2019年度・線形代数学・同演義II 2019年12月12日
§10 線形空間の内積,対称変換, Hermite
エ ル ミ ー ト変換
今回の内容は教科書のpp. 165–170(ただしpp. 168–169の直交行列に関する記述を除 く)に相当します.
以下の問題で,𝐾 とはRまたはCのことである.
10.1 𝑉 を内積の与えられた𝐾 上の線形空間とし,𝒖1,𝒖2,…,𝒖𝑘 をいずれも0でない𝑉 のベクトルとする.いま,𝒖1,𝒖2,…,𝒖𝑘 からどの2個を選んでも,それらは互いに直 交していると仮定する.そのとき,𝒖1,𝒖2,…,𝒖𝑘 は線形独立であることを証明せよ.
10.2 𝑉 =R[𝑥]3(3次以下の実数係数多項式全部のなす実線形空間)に,
(𝑓(𝑥), 𝑔(𝑥)) =
∫ 1
−1
𝑓(𝑥)𝑔(𝑥)𝑑𝑥
によって内積を与える.いま,𝑘 =0,1,2,3に対し,𝑘 次多項式𝐹𝑘(𝑥)を 𝐹𝑘(𝑥) =
r2𝑘+1 2
1 2𝑘 ·𝑘!
𝑑𝑘
𝑑𝑥𝑘(𝑥2−1)𝑘
で定義する.𝐹0(𝑥),𝐹1(𝑥),𝐹2(𝑥),𝐹3(𝑥)が正規直交系であることを確かめよ.(ゆえ に前問の結果からこれらは線形独立で,R[𝑥]3は4次元だから正規直交基底をなす.)
10.3 [教科書第6章章末問題・問題1 (1)(p. 200)に相当する問題.]
引きつづき前問の状況を考える.𝑘 =0,1,2,3に対し 𝑓𝑘(𝑥) = 𝑥𝑘 とおく.𝑓0(𝑥), 𝑓1(𝑥),𝑓2(𝑥),𝑓3(𝑥) から,以下のようにして,𝑉 の正規直交系 ℎ0(𝑥),ℎ1(𝑥),ℎ2(𝑥), ℎ3(𝑥)を構成する(Gram–Schmidtの直交化法).
𝑔0(𝑥) = 𝑓0(𝑥), ℎ0(𝑥) = 1
∥𝑔0(𝑥)∥𝑔0(𝑥), 𝑔1(𝑥) = 𝑓1(𝑥) − (𝑓1(𝑥), ℎ0(𝑥))ℎ0(𝑥), ℎ1(𝑥) = 1
∥𝑔1(𝑥)∥𝑔1(𝑥), 𝑔2(𝑥) = 𝑓2(𝑥) − (𝑓2(𝑥), ℎ0(𝑥))ℎ0(𝑥) − (𝑓2(𝑥), ℎ1(𝑥))ℎ1(𝑥), ℎ2(𝑥) = 1
∥𝑔2(𝑥)∥𝑔2(𝑥), 𝑔3(𝑥) = 𝑓3(𝑥) −
Õ2 𝑖=0
(𝑓3(𝑥), ℎ𝑖(𝑥))ℎ𝑖(𝑥), ℎ3(𝑥) = 1
∥𝑔3(𝑥)∥𝑔3(𝑥).
上記の手続きを実際に実行せよ.そして,得られるℎ0(𝑥),ℎ1(𝑥),ℎ2(𝑥),ℎ3(𝑥)が,前 問の𝐹0(𝑥),𝐹1(𝑥),𝐹2(𝑥),𝐹3(𝑥) に一致することを確かめよ.
10.4 一般に,内積をもつ線形空間𝑉 におけるGram–Schmidtの直交化法は次のように記 述される.線形独立なベクトルの組𝒖1,𝒖2,…,𝒖𝑘 ∈𝑉 が与えられたとき,
𝒗1=𝒖1, 𝒆1= 1
∥𝒗1∥𝒗1, 𝒗2=𝒖2− (𝒖2,𝒆1)𝒆1, 𝒆2= 1
∥𝒗2∥𝒗2, 𝒗3=𝒖3− (𝒖3,𝒆1)𝒆1− (𝒖3,𝒆2)𝒆2, 𝒆3= 1
∥𝒗3∥𝒗3, . . . と定めてゆく.一般に,𝑗 =2,3,…,𝑘 に対して
𝒗𝑗 =𝒖𝑗 −
𝑗−1
Õ
𝑖=1
(𝒖𝑗,𝒆𝑖)𝒆𝑖, 𝒆𝑗 = 1
∥𝒗𝑗∥𝒗𝑗.
(注意:複素線形空間の場合は(𝒖𝑗,𝒆𝑖)と(𝒆𝑖,𝒖𝑗) は異なる!)
(1) 上記の手続きで得られる𝒆1,𝒆2,…,𝒆𝑘 が正規直交系となることを証明せよ.
(2) 数ベクトル空間C4に標準的な内積を与える.
𝒙1=©
« 1
𝑖 0 𝑖 ª®®®
¬
, 𝒙2=©
« 𝑖 1 0 1 ª®®®
¬
, 𝒙3 =©
« 0 𝑖 1+𝑖
0 ª®®®
¬
にGram–Schmidtの直交化法を適用して正規直交系をつくれ.