環境と微生物
生態系、環境汚染
バイオレメディエーション
環境ホルモン
生態系における栄養素とエネルギーの流れ
E: エネルギー N: 栄養素
2
浸出
土の湿気
伏流水
大洋からの蒸発 植物、動物、湖沼、大地
からの蒸散、蒸発 降水により地上に
湿気が戻る
水の循環
汚水処理施設の概要
固形物質 可溶性有機物
窒素 リン 病原菌 ウイルス
1次処理 2次処理
可溶性有機物 窒素 リン
ウイルス
窒素 リン
3次処理
塩素処理
下水道からの
未処理汚水 粗い網 砂礫槽 沈降槽 曝気槽 沈降槽
汚泥処理 汚泥 活性汚泥
4
福井新聞
2007年8月9日
身近なダイオキシン汚染
ナホトカ号座礁による重油流出
日本全国のヒ素の濃度分布
環境汚染の実例
6
11.3万ha
2.8万ha 27.2万ha
ブラウンフィールド:
「土壌汚染の存在、ある いはその懸念から、本 来、その土地が有する 潜在的な価値よりも著し く低い用途あるいは未利 用となった土地」
国内の土壌汚染状況
出典: 環境省 「土壌汚染をめぐるブラウン フィールド問題の実態等について」
日本のブラウンフィールド
バイオレメディエーションの背景
修復後 修復前
安価
高効率
原位置処理
環境汚染・ブラウンフィールド問題の解決 安価で高効率な環境修復技術が必要
環境修復
バイオレメディエーション
(Bioremediation)微生物を使った環境修復技術
バイオオーグメンテーション(Bioaugmentation)
汚染現場以外から単離された分解微生物を導入して環境を浄化する
バイオスティミュレーション(Biostimulation)
汚染現場に土着の微生物に、栄養源や空気を与えることにより 活性化させて環境を浄化する
多環芳香族炭化水素類(PAHs)、アルキルフェノール類、
ダイオキシン類、揮発性有機塩素化合物など
メタン資化性菌
揮発性有機塩素化 合物を分解する。
トリクロロエチレン テトラクロロエチレン
バイオレメディエーションの実際
10
Phanerochaete Coriolus
代表的な白色腐朽菌
リグニン分解酵素
マンガンペルオキシダーゼ(MnP)
リグニンペルオキシダーゼ(LiP)
ラッカーゼ(Lac)
木材腐朽菌
リグニンの分解
CH
OH CH2
MeO
CH2OH O
OH C H
MeO
H CHC 2OH O
CHOH
MeO
CH CH2OH
CH CH2
MeO
CH2OH
O CH2
OMe C
H
CH2OH
OMe OMe
O CH
OH CH2
MeO
CH2OH
O CH C H2
CH CH2 C O
H C H
OH MeO
O
OMe
O O
Cl Cl
リグニン分解酵素の有害物質分解性
分解可能物質
合成染料
ダイオキシン類
フェノール類
リグニンの化学構造
12
白色腐朽菌を使った環境修復(有害物質分解)
1,3,7,8-TCDD
OCDD
1,2,7,8-TCDF OCDF
Dioxins [g/L]
0 20 40 60 80 100 120
Before cultivation 1 week
2 weeks 3 weeks
O O
Cl
Cl Cl
Cl
Cl
Cl Cl
Cl
O Cl
Cl Cl
Cl
Cl
Cl Cl
1,3,7,8-TCDD OCDD 1,2,7,8-TCDF ClOCDF
O O
Cl
Cl Cl Cl
O Cl
Cl
Cl Cl
白色腐朽菌L-25株によるダイオキシン類の分解
毒性等量
(g-TEQ/L) 11.0
4.2
14
植物を使って土壌を浄化する技術
重金属(Hg、Cdなど)、多環芳香族炭化水素類(PAHs)、 アルキルフェノール類およびダイオキシン類など
ファイトレメディエーション
(Phytoremediation )
ホルモンが関わる様々なプロセスをかく乱する物質
(内分泌撹乱物質の俗称)
特に生殖細胞への障害が深刻
文部科学省、厚生労働省は、「内分泌撹乱物質」
環境省は「外因性内分泌かく乱物質、いわゆる環境 ホルモン」という場合が多い。
英語では、endocrine disrupting chemical (EDCs), endocrine disruptors (EDs)
環境ホルモンとは
16
ホルモン( hormone )
生体の特定の組織または器官(内分泌細胞)で生産され、
直接体液中に分泌されて運ばれ、特定の組織や器官の活 動をきわめて微量で調節する生理的物質
機能発現やホメオスタシスの維持に重要な働きをする
1902年 E. H. Starling(イギリス)が提案
hormoneはギリシャ語で「刺激する」という意味 インシュリン: 血糖値の低下
エストロゲン: 雌生殖器の発育、妊娠の維持 アンドロゲン: 雄生殖器の発育、精子の形成
ホルモンの作用メカニズム
18
ホメオスタシス( homeostasis, 恒常性)
変化する外部環境の影響から生体の組織・細胞を保護 するために、生体の内部環境を自律的にほぼ一定に保 つ現象
1929年 W. B. Canon(アメリカ)が提唱した概念
(基本概念は1854年C. Bernard)
体温 血糖値 体液のpH
など
1962年 「Silent spring」
「沈黙の春」 レイチェル・カーソン 新潮社 農薬による生態系の破壊を問題提起
1996年 「Our stolen future」
「奪われし未来」 シーア・コルボーン他 翔泳社 生殖能力そのものが奪われていく
1997年 「The feminization of nature」
「メス化する自然」 デボラ・キャドバリー 集英社 人間の生殖異変
環境ホルモンに関する本
20
野生動物に対する影響(1)
生物 場所 影響 推定原因物質
貝類 イボニシ 日本
(海岸)
雄性化
個体数減少 有機スズ
魚類
ニジマス イギリス
(河川)
雄性化
個体数減少 ノニルフェノール 人畜由来女性ホ ローチ ルモン
(コイ科) 雌雄同体化 サケ アメリカ
(五大湖)
甲状腺過形成
個体数減少 不明
生物 場所 影響 推定原因物質 爬虫類 ワニ アメリカ
(湖)
ペニス矮小化 ふ化率低下 個体数減少
有機塩素系農薬
鳥類 カモメ アメリカ
(五大湖)
雄性化 甲状腺腫瘍
有機塩素系農薬 PCB
哺乳類
アザラシ オランダ 個体数減少
免疫機能低下 PCB ヒツジ オーストラ
リア
死産の多発
奇形の発生 植物エストロゲン
野生動物に対する影響(2)
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ヒトに関する被害の実例(1)
DES(ジエチルスチルベストロール)
流産防止のために妊娠中の女性が服用
(アメリカ、中南米で500万人以上)
生まれてきた子供
女性: 遅発性膣ガン、不妊、卵管や卵巣の異常 男性: 精子数減少、精巣ガン、前立腺異常
1941年 DESが使用される
1964年 マウスによる実験結果から有害性が明らかとなる 1971年 DESが使用禁止となる
OH O
H
ダイオキシン類
ベトナム戦争: 枯れ葉剤の中に数10ppmのダイオキシンが混入 ベトナム: 死産、奇形児が多発
アメリカ: 帰還兵の精子数減少、精子の運動性低下、精子奇形率の増加
ヒトに関する被害の実例(2)
農薬工場爆発: イタリアで農薬工場が爆発し、近隣に120kgのダイオキシン 類が飛散
奇形発生率、女性出生率が高くなる
出生児の性と父親のダイオキシン暴露量に相関関係あり
O O
Cl Cl
24
O O
Cl Cl
O
Cl Cl
Cl Cl
ポリクロロジベンゾフラン
(PCDF)
ポリクロロジベンゾ-p-ジオキシン
(PCDD)
ポリクロロビフェニル
(PCB)
代表的な内分泌撹乱(疑念)物質
ダイオキシン類
O O Cl
Cl
Cl
最強の毒性 Cl
ダイオキシン類の毒性 ダイオキシン類の毒性
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ダイオキシン類の推定摂取量(日本人)
摂取源 摂取量 1日摂取量 体重当たり 1日摂取量
食品
魚介類 75 pg
121 pg 2.4 pg/kg
肉・卵 21 pg
乳製品 9 pg
その他 16 pg
大気 0.05 pg/m3 0.17 pg/kg
土壌 22 pg/g 0.19 pg/kg
体重50kgの場合
耐容1日摂取量(TDI): 4 pg/kg
1 pg=10-3 ng=10-6 g=10-9 mg=10-12 g
CH3
CH3 O OH
H HO C9H19
COOR
COOR
ビスフェノールA ノニルフェノール フタル酸エステル
OH O
H
ジエチルスチルベストロール
O H
OH
エチニルエストラジオール
Sn X C4H9
C4H9 C4H9
トリブチルスズ
代表的な内分泌撹乱(疑念)物質
O
O O
H O
OH
クメストロール
O
O O H
OH
ゲニステイン
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環境ホルモンが原因と疑われる健康被害
女性 ガン(乳房、膣、子宮、卵巣、甲状腺)
子宮内膜症
男性
精子の数と質の低下
ガン(前立腺、精巣、甲状腺)
女性化乳房
Carlsenの調査
1930年代 1億1300万/mL 1990年代 6600万/mL
(2000万/mLが自然妊娠の限界)
精子数の変化:
変化なし(フィンランド、アメリカなど)
減少傾向(スコットランド、アメリカ、日本など)