1.I N T R O D U C T I O N
このレポートの目的:国際排出権取引に関する締約国会議(COP)の決定において重要 となるいくつかの論点(issues)を明らかにすること。
→論点:取引に参加する主体 :取引の国内システム
・・・国際排出権取引システムの成否に影響を与えるパラメーターである、environmental effectivenessや、economic efficiency を考えたときに重要となる。
→environmental effectivenessやeconomic efficiency のための条件
2.C O N C E P T U A L M O D E L O F A T R A D I N G S Y S T E M
このレポートの中で、議論のもととなっている、conceptual modelについて 論点)
・ システム全体での排出制限:
・ 取引可能な単位(tradable units):
・ 対象ガスとシンク(Gases and sinks):
・ 特定のsourcesの取引を制限する:
・ 取引を開始するタイミング:
・ 排出枠の有効期限:
・ traders:
・ 国内取引システム:
・ accounting と記録(recording)の国内システム(table1についてなど):
・ 国際的なシステム:
3 P A R T I C I P A I O N B Y P A R T I E S A N D L E G A L E N T I T I E S
3 . 1 P a r t i c i p a t i o n b y P a r t i e s
・ 各国政府間で排出権取引は行われる
3.2 P a r t i c i p a t i o n b y L e g a l E n t i t i e s
・ 各国は国内主体に温室効果ガス排出削減の責任を負わせるべき→国際的な取引も認める。
(17条には国内主体が国際排出権取引に参加できないとは書かれていない)
国内主体が取引に参加する事によって得られるメリット:参加主体の増加、市場効率もあ がる。独占による市場価格の影響をおさえる、より効果的な削減オプションを開拓するイ ンセンティブを与える、取引コストの低下
3.3 A u t h o r i z a t i o n t o p a r t i c i p a t e i n i n t e r n a t i o n a l t r a d i n g
・国際排出権取引の参加主体の決定は各国政府に任せる(最低限の国際的条件も必要)。
・国際取引に参加可能な主体:企業、地方自治体、NGO、個人等
*考えられる主な参加者 削減義務のある参加者
・各国政府は参加主体の排出枠保有量や移転を記録する必要性がある。
問題点:国に取引の適格性が無かった際の国内主体の参加問題
4.N A T I O N A L A N D I N T E R N A T I O N A L S Y S T E M S
4.1 C o m p a t i b i l i t y a m o n g n a t i o n a l s y s t e m
・国内における排出権取引システムが国際取引の上で重要な役割となる。
国内排出権取引制度のもとで政府は…
*取引参加主体の排出量を制限し、排出枠を分配する
*取引参加主体の排出のモニタリング(排出枠保有量のチェックも含む)する
・国内システムにおける取引制度(記録のシステム等)は、各国の状況に応じて、多様に なってもよい。しかし作る際には国際的なガイドラインを基にする事が好ましい。
例えば・・・
1.取引された排出枠は容易に他国の記録に移転されるべき
2.取引できる排出枠は国際的に一貫したフォーマットでのID番号をもつべき 3.排出枠をトラッキングする必要性がある
4.2 A c c o u n t i n g f o r c h a n g e s t o a s s i g n e d a m o u n t s
・国際機関においては、排出枠の移転、各国の増減を確認できなければならない。その為 にはまず国内における記録が重要となる。→各国が国際機関に報告
・排出権の記録表の必要性…一年毎に提出
更に細かい期間での報告: 目標値に達する為の進行状況、将来の排出枠需給の指標に 役立つ。非遵守の可能性のリスクをみる為
4.3 V e r i f y i n g o w n e r s h i p
・排出枠の所有権確認の必要性:国内取引制度において必要となる。また、効果的で透明 性のある排出権取引市場においては欠かせない。
・所有権確認の為に必要な情報:排出枠のID番号、売り手と買手、その国の国内制度 これらの情報は、国際機関に報告されるべき。→機関が設立されていない場合には 各国がこれらの情報を管理する。
・所有権確認の為の国際条件:国内において、排出枠移転をチェック、記録ができる事。
4.4 M i n i m u m f u n c t i o n s f o r i n t e r n a t i o n a l s y s t e m s
・国際機関:国際取引による各国の削減目標値の変化を記録し、チェックする。これらの 国際記録は、各国の報告の不一致みつけだす。
・将来期待される国際システム:取引された排出枠を電子報告で受け取り、コンピュータ ーによって全て確認することができる。
・国際機関の役割:排出枠取引量の不一致の指摘、取引管理の単純化、国際登録の統合等
・問題点:この機関の設立が容易ではないこと。
・
5.E N H A N C I N G C O M P L I A N C E T H R O U G H T H E T R A D I N G S Y S T E M
(排出権取引によって約束の達成を確実にする)
・排出権取引には、達成を促す「予防的措置」と未達成に対する「対処」が非常に重要。
5.1 C o m m i t m e n t(約束)
・付属書Ⅰ国への法的拘束力を強める為には、未達成に対する対処が必要。
・国際排出権取引には、達成を評価する「情報を提供する義務」も重要
5.2 P r e v e n t i v e a p p r o a c h t o e n c o u r a g e c o m p l i a n c e (約束達成の為の予防的措置) 5 . 2 . 1 E l i g i b i l i t y R e q u i r e m e n t s (適格性要求)
・取引に参加したい付属書Ⅰ国は、排出データの質や報告など最低限の適格性要求を 満たす必要がある。
…適格性要求の例(UNFCCC補助会合での提案)
*京都議定書の5条および7条を満たすこと
*取引された排出枠を記録し事後確認する国内制度を設立・維持
・議定書 5 条では、取引参加の希望の有無に関わらず国内排出量を監視および推計する国 内制度が要求されている。取引を希望する国にとっては、5条の要求だけでなく、取引さ れた排出枠をアカウントし記録する制度の用意もあることが大切。
→排出量のデータ等の正確性(質)が向上すると、取引がより円滑に行われること になる。(ただし、要求があまりに厳し過ぎると取引へ参加するインセンティブが 低下する)
・国内排出権取引は国内の取引主体の(割り当ての)約束達成を促し、その結果その国の 議定書の約束達成にも好影響を与える。
5 . 2 . 2 C o m p l i a n c e r e s e r v e
・各国の排出量と割当量が守られるよう、年度の間か末に、割当量の一部を「予備量」と して取っておく事を要求する必要があるかも知れない。
「予備量」の策定方法は以下の二つ。
1)割当量のうちの一定量…割当量の1/5とすると、約束期間に5億㌧の割当量が ある場合、2008年には1億㌧、2009年には2億㌧の 排出枠を取っておく(減っていれば、翌年度増やせる)
2)実際の排出量増加分に応じて…毎年度末にその年の排出量分の排出枠を 用意する。(実際の値に対応)
5.3 P o s s i b l e r e s p o n s e s t o n o n - c o m p l i a n c e (未達成に対する対応) 5.3.1 L i a b i l i t y (責任)
・排出権取引によって各国の約束を達成する場合、その責任を明確にする必要がある。
議論されている責任は以下の3つ。
1)売り手責任(Issuer Liability)
・京都議定書では、各国は取引によって調整した割当量によって定義されるように???
・売り手が約束未達成になっても、買い手は購入した排出枠を自らの割当量に加えること が可能。
・排出権取引が、主に国内で効果的な監視と管理がなされている主体間で行われる場合、
約束が未達成になる可能性が低いので、売り手責任が簡素かつ有効な手段となる。
2)買い手責任(Buyer Liability)
・売り手が約束未達成になった場合、購入した排出枠は無効となり、買い手は自らの割り 当て量に加えることができなくなる。
・約束達成の見込みが確かでない国の排出権は買い手に取ってリスクが大きい為、市場で 評価を下げられる。
・運営の面では、売り手責任より複雑になる。
理由)取引排出権発行国は取引の結果、ネットで売り手になり、査定方法の変化や 国内の割り当てを受ける大きな主体の一つが未達成になるなどの理由で約束 未達成になる可能性が高い。その場合、どの取引枠を無効にするのかが難し い。その国全体で約束未達成になった場合に、達成した国内の主体が罰を受 けないよう、政府が最初に売った排出枠を無効にするのが良いのでは?一国 が未達成になると他の国も未達成になってしまう連鎖反応も起こる。
→市場の信頼性が低下し取引自体が円滑に進まなくなる可能性がある。
3)分担または共同責任(Shared or double Liability)
・未達成が発覚した場合には、取引された排出枠の量が減らされる。
例)排出枠の60%のみが買い手の割当量に追加が認められる(残りの40%は売り 手の約束達成に使用される)この措置は、その国の全ての取引排出枠に適用 されるか、または、割当量を超えた直近の取引のみに適用。
・この責任の割り当て方法は、共同実施の際にも適用される可能性がある。
5 . 3 . 2 C o n s e r v a t i v e o r e s c r o w a p p r o a c h
・未達成に対する措置として、取引される排出枠量の推計したり、約束達成まで取引から 資金を貯めておく方法もある。約束達成の為のコストが増加し取引へのインセンティブ も減少するが、排出目録の提出や報告などの義務がなされなかった場合に有効。
1)Conservative Approach:取引される排出枠の一部をあらかじめ貯めておき、自らの 約束が未達成になった際に使う。
2)Escrow Approach:排出枠取引によって売り手が獲得した利益の一部を貯めておき、
約束が達成されれば売り手に返却し、未達成の場合には罰とし て国際基金に回され、売り手が自らの約束を達成する為に他 から排出枠を買うのに使われる。
5 . 3 . 3 S u s p e n s i o n o f t r a d i n g p r i v i l e g e s(貿易の利益の剥奪)
排出権取引の適性に満たなかった場合や排出割当量を超えた場合には、国際取引に支障を きたすようにする→約束達成や国内制度の充実へのインセンティブに。
6.C O N C L U S I O N
・今後決められていかなければならない論点は、相互に密接に関係している
*取引主体の参加と国内制度
*国内の記録システムと取引された量のアカウントや所有権の移転
*国内取引制度と国際取引制度
・よりいっそうの分析と議論が必要な分野
*各国の制度に対する国際的な要求の度合い
*各国内制度の調整 などなど・・
・排出権取引のルールは議定書を批准するか否かの判断材料になるため、なるべく早く枠 組みを作ることが肝心。
*参考文献*
・排出権取引・共同実施/CDMの論点整理 共同実施等検討委員会
・京都メカニズムに関する文書の条約事務局への提出について
平成12年2月 通産省HPよりhttp://www.miti.go.jp/kohosys/topics/10000082/
・排出量取引ハンドブック Emissions Trading Education Initiative
GISPRI HPより http://www.gispri.or.jp/kankyo/unfccc/h_index.html