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2. 大気圏と熱収支

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地球惑星科学II第2回 2017年10月12日

2. 大気圏と熱収支

2–1 惑星表層の熱収支の基礎

放射過程の重要性

惑星表層の温度は,基本的には太陽光の吸収と,惑星から宇宙空間への熱エネル ギーの放出の釣合によって決まる.ここで重要なエネルギー輸送の過程は,電磁 波によるエネルギーの伝搬である.これは放射過程と総称される.

放射という用語は,下記のようないろいろな意味で使われるので注意されたい.

物体が電磁波を放出すること(原義)

物体から放出された電磁波

放射過程(「過程」を省略したい場合)

同義の言葉に輻射という用語もある.

放射と物質の相互作用を理解するには,電磁波を時間変化する電場として考える.

放射の物質による吸収は電場が物質中の荷電粒子を運動させ,物質の内部エネル ギーが増すことにより起こる.一方,物質からの放射は,物質中の荷電粒子の運 動によって時間変化する電場が生じることにより起こる.このように吸収と放出 は表裏一体の関係にある.

熱放射

有限の温度を持つ物体は,熱放射を放出する.これは物体を構成する荷電粒子が 熱運動をし,それによって電磁波を放出することに起因する.

あらゆる波長の電磁波を吸収・放出可能な理想的な物質(これを黒体という)で は,その表面から絶対温度T の4乗に比例する.

温度T の黒体が単位時間単位表面積あたりに放射するエネルギー=σT4 (1) ここでσはステファン・ボルツマン定数である.

σ =5.67×108 W m2K4

(2)

これをステファン・ボルツマンの法則という.

熱放射は様々な波長の電磁波の重ね合わせからなる.波長毎の強度分布は温度に よって変化し,黒体放射の強度が最大の波長(ピーク波長)λmaxは絶対温度に反 比例する.

λmaxm] =2898/T[K] (2)

これをヴィーンの変位則という.

太陽の表面温度に近い6000 Kの黒体放射のピーク波長は約0.5 µm,地球の平均 的な地表面温度に近い300 Kの黒体放射のピーク波長はおよそ10µmである.こ こから太陽が放つ放射を短波放射,地球や惑星からの放射を長波放射と呼ぶ1.短 波放射のエネルギーは可視光(波長0.4-0.7µm)に集中している.他方,長波放射 のエネルギーは赤外線(波長>0.7µm)に集中している.

平衡温度と有効温度

惑星の放射特性が黒体に等しいとして,吸収した太陽放射と釣り合う温度,Teq,を 平衡温度という. 平衡温度はエネルギーの放出と吸収の釣り合いを表す次式を満 たす.

R2σTeq4R2(1−A)F (3) ここで,Rは惑星半径,Aはアルベド(太陽光の反射率),Fは惑星軌道における太 陽放射フラックスである.

太陽の光度(単位時間当たりの全エネルギー放出量)をLとすれば,太陽の中心か らの距離がDの位置での太陽放射フラックスは

F = L

D2 (4)

と書ける.

地球軌道(D=1.5×1011 m)上での太陽放射フラックスは

F=1361 W m2 (5)

である2.この値を太陽定数と呼ぶ.

太陽放射フラックスは太陽からの距離の二乗に反比例するので,金星 (軌道半径

0.7 AU)では太陽定数の約2倍,火星(1.5 AU)では約1/2になる.

惑星の総熱放射に等価な黒体放射強度を実現する温度,Te f f,を有効温度という.

R2σTe f f4 = [惑星の総熱放射] (6)

1短波放射,長波放射をそれぞれ太陽放射,惑星放射ということもある

2

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地表面温度と平衡温度・有効温度の大小関係

代表的な惑星の地表面温度(Ts)と平衡温度と有効温度の大小関係は次のようになっ てる.大気の厚さや惑星のタイプの違いを反映する.

地球:Ts(288K)>Teq(254K) =Te f f: H2O,CO2の温室効果.

金星:Ts(737K)>>Teq(232K) =Te f f: CO2の強い温室効果.

火星:Ts(210K) =Teq=Te f f:温室効果弱い

木星:Te f f(124K)>Teq(110K): 内部にも熱源.

地球型惑星に共通した特徴に平衡温度と有効温度の差がないことが挙げられる.こ れは惑星放射は日射吸収の再放出でほぼ決まっており,惑星内部からの熱流が無 視できることを表している.

2–2 熱収支におよぼす大気圏の役割

温度の均質化

大気のない岩石型天体(月や水星など)では,太陽放射が直接地表を加熱する.岩 石は熱を伝えにくいため,日の当たり方によって大きな温度差が生じる.たとえ ば月では最高温度が390 K (日射がもっとも強い地域),最低温度は70 K以下であ る(日射のない十分に冷えた地域).

大気が存在する場合は,大気の水平運動によって高温域から低温域に熱が運ばれ,

表面温度の差が小さくなる.平衡温度は,大気の熱輸送の効率がよく惑星表面の 温度差がほとんどないことを仮定して求めたものである.

大気の熱輸送は大気が厚いほど効率が良い.地球(大気圧=1気圧)では表面温度が 184Kから330Kの範囲にある.金星(大気圧90気圧)では,表面温度の地域差は ほとんどない.

なお惑星表面温度の一様性には,自転速度や地軸の傾き,海洋の有無なども影響 する.

(4)

アルベド

大気が厚いほど,惑星のアルベドは高くなる傾向がある.これは雲粒,エアロゾ ル,気体分子に太陽光を散乱する性質があるためである.

地球表面における代表的なアルベド値 厚い雲 0.6–0.9

薄い雲 0.3–0.5

雪氷 0.4–0.95

水 0.03–0.1 (太陽高度の低い場合を除く)

植生 0.16–0.26

砂・土壌 0.05–0.45

Oke (1992), Ahrens (2006)に基づく

地球表面の7割を占める海水のアルベドは小さく,地球の平均アルベド0.3には雲 の寄与が大きい.雲量やそれによるアルベドの決まり方には未知な点が多い.

温室効果

大気成分による惑星放射の吸収と再放出により,平衡温度よりも高い地表温度が もたらされる現象が温室効果である.地表温度が上昇する理由はいくつかの説明 の仕方がある(からくりは一緒).2つ例を挙げると

地表が平衡温度の場合,地表が放出した長波放射が遮られ,そのままでは太 陽放射の吸収した分の熱をすべて宇宙空間に放出できない.宇宙空間に釣り 合うだけの長波放射を宇宙空間に放出するには,地表面温度がより高い必要 がある.

地表が太陽放射だけでなく,大気が下方に放出する熱放射も受けるようにな る.これらの総和と釣り合うだけの長波放射を放出するため,地表面温度が 高くなる.

温室効果が働く場合も,惑星が吸収する短波放射と惑星が宇宙空間に放出する長 波放射の大きさが,基本的には釣り合っていることが重要である.

地球型惑星の大気の温室効果ガスとして重要な化学種は水蒸気と二酸化炭素であ る.これらの分子は電気的に分極しているため,広い波長範囲の赤外線を吸収・放 出する性質がある.他方可視光はこれらの分子にはほとんど吸収されない.

等核2原子分子の窒素分子や酸素分子は極性がないため,可視光も赤外線もほと

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地球大気圏の熱収支

太陽放射から惑星放射へエネルギーが流れると考えると捉えやすい.現在の地球 は徐々に温暖化しており,地球へのエネルギー流入の方が,地球から宇宙へのエ ネルギー流出をほんのわずか上回っている.

340 100

大気による 吸収

潜熱 顕熱

熱放射

(温室効果ガス・雲)

239

398 342 185

161 24

84 20

短波放射 反射 長波放射

潜熱 顕熱

熱放射(地表)

79

短波放射吸収

熱放射

(温室効果ガス・雲)

直達日射

図2.1 現在の地球大気圏の熱収支.数字の単位はW/m2. Wild 他 (2013)を改変.

問題

2.1 太陽の表面温度を以下の手順で推定せよ.

(1) 太陽の光度[W]を太陽定数と地球の軌道半径から求めよ.

(2) 太陽半径(7.0×105km)と光度から,太陽の単位表面積・単位時間あた りの熱放射量[W/m2]を求めよ.

(3) ステファン・ボルツマンの法則が成り立つとして,表面温度 [K]を求 めよ.

2.2 金星の有効温度をもとに金星のアルベドを推定せよ.

2.3 地球がすべて雪氷に覆われたとする.その時の平均表面温度[℃]を推定せよ.

ただし雲によるアルベドは無視する.また大気の温室効果による温度上昇は 現在の地球と変わらないもとする.

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