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2. 1 海洋発光生物の分類と主な種類

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海洋発光生物のサイエンス

柄 谷 肇*

1  ・はじめに

海は発光生物の母といわれるほどに動物門及び 植物門にまたがって多種多様な発光生物を擁して いる。夜間に私たちが裸眼で観察できる光の原因 生物は、主に夜光虫などの鞭毛藻類、甲殻類ゥミ

ホタルそして軟体動物頭足綱に分類されるホタル イカである。瀬戸内海など夏の磯において、夜間 ウミホタルの無数の輝きを水面に見ることかでき る。ホタルイカの発光は春先の富山県滑川市の風 物詩となっている。カリブ海諸国のいくつかの湾 には発光性鞭毛藻類の永続的な繁殖地かある。

Phosphorescent bays と名づけられている場所も あり、幻想的な光の芸術と接することができる。

これらの光の原因生物の他、ヒトの目にほとんど 映ることのない発光生物が茫洋たる大海において プランクトンあるいはネクトンとして生息する。

本稿において、海洋発光生物の多様性とその分布 及び生物発光の化学について概説する。特に、後 半では原核単細胞発光微生物に焦点を定めながら、

生態、生理及び遺伝子 ・タンパク質の観点から発 光生物の不思議にせまる。

2.  1  海洋発光生物の分類と主な種類

これまでによく知られている海洋発光生物の主 な生物名を分類してTable 1に示す。

Table 1に示した生物名はそれぞれの分類門に

含まれる種類の一部かあるいは総称(発光微生物、

ウミホタルなど)を示している。発光は 生物自身 が作り出す反応基質と発光酵素との反応によって 生産される化学発光として考えることができる。

生物の種類を問わず、反応基質 と発光酵素はそれ ぞれルシフェリン及びルシフェラーゼと総称され る。したがって、ルシフェリンとルシフェラーゼ は、たとえば、ウミホタルルシフェリン、微生物 ルシフェラーゼのように、生物名を特定すること によって区別する。

発光魚類は主たる発光性脊椎動物であり、

Table 1に示した種類以外にも内因性のルシフェ

ラーゼ発光系を有する多くの発光魚類が知られて いる。発光魚類の一部には感染した発光微生物を 特殊な発光器官において培蓑し 、二次発光として 光を放射する種類が存在する。日本の沿岸 でも水 揚げされるヒイラギがその好例である(文献l )。

物物 物物 物物 物物 物物 類動 動動 動動 動動 動動 動 菌生 腸櫛 手形 足体 皮索 髄 分細 原腔 有触 環節 軟棘 原脊

主な生物名

発光細菌(発光微生物)

ヤコウチュー,ウズオビムシ

オワンクラゲ,オキクラゲ,ウミシイタケ オピクラゲ,ウリクラゲ,アミガサクラゲ

ヒラハコケムシ

シリス,ウロコムシ,オヨギゴカイ

ウミホタル,発光コペポーダ,オキアミ,アキアミ

ホタルイカ,発光イカ,コウモリダコ,シマダコ,カモメガイ クモヒトデ, ウミシダ,ヒカリクモヒトデ

ヒカリボヤ,ギボシムシ,サルパ

魚類(ハダカイワシ,チョウチンアンコウ,リュウグウノッカイ,発光ザメ)

Table 1  海洋発光生物の分類と主な生物名

*京都工芸繊維大学

98  海 洋 化 学 研 究 第17巻第2号 平 成1611

(2)

海綿動物も発光プランクトンなどによる 二次発光 を発することが報告 されている。

2 .  2  分布と光の色

海洋発光生物の分布は海洋に広く遍在している。

ホタルイカのように 産卵期に深海から 表層 に垂直 移動する行動家もいる。光合成機能を有する発光 性の鞭毛藻類はサーカディアンリズムを示し、昼 間は光合成のために表層 に浮上 し、夜間は栄 養 を 取り込むために深屠へと移動する(文献2 )。 深 海魚に関しては、これまでに行われた調杏から、

調査個体数の内少なくとも80‑90%は発光性である と考えられている。また、ソコダラのなかには海 底数千m に横たわり、 二次発光によって光を発す

るものもいる。

海洋発光生物の種類は多様性に 富 むが、光の波 長分布を調べてみると、 一部の例外を除いて光の 極大値はおおよそ460‑490 n m に生じ、且つ広い幅 の波長分布を示す(文献3 )。 深海には魚類だけ ではなく発光ダコ (Stauroteuthis syrtensis) か 発見されている。吸盤の細胞の一部が発光細胞ヘ と変化しており、発光極大は海水の 最大光透過波

長である4 7 5 n mに一致することから、通 信手段と

しての発光の利用が考えられている(文献4 )。 軟 体動物のなかでも前記 の発光するタコは希少であ り、深海ならではの存在かもしれない。深海魚 の ドラゴンフィッシュ (Malacosteus niger) は青 色 発光だけでなく目の付近に発光器があり珍しい赤 色発光(極大発光波長, 705nm) を放射する(文 献5)。Malacosteus nigerは光受容体としてクロ

ロフィル誘導体(吸収極大波長, 667nm) を持っ ており、赤色発光機能が通信 に利用されているこ とが示唆されている。 一般に、海洋においてネク トン性の発光生物を 自然の状態で撮影することは 困難な作業である。しかし最近になって、ヒイラ ギに関しては佐々木(文献6) 及び樫村(文献7 )

て有益 な知見を与えた。

陸にはホタル、発光キノコなどの発光生物が存 在する。しかしながら、陸と海洋における生息環 境の違いからも予想されるように、陸性と海洋性 の発光生物間に隔絶がある。このことと関連して ルシフェラーゼをコードする遺伝子シーケンスに おける相同性は小さく、ルシフェラーゼは独立的 に発生 し、進化してきたと考えられている(文献 8 )。しかしながら、海洋の発光生物間 において、

ルシフェリンについては共通項もみうけられる。

たとえば発光魚 キンメモドキは自身のルシフェラー ゼがウミホタルルシフェリンを利用して光を産し ている。オワンクラゲはルシフェリンを餌として 取り入れていることが飼育実験において検証され ている。たとえばセレンテラジンを 与 えた非発光 性ミズクラゲを餌としてあたえるとオワンクラゲ は発光を再開する(文献9)。このことは食物連鎖 を通してルシフェリンが受け継がれていることを 示唆する。 一つの生物種あるいは近縁の生物種間 においては、ルシフェラーゼ遺伝子のクローニン グ、タンパク質分子の高次構造などの研究に甚づ いて進化の過程をも包括して発光生物間の関連性 を解き明かす研究が行われている。

2.  3  発光反応

生物発光はルシフェラーゼを触媒とする酵索反 応であり、且づ酸素によるルシフェリンの酸化反 応を含む。多くの生物発光反応においてジオキセ タノン構造を有するルシフェラーゼ中間体が生 じ る。次にこれが解裂することによって、 電子励起 状態の発光種が生成し、この緩和過程において余 剰のエネルギーが生物発光となる。

[Luciferase] 

LH2+02•~• p• •~• P+ light  (1)  が撮影 に成功しており、発光生物の生態研究にとっ

(3)

えられる。微生物ルシフェラーゼ反応は例外で、

過酸化物構造を経るがジオキセタンノン中間体は 形成されない。反応生成物P は必ずしも安定であ るとは限らない。発光微生物の場合、 P はさらに 分解してルシフェラーゼと遊離の酸化型フラビン モノヌクレオチド (FMN) を与える。このような 場合、生物発光スペクトルと反応生成物の蛍光ス

ペクトルは一致しない。

酸化反応において酸素に代えて過酸化水素を用 いる 場合もある。 例としてヒカリゴカイ(ツバサ ゴカイ)をあげることができる。微生物ルシフェ ラーゼ反応においても過酸化水素感受性が実験的 に認められている(文献10)。その他の活性酸素 種 が果たしてルシフェラーゼに利用されるのかにつ いては、ルシフェラーゼ機能と 活性酸素毒除去工 ンジンの観点からも典味深い課題である。これに ついてはまた、発光基質ルシフェリンの観点から 考察することも可能である。たとえばセレンテラ ジンが強い抗酸化剤として作用することも酸素毒 性消去エンジンとしての機能を示唆している(文 献11)

ルシフェラーゼと複合体を形成する L比 の 生 成 には生物間において違いがみられる。発光微生物 の場合、 L比は還元型フラビンモノヌクレオチド

( F M N Hりであり、呼吸鎖電 子 フロー系の 還元カ

を費やして酸化型 F M N より F M N H ,が生成され る。 p Hの低下がL比 の 生 成 を 促 す ル シ フ ェ ラ ー ゼ反応も 存在する。サ ーカディアンリズムを 示す 発 光 性 鞭 毛 藻 類Gonyaulax polyedraの細胞内に は約400個の発光性オルガネラ(シンチロン)が存 在する。その中でLH2は安定な状態で他のタンパ ク質と結合しており、水素イオン濃度が上昇する とルシフェラーゼ反応に供せられる L比 の 遊 離 が 促進され、結果的に青 色フラッシュ光 ( 100 ms) 

を発する 。シンチ ロンはサーカディアンリズムに 従って破壊され、そして再生産 される(文献12)。 金属イオンが トリガーとなる 生物発光は、セレ

100 

ンテラジンをルシフェリンとするオワンクラゲの 発光反応にみることができる。部分的にジオキセ タン構造を有する発光基質ー オワンクラゲルシフェ ラーゼ中間体はカルシウムイオンの関与によ って タンパク質の構造変化と脱炭酸が起こり、励起発 光種の生成が促進される(文献13)。

ルシフェラ ーゼ反応に 、さらに内 因性の蛍光タ ンパク質 (F) を利用して光の波長分布を変化さ せる発光生物が存在する(式(2))。この場合、蛍 光タンパク質の蛍光が支配的な発光成分となるこ とも、またルシフェラーゼ反応からの光と合成さ れた光として放射されることもある。

p•-F F+light  (2) 

すなわち、電子励起状態の反応生成物P (高 エ ネルギー中間体の場合もある)の存在下において、

蛍光タンパク質が増感さ れる。 全反応の生物発光 量子収率( ¢8し)は次式で表される。

¢B L =  ¢ぷ ¢ぉX </>認nsX  </> F,n  (3) 

式(3)において、¢, と¢臼はP の生成収率と励 起状態のp (P・)の生成収率、 ¢s e n s は増感効率そ

が観察される代表的な発光生物は緑色蛍光タンパ

ク質 (GFP) を産生する上述のオワンクラゲであ

る(文献13)。オワンクラゲルシフェラーゼ反応で 生 じる光の極大波長は約470nmであるが、この反

応にG F P が関与すると励起エネルギー移動に基

づいて極大波長は約510nmへとシフトする。この 発光色の原因となる オワンクラゲG F Pをコード する追伝子はクローニングされ、蛍光バイオイメー ジングのためのリポータ遺伝子として各界で盛ん に利用されている(文献14)。

一部の種類の発光微生物もまた蛍光タンパク質 がルシフェラーゼ反応に関与して発光の波長分布

海 洋 化 学 研 究 第17巻第2号 平 成1611

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を変化させる。発光微生物の蛍光タンパク質はル シフェラーゼ反応に関与し、発光の波長分布だけ でなく、そのキネティックスをも変化させる。発 光微生物は単細胞生物でありながら、発光変調の 機序機作は細胞の呼吸活性、細胞密度、細胞周期 などと絡みあい大変複雑である。発光微生物の発 光変調については後述する。

生物工ネルギー論の観点から 生物発光反応を考 えることは重要である。式 (1) の発光種生成過程は 一般に発熱過程である。最終的な発熱過程にお い て、たとえば波長500nmの光が放射された場合、

この光量子1 mo!のエネルギーはおよそ240 kJで あり、生理的条件下で1 mo!のA T Pから A D P

の加水分解で放出されるエネルギーの約 5倍に相

当する。外部から惹起光を照射されることもなく、

励起状態生成のためのエネルギーはいかにしてル シフェラーゼ反応に供給されるのか。ひとつの解 は呼吸鎖の還元力である。発光微生物の場合、細 胞内可溶性タンパク質の約 5%はルシフェラーゼ である(文献15)。したがってルシフェラーゼの生 合成と発光反応 に要するエネルギーは細胞代謝に 要するエネルギーの相 当部分を占めることが予想 される。このことは、発光変調とともに、生物発 光か単なる余剰エネルギーの消費エンジンではな

いことを示唆している。

2.  4  プランクトンとしての発光微生物

これより話題を海洋発光微生物に絞りながら、

Depth/m 

100 50  200 300  400 500  600 700  7 5 0   1000 800  1250  1500  2000  4000  5000 

L 10  ominous colony forming units  20  30  40  50 

Fig.  1  西部太平洋における発光微生物の垂直分布.サンプリングサイト(北端と南端を示す)

(S2, 24°34'N; 143°40'E: S12,  24°59'S;  162°00'E). 

(5)

海洋における分布と多彩な発光の特徴を述べる。

Fig.1は西部太平洋(北緯24度〜南緯24度、東経

143度〜東経162度)において 著者らが行っ た発光 微生物の垂廂サンプリングの結果を示す (KH‑00‑

1白鳳丸研究航海)。 Fig.1の数値は海水l O O m Lか ら分離したプランクトン性発光微生物の個数であ り、 11サンプリングステーションで得られた数値 の平均値である。外洋では、深度を変数とする個 数に差は生じるがすべてのサイトにおいて似通っ た分布パターンを描くことができる。いくつかの ステーションでは、表層から海底に到るまで、採 水したすべての海水から発光微生物を分離した。

1995年の研究航海(白鳳丸KH‑95‑2研究航海)で は琉球海溝深度7450mの 深 層 水 か ら 発 光 微 生 物 Photobacterium phosphoreumを採集した。これ までの調査からは、太陽光線がほとんど届かない 200mよりも深い海水に発光微生物は比較的多く生 息していることがわかった。さらに、水深が増す につれて一般微生物に対する発光微生物の割合が 増大することも見出している。また、発光の色

(生物発光スペクトル)と深度の関係には次の傾向 がみられた。すなわち、表層水あるいは比較的浅 い海から採集 した発光微生物は4 9 0 n m付近に 発光 極大を示すことが多く、 一方、深海より採集した ものの極大波長は約475 n mへと 青方偏移している。

青 方 偏 移 を 示 す こ と は 主 た る 発 光 微 生 物 が Photobacterium phosphoreumであることを 示唆 する。大西洋プエルトリコ沖で行われた調査にお いても、 100mまでの浅い海域において4 9 0 n m付 近の発光を照射する Vibrio属の発光微生物が多く 採集されている(文献16)。さらに、沿岸では発光 微生物の分布に季節変動がみられ、水温だけでな く、塩分濃度、溶存有機物濃度の変化か季節変動 の原因であると考えられている。このような季節 変動は深海では小さいものと予想される。

2.  1で述べたように、発光微生物はプランク

トンとして存在するだけでなく、ある種の魚類や

102 

イカなどに宿主特異的な相利共生菌としても存在 する(文献17)。宿主は発光微生物を培養する特殊 な発光器官を有している。発光微生物は単位体積 当たりの密度が高いとき、オ ートインディーサー とよぶ化学物質の作用によってルシフェラーゼの 合成が促進される(文献18)。宿主の発光器官内で はこの条件を満たす高細胞密度環境が維持されて いる。共生発光器官内の微生物は日毎にまわりの 海水中に放出され、残った共生発光微生物が再び 発光器官内で増硝を行う。共生発光における宿主 特異的な関係は、発光がまさに相利を可能とする 手段であるこ とを示唆するが、魚類やイカが環境 中の 多くの微生物のなかからなぜ特定の発光微生 物を選択し、特異的な共生を実現するのか、その メカニズムはよくわかっていない。この課題に対 しては、ダ ンゴ イカと V.Jischeriの共生系(文献 19) あるいは、ヒイラギと P. leiognathiの共生系

(文献20) か感染実験モデルとして確立されており、

今後の進展が期待される。

宿主より放出された発光微生物は一時的に海水 の発光微生物密度を高めることとなり、宿主の幼 生へ水平伝搬される。しかし 、放出された発光微 生物か数時間にわたって光を発し続けるのかにつ いては観察例かない。大海において、プランクト ンとして浮遊するミクロンサイズの発光微生物が 発光体でありえるのか、今後の研究課題としたい。

2.  5  微生物発光の変調

深海性の発光微生物で容易に認められるように、

発光微生物はルシフェラーゼ反応からの光(入m a x

4 9 0 n m ) とは異なる色の光を放射することがあ

る。蛍光性ルマジンタンパク質 (LumP) ( M ,   22 kDa) を合成するPhotobacterium属はその代 表例であり、 L u m Pがin vivoエミッター(入max 475 n m ) となる(文献21)。

20℃以下の低温海水を好む黄色発光微生物 V.

fischeri strain Y lもまた顕著な発光変調を引き起

海 洋 化 学 研 究 第17巻第2号 平 成1611

(6)

こす。著者ら はV.fischeri Y  1は多様な蛍光タン パク質を産生する ことを見出 してお り(文献22)、 蛍光タンパク質の分子機能の観点か らだけでなく、

発光生理の観点からも V. fischeri  Y lは変幻自在 の発光微生物であるといえる。黄色発光の原因と なる蛍光タンパク質は黄色蛍光タンパク質と称し、

フラビン類を補欠分子族とする分子量約22 k D aの フラボタンパク質である。 Y F P はluxF遺伝子 に コードされているが、 lux レギュロンとの関連性 は不明である(文献23)。Y FP は一 つではなく 二 種類の活性型が存在し、いずれもルシフェラーゼ 反応において変調活性を示す(文献22)。二種類の 活性型Y F Pの蛍光寿命は6.7 ns及び6.9 nsであり、

蛍光極大波長は536nm及び537 nm である 。 互 い

に類似した蛍光特性を有 しているが、 D E A Eカラ ムによ り完全に分離することができる 。V.fischeri   Y lはまた、約460 n m に蛍光極大をもつ 青色蛍光

タンパク質 (Yl‑BFP) を産生する(文献24)。 蛍 光寿命は比較的長く2℃において約12.5 nsである。

Y l‑B F Pの蛍光の波長分布 はLu mP と類似するが、

発光変調 に及ぼす効果については不明な点が多い。

増殖過程における V. fischeri Y lの生物発光の測 定から 、初期対数増殖期において 、 最大発光バン ドは青色光か ら青緑色光の波長領域に存在してい ること、且つこの発光バンドは時間の経過ととも に、赤方偏移することがわか った (Fig.2)。

18℃の海水培地における V. fischeri Y lの発光 のカープフィッティング法に 基 づくスペクトル解

5   と 4  

lAIPe

g   3   r 4 0 0   500  600 

E   Wavelength/nm 

=  

In vivo Bioluminescence 

= 

2  

Fig.  2  発光微生物

2  

Vibrio fischeri strain Y l

4   Time/h  6  

増殖過程(培地温度

8  

18

10 

℃) における発光変調.

12  14 

挿入図;対数前期 (A) と後期 (B) における生物発光スペクトル.

(7)

析の結果、生物発光スペクトルが3成分よりなるこ とが明らかとなった。また、 3成分はそれぞれルシ フェラーゼ反応において増感された励起一重項状

態のYl‑BFP とY F P からの蛍光、及びルシフェ

ラーゼ反応からの発光の波長分布に対応すること がわかった (Fig. 3)。このことから、初期対数増

殖期ではYl‑BFP もまた発光変識に効果を及ぼす

ことが考えられる。

538 n m   Corr Coef 

=  

0.99995 

!

SU

;J }U I

470 n  

400  500  600 

Wavelength /nm 

Fig.  3  対数増殖期中期(培地温度18℃) における V. Jischeri Yl生物発光の波長分布(黒矢印)と非 線形カープフィッティングによる3成分スペクトル 解析で得られた各光成分の波長分布とピーク波長.

V. harueyiより単離したルシフェラーゼと Yl‑

B F P との交差反応では、 V. harveyiルシフェラー ゼ反応より放射される発光の青方偏移が起こるこ とを見出し、 Yl‑BFP もまた、発光変調の原因夕 ンパク質となり得ることを実証した(文献24)。 現 在、著者らはYl‑BFPの詳しい分子機能と構造決 定を目指して、 Yl‑BFP遺伝子のクローニングを 進めている。

V. Jischeri Y lとは異なり、 P. phosphoreumの 増硝の全過程において、発光の波長分布に時間依 存性は認められなかった。

2 ,  6  可逆的な発光変調

発光微生物は体内で呼吸鎖の還元力を用いて式 (1)における L比 す な わ ち F M N H 2 を生産する。

さらに発光反応では酸素より水を生じることから、

呼吸系タンパク質群と同様に、微生物ルシフェラー ゼは酸素ターミネータとしての機能を有している といえる。最近の研究において、フラビン還元酵 素から微生物ルシフェラーゼヘのチャネルを介し た電子供給機構が提案されている(文献25)。呼吸 と発光との電子リンクに関してはまだ不明な点が 多いが、呼吸活性を変化させながらV.jischeri Y l   の発光を調べると典味深い結果が得られた(文献

26)。この測定には著者らが開発した装置を用いた

(Fig.4)。装置 は目的ガス供給系、発光と酸素濃度

の測定を同時に行える培蓑器、及び測定制御解析 系より構成される。

A  C  

Fig.  4  発光変調測定ヽンステム. A, 培養器; B,  C,  目的ガス供給系.

Fig.5は培養器への通気の on‑offを繰り返しな

がら発光スペクトルを時間の変数として調べた結 果を示す。通気を開始して直後に発光ビークが生 じる。この現象は細胞膜を介した酸素の受動拡散 により細胞質内酸素農度の上昇によりルシフェラー ゼ反応速度が増大したことで説明できる。重要な 結果は、培地の酸素濃度が増大すると、黄色発光

104  海 洋 化 学 研 究 第17巻第2号 平成1611

(8)

バンドが際立つことである。 で の 実 験 結 果 か ら は 、 黄 色 発 光 バ ン ド の 変 化 は 発光の波長分布における変化は可逆的であり、 Y F Pの酸化状態(式(3)) に 依 存 し て い る こ とが 通気を停止すると通気前の波長分布 を回復する。 考えられた。

一方、460nm近傍の青色発光の強度は酸素濃度の

変化とは無関係でほぼ一定のレベルにあった。測 定時間内にお ける細胞数の変化は 僅少であっ たこ

とから、黄色発光バンドにおける変化は呼吸活性 酸素の供給が十分で呼吸鎖の 電子フローが稼動 の変化と 連動 していることが考え られる 。 これま しているとき Y F P は変調活性を有する酸化型と

Y F P + 2 W + 2 e

― 之

Y F P H2 (3) 

A  

.  

46 20

 

OO!S WaS!

.)0J 8JUO

!SS!

W.)A i90I ‑3

.  

.  •• 一

..   

. .. 

.   

B  

21 0 

と 百

S.lJll

!Jq~!(.,.,H A  

30  50 

Time (min) 

2  4

  6

  8

  Oxygen (mg/L) 

0.16 

4

 

12 08 04   00 00  

!S

03JO

!'18

p H 

Blue b a n d  

450  500  550  600 

Wavelength/nm 

Fig.  5  V. fischeri Yl生物発光における酸素浪度の効果(培地温度18℃) .通 気のOoffを行い 発光と酸 索浪度を 測定。上図,酸素浪度と青色発光強度に対する黄色発光強度比の関係.挿入図,生物発光タイム コー ス;酸素飽和時(A ) 及び酸素制限時 (B). 下図,酸素飽和時(A ) 及び酸素制限時 (B) の生物発光 スペクトル.発光タイム コー ス15min と60minにおける細胞密度 (/m L) ;  15 min,  2.2  x  10'; 60 min,  2.3 X  109. 

(9)

して存在するが、酸素が制限されると呼吸系タン パク質群は電子伝達タンパク質(チ トクロム c) も含めて還元型となる。呼吸系の遠元的な雰囲気

においてY F P も還元され、 変調活性 を失うこと

が予想される。酸素を制限した状態で培地のp H を低下させると (pH6付近)、 黄色発光はさら に弱 められる。このような条件下において酸素を供給 すると、黄色発光強度の増大がより明瞭に認めら れた。呼吸活性が高 いとき、プロトンポンプは水 素イオンを細胞外に放出するが、培地p H の低下 によってプロトンポンプ機能が低下し、結果的に 黄色発光強度は低く抑えられていることが考えら れる。したがって、酸素濃度増 による呼吸の再活 性化は、生理的pH 条件の場合よりも、より顕著 に黄色発光に対して増大効果を及ぼしたものと考 えている。

著者らは、発光変調が細胞の周期性とも関連す ることを見出している。これまでの結果を要約す ると、 V. fischeri Y l単一細胞の質量 が大きくな るにつれて発光の波長分布における 青色発光強度 に比して黄色発光強度が増大する。質量の 増大は 細胞内タンパク質と D N A濃度の増大に起因する が、これらが倍化する過程において、黄色発光が 強められるものと予想される。細胞周期と発光変 調との関係は、呼吸とリンクした可逆的発光変調 とともに、生物発光の意義の詳 しい説明において 重要 な事象 であると考える。

2 .  7  刺激と微生物発光

生物は外部からの刺激に対する応答を何らかの 形態で示す。発光生物も例外ではなく、たとえば 網にかかったホタルイカは強い 青 い光を発する。

上述の鞄毛藻類の発光も p H の変化だけでなく、

機械的な刺激に対して光を産する。ある種のクシ クラゲは継続して外部光を照射すると発光機能を 失うことが知られている。数μ mの単細胞発光微 生物も例外ではなく、外部からの刺激に応答する

106 

ものと考えられる。現在著者らは蛍光タンパク質 を産する発光微生物を用いて、単一細胞の蛍光タ ンパク質産生能及び生物発光能と外部刺激との関 係を蛍光顕微鏡を駆使して追跡している 。 この研 究については、近い将来に成果を発表できるもの

と期待している。

発光微生物は寒天培地上において、 単一細胞か ら倍数分裂を繰り返 して発光コロニーを形成する。

このコロニーは大集団であるが、外部刺激に対す る応答は単一細胞の応答の平均値であると考え、

試みとして微生物ルシフェラーゼ反応に必須の長 鎖脂肪族アルデヒドの蒸気圧を変化させながら生 物発光測定を行った。測定では時間の変数として コロニーの発光イメージを蛍光顕微鏡で観察 した。

この実験から 、アルデヒド蒸気圧を増大させた 直 後に発光強度の増加がみられ、その後発光は徐々 に減衰 して弱く なることがわかった(文献27)。 蛍 光顕微鏡による発光コロニーの観察は、発光微生 物の発光機能と化学刺激との関係の研究において 有用であると考えている。

3. おわりに

海洋発光生物を発光微生物に焦点を絞りなから 解説した。 lux レギュロ ンの発現と係わるクオラ ムセンシングは微生物発光において本質である。

このことは細胞密度(個数)の増大によ って達成 される化学的コミュニケーションが発光生産 にお いて重要 な役割を担うことを意味する(文献28)。 細胞密度、呼吸、及び細胞周期との連動性が予想 される黄色発光微生物 V. fischeri Y  1の発光変調 は、発光微生物の発光の意義、さらにはμ mサイ ズの微生物が広大無辺の海で発光エンジンを有す ることの意義を解き明かす上において科学的に重 要な自象であると考えている。

海 洋 化 学 研 究 第17巻第2号 平 成1611月

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謝辞 14) Chalfie, M .,  Tu, Y., Euskirchen, G.,  Ward,  本稿執筆の機会 を与 えて頂きました 奈良教育大 W .  W .,  Prasher, D. C., Science, 263, 802‑805  学名誉教授松村竹子先生(現、向ミネルバライト (1994). 

ラボ代表取締役)に感謝いたします。 15) Hastings, J. W., Potrikus, C .  J., Guputa, S. 

本稿のデ ータの一部 は科研費研究基盤C (15510  C.,  Kurfurst, M., Makemson, J.  C.,  Adu. 

1730) によって得られた。感謝いたします。 Microbial. Physiol., 26, 235‑291 (1985) .  

文献

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Referensi

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