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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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氏 名 津久井 ひ での り 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第595号

学 位 授 与 年 月 日 令和2年3月16日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当

学 位 論 文 名 CD73/アデノシン経路を標的にした免疫放射線療法の基礎的検討 論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 杉 本 英 治

(委 員) 教 授 古 川 雄 祐 准教授 鈴 木 浩 一

論文内容の要旨

1 研究目的

細胞外アデノシンは免疫細胞膜上の特異的受容体を介して強い免疫抑制能を有し、膜抗原CD73 はアデノシン産生系における律速酵素である。放射線照射 (RT) により腫瘍細胞が障害されると、

細胞外に多量のアデノシンが放出されることで、局所の免疫寛容が誘導されている可能性が推察 される。今回、RTに抗CD73抗体を上乗せすることにより、効果的な免疫応答を誘導し、照射腫 瘍の縮小率を高めるとともに、遠達効果 (Abscopal effect) を介して遠隔病変にも抗腫瘍効果を発 揮するのではないか?という作業仮説を設定し、マウスモデルを用いてその正当性を検証するこ とを試みた。また、ヒト術前CRT (chemoradiotherapy) 症例のCD73発現と予後を検討し、実臨床

におけるCD73/アデノシン経路の意義についても検討を加えた。

2 研究方法

大腸癌細胞Colon26の亜株で自然肺転移をきたす細胞株LuM-1 (小栗博士 愛知県立がんセンタ ーより提供) を使用した。LuM-1皮下腫瘍を形成したBALB/cマウスは、接種後8~10日後には 肺に微小転移巣を形成し、4週を過ぎると呼吸不全にて死亡する。

1. LuM-1におけるCD73の発現と腫瘍内アデノシン濃度のRTによる変化

培養LuM-1にRTを行いCD73抗体 (TY/11.8) で染色、その発現の変化をFACSにて定量し た。また、LuM-1皮下腫瘍に対してRTを行い同様の検討を行うとともに、アデノシンの濃度

変化をLC/MS法を用いて測定した。

2. 自然肺転移放射線照射モデルでの検討

LuM-1を皮下接種したマウスに対して、接種後12、14、16日目に4Gy×3回、腫瘍局所に限

局したRTを行った。免疫療法として接種後12、14、16、19、22、25日目に抗CD73抗体 (TY/23: RT+Anti-CD73群) およびRat IgG2a isotype control (clone 2A3; RT+Isotype control群)

200µgの腹腔内投与を付加し、28日目に安楽死させ、皮下腫瘍の重量と肺の肉眼的転移結節個

数を測定した。また、接種後18日目に安楽死させ、腫瘍組織と脾臓細胞を摘出し、免疫細胞 のフェノタイプをFACSにて解析した。

3. ヒト直腸癌臨床検体におけるCD73発現と生存解析

自治医科大学附属病院で2008年から2015年の間に、局所進行直腸癌に対して術前CRTを施行

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後に手術加療を行った64名の患者を対象にCD73の免疫組織学的染色を行った。腫瘍細胞また は間質の染色強度を高発現及び低発現に分類し、CD73発現と無再発生存期間 (RFS)、全生存期 間 (OS)との関連性を解析した。

3 研究成果

1. LuM-1はCD73を発現しており、その発現強度はRTによって増強し (p = 0.016)、同様の傾向 がin vivoでも認められた (p < 0.0001)。また、RT後24時間時のLuM1皮下腫瘍内アデノシン 濃度は有意に上昇し(p = 0.0069)、48 時間後には代謝産物イノシンが有意に上昇していた (p = 0.048)。

2. RT+Anti-CD73群では、RT+Isotype control群と比べ、接種後19日目より腫瘍容積の増大抑制を 認め、28日目の重量は有意に低下していた (p < 0.05)。また、肉眼的転移結節個数も有意に減少 しており (p < 0.05)、半数 (4/8) で肺転移は認めなかった。脾臓内CD4陽性、CD8a陽性細胞に おけるIFN IFN-γ陽性細胞の割合は、RT+Anti-CD73群で有意に高かった (CD4; Mean = 11±1.2%

vs 4.7±1.6%, p = 0.041: CD8a; 16±1.7% vs 6.9±2.3%, p = 0.041)。腫瘍浸潤T細胞においても同様の 傾向が認められた。

3. 術前CRTを受けた直腸癌組織では腫瘍細胞と間質にCD73の発現を認めたが、その染色形態は 症例間で著しく異なっていた。CD73の発現強度でRFSを比較すると、間質高発現群は低発現 群と比較して有意に再発しやすく (p = 0.049)、特に、腫瘍細胞と間質で共に高発現していた群 はその他と比較して非常に再発率が高く( p = 0.0059)、OSも悪かった (生存期間中央値=59.9か 月, p = 0.0077)。

4 考察

LuM-1はCD73を強く発現しており、RTにてCD73の発現強度が増強することが、in vitroとin vivo で確認された。実際に、LC/MS 法を使用してアデノシン濃度を測定したところ、照射後の

LuM-1 腫瘍組織では照射後にアデノシンとアデノシンの安定代謝産物であるイノシンのレベルが

有意に上昇していた。この結果から、放射線照射された腫瘍の微小環境内のアデノシンレベルは、

少なくとも数時間、かなり高値に維持されており、結果としてRTによって誘発される抗腫瘍免疫 応答を減弱させている可能性があることが推測された。

アデノシンは強力な免疫抑制効果を有しており、CD73/アデノシン経路阻害薬は新たな免疫治 療薬として注目を集めているが、担癌個体におけるアデノシンレベルの変化が RT の治療効果に 及ぼす影響に関してはこれまでに検討されていなかった。今回、LuM-1を用いたマウス自然肺転 移モデルにおいて、RTと抗CD73抗体を併用した場合、isotype controlと比較して腫瘍の成長が有 意に抑制されていた。また、鉛遮蔽によりRTの直接影響がない肺の転移個数も有意に減少してい た。これは、局所照射に CD73 抗体を付加することで、全身性免疫反応を引き起こされた結果と 考えられる。事実、RTと抗CD73抗体を併用したマウスの脾臓内T細胞においてIFN-γを産生す る能力が有意に増加しており、腫瘍組織細胞においても同様の傾向が認められた。過去のRTと抗

CTLA-4抗体を併用した免疫放射線療法の実験でも、Abscopal effectが誘発された免疫療法併用群

で脾臓細胞 CD8a 陽性細胞における IFN-γ 陽性細胞の割合が有意に増加する事実が報告されてお り、Abscopal effect を誘発する機序には細胞障害性 T 細胞の活性化が重要な役割を果たしている

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ことを示唆している。

術前CRT症例の免疫染色実験では、腫瘍細胞及び間質の両方に様々なレベルでCD73が発現す ることが確認され、CD73が高発現した症例では、再発率が高く、生存期間が短い傾向が確認され た。マウス実験の結果と合わせると、RTにより腫瘍組織内アデノシンレベルが上昇すると、癌の 免疫逃避機構が増強され、癌の成長や遠隔転移に好都合な環境になることを示唆する結果である と思われる。

近年のがん免疫療法において、腫瘍特異的抗原を宿主の獲得免疫系に提示させる目的で RT を 応用する試みがなされてきている。RTに適切な免疫制御を付加した免疫放射線療法は、進行癌に 対する有望な治療法に発展する可能性があると思われる。本研究結果は、放射線照射された腫瘍 から放出されたアデノシンにより抗腫瘍効果が低下する状況を CD73 の機能的阻害により回復で きる可能性があることを示唆している。

5 結論

RTと抗CD73抗体との併用療法が、進行直腸癌患者に対する局所及び遠隔転移巣を制御する上 で、有望な術前治療になりうると考えられた。

論文審査の結果の要旨

論文は、放射線照射(RT) された腫瘍から放出されたアデノシンにより抗腫瘍作用が低下する状 況をCD73の機能的阻害により回復できる可能性を示した。マウスのIn vitro/In vivoの実験では、

RTにより腫瘍細胞のCD73発現が増強すること、腫瘍細胞(LuM-1)のCD73はアデノシン産生 能を有し、RTによりLuM-1の酵素活性が増加すること、RT単独では転移抑制効果がなく、また CD73抗体単独でも抗腫瘍効果がないこと、RTにCD73抗体を組み合わせることにより非照射部 の転移抑制効果があること、RTとCD73抗体の併用により癌に対するT細胞応答が活性化される こと、以上を示した。ヒトの直腸癌症例では、腫瘍細胞と腫瘍間質で CD73 が高発現した群では 予後が悪いこと、癌の病期とCD73発現が生存期間に関する予後因子となることを示した。

遠達効果 Abscopal effect増幅に関してはこれまでにPD1経路、CTLA4経路、樹状細胞経路での 先行研究があるが、A2aR経路での報告はない。本研究はA2aR経路を阻害している点が独創的で ある。また、CD73抗体が現在の局所進行大腸癌の標準的治療法である術前化学放射線療法に代わ る新規治療法になりうることも示した。

一次審査において指摘された抗CD73抗体併用による肺転移抑制、A2aR経路阻害剤による肺転 移抑制と転移巣でのアデノシンの低下について、実験を繰り返して証明された。転移巣でのアデ ノシン低下を直接証明はできなかったものの、組織のリン酸濃度測定、腫瘍組織内でのアデノシ ン代謝産物であるイノシンの測定を行い、RTにより腫瘍内のアデノシンが上昇していることを間 接的にではあるが証明した。また、抗CD73抗体併用による肺転移抑制実験では、RTの照射法を 改善調整して、転移抑制効果を明確に証明した。

本研究は放射線照射とアデノシン阻害により、腫瘍細胞から放出されたアデノシンによる免疫 寛容を阻害できることを周到な実験とヒトにおける観察で明らかにしている。実験はよくデザイ ンされ、論文は独自性が高く、合格と判定された。

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最終試験の結果の要旨

最終試験ではまず癌治療における免疫応答の重要性から研究に至った動機についての説明のあ と、癌(マウス大腸癌)で、放射線照射(RT)にアデノシンシグナルを阻害する治療法を上乗せする ことにより、免疫応答を誘導して、照射部の腫瘍縮小と非照射部の遠達効果 Abscopal effectを誘 導できるという作業仮説を提示し、それに元ずくマウスのin vivoならびにin vitroの複数の実験、

ヒトの大腸癌におけるCD73発現と予後についての解析結果を示した。

マウスのIn vitro/In vivoの実験では、RTにより腫瘍細胞のCD73発現が増強すること、腫瘍細 胞(LuM-1)のCD73はアデノシン産生能を有し、RTによりLuM-1の酵素活性が増加すること、

RT単独では転移抑制効果がなく、またCD73抗体単独でも抗腫瘍効果がないこと、RTにCD73抗 体を組み合わせることにより非照射部の転移抑制効果があること、RTにCD73抗体併用により癌 に対するT細胞応答が活性化されること、以上を証明した。また、転移巣でのアデノシン低下を 直接証明はできなかったものの、組織のリン酸濃度測定、腫瘍組織内でのアデノシン代謝産物 イ ノシンの測定を行い、RTにより腫瘍内のアデノシンが上昇していることを証明した。

抗CD73抗体併用による肺転移抑制実験では、RTの照射法を改善調整して、転移抑制効果を明 確に証明した。ヒトの直腸癌症例では、腫瘍と間質でCD73が高発現した群では予後が悪いこと、

また、癌の病期とCD73発現が生存期間に関する予後因子となることを示した。

Abscopal effect増幅に関してはPD1経路、CTLA4経路、樹状細胞経路での先行研究があるが、

A2aR 経路での報告がない。本研究は A2aR経路を阻害している点が独創的である。また、CD73 抗体が現在の局所進行大腸癌の標準的治療法である術前化学放射線療法に代わる新規治療法にな りうることを示した。

抗 CD73 抗体併用療法が大腸癌以外の癌腫にも使える可能性について、T 細胞を抑制する経路 が複数あることからヒトでも単一の経路の阻害により同様の効果が得られるかどうか、について 質疑された。また、使用したマウス大腸癌細胞株のマイクロサテライト不安定性 (Microsatellite instability: MSI)について言及していない点が指摘された。この点については、マウス大腸癌細胞株

Colon26ではRTによるCD73の発現がないことを追加で示した。さらに、今回の腫瘍でPD1およ

びPDL1についての検討の有無について、氏は検討してあると回答した。

臨床例の解析では、間質の CD73の意義はなにかとの質問に対して、CD73はfibroblastに発現 し腫瘍制御に重要ではないかという見解を示した。氏はそれぞれの質問に対して、実験の限界等 をよく理解して回答した。また、どの質問に対しても真摯に回答し、腫瘍免疫学全般において、

十分な知識があると考えられた。

提出論文と最終試験の結果、全員一致で合格と判定された。

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