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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2025

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氏 名 佐 美和子 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第631号

学 位 授 与 年 月 日 令和3年3月15日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当 学 位 論 文 名 ヒト舌癌オルガノイドバイオバンクの構築 論 文 審 査 委 員 (委員長) 西 野 宏 教 授

(委 員) 古 川 雄 祐 教 授 仁 木 利 郎 教 授

論文内容の要旨

1 研究目的

舌癌は、口腔癌の約半数を占め、その特徴は、早期ステージでも潜在的リンパ節転移が存在し、

しばしば後発転移を来たす。また、根治的治療後の再発率は高く、再発例は治療抵抗性であり、

初回治療時の診断・治療が重要である。しかし、舌癌特異的な治療法はなく、また治療で使用可 能な抗腫瘍薬は限られており、その治療効果や副作用は個人差が大きい。現時点では、予後予測 に有用なバイオマーカーがないため、治療抵抗性の評価は不可能である。

従来、前臨床ヒト癌モデルとして用いられてきた癌細胞株は、患者ごとの癌の特徴(多様性、

組織構造、遺伝子変異)を反映しておらず、長期の樹立期間を要し、樹立効率も低い。そのため、

癌細胞株では各患者の癌の性質や機能の解析が困難である。そこでこの問題点を解決するため、

患者ごとの癌の特徴をin vitroで再現可能なヒト癌オルガノイドに着目した。オルガノイドとは、

生体内の組織構築や機能を保持した三次元構造体であり、癌オルガノイドは癌細胞株とは異なり、

ヒト癌組織と同様の特徴を保持している。これまでに、大腸癌、肝癌、乳癌などの様々な癌組織 からヒト癌オルガノイドバイオバンクが構築され、その有用性が示されている。しかし、扁平上 皮癌からのヒト癌オルガノイドの樹立は困難であり、舌癌に特化したオルガノイドバイオバンク は報告されていない。

そこで本研究では、患者ごとの舌癌の性状や薬剤感受性、放射線感受性を解析可能な新規モデ ルの確立を目的とし、各患者のヒト舌癌オルガノイドを樹立し、それらを集約した“舌癌オルガ ノイドバイオバンク”を構築した。

2 研究方法

倫理委員会の承認および患者の同意のもとで、様々な年齢、性別、ステージ、分化度の新規の 舌癌患者の手術検体から、舌癌組織および正常舌組織を採取した。酵素処理により細胞を分散し、

単離した細胞をマトリゲルに包埋し、増殖因子を含む培養液を用いて三次元培養を行った。培養 方法を詳細に比較検討することで、培養条件を最適化し、正常舌オルガノイド、舌癌オルガノイ ドを樹立した。

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3 研究成果

条件検討を重ね、細胞分取法、培養条件、増幅法、継代法、長期凍結保存法を最適化し、それ ぞれ正常舌オルガノイド、舌癌オルガノイドを作製した。単離した細胞から短期間で、正常舌オ ルガノイド、舌癌オルガノイドが樹立可能であった。その樹立効率は、舌癌オルガノイド、正常 オルガノイドともに高く、舌癌オルガノイドは長期継代培養が可能であった。さらに、長期凍結 保存後も高い生存率で再培養が可能であった。樹立した舌癌オルガノイドは、元の癌組織と同様 の遺伝子変異や組織学的特徴を示していた。作製した舌癌オルガノイドの造腫瘍性を検証するた めに、免疫不全マウスの同所に移植したところ、高率に癌が生着し、また移植した舌癌オルガノ イドは元の舌癌組織の病理組織学的特徴を保持した癌組織を形成した。さらに、舌癌オルガノイ ドは、患者間で、オルガノイドの形態、増殖速度、増殖効率、抗腫瘍薬に対する感受性が異なっ ていた。この樹立した舌癌オルガノイドバイオバンクを用いて、治療抵抗性舌癌を解析すること で、これらに対する新規治療標的を見出した。

4 考察

性別、年齢、ステージの異なる様々な舌癌患者から、ヒト舌癌オルガノイドを樹立し、ヒト舌 癌オルガノイドバイオバンクを構築した。前臨床ヒト癌モデルとして用いられてきた従来の癌細 胞株と比較し、舌癌オルガノイドは、短期間でかつ高い効率で樹立が可能であった。また、作製 した舌癌オルガノイドは、患者ごとの特徴をin vitroに再現しており、患者間多様性が保持され ていた。

この舌癌オルガノイドの有用性は、第一に、各患者の舌癌の薬剤感受性を、ハイスループット に評価可能な点であり、この特性は舌癌個別化治療の実現につながる。舌癌オルガノイドを用い ることで、患者ごとの舌癌の性質や機能を解析し、治療前または治療中に各患者の抗腫瘍薬に対 する治療効果の予測が可能と考えられる。また、遺伝子変異と薬剤感受性の相関解析が可能であ るため、がん遺伝子変異パネル検査と組み合わせることでゲノム医療の発展に貢献しうる。さら に重要な点として、同一患者から、正常舌オルガノイドも作製できるため、これをコントロール とし舌癌特異的に効果のある薬剤の選択が可能な点があげられる。これは、癌細胞株では実施不 可能である。さらに、舌癌オルガノイドは、同一患者の治療前、治療中、再発時にもそれぞれ作 製ができるため、その時点での患者の癌に応じた薬剤感受性の評価が行える。一方、基礎研究に おいては、作製した舌癌オルガノイドを解析することで、治療抵抗性舌癌の新規治療標的やバイ オマーカー探索が可能である。さらに舌癌オルガノイドでは、ゲノム編集技術を用いた遺伝子変 異導入が可能であることから、舌癌の治療抵抗性獲得機構の解明において有用なリソースとなり うる。

5 結論

高い効率で樹立可能なヒト舌癌オルガノイドの培養法を確立し、ヒト舌癌オルガノイドバイオ バンクを構築した。患者間の癌多様性を再現する舌癌オルガノイドは、患者ごとの癌の薬剤感受 性試験、新規治療標的の探索に有用であり、個別化医療への応用が期待できる。また、治療抵抗 性舌癌の治療標的の創出に有用である。

(3)

論文審査の結果の要旨

歯科口腔外科領域の代表的な癌に舌癌がある。舌癌は原発部位が小さくとも潜在的リンパ節転 移が多い代表的な癌である。現在の標準的治療は切除手術後の放射線治療または抗がん薬同時併 用の化学放射線治療である。全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2019年3月集計)によ ると 5 年相対生存率は stageI:94.7%、stageII:80.4%、stageIII:61.4%、stageIV:49.3%であり、

非進行症例においても治療成績は必ずしも良くはない。早期に局所または頸部リンパ節再発を生 じることより抗がん薬抵抗性および放射線抵抗性のがん細胞の存在が示唆される。舌癌の治療成 績の向上には、この薬剤耐性および放射線耐性の機序を明らかにして、新たな薬剤開発および治 療戦略を考える必要がある。

上記の背景において患者より樹立したがん細胞株を用いて研究が進められてきた。がん細胞株 を用いての研究には大きな課題が存在した。舌癌の細胞株樹立は効率が悪いことと樹立したがん 細胞株の細胞学的特質が元の患者のがん細胞の細胞学的特質を正確に反映していない点である。

近年急速に進歩を遂げた幹細胞生物学において様々な臓器におけるオルガノイドが創出されてき ている。オルガノイドは人為的に創出された器官に類似した組織体のため、細胞学的活性の研究 に有用である。様々な臓器におけるオルガノイド作成が進む中、舌扁平上皮癌のオルガノイド作 成は研究が遅れていた。

本論文は舌扁平上皮癌および舌粘膜のオルガノイドを効率よく作成する培養条件を細かく検討 し、再現性のある確立したオルガノイド作成方法を舌という器官において初めて確立した。さら に安定した凍結保存方法をも確立した。作成したオルガノイドは採取した元のがん細胞の生物学 的活性も保存されていることが明らかにしたうえで、舌癌オルガノイドを用いて抗がん薬シスプ ラチン耐性の癌細胞の遺伝子発発現を検討し有力な新規治療薬候補を見出した。

舌癌オルガノイド作成方法を確立し、シスプラチン耐性の癌細胞の遺伝子発発現の検討より有 力な新規治療薬候補を見出したこの研究は、新たながん研究の手法を開発し新たな治療薬の開発 につながるものと考える。審査において論文中の文言の修正と患者の治療経過の表の追加が指摘 され、適切に改定された。学位論文として、新規性と独創性に富み将来の発展性を期待できる研 究内容と判断され、審査委員全員が一致して合格と判断した。

最終試験の結果の要旨

歯科口腔外科の代表的がんである舌癌では臨床的非進行癌においても潜在的リンパ節転移が多 い。そのため臨床的非進行症例においても治療成績は必ずしも良くはない。現在の標準的治療は 切除手術後の放射線治療または抗がん薬同時併用の化学放射線治療である。早期に局所または頸 部リンパ節再発を生じ、抗がん薬抵抗性および放射線抵抗性のがん細胞の存在が示唆される。舌 癌の治療成績の向上には、がん細胞の薬剤耐性および放射線耐性の機序を明らかにして、新たな 薬剤開発および治療戦略を考える必要がある。この課題を解決するために申請者は安定した舌癌 オルガノイドの樹立をまず研究した。安定した舌癌オルガノイドの樹立と保存を達成後、樹立し た舌癌オルガノイドを使用して抗がん薬シスプラチン耐性舌癌治療の有望な治療標的を発見した。

舌癌オルガノイドは実臨床における個別化治療の検討に有用であり、前臨床段階における薬剤耐

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性の機序と新薬開発の有力な手法となることを申請者は本研究を通して示した。

オルガノイド作成の手法と培養条件および保存方法について、新たな知見を交えて発表がされ た。発表された手法により患者のがん細胞活性を保つ安定した長期培養が可能なオルガノイドを 用いて遺伝子発現解析を行い、シスプラチン耐性舌癌の新たな治療標的を発見し臨床への応用の 道標を示すことができた。

発表において1:患者の臨床経過と作成したオルガノイドの生物学活性に関する質問、2:シ スプラチン耐性舌癌オルガノイドで増幅または減弱している遺伝子の生物学的活性に関する質問、

3:作成したオルガノイドの組織学的特徴。4:オルガノイドの将来の発展性について質問が行 われ、申請者は的確かつ明瞭に説明ができた。

大学院 4年間の研究生活を通して形成された歯科医師および研究者としての資質は、最終試験 合格に資するものであった。申請者の研究能力および科学的素養・態度は学位に値するものと審 査委員全員一致して判断をした。

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