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植物由来の食品成分と温度感受性TRPチャネル - J-Stage

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592 化学と生物 Vol. 51, No. 9, 2013

植物由来の食品成分と温度感受性 TRP チャネル

植物由来物質による TRP チャネル制御

TRP (Transient Receptor Potential) イオンチャネル スーパーファミリーの最初の分子は1989年にショウ ジョウバエの眼の光受容にかかわるタンパク質として報 告された.TRPチャネルは一つのサブユニットが6回の 膜貫通領域を有するCa2+ 透過性の高い非選択性陽イオ ンチャネルであり,TRPスーパーファミリーは哺乳類 で は 大 き く TRPC, TRPV, TRPM, TRPML, TRPP,  TRPA  の6つのサブファミリーに分かれ,ヒトでは27 の分子がセンシングをはじめとするさまざまな細胞機能 にかかわることが明らかになっている(1).最初の温度感 受 性TRPチ ャ ネ ル で あ るcapsaicin受 容 体TRPV1の 1997年 の 発 見 以 降,16年 間 で9つ のTRPチ ャ ネ ル 

(TRPV1, TRPV2, TRPV3, TRPV4, TRPM2, TRPM4,  TRPM5, TRPM8, TRPA1) が温度感受性であることが 示された.これらは TRPV, TRPM, TRPA サブファミ リーにまたがっており,それぞれの活性化温度閾値は最 も低いTRPA1(17度以下)から最も高いTRPV2(52 度以上)まで幅広い.温度感受性TRPチャネルの大き な特徴は,温度以外にも多くのリガンドやほかの物理刺 激に応答する「多刺激受容体」として機能することであ り,TRPV1の活性化刺激物質としてのトウガラシの辛 み成分capsaicinに代表されるように,食品成分とくに 植物由来物質の多くが温度感受性TRPチャネル活性を

制御する(2〜4).ここでは,温度感受性TRPチャネルの

中で食品に使われる植物由来物質によって活性化するこ とが知られる TRPV1, TRPV3, TRPM8, TRPA1 に絞っ て概説したい(表1

TRPV1は43度以上の熱,酸,capsaicinなどの侵害刺 激で活性化されるイオンチャネルとして遺伝子クローニ ングされ,一次感覚神経の無髄のC線維で特異的に発現 してポリモーダルノチセプター(複数の侵害刺激によっ て活性化する侵害刺激受容神経)を特徴づける.体性感 覚(皮膚感覚と深部感覚)のみならず,内臓痛などの内 臓感覚にもかかわることが明らかになっている.炎症時 に産生される種々の炎症関連メディエイター(ATP,

トリプシン,トリプターゼやプロスタグランジンなど)

がそれらの代謝型受容体(それぞれP2Y, PAR, EP受容 体など)の活性化を介してTRPV1を感作する(活性化

温度閾値を低下させる)ことが明らかになっており,体 温が活性化刺激となって痛みを惹起しうる.このよう に,TRPV1は炎症性疼痛への関与が最も強く,事実,

TRPV1欠損マウスの最も顕著な表現型は急性炎症性疼 痛の減弱である.

TRPV1はcapsaicinのほか,サボテン由来の神経毒と して知られるreciniferatoxinによっても強く活性化され る.私たちに「辛み」をもたらすolvanil(トウガラシ オレオレジン),piperine(胡椒),chavicine(黒胡椒), gingerol・shogaol(生姜),eugenol(クローブ・ローリ エ),sanshool(山椒),camphor(樟脳),allicin(タマ ネギ・ニンニク),miogadial・miogatrial(茗荷)など はTRPV1に作用し,そのいくつかは構造にvanillyl基 を有してバニロイド類と呼ばれる.辛くないトウガラシ

「CH19甘」から精製されたcapsiateもTRPV1活性化能 が高いが,脂溶性が高すぎるために口腔内で感覚神経に 作用しにくいのではないかと考えられている.マスター ドオイルは後述のTRPA1だけでなく,TRPV1にも作 用するという.TRPV1を阻害する植物由来の物質はあ まり知られていない.

TRPV3は,上皮細胞に強く発現し,温かい温度や  2-APB (2-aminoethoxydiphenyl borate) などの人工化 合物で活性化されるイオンチャネルで,繰り返し刺激で 応答が増強するという特徴がある.野生型と比較して TRPV3欠損マウスは至適温度帯を選別するまでの時間 が有意に長く,50度以上の侵害熱刺激に対する忌避行 動が減弱していた.筆者らは表皮ケラチノサイトに発現 するTRPV3が外界環境温度を感知してその情報を感覚 神経に伝えることを報告している.

Camphor, eugenol, dihydrocarveol(スペアミント), carvacrol(オレガノ),thymol(タイム)などのハーブ 成分で活性化することが知られており,これらのほか多 くのモノテルペン誘導体がTRPV3を活性化する(5). TRPM8の活性化物質menthol(後述)もTRPV3を活性 化する.TRPV3を阻害する植物由来の物質はあまり知 られていない.

TRPM8は約26度以下で活性化する冷刺激受容体で,

「冷涼感」を与えるミント成分mentholでも活性化して,

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化学と生物 Vol. 51, No. 9, 2013

mentholと冷刺激を同時に負荷することで活性化温度閾 値 が 上 昇 す る(よ り 高 い 温 度 で 冷 た い と 感 じ る). TRPM8欠損マウスを用いた解析などから,TRPM8は 非侵害から侵害レベルの冷刺激受容と炎症性冷覚過敏の 発症にかかわっていると考えられているが,侵害刺激受 容体本体であるかどうかを結論するにはさらなる研究が 必要である.

Menthol, menthone(ミ ン ト),eugenol,1,8-cineole

(ユーカリ)など清涼感をもたらす植物成分がTRPM8 を活性化する.高濃度のcinnamaldehyde(シナモン)

がTRPM8活性を阻害することが知られている.

17度以下の侵害性冷刺激によって活性化される新た な温度感受性TRPチャネルとして2003年に報告された TRPA1は,主に感覚神経細胞に発現しTRPV1との共 発現が観察されたことから,侵害刺激受容に深くかか わっていることが示唆される.TRPA1はマスタードオ イルで活性化され,マスタードオイルなどによる炎症や 熱性痛覚過敏の発症のメカニズムに関与すると考えられ る.また,oxygen species, tetrahydrocannabinol (THC),  2-APB, acrolein, formaldehyde などの aldehydes, meth- yl paraben, Ca2+  イオン,Zn2+ イオンなど非常に多く の物質によって活性化することが報告されている.その 多 く は 痛 み を 惹 起 す る 物 質 と し て 知 ら れ て お り,

TRPA1が侵害刺激受容に関与することは明らかであ る.構造の異なる化学物質が作用するメカニズムの説明 の一つとして,アミノ末端のシステイン残基の共有結合 修飾が挙げられている.TRPA1が侵害刺激受容体とし て機能することは,TRPA1欠損マウスの行動解析に よっても確かめられている.しかし,明らかになった TRPA1刺激物質は冷感をもたらさない.また,TRPA1 が冷刺激によって活性化しないとする報告もあり,

TRPA1欠損マウスの解析からもTRPA1が冷刺激感受 性に関与するかについて結論は得られていない.臨床的 に 冷 刺 激 異 痛 症 は 多 く 認 め ら れ る が,そ の 発 生 に TRPA1がかかわっているかどうか,さらなる検討が必 要であろう.しかし,TRPA1が侵害受容にかかわって いることは明らかであり,炎症性疼痛の発生にもかか わっているようである.

植物由来成分では,allyl isothiocyanate(マスタード オイル)などの isothiocyanates, cinnamaldehyde  など の aldehydes, allicin, capsiate, sanshool, carvacrol, nico- tine(タ バ コ の 葉),1,4-cineole(ユ ー カ リ),oleocan- thal(オリーブオイル),menthol, miogadial・miogatri- al, polygodial(蓼)などによってTRPA1が活性化される ことが報告されている.侵害性物質や口腔刺激物質の多 くがTRPA1に作用する.Camphorは哺乳類TRPA1の 阻害物質として報告されたが,低濃度ではTRPA1を活 性化する.こうした bimodal effectsはcinnamaldehyde  やmentholなど多くの化学物質でも認められ(6, 7),一般 に低濃度では刺激物質,高濃度では阻害物質として作用 す る.し か し,mentholのbimodal effectsは マ ウ ス TRPA1で見られるが,ヒトTRPA1では見られない.

Cinnamaldehydとcamphorのbimodal effectsも マ ウ ス TRPA1で見られる.こうした哺乳類TRPA1の種差に よる作用の違いはほかにも見られ,caffein(コーヒー)

はヒトTRPA1ではなくマウスTRPA1だけを活性化す るという.Bimodal effectsを示す物質に加えて,ユーカ リに含まれる1,8-cineoleはヒトTRPA1活性を阻害する.

また最近,赤ワイン(赤ブドウの果皮)やピーナッツの 皮に含まれるポリフェノールの一種スチルベン誘導体の resveratrolがマウスTRPA1を阻害することが報告され た.興味深いことに構造の似たpinosylvin methyl ether 表1植物由来物質によって制御される温度感受性TRPチャネル

TRPチャネル 活性化温度閾値 活性化物質 阻害物質

TRPV1 43度以上 capsaicin, capsiate, resiniferatoxin, piperin, cannabinol,  camphor, gingerol, shogaol, sanshool, allicin, chavicine,  olvanil, miogadial, miogatrial, eugenol, 

TRPV3 30度以上 camphor, borneol, carvacrol, thymol, eugenol, menthol  dihydrocarveol, fenchone, 

TRPM8 28度以下 menthol, menthone, eugenol, 1,8-cineole,  cinnamaldehyde TRPA1 17度以下? allyl isothiocyanate, cinnamaldehyde, carvacrol, nico-

tine  sanshool,  allicin,  camphor,  menthol,  miogadial,  miogatrial  1,4-cineole,  capsiate,  caffein,  oleocanthal,  polygodial, 

menthol, camphor, cinnamaldehyde,  resveratrol, 1,8-cineole, 

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はTRPV1活性を阻害するという.

同じ植物由来物質が複数の温度感受性TRPチャネル を活性化することが知られており,capsiate, allicinなど TRPV1とTRPA1の両方を活性化する物質は多い.ま た,濃度依存的にTRPA1に対して bimodal effects  を 示す物質もある.種によって作用が異なる物質もあり,

mMオーダーで哺乳類TRPA1を阻害するcamphorは昆 虫TRPA1を活性化する.加えて,同じユーカリに含ま れ る 成 分 で も,1,4-cineoleはTRPA1を 活 性 化 し,1,8-  cineoleは阻害する(8).さらに,モノテルペン誘導体,

ジテルペン誘導体は,TRPA1, TRPM8, TRPV3に作用 し(5),その一部はTRPM2(本稿では取り上げていな い)にも作用する.口腔内では,その総合の結果として 感覚が作り出されることを理解することが必要であろ う.

1997年に最初の温度感受性TRPチャネルであるcap- saicin受容体TRPV1が報告されてから16年,温度感受 性TRPチャネルは多くの細胞に発現して多彩な細胞機 能にかかわることが明らかになってきた.そのうちのい くつかの活性が食品にも含まれる多くの植物由来物質で 制御されることは非常に興味深く,今後,これまで作用 標的の明らかでなかった植物成分が温度感受性TRP チャネルに作用することが判明していくものと期待され る.口腔での感覚はこれまで,味細胞の味受容体のみが 担っていると考えられてきたが,口腔内の感覚神経や上 皮細胞に発現する温度感受性TRPチャネルに作用して もたらされている,という概念が注目されてくるのでは ないだろうか.

  1)  K.  Venkatachalam  &  C.  Montell : ,  76, 387 (2007).

  2)  沼田朋大,香西大輔,高橋重成,加藤賢太,瓜生幸嗣,

山本伸一郎,金子 雄,眞本達生,森 泰生:生化学,

81, 962 (2009).

  3)  L. J. Wu, T. B. Sweet & D. E. Clapham : ,  62, 381 (2010).

  4)  M. Sees, G. Owsianik, B. Nilius & T. Voets : , 2, 563 (2012).

  5)  A. K. Vogt-Eisele, K. Weber, M. A. Sherkheli, G. Vielha- ber, J. Panten, G. Gisselmann & H. Hatt :

151, 530 (2007).

  6)  Y. Karashima, N. Damann, J. Prenen, K. Talavera, A. Se- gal, T. Voets & B. Nilius : , 27, 9874 (2007).

  7)  Y. A. Alpizar, M. Gees, A. Sanchez, A. Apetrei, T. Voets, 

B. Nilius & K. Talavera : , 

in press.

  8)  M.  Takaishi,  F.  Fujita,  K.  Uchida,  S.  Yamamoto,  M. 

Sawada,  C.  Hatai,  M.  Shimizu  &  M.  Tominaga : , 8, 86 (2012).

(富永真琴,自然科学研究機構岡崎統合バイオ    サイエンスセンター)

プロフィル

富永 真琴(Makoto TOMINAGA)   

<略歴>1984年愛媛大学医学部医学科卒 業/同年京都大学医学部付属病院勤務/

1985年浜松労災病院勤務/1992年京都大 学大学院医学研究科博士課程修了/1993 年岡崎国立共同研究機構生理学研究所助 手/1996年カリフォルニア大学サンフラ ンシスコ校博士研究員/1999年筑波大学 講師/2000年三重大学医学部教授/2004 年自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエ ンスセンター(生理学研究所)教授<研究 テーマと抱負>生物がどのようにして温度 受容体を変化させて進化してきたかという こと,どのようにして温度がチャネル開口 をもたらすかということ

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