であるが, のように変異

が起こりやすい古細菌(Pfeifer  ., 1981)もいるの で,乾燥や凍結方法による保存が望ましい.

1)粉末セルロースを用いた L‑乾燥保存法

 保護培地としては,15%の NaCl と 2%の粉末セル ロース(ADVANTEC 社製,Cellulose powder C, 

300 mesh 以上)を含んだ SM6(表 1)を使用し,斜

第 3 回  

極限環境微生物の長期保存法

─高度好塩性古細菌,好熱性好酸性古細菌,メタン生成古細菌─

森 浩二

独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門 (NBRC) 

〒292‑0818 千葉県木更津市かずさ鎌足 2‑5‑8

The long-term preservation of extremophiles 

─ Halophilic, thermoacidophilic, and methanogenic archaea ─

Koji Mori

NITE Biological Resource Center (NBRC), Department of Biotechnology, National Institute of Technology and  Evaluation, 2-5-8 Kazusakamatari, Kisarazu, Chiba 292-0818, Japan

E-mail: [email protected]

連載「微生物資源の保存技術講座」

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面培地等で増殖した菌体を保護培地に懸濁して菌液を 調製する(Sakane  ., 1992;坂根ら,1996).高度 好塩性古細菌は,乾燥過程での浸透圧の変化や塩の再 結晶による物理的な傷害を受けやすいと考えられてい る.このため,乾燥時は急激な減圧を避けるととも に,乾燥物は粉末セルロースを添加することで大きな 塩の結晶が出来るのを軽減し,出来るだけアモルファ ス状態(非晶質)になるようにする.NBRC では出 来るだけ微生物の乾燥物がガラス表面に広がるように L‑乾燥標品を作製している(図 1).復元する際には,

物理的傷害が起こらないように,乾燥微生物に液体培 地をゆっくりとなじませた後,固形培地上に塗抹する.

2)スキムミルクを用いた乾燥保存法

 物理的な傷害を避けるためにスキムミルクを使用し て微生物を吸着させる担体を作製する.凍結乾燥に用 いるガラスアンプル内に 20%スキムミルク懸濁液 200  

m

を添加し,オートクレーブ滅菌後,凍結乾燥によ り吸着担体を作製する.これに斜面培地より保護培地

(SM6 より粉末セルロースを除いたもの)に懸濁し た菌液 100 

m

程度を染み込ませた後,真空乾燥する

(Tindall,1991).復元する際には,復水液を添加して,

スキムミルクの担体ごと寒天培地上に塗抹する.図 1

にスキムミルク担体を用いた凍結乾燥標品を示した.

3)凍結保存法

 斜面培地等で増殖した菌体を終濃度で 5%となるよ うに DMSO(dimetylsulfoxide)を添加した新鮮な培 地に懸濁し,液体窒素または−80℃の冷凍庫で保存す る(Tindall, 1992).10%グリセロール(終濃度)を DMSO の代わりに添加しても良いが,経験上 DMSO を保護剤に用いた方が生残率が良い.

3.好熱性好酸性古細菌の長期保存法

 好熱性微生物は,例外(Ward, 1978)はあるが,

基本的に増殖後 4℃に放置することで数ヶ月間保存で きる.また,長期保存に関しても真正細菌と同様な乾 燥法や凍結法の適用が可能である.一方,好熱性好 酸性古細菌の長期保存にはいくつかの留意点がある.

好熱性好酸性古細菌とは, 属に代表される pH 2 付近を至適増殖条件とする古細菌群である.酸 性条件下で旺盛に増殖するが,酸性条件下で低温に放 置すると,数ヶ月後には生存が全く認められないもの が少なからず存在するので(Segerer  ., 1986),で きるだけ早い段階で適切な長期保存法を施した方が良 い.

1)L‑乾燥保存法,凍結乾燥保存法

 保護培地として SM5(表 1)を使用する(Sakane  ., 1992;坂根ら,1996).著者の経験上,SM5 で 著しく生残率が落ちる好熱性好酸性古細菌も存在する が,保護培地として SM1(表 1)を使用することで改 善が認められた.保存時には pH を中性に保った方が 良い菌種が多いので,至適 pH 条件下で液体培地など を使用して培養した後,保護培地で細胞を数回洗浄す る.それから保護培地に菌体を再懸濁し,L‑乾燥ま たは凍結乾燥保存を行う.復元の際には,コロニー形 成が難しい微生物もあるので,液体培地でも培養した 方が無難である.

1 極限環境微生物の保存に用いられる保護培地(坂根ら,1996

SM1: Sodium glutamate · H2O, 3 g; Adonitol, 1.5 g; L-Cysteine hydrochloride · H2O, 0.05 g; 0.1 M Phosphate buffer  (KH2PO4-K2HPO4, pH 7.0), 100 m .

SM5: Sodium glutamate · H2O, 3 g; Adonitol, 1.5 g; EDTA · 2Na, 0.4 g; 0.1 M Phosphate buffer (KH2PO4-K2HPO4, pH  7.0), 100 m .

SM6: Sodium glutamate · H2O, 10 g; Adonitol, 1.5 g; Sorbitol, 2 g; Sodium thioglyconlate, 0.05 g; NaCl, 15 g; Cellulose  powder, 2 g; 0.1 M Phosphate buffer (KH2PO4-K2HPO4, pH 7.0), 100 m .

1 高度好塩性古細菌の乾燥保存

A:通常の L‑乾燥保存法によるアンプル,B:高度好塩 性古細菌の L‑乾燥保存法によるアンプル,C:スキム ミルクを使用した凍結乾燥保存法によるアンプル

(3)

2)凍結保存法

 細胞を pH が中性の保護培地(例えばリン酸緩衝溶 液)で洗浄した後に,DMSO を終濃度で 5%加えた中 性の保護培地に懸濁し,液体窒素または−80℃の冷凍 庫で凍結保存する.復元時に液体培地へ接種する場合 は,DMSO が増殖阻害を起こすため,融解後に培地 などで洗浄した細胞を植菌する.

4.メタン生成古細菌の長期保存法

 メタン生成古細菌は系統学的に にの

み存在する微生物群であるが,形態的,生理学的,生 態学的に非常に多様である.メタン生成古細菌の長期 保存が難しい理由のひとつは偏性嫌気性微生物であ ることによる.実際に,凍結乾燥の保存作業中または 保存後に酸素に曝露されると,メタン生成古細菌の生 残数が著しく低下する(森永,井上,1990).このた め,如何に嫌気環境を維持するかが最も重要であろう.

属や 属のように保存自体

が極めて難しいものもあるが,全てのメタン生成古細 菌は嫌気環境さえ維持すれば凍結法により長期保存可 能である.

1)凍結保存法

 メタン生成古細菌は,培養液の嫌気環境を保った状 態で遠心分離などにより培地と菌体を分け,保護培地 に菌体を再懸濁する.この際の保護培地には,増殖 培地に終濃度で DMSO を 5%またはグリセロールを 10%添加したものを使用する.これら凍結保護剤は,

あらかじめ窒素存在下で別途オートクレーブ滅菌して おく.嫌気環境を維持して遠心分離することは煩雑で 困難な作業であるが,メタン生成古細菌を保存するう えでは要となる.古賀ら(1992)は,嫌気グローブボッ クス(図 2)とゴムパッキンの蓋付きステンレス製遠 心管を使用した方法を紹介している.この煩雑な作業 について,NBRC では培養に供したバイアル瓶を瓶 ごと遠心することで保護培地との置換を容易に行って いる(図 3;多機能小型遠心機 Allegra X-12,ベック マン社製).保護培地に再懸濁したメタン生成古細菌 は,適切な凍結保存容器に嫌気環境を保った状態で分 注し,液体窒素または−80℃の冷凍庫で凍結保存する.

図 4 に凍結用の容器として用いられる,キャピラリー,

ガラスアンプル及びブチルゴム栓の付いた 2 m 容の バイアル瓶(日電理化硝子社製)を示した. NBRC で は図 4 のガラスアンプルを使用して主に凍結保存を 行っている.これはブチルゴム栓の付いたガラスアン 2 ヒラサワ社製嫌気グローブボックス

3 ベックマン社製多機能小型遠心機

4 偏性嫌気性微生物の凍結保存 に使 用す る容 器.A:ガラス キャピラリー,B:ガラスアン プル,C:小型バイアル瓶

(4)

プルをあらかじめ窒素置換・滅菌処理を行い,保護培 地に懸濁した菌液をゴム栓越しにシリンジを用いて分 注し,ガスバーナーにより溶封したものである(図 5).

図 4 で示したキャピラリーを用いた一連の凍結保存操 作は,Hippe(1984)によって詳しく紹介されている ので,参考されたい.小型バイアル瓶容器による凍結 保存法は特別な機器を必要としないので,メタン生成 古細菌を培養できる研究設備があれば,簡易に適用可 能である.しかしながら,凍結によるゴム栓の劣化か ら嫌気環境が維持できない可能性もあり,半永久的に 保存するには向かない.Winter(1983)は,この小 型バイアル瓶を更に窒素ガスで満たしたガラスアンプ ル内に入れて長期凍結保存する方法を報告している.

凍結保護剤としてグリセロールよりも DMSO を使用 した方が経験上復元率が良いが,DMSO は増殖阻害 を起こすため,復元の際には DMSO を除去する処置 が必要である.

2)L‑ 乾燥保存法,凍結乾燥保存法

 メタン生成古細菌の L‑乾燥や凍結乾燥保存法は,

一部の菌種で行われた実績があり,可能であることが 確認されている(Iino & Suzuki, 2006;森永,井上,

1990).保護培地としては SM1(表 1)を使用するが,

保存作業中は嫌気グローブボックス(図 2)を使用す るなどして,終始嫌気環境を保つことが重要である(森 永,井上,1990).現在 NBRC では,Iino ら(2006)

の方法を使用して,NBRC が保有する様々なメタン 生成古細菌に L‑乾燥保存法を展開している.これに

より,L‑乾燥保存法のメタン生成古細菌への汎用性 が確認できるものと期待している.

5.おわりに

 生物がとても生息できないと考えがちな様々な極限 環境にも,我々の想像を超えた極限環境微生物が生息 しているかもしれない.その極限環境に微生物が生息 しているか否かについては,16S rRNA 遺伝子などの 分子指標を精査することで可能であり,系統学的な知 見を得ることはさほど難しくない.しかし,その検 出された微生物の獲得となると確立された手法など無 く,様々に創意工夫をこらした培地と培養方法を展開 し,可培養化を成し得る.新たな微生物獲得は微生物 の分離に携わるものにおいては至極の成果である.し かし,死滅してしまっては全てが水泡に帰すこととな る.植継ぎでうまくいっている場合はついつい忘れが ちであるが,リスクと安全性を考慮して,できるだけ 早い段階で何らかの保存処置をすることが望ましい.

何かあってからでは遅いのである.

 新種提案の際の基準株でなければ微生物の公的機関 への寄託は少なく,研究成果は研究者自らが管理して いるのが現状であろう.このため,本稿は個々研究者 らの微生物保存助長を念頭に概説した.一方で,その 研究が終極に達した段階,または何らかの理由により 自身の管理が出来なくなった段階で,公的な機関に貴 重な微生物資源を預ける習慣も遺伝資源とその英知を 保存するうえで重要である.

謝 辞

 極限環境微生物の保存において,終始ご助言,ご支 援いただいた坂根 健博士と伊藤 隆博士に感謝いた します.

文 献

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森永 豪,井上耕一(1990).メタン生成細菌の乾燥 窒素ガス

5% DMSO 又は 10%

グリセロールを含んだ 保護培地で懸濁した菌液

凍結保存 ブチルゴム栓

5 メタン生成古細菌の凍結保存法

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  (担当編集委員:岡根 泉)

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