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福島盆地における土地利用
♪一耕地作物の分布を主として一
渡 辺
四郎
序.
3.地 形.
b.環境としての都市的要素・
1.耕 地.
鵠.水田. b.畑、
2.水田利用.
岱.水稻作. b水田裏作。
3.畑地利用.
巳.作物分布. b・園芸作物 4.むすび. 一地蚊区分一
序, 福島盆地の土地利用につのて講述し・それ の地域構造を解明する一階梯とする.福島盆地は東 山道に画する内達的な氣候を持ち・暖地性・窪地性 (1)
の両青果物を共存させる幅のある氣候環境を持つ・
從って,この環境下に行われる土地利用には多彩な 遜を予想できる.資料はことわりのない限り昭和22 年農業センサスに依った.
第1図 、、t
ノ下ヘレr騨1
地形 ノ象ご二4・,が
、〜髪多≧さ分凍 ゆノ1・ 1 〃1
身一@ ノピ e:ノ板酬〃り
f:松明扇賦土倉面 j:摺上川3巳濫原
9沃酬 (土煙名註記哩看)
孔:荒 1須川勧
i:阿武眼川氾濫原
亀地形.福島盆地は東北日本に発達する地溝盆 地の一つであり,その地形につ・・てほ幾多の説明,
(.)
報告がなされているが,盆地宋地形は複雑であり,
土地利用に影響する瓢も大きいので・盆地宋地形の・
大要につ、・て述べたい.盆地床は扇状地と段丘の発 達を特徴とする.奥羽中央山腹より流下する各河川 は各々扇状地を作るが,これ等の扇状地は殆ど完全 に結合し,合流扇城地を作る.阿武隈川は盆地中央 をンやや東に偏しながら南北に貫流する.阿武隈川 を境として盆地の東側には扇勝地が発達せず,西部 に発邊…する扇状地群に文寸歩ヒされるべき堆積面は山麓 に僅かに附着するにすぎない.阿武隈川は各扇状地 の末端地を下流部分より浸蝕し・且つ・断層運動も 加はつて,段丘が作られた.阿武隈川の氾濫原は・
盆地東北部に広い面積を持つ.阿武隈川の河身よ り題たった部分には細い泥質物資が堆積する、・そ の部分は後背灘地に憲似し・河流に孝行する・後 背渠地及びこれに類似する地域は盆地の東側に広 く,西側には狭く,非対穆である.氾濫原の発達 は盆地東北部を主とするが,その延長は南部の福 島市の郊外にまで面領を小さくしつつ延長する。段 丘の発達は阿武隈川の下流である東北部に著るし い.産ケ沢,藤田面等の盆地北部の扇状地末端に作 られた段丘崖iは比高が凡そ20米に及ぶ.これより南 部の上流に進むに從って10−5米程の高さとなり・
福島市の南郊にて1胃失する、從って・盆地南部にあ る須川扇状地の末端には段丘が硝らかでない、各支 流は阿武隈川の河床の水準を基準面として扇状地面 を開析し,段丘と氾濫原を作る.特に,段丘崖の発 達が著るしい北部の扇面には崖端浸蝕谷が典型的に 形成され,扇面の開所は進んでいる.摺上川は,支 流の中,最も大規模であり,飯坂町南部で小川扇状 地を縦断する部分の段丘崖は20米をこえ・段丘崖下 には相当面積の氾濫原を展開する.産ケ沢川も前者 よりは小規模ながら桑折町西部に10米をこえる段丘 崖と氾濫県を作る.盆地中部より南部に至るに從 い,各河川の扇面開析の度合は少く,八反田川・松 川が作る段丘及び氾濫原は小規模である・須川・荒 川は下刻しつつある段階とみら才1る、かくて・盆地 南部は開析の進まない扇面のみを持っている・盆地 南部より東部の盆地壁は阿武隈山地の一部であり・
渡辺:福島盆地における土地利甫 49
山地の比高は比較的小さく,埋槙された谷底李野は 狭く長く・盆地底より山中に進入する.その狭長な 谷底面は盆地形態を複雑にする.北部より西部の盆 地壁は明らかな臨暦崖地形であり・急峻な斜面を持
づ.但し・牢沢山には階段斌に小丘陵が附着し.
し き 厚樫山より藤田町にかけては古扇状地面が孤立丘陵 化して残り,飯坂湯野町附近の高位面,安養寺部落 の高位面等と共に盆地壁地形に憂化を與えている.
第1表 福島市の糞尿汲みとり状態 (1950)
3:福島市の市街中心からの距離.
Q;疏蘂地域. ・
汲とり率=汲みとりに行く農家数 X100 全 農 家 数
回数は月李均にて示す,
a.
3km
以下
3−4
km
4−5
km
「 1
5−61
ド
km1
6_7 1 1 km I i
部落名 五十辺
渡 利
八木田
森 合 李 均
部倉 岡吉
平 均
島子出 岡丸成
李 均
口寺谷
野山上世
汲みとり 率(%)
8213 76一了6
69
Gり5P4
59
6一〇3 353
ヶ数とみ.汲回9653
7.3
83
5.0
441
36 3.1
0り8 611 422
O
O
李 均 組 2.8
向鎌田
瀬 上 挙 均
60 25
4 3 36 3.3
O
部落名 方木田 大挙寺 下野寺 泉
岩田寺 井倉 黒仁小 森渡又 鳥沢 大下南
上馬Y渡
笹木野
南矢野目
り︶と%み︵汲率
80678835
38
75一
飢38認
50
箆
・汲みとり 回 数.
8840 1 333 2﹄G4 333
北矢野目 22 3
(聴きとり調査によるため数値ほ大略の値である)
(五十辺は後日の聴きとりによれば90%をこすそうである:福地巖氏による)
b、環境としての都市的要素.盆地の南部には,最 も大きな脛済的中心である福島市があり,更に4粁 ないし8粁の間隔をおいて・人口1万以下の瘤村都 市が合計7個存在する.これ等の都市及び町は附近 農村の土地利用に直接間接に影響を與える筈である 都市と農村との直接的結合を示す一指標として,都 (4)
市におけろ糞尿の汲み取り状態が普通に採用され
る。本論にても,福島市その地の影響を強くこうむ る特殊な環境にある地域を表示するために都市糞尿 の配分状態を調査した.調査は各部落箪位にカード による聴き取りによった.各部落苺に,全農家に対 する汲み取りに行く農家数の割合を%で表わし,こ れを汲み取り奉とし 且つ,それ等の農家が月李均 に汲み取る回数も求めた.先つ・福島市を中心とす
即 蘭島大学学芸学部論集第5号 1954−3
る場合,福島市から遠ざかるにつれて汲み取り摩及 び回数は減少し,6−7粁圏外にお) て,汲み取り 作茉は行われなくなる.しかし,汲み取り圏の形は 不規則であり,北東方向の阿武隈川澹)・地域には著
るしく延長している.町の糞尿は・大部分・その町 内の農家が汲みとるので汲み取り地域は明らかでな い.市街地の人口が8000余の保原町について調査し たが.全戸数の約80%を同一行政地域内の農家が処 理し,残りを他村より汲みに来るが,これも距離的 には2粁圏内であり・保原町の糞尿汲みとり圏は家 屋密集地域より凡そ2粁圏内にあるとみられる.こ の状態を他の町についても想定し鴛るが・町ほ福島 市と異なり,その都市的営力は小さいので・その糞 尿汲み取り闇が土地利用上に持つ意味は福島市の場 合程は強くない.又,地域外の都市(市場)のもた らす影響を考える場合,影響の度合を交通的事象に 求めるのは有効であるが,福島盆地の場合は鐵道,
道路がよく整備され,出荷する場合の運搬機関であ るトラック,オート三輪車の能率からみ〜しば,i盆地 内における鉄道からの距たり上の差異は殆ど潰去さ れる.從って・地域外に対する場合は・盆地内の各 地域が持つ條件は殆ど同じと想定する.
1).耕地.盆地床の耕地化は進み,5万分の1 地形図の計測によれば・1方粁につき・
獺(響籍・1・・)が5・の勲おむね魏の
輪廓に一致する.10の線は盆地壁に上る,盆地中央
の扇端部には耕地度が殆ど100に達する地域もあ る.耕地総面積が約14400町に及び,水田は約6.824 町にて全体の約47.7%,普通畑は約4.532町にて約3 1.4%,樹園地は3,040町にて約2L2%となり・水田 は多いが50%をこえず,畑地が比較的多く・盆地内 の土地利用は多様な要素を持つ.
a).水田.水田は主として盆地西側の扇状地上 にあり,畑地は阿武隈川,摺上川等の氾濫原に主と して分布する.但し,西部の松川,天戸川扇状地の 扇央部は完全に畑地であり・又・盆地東側の後背漏 地的地域は水田となり,水田,畑の主な分布地域と 隔離する.易駄地地域にほ摺上川より湯野町地内に て引水し,齢,産ケ沢,藤田等の盆地北部扇面を 東西に流れる西根堰,小川面を流れる小川堰・八反 田面を灌慨する菓子堰等があり・これ等の扇面は水 田度(奎魂xl・・)が5・をこえ・80以上の部分 も広)・.松川面は湧泉幣より下流の末端部地域が水 田度50以上の水田地域となるが・上流には全くの水 田皆無地域が拡がる.荒川須川面は未だ河川の下刻 が進まないため,河流からの引水は容易で全面積が 水田化され,全地域が水田度50以上の線で囲まれ る.末端部は特に水田度が高く・80以上の地域が 広い.松川,須川扇状地間にある天戸・白津川面 は土地が高燥であり,水田ほ見られない.盆地 東 北部り梁川町より保原町を結ぶ線より東の山麓に至 る間は低李な泥質の地域であり,後背灘地に類似し・
完全な永田地域となる.1粁李方
第2図
太田占有度 盛
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80吸以上
50−80吸 30−50〃
20−30〃
20咳以下 0 2 ヰ 6 8K肌
一
〜
軍位の計測では水田度が60−80であ る、この系統の水田は東麓に沿い・狡い範囲ながら福島市の東南にまで 延長する.この水田地域を阿武隈川 より立子山村地内で分水した東根瞑 が灌漑している.
b).畑.畑は水田とは文寸照的な 分布を示し,阿武隈,摺上川の氾濫 原及び松川扇状地の上流部地域にお いて畑地度C璽購xl・・)5・以上
となり,80以上の地域は阿武隈川沿 いに盆地東北部の氾濫原内にのみ拡 がる.福島市東北郊の阿武隈川氾濫 原地域は畑地度80には達しないが,
その集合状態は景観的に東北部氾濫 原に劣らない.畑を樹園地,普通畑
渡辺:福島盆地における土地利用 51
と分け,樹園地を更に果樹園,桑園と区分して分布 をみる.
イ.果樹.果樹菊の分布核心とも言うべき地域は 1方粁につき(15−20)町の果樹園を持つ松川扇状地 の扇央部及び摺上川り氾濫原下流部二あり・この二 地或を核心とし,果樹は南北にのびる.摺上川より 南部は水田地域であるにも拘わらず,果樹園は全面 的に水田中に進出し,小川,八反田窮状地一幣に拡 がろうとしている.北部に向っては・水田地域をさ け,…つは摺上川より飯坂湯野町附近の高位面及び 山腹に上鮎山腹沿いに差合村,桑折町をへて盆地 北端二達している.更に,一つは阿武隈,摺.t二の合 流点に突出した愛、ll山より高子沼をめぐる上保原村 地内つ,山地部分を経て,伏黒村のある濯濫原に出
て,北に拡がるがその大部分は伏黒村内に止まって いる・更に,別の系統は盆地北部に元達する段丘崖 上にある比較的函嶺の渋い果樹園である.伊愚桑 折をへて伊達晦大枝,大木戸村二達するもので,
この地域は福島盆池における果樹栽培の発祥地の一 である.松川扇状地を核心とする果樹地域は北は松 川をこえて,大笹生,笹谷村,福島市清水等に拡張 したが未だ摺上川を中心とする果樹園とは結合しな い.西南方面へは天戸白津川面にと拡大して。・る が,荒川をこえて,盆地南部の荒川須川面には拡が らず・且つ・松川面の湧泉幣より下流にも拡がらな い.融ち・この方面でも水田地域をさける・荒川,
須川面には果樹がどの扇状地よりも少い.特に,北
部の諸扇面が段丘崖.しに果樹を持ち,立体的景観を 持つのに対して,南部のこれ等の扇面は果樹もな く・段比量もなく,極めて低至且つ箪調な景観を示
す.
・).桑園.果樹園地募が盆地中央より周囲に進 出するのに対して,桑園の分布核心というべき1方 粁につき20町以上の桑園を持つ地域は盆地東北部の 阿武隈川1じ濫原内にある.氾濫原に進出した果樹園 の先端を押える形であり,阿武隈川の両岸にわた
り,1方粁二つき15町以上の桑園を持つ地域が東北 部の氾濫原全域に拡がっている.果樹園が多い摺上 川,松川面地球は桑園が僅かに1方粁につき2、5−5.(}
町の密度とな切福島市附近の水田地域と共に盈地 内での密度1亡最も低い.これに二上ヒして,南の荒川須 川面は水田が卓越する地域ながら,桑園は1方釈に つき1α町以上の密度を持ち,桑園密度では格段の差 であるが,桑園が比較的多い地球とし.ては,面積的 に盆地東北部の氾濫原地域に匹適する.小川扇面の 扇央部,産ケ沢扇面より存沢山麓にかけた地署にも 面積は小さいが,同程度の密度を持つ桑園地曳が あり,通聾すれば,桑園は果樹の普及が充分でない盆 地縁邊部に立地する,かくて.桑園は盆地の東北,
西南の両端及び山添い地域を占め・盆池中央を果樹 にゆづり,盆池の観辺に退いている.
ハ). 普i通畑、著通畑は前二者と比べて普蓮的で ある.普通畑密度が1方粁につき(5−10)町の地賊 ほ福島重西方の松川,須川豪面の下沫部=僅かに昆 出されるにすぎず,他の地域はこれ
第3図 耕地 熱 蕎
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以上の密度を持つ・1方粁につき25 町以上の普通畑を持つ分布核心とも 言うべき地域ほ福島市東北郊の阿武 1昊川氾濫原及び,果樹,桑園の核心 地とも重なりながら摺上川池濫原,
松川扇賦地,盆地東北部の阿武隈川 シ[三濫原等に集まる.これ等の地或1よ
1方粁につざ(25−40)町の密度を持 つ.権高市東北郊の普通畑地域のみ が果樹,桑園の卓越しない純然たる
=普通畑7 卓越地である.
c).要約 以上によ9}水i日,畑地 域は明らかな分化をみせ,それは扇 厭地と注濫原との相違にゴ・として対 応する.但し・氾濫原内江差)つても 後背熱地ほ水田となり,又窮状地易
52 福島大学学芸学部論集第5号
央部には畑が立地する.畑地域内において1お普通 畑,果樹園,桑園の分布接心というべき地或は前者
より福島市東北郊,摺上,阿武隈川の合流意地咳,
東北部氾濫原にと各々立地位置を異にし・見事な立 地的分化を遽げている.次に,耕地の利用状態を観 察し,地域的分化の事実をより明らかにしたい・
3).水田利用.亀求積作.1蛤3年より,42年に 至るIGケ年雫均によると,米の年間総収量は約9万 石であり,盆地内の人口約24万人に供給し得る量は 1人当り約4斗にすぎない.水脹Z 生産成績を農林 省の作製による水稲・小麦の反牧人及び偏差係数表 (5)によってみた 町村別の平均反駁及びその侃差係数 の組合せにより,水琢作に関する表の嫌な類型を町 村軍位に定め,その配置をみた.
第2表 水稻作成績に実る市町村の分類 (]926一 40)
1型反収〔石)偏差係数; 町 村 名
}
湯野.東場野.伊達森江
A2 14以鴨,縁蕪(雑艀
1 大枝.藤£.大二目睫合 B2、0_2.314−20桑折.半田.李田.鳥川二 野田.保原.留山(福島市)
レ
C・.7−2.32・端し摩憲伊塗擬果富鞠梁
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膿陥縮瀞局・全国市醐1纏反当糧
年次攣動計算表
(昭和元年一15年ヲによる.
A型には蒼扇面り下、市部にある町村の多ぐが廃す る.D型の分布範蟹ぱ西部Z 扇状地(小フII・八反 田,松川,天戸川,荒川各扇状地)の扇頂部及ぴ山 添いの村に限られる.Bl巴は扇次地上のA.D両型 地域の中間に濃在する C型にに:藤田面の扇頂部に ある大木戸村及び東部つ氾盈京地にある梁川町,譲 本,上保京村等が入る.さて,A,B型の位置する 各扇端地域は北より,西根属小川 島粟子薯等の 灌飢水路を利吊し,叉は湧泉轡よりの水を用い,灌 慨水にはさほどの不便を畳えない.D型に入る水田 地域は各扇状地の接合部に位置し,この地咳の扇面 開所は進まない.從って,河川は自由に流路を曼 え,大雨があれば盆池内で洪水をひき起し易い地域 の一つである.又,総(の付が山麓に近く,沢水が
19肘一3
灌漑水に用いr)れ,水温が底く,特に谷底亨野の水 田は低熱である.C型地域の中・藤田面扇頂部にあ る水田は80米等高線にほぼ孝行する西根堰より高位 置にあるため,この水路を利用できず,灌諏kは專 ら貯水池に頼っている.濯濫原の水田は本論に用い た資料の統計年次には一山嶺を鋲てて流れる広瀬川 より分水した砂子禧によって水を求めたが,水源が 小さく,且つ,遠距離水路のため水量は少く,谷頭 (6)
に設けた貯水池に頼る度合も大きかった.かくで,
水欝作の成否は特異な灌漑方式と関係し合い,各々 が特質ある部分地域を形成する.
b).水玉裏作.イ・裏作水田率.二毛作水田面領 は盆地全体として,約1560町に及び,水田全体の約24
%にあたる.裏作水田が1方粁にっき15町以上にな
る地域醐寸別統計にて裏圃讐響・…)が
(30−50)%に達する地或とほ虻一致し・裏作水田 の普及地或といえる.この地域は摺上川以北の諸弱 面の下流部,段丘崖ドの一部及び福島市南郊の水田 地域にあり・この部分を核心とし裏作は一応盆池内 全体に行われるが・その普及状態は縁邊に行くに従 い・漣家庭下し・西部易伏地の易頂部においては裏 作水田が1方粁につき2.5町以下となり,裏作率は
(10−20)%に止まる.廓ち,各扇面の扇端部に裏 作率は最も高く,西部の扇頂部に最も低く・扇面の 中間地域,盆地東側の氾濫原上の水田は裏作普及の 状旗も中庸である.かくて・裏f乍寧の高低は水稻作 成績の良否とほ穿一致した配置をとる.
ロ.裏作作物.裏作作物り主な者は麦類,泊1肇,
レンゲ草, 甘藍等であるが, 麦1試が量的1二最も多 く,油菜,レンゲ草がこれに次ぎ,この外は幽く僅 かである.酸類は裏作ニドが高い扇端部二おいて圧倒 的に多く,この地或では裏作面積の60%をこえ,一 部では80%をもこえる.婆蔑が裏1乍面積の・0おをこ
える地域は八反田面以北の殆ど全扇状地1二拡がる が,松川及び荒川須川面では下流部地域にのみ限竃
される.氾濫東上の水田でも婆類は40%を上下して いる.これに対して.レンゲ草は荒lll須川面の窮頂 部,八反田面の扇央部,盆池東北の氾濫県の一部♪
南部の各氏平野等二おいて60%をこえる卓越さを示 す.油菜は北部り諸扇面,東北部わ氾濫票等におい て,特二卓越する外はレンゲとほぼ同じ配置を持 ち,盆池豫辺に多い.即ち,定額が盆地中央部にあ るのに対して,油菜レンゲは縁辺部にあって裏作率 の低い地或とほぼ一致する.
渡辺:福島盆地における土地利用 53
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第4図 r\、/
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目顯聯6鰍
[萱]レシゲが 40験
一一一一
∩㌧ つ﹄ ←・ ∩b Kれさて}麦類は油菜1こ比して2倍以との肥料分を要 し・集約的管理を必要としている・一方・レンゲは 飼料用及び地力維持を目的とし,その栽培目的の一 つには肥料分を自らの脛営内に維持しようとするの は確かである.この事は萎垣一1等の穀物生産を行った 場合に,経営体外に持ち去られる肥料分を安償1こ他
より補充し得ない環覧があるのを示す.妾顛が多い 地域には福島市を始め,瀬⊥二,伊達,桑折と町が連 なり,人口の密集地である.福島市周辺の委卓越旭 は同市の糞泉汲みとり圏内にある.かくて,萎の三1{
越地は都市の糞烈汲みとりに示される様二郡市的営 力が滲透し易い地或である かくて,裏作水田苓 及び竣握:,レンゲという裏作作物Z)差異は肥料投 下量,管理等二関する集約度の揖違であり,且つ
,都市的影響の強弱を示す一指標である.
4)畑地利用.a.作物分布.畑作物を主食用作 物,園芸作物,工芸作物と大分別し,その分布をみ
る.セ食用作物としては麦類,甘藷,馬論著,雑穀,大 豆を謀り,園芸作物エは蔬菜及び果物,工芸作物に し うは桑,タバコ,油菜,ゴマ,コンニャクを含めた 町
村別の資料による各作物の作付面積を5万分の1基 図上の畑地度分布図に黙霜法にて表わし,1惣方艮
、にて集計し,各方瞑丙こおいて,三作物遠類の作付
比率(君鵜辮麟xl・・)を崎タヒとして求
めた.この数値は一走作物が畑作物中に占める比重 を示し,土地利用上の主眼がどの作物にあるかを示 す.まづ,最も全地域に普及し,作付率も高く,経 営の主眼がおかれていると認められる作物はキ食用
作物である.主食用作物が畑作物全 体の40%以下となるのは果樹園の 多い松川扇央部・摺上・阿武隈合流 点及び普通畑の多い福島市東北郊の 比較的に狭い畑地咳のみにおいてで ある.但し,この地象といえども30
−35%の値をもつので福島盆地の畑 地は利用面債の殆ど寧ば近くをキ食 用作物に用いられるのが普通であ る.この特質を基礎として,更に,
残りの面積を主食用作物に用いる か・叉は園芸工芸作物に用いるか によって各地域の特性は定まる.
從って,各地域の特性をみるため には,盆地全般に共通する主食用作 物の作付華40%を除いて比較するり が蓮当である.具体的には集計方眼 を箪位地域とし・各方眼肉の主食用作物り作付率か
「)40%をひき去り,その数値と他の作物の作付率を 比較した.この様:こして,各方限内で最も比率の高い 作物を以て・その地境の代表作物とした.この結果 各作物の分布ll尺態がよく整理される.主食用作物が なお・最も高い比率の地域は非常に狭くなり,福島 市西方の水田地域より崔合,壼ケ訳,藤田面の一 部氾監1票の後背熱地的地域の水田地域等の畑面種 が !・さい部牙のみとなる.園芸作物が最も高い比率
となる地域は盆地中央で盆池を東西に横新し,摺上 川氾濫原,福島市策北郊,東北部正濫原の南部,松 川面扇央部を捷い,更に,小川面,八反ヨ面の水田 の多い地球にも拡がって1いる.工芸作物の卓越する 地域は園芸作物とは全く異なった配置をとり・一つ は東北部IE濫原の畑地械を核心として盆池の東北部 一帯を掩い,他ほ盆池西南部の水田及び荒川面上流 部の畑地域に拡がる.かくて・作物種類による地域 分化1認月らかとなる.即ち,畑面債それ自体が小さ い水田地戒では,畑の利用面積全体の70−80%まで が麦類,大豆,甘藷,馬鈴薯等に用いられ,一方,
氾濫弓{・扇状地等り畑面積が大きい地域では主食用 作物に加えて園芸作物,工芸作物が栽培される.し かも、園芸作物が金地中央にあり,工芸作物が盆地 の南北に分籍されて立地する.特に,阿武隈川の氾 濫東上にあって,自然的環境が殆ど同一とみられる 畑地或において,福島市の郊外を含む南部に園芸作 物が卓越し,阿武「黒川が山腹に疸って作った上保原
54 福島大学学芸学部論集第5号 1954−3
村地内の愛着山附近の狭隘部を北部に越した東北部 の氾濫原には桑を主とする工芸作物が卓越ずる.こ の配置は福島市を経済的中心とずれば,経済的中心 を核とずる土地利用の置構造的攣化である.この一県 をより明らかにするため,特に園芸作物の分布につ いてみたい.・
b.園芸作物.園芸作物の中,果物は果樹の分布 と同じなので読点はない.松川面を中心とする西南 部は和梨を主として生産し・摺上川,阿武恨川iE濫 原を中・bとする果樹園地域で1まり
接続する西南部り水田卓越地にも拡がる.盆池の東 北部及び西南部では畑,水田地域の別なく,50%以 上の地域は挾い 果葉菜が蔬菜全体の80%以上とい う圧倒的卓越さを示す地球は福島市東北郊の普通畑 地或のみであり・この地域は蔬菜i地域にして,しか
も果葉菜の卓・越地である事が確認される.かくて,
福島市に近接して果葉菜が立地し,盆地東北部の氾 濫原に移るに從って根菜が軽勃liする.
ンゴを作り,上保原村・飯坂彦野町 附近,大木戸村等の斜面地利用の 果樹園には桃が多い.園芸作物地.一乗 の中・果物地或でない部分は福島市 東北部の普通畑地或のみであり,こ の地域は明らかに蔬菜の卓越地で ある.蔬菜の分布状態をみるため に,蔬菜を果菜,葉菜,根菜の三者 にわけ,各々の分布を槍討した.果
!茶頭は生産量が全体的に少いが,
1福島市東北郊の普通畑地或は1方膏 ロ ノiこつざ16,000貫の生産をもち1 盆池 , /
内最高の量である.この地鼠を生歪
1の核心とし・果菜の生産地は拡が ノー 一 ! 〃る.1方粁につき4,000貫の生産をも
ち,他地或より生産量がめだつ他我 は阿武隈,摺上氾濫原の畑地域及び
福島市の西南部に拡がる.葉菜類は分布適囲が広1 なり・1方粁につき4,000貫以上の生産をもつ地域は 氾濫原の畑地域を核心として水田地域にまでi∫、が る・しかし・福島市東北郊Z)普通畑地頂は1方好に っき34,000貫1を生産…し,益し也内観高の量を依然とし てもつ.根菜類の分布範璽は更二広くなり,1方粁 につき4,000貫以上の生産をもつ雇女は盆地全職工 拡がる.しかし,その最多量の生薑地欲1方併につ
き64,000貫1以上を生1奎する東北部![三濫『上i叉に移る.橿 島市の東北郊地域は1方粁につき16歩030−34,000質 という中程度の生産量となり・根菜矩の生産板心地 とはいえない.かくて,福島市東北郊の普通畑地或 は果葉菜の生産核心地である.この懸崖をより明ら G)かにするために果葉菜類が全蔬菜中に占ン)る割合を 求めた.果葉菜類が全蔬菜の50%以上を占める地域 億摺上川造岸より福島市周辺一帯を控、・,福島市に 第5図
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黄菜の主な生産地
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各磯菜の生産費を指数化すると果菜の100に対し (9)て,葉菜が50,根菜が44になるという.即ち,逆に い幻も各蔬菜は耕地に投下さわる資本,勢力の多 少を示し,土地利用上の集約度を示す一指標とな る.從って,福島市を遠ざかるにつれて,果葉菜か ら根菜へと攣る土地利用上の攣化は集約度の攣化と 認める事ができる.以上により福島市を中心とする 土ヒ池下il用上の遼構造的墜化をみ出し得る.
4).むすび.一地域区分一.上述の結果を綜合 して地鼠区分を行い,むすびとしたい.地域区分を 行うにつのては,各地或を特籔づける程度に応じて 等級(order)を設け,最も基本的な事象による区 分を大区分とし,ついで地球のより精細な特徴を示 す事象群を求め,それ等二よる区分を中小区分とし て,地玖区分を完成する事とした.農業地域として の最も基礎的な事象の一つほ積地の有無である.從
渡辺:福島盆地における土地利用 55
耕膿(難繋・…)を大区分の指標とし
た.斜地度50の線よつ外稼部は地形的にほ高位扇状 地面,ベンチ状に附着した丘陵・山腹又は市街地で あり,耕地度は彪激に低下し,0−10となる.故 に耕地度50以上の地或が福島盆地の主な農業地域で ある.しかし,耕地度50の線は殆ど盆地輪廓に一致 するので図示を省いた。次に,水田,畑の種別は農 業経営を組織する上の決定的因子である 盆地全体 の水田は耕地の凡そ47%であるので・この李均比率 以上に水田をもつ地或を水田地鼠,他を畑地域と
し,具体的には水田度50の繰を以て区分した・この 水田度による区分も耕地度と同じく大区分の指標と した。家に,水田,畑,両地裁の内部を利用状態より 区分した.前者については水田裏作率,後者につい ては普通畑,果樹園,桑園の別を指標とした.盆地 全体を李均した水田裏作率は約25%であるので,こ の比率以上の裏作を行う水田地域を水田裏作地域と し,水田の利用度が高のとみなした・畑地域におい ては,果樹園,桑園を,それぞれ畑地の40%以上も つ地域を果樹地或,桑園地域とし・それ以外の畑地 エロラ
敏を普通畑地威として中区分を終えた.家に,作物 種類及びその生産成績を以て小区分し・各地威の姿 を具体的にする.水田地域については反当牧簸及び その偏差係数より定めた水稻生産に関する各町村の 類型をそのまま充当し,畑地城につのては,麟,
果樹,主食用作物,工芸作物の作付割合による区分 を充てた.この様にして区分はでき上るが,各区分 された地域に地形性質を併記して示す事とした、
水田,畑地の別は地形に応じて定められる.且つ 福島市を経済的中心とみる時は,水田地域において は水田裏作率が中心より変地縁邊部に至るに従い・
漸次抵下し,裏作作物も衰頽より油菜,レンゲヘと 憂化する.畑地域においては果菜類より果樹,根菜 類,桑園,タノくコ等と攣り,1集約的な管理を要1する 作物より,やや粗放的な作物,或いは加工過程を要 する作物へと攣る.叉,畑地は水田地或,畑地或の 両者を通じて作付面積の凡そ40%以上を麦類,大 豆,甘藷馬鈴薯等に用いられる.以上により,福島 盆地の土地利用は園芸作物,工芸作物を導入して・
穀物偏重の性格を脱した面をもつが,なお,その基 底には主穀農業が根強く残るのを認めるのである.
続報として,作物個々の立地及び農家の経営形態に ついてみたい.終りに,終始,御指導をいただいた 安田敬愛,東北大学の富田教授,田電助教授には厚
く御乱申し上げる.
註と参考文献
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〇一
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現在は立子山村地内で阿武隈 川から分水した東恨嬰が灌蔵 するので事情は好鱒している 岩田信義=農業経営学概論.
(1950)による.
重量による割合である.
中島忠重:園芸経営技術.産 業図書出版彫式会枇(1950)
の資料による.
図の大きさから・図示する⑳ は中区分立でとしたい・