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日本の環境アセスメントへの HEP 導入にむけた HSI モデルの展望

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2004年度卒業研究概要

日本の環境アセスメントへの HEP 導入にむけた HSI モデルの展望 

−国内 HSI モデルの現状とモデル精度による影響の視点から− 

田中  章研究室   

0131050 岡林  まゆみ 

指導教授 承認印

第1章  研究の背景と目的

  1997年に公布された環境影響評価法では、新たに「生態系」が評価項目に加わると同時に、回避→低 減→代償というミティゲーションの種類と優先順位が位置付けられた。予想される影響とそれに対する ミティゲーション提案をわかりやすく情報公開するためには定量的評価は不可欠であると考えられる。

米国で開発された生態系の定量的評価手法であるHEP(Habitat Evaluation Procedure)は、結果が明解 でわかりやすいことから合意形成のツールとして優れていると評価されている。また、ある土地の生態 系を野生生物のハビタットとして「質」、「空間」および「時間」という3つの軸で定量的に評価を行うこと で、従来、日本の生態系アセスメントで見落としがちな「空間」や「時間」といった概念を加えることがで きる。このような理由から環境アセスメントへのHEP導入が検討されている。

HEPの導入に向け、まずHEP構成の中心となるHSIモデルの構築が必要であると考えられ、実際に 多くのモデルが構築されてきている。

その一方で、日本ではHSIモデルの精度に対して疑問視する声が、HEPが国内に紹介された当初より あがっている。この影響のためか、既存のモデルのなかには確かに、精度向上のためフィールドデータ を用い何度かモデルの改良を行っているものがある。しかし、HEP が開発された米国では、2004 年 1 月までにU.S Geological Surveyのホームページ上に公開されているHSIモデルのうち約85%が構築され たモデルのレビューに、その野生生物種の専門家の意見や、サンプルデータなど用い、実際のフィール ドデータは考慮していない。つまり、HSIモデルの精度について日本と米国では傾向が異なっている。

以上の背景をうけ本研究では、まず新たなHSIモデル構築のさらなる活発化にむけ、国内の現在まで の傾向を把握し、環境アセスメントへのHEP導入を前提とした今後必要となるモデルを明らかにする。

次に、環境アセスメントの架空事例を用いてHSI モデルの精度が環境アセスメントにおける HEPを 用いた意思決定へどの程度、影響を及ぼすのかを明らかにし、環境アセスメントにおけるHSIモデルの 精度のあり方について言及することを目的とする。

第2章  研究方法

  2004年4月から2005年1月までに、webサイト検索、NACSIS IRおよびJDREAMを使用し可能な限 り、関係する研究事例を収集し調査した。架空事例の実施方法は後述する。

第3章  研究結果

第1節  日本において公表された HSI モデル 

国内で公表されたHSIモデルと、その他のモデルの対象種を表1に示す。本研究においてはHSIモデ ルと同義のモデルもHSIモデルとし、研究対象とした。HSIモデルと同義のモデルとは「対象生物のハ ビタットをいくつかの環境要因に分けて0から1の範囲の値で数値化したもの(HEPにおけるSI)を結 合し、ハビタットの質としての適性値を算出するもの」とする。

表 1  日本において公表された HSI モデル種一覧 

分類  モデルの対象種 

哺乳類  テン,ニホンリス,ムササビ 

鳥類  アオバズク**,(オオセッカ)(オオヨシキリ)(コヨシキリ)(コジュリン),サシバ  両生類  トウキョウサンショウウオ 

魚類  アブラハヤ*, アユ*,ウグイ,オイカワ,カジカ,カマツカ*,カワムツ*,カワヨシノボリ*,ギンブナ*,シマヨシノボリ*,ニゴイ*,マアナゴ,メバル稚 魚・幼魚, ヤマメ*,ヨシノボリ* 

無脊椎動物類  オオムラサキ,ミドリシジミ,シオマネキ,ハクセンシオマネキ,チゴガニ,コメツキガニ,ヤマトオサガニ,アサリ,ヤマトシジミ,アコヤガイ,ゴカイ,

イトミミズ目*,カゲロウ目* 

植物  エビネ,ヨシ,アマモ 

その他  魚類・甲殻類全 8 種,魚類・甲殻類・軟体動物全 9 種,付着動物種数 

 

第2節  HEP を用いた環境アセスメントの意思決定における HSI モデル精度の影響度  1.使用 HSI モデル

今回使用するモデルは、雨嶋らが 2002 年から構築しているトウキョウサンショウウオ(Hynobius

注 1)*がついているモデルは IFIM のプロセス内で作成されたものである。**がついているものは橋本他(2004)が行っている手法を用いて作成されたものである。HSI モデルとそれ 以外の手法のモデルの両方で作成されたものについては HSI モデルを優先し、無印のままである。 

注 2)ヨシノボリは、カワシマヨシノボリ、シマヨシノボリと種別で作成されているものとヨシリノボ属で作成されているものがあるが別々に記載した。 

注 3)括弧付きのものは現在作成中。

(2)

図 1  トウキョウサンショウウオの HSI モデル  出典:日本環境アセスメント協会(2004)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 10 20 30 40 50 60 産卵場の水深(cm)

適性指数(SI)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 20 40 60 80 100 産卵場の天空率(%)

適性指数(SI)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 10 20 30 40 50

産卵場と周辺樹林との距離(m)

適性指数(SI)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 20 40 60 80 100 広葉樹林の割合/周辺樹林面積(%)

適性指数(SI)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 20 40 60 80 100 樹冠の被覆度(%)

適性指数(SI)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5 10 15 20 25 30 土壌硬度(mm)

適性指数(SI)

tokyoensis)を対象としたHSIモデルの2次モデルと 3次モデルである(図1)。2次モデルは繁殖期を対象 に作成された1次モデルで、抽出された課題に対応 するため、既存資料と学識者へのインタビューから 非繁殖期のSI モデルを加えたものである。3 次モデ ルは実際にトウキョウサンショウウオの生息地で変 数の測定を行い、その結果から 2 次モデルを改良し たものである。     

またHSIモデルは一般に表2に示すモデルの許容可 能レベルが増すごとに精度も増すと考えられている。

2次モデルはステップ2、3次モデルはステップ3であ る。このHSIは次の式から求められる。

産卵場HSI=

(水深SI×鬱閉度SI×周辺樹林との距離SI)1/3 成体生息環境HSI=

(広葉樹林割合SI×樹冠被覆SI×土壌硬度SI)1/3 図1において、実線が2次モデルを、点線が3次モ デルを示している。

2.架空事例による環境アセスメントの実施   雨嶋らが2004年に行ったHEPのケー ススタディデータの一部と上記の HSI モデルを用いて、簡易的な環境アセスメ ントの架空事例を行う。この環境アセス メントは丘陵地における最終処分場建 設事業がトウキョウサンショウウオの 生息環境に対し大きな影響を与える恐 れがあると予測されたため、ミティゲー ションが検討されたが回避・低減策は困 難であったため代償ミティゲーション を行うことになったと想定されている。

また、a、b、c の代償案が提案されて おり、どの案にするかを「質」の軸を考 慮した HSI に「空間」軸を加えた HU、

さらに「時間」軸を加えた累積的HU算 出までを行った HEP の結果により決定

する。対象年は事業開始から跡地利用事業終了までの27年間とした。 

図 2、3 は、トウキョウサンショウウオの産卵場と成体生息場における、モデルによる「その土地を そのままにした時の累積的HUと開発(代償措置も含む)をした時の累積的HUとの差」の違いを示し たものである。産卵場においては、代償b案に著しくモデルの違いの影響がでている。 

第4章  結論と考察

  現在までに、構築されているHSIモデルは魚類、無脊椎動物類が多い。一方、両生類はトウキョウサ ンショウウオのみと少ない結果になった。しかし、両生類は水域と陸域をハビタットとして必要とする ものが多く、環境アセスメントにおいて保全対象域が広域になる。これは生態系保全視点からみた環境 アセスメントを有効的にすると考えられるため今後、更に多くのモデルが構築されることが望まれる。

架空事例を行った結果ではHSIモデルの精度の違いによって、代償ミティゲーション案の決定に影響 がでた。具体的には「産卵場の水深」のモデルが産卵場の代償b案に大きく影響し、その結果、もし2 次モデルであれば代償b案が採用されるが、3次モデルであれば代償a案が採用されるという違いがで た。一方、成体生息場においてはモデルの違いによる著しい影響はなかった。また、「産卵場の水深」

以外のモデルも2次と3次では大きく異なるものもあるが影響はほとんどでていない。

HSIモデルの精度を高めることは必要だが今回の事例からみると、すべてのSIモデルが大きな影響を あたえるものとは限らない。大きな影響を及ぼすものがどれなのか見極めることが時間や費用が限られ ている環境アセスメントにおいては必要になると考えられる。

また、モデルの精度は時として環境アセスメントにおける意思決定に大きな影響を及ぼすことがあっ たとしても、モデルの精度にこだわり過ぎるために代償案を行うことに足踏みしてしまうことより、早 い段階で行動に移し、ハビタットとしての土地を確保する方が好ましいと考えられる。ただし、「代償」

に踏み切る前に「回避」、「最小化」を入念に検討することが必要だ。

最後に今回はトウキョウサンショウウオのHSIモデルと架空事例のみを用いたが、その他のHSIモデ ルと実際のデータを用いた検証も必要だったと思われる。

 

主要引用文献

社団法人日本環境アセスメント協会(2004)  自然環境影響評価技術研究会報告書. (社)日本環境アセスメ ント協会,東京,pp.135

橋本啓史他(2004)   “京都市街地都市林におけるアオバズクの生息環境適合度モデル”  ランドスケー プ研究 67(5) p. 483-486.

ステップ モデルの許容可能レベル

1 HEPにおける評価チームによって認められるレベル

2 HSIモデルの評価対象となっている野生生物種の権威者によって認めら れるレベル

3 様々な場所で実際にHSIモデルが適用され、それぞれの場所における実 際の生物の総数と明らかな相関があるレベル

表 2  HSI モデルの許容可能レベル 

0 100 200 300 400 500 600 700

事業地 代償a 代償b 代償c

HU

2次モデル 3次モデル

2次モデル 3次モデル

事業地 557.1 590.6

代償a 551.7 584.0

代償b 619.8 355.8

代償c 113.2 117.4

0 10 20 30 40 50

事業地 代償a 代償b 代償c

HU

2次モデル 3次モデル

図 2  HEP の結果比較(産卵場) 図 3  HEP の結果比較(成体生息場)

2次モデル 3次モデル

事業地 44.2 45.2

代償a 11.0 11.4

代償b 11.0 11.4

代償c 1.3 1.3

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