8月14日亀岡市稗田野町佐伯稗田野神社灯籠祭
亀岡16:57着の列車ですぐ車で*〈*は草冠に稗〉田野へ行ったのであるが今年は既に午後2時頃に神幸式は始ま
り、神社は留守中であった。唯台灯籠だけはもう庁屋に飾付をして納っていた。
神輿巡行先の様子は今年は知る由もないが、本社へは 7 時頃帰って来た。しかも先頭の猿田彦を始め神灯籠、神輿 共4台のトラックに分乗しての行列であった。
*〈*は草冠に稗〉田野神社は延喜式内社。その周辺にある御霊神社、河阿神社、若宮神社への巡幸はやるらしい。
行列は猿田彦、獅子頭、大太鼓、台灯籠、神灯籠の順であるが、そのうち今年は台灯籠のみは巡幸に参加しなかっ たようである。
松明が参加して御霊神社到着と同時に大松明を御霊神社の参道両側に焚いたかどうかは不明である。これがどうも 盆行事と神事との継がりを思わせるのであるが、神輿が菰川の川下りをやったかどうかは確めて来た。恐らくやっ たらしい傾勢はない。たゞ川から神輿が上る地点、篠山御道の橋の袂には松明の燃層がまだ新しく残っていた。
台灯籠が神幸式に参加しなかったため松明に火をつけたとき(御霊神社で)川渡りのとき、上佐伯部落神輿巡行の とき旧庄屋大石さんの家の前、門田に向いて夫々人形を操った様は今年は見る由もなかった。その代りといっては なんであるが、*〈*は草冠に稗〉田野神社の庁屋には既に台灯籠の飾付を終り、見台も出してあって、訪ねると 人形保存責任者の橋本さんや大石さん(大石種一)が居られて人形も今こゝにあるというので、現存の人形約、35 頭全部を撮映させて貰い、台灯籠に入って演出もして貰った。三味線は大阪堀江の人がやって来て引く。今日の実 際の人形芝居は午後6時半頃神輿の還行があって、午後8時頃から太平記十段目を1曲やることになっているそう である。
台灯籠。操人形芝居の舞台となる灯籠をいう。上下2 段に分かれ上段は紫宸殿を模した精巧な紙製の宮殿を板上に 置き、はめ込みで、前後にずらせるようにしてある。下段は前面約25cmを置いて書割を張り付ける。この書割は 当年の操芝居人形の出し物のうち最も重要な狂言の背景の画を畫いたものでその前面の底板の上には、やはり紙製 でいろいろな書割をつくって並べたものという。今は 3 箇の蝋燭台を置く。芝居を演ずるときは上段の宮殿を後の 方にづらせ、その下へ人が入って書割の後からこれを手のようにして操ったという。人形は 1 人遣い。腰の所に人 形とは75度程の角度で竹製の取手をつけ把手で首を左右に振らせ、両手は夫々別の1本づゝの竹ヘゴで支える。勢々 3人位しか入れぬ。3人入ると中で身動きができぬそうである。出し物で大ぜいの人形を使うときは台灯籠の左右に 人が現われてそのまゝ使う。
頭は少々江戸末期のもののようであるが多くは明治の後年、明治33年に新調した。また大正3年にも補充したとい う。多くは京人形の頭であり、古いものに稍文楽系統の形を模したものが見られる。
神灯籠は御所灯籠ともいう。寛喜元年(1229)に後堀河天皇が神霊に灯籠を奉納され以後毎年の習わしとなったが ある年、桂川氾濫のため佐伯の人が灯籠受納のため川を渡ることができず、帰村して自分で造ったのが現在の神灯 籠の始まりという。
簡単な四本柱の棚でもと巡幸の際は二人の若者が前方の二本、後方の二本の柱を夫々捧げて伴をした。3方に紙に彩 色の絵を書き、折紙人形を以って造る。「御能」は稍精巧で能舞台を造る。何れも前方に蝋燭台を1本置く。
還幸後、神灯籠は神前に並べ、納め芝居があるが、そのあともとは 太鼓掛け(大太鼓に神輿舁の長襷をかける)
灯籠老追い(神前に追い起して神輿が進む)
灯籠掛け(神前に神灯籠を吊る。このとき伊勢音頭または石搗唄を歌いながら指児竹で拍子をとる)
の行事が続いて15日の夜あけにあったが、今は灯籠掛けのみ別の日にやる。このとき灯籠の部分品や、台灯籠の外 側の綾棒飾りは村人が貰って帰って我家の安全の守りにする。
年中行事辞典による祭礼次第。
14時午後6時頃薭田野神社より御霊神社へ渡御待列順は、神輿、大松明、猿田彦、獅子頭、神灯篭、台灯篭、神馬 の順。御霊神社にて大松明に点火する。この間台灯篭にて操人形1曲を演ずる。
次、上御旅所(河阿神社)に神幸。人形を操る。
次、神輿、上佐伯部落巡幸。その間、大石家の門前で人形を操る。(次頁※印へ)
※(前頁の続き)次、神輿、菰川の川下をして上った所で1曲人形を操る。神輿中休次。
次、台灯篭のみ、恵比須社裏で人形を操るために行く。
次、神輿、下佐伯、吉田部落を巡幸。その間薭田野神社前で人形を操る。
次、神輿*〈*は草冠に稗〉田野神社へ還御。後納めの人形を操る。
そのあと宮馬場にて太鼓掛け、灯篭追い、灯篭掛けをやる。
神殿で灯籠かけの時歌う唄。
こゝのおせどにゃや おめようがとふき
おめようが めでたやの ホイホイ 富貴繁盛 おめでたや
よのの ひようたんでや ソーラヨイト
ソーラヨイト
神灯籠 1、御能 2、種まき 3、田植 4、臼摺 5、石搗き
人形の頭(古い方)
1、采女助 2、鷺坂伴内
3、日吉丸(玉藻の前)
4、桂姫 5、久吉
(初め撮影した方)
太功記の「十次郎」
太功記の「光秀」
太功記の「正岡」
レパートリー 太功記十段目 先代萩 御所櫻 壷坂 一の谷 寺子屋 忠臣蔵
明治33~大正3年の作成
下段の背景を貼りつけてあるのを「台貼」という。