代数学 II 演習 1
松本 眞 以下、環Rといったら単位的環を指し、R加群と言ったら左R加群を指す。
[1-1]M を加法群(加群とも言う)として、
End(M) ={f :M →M |f は加法群の準同型} とおく。
(1) f, g∈End(M) にたいし、写像f +g, f ·g : M →M を
(f +g)(m) =f(m) +g(m), (f·g)(m) =f(g(m)) (m∈M) で定義する。この定義により、End(M) が環になることを示せ。
(2) R を環として、RのMへの作用
R×M →M ; (r, m)→r•m
が与えられているとする。r∈R にたいし、写像rM : M →M を rM(m) =r•m (m∈M)
で定義する。rM ∈Map(M, M) (M からMへの写像の集合)となる。
さて、講義ではrM ∈End(M)となり、
R→End(M) ; r→rM
が環の準同型となることを、左R加群の定義とした。これらの条件が、
r•(m1+m2) =r•m1+r•m2 (r1+r2)•m=r1•m+r2•m
(r1r2)•m=r1•(r2•m) 1•m=m
の4条件と同値であることを示せ。
[1-2]M を左R加群,N を加群(すなわち加法群)とする。
1. Hom(M, N) ={f :M →N |f は加法群の準同型}とすると、この集合には右 R加群の自然な構造が入ることを示せ。
2. さらにNも左R加群とする。HomR(M, N) ={f :M →N |f はR加群の準同型} とおく。Rが可換環であれば、この集合は自然にR加群となることを示せ。
[1-3]Kを体とし、R:=Mn(K)とする。M =Knを縦ベクトルの空間とし、行列と 縦ベクトルの積により左R加群とみる。[1-2]の記法でいう
1. HomR(M, M)を決定せよ。
2. K =Qでn≥2のとき、HomR(M, M)は左R加群にならないことを示せ。
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[1-4]Rを単項イデアル整域とする。Rのイデアルは全てR自由加群であることを示せ。
[1-5]QはZ加群としてねじれがないが、自由加群ではないことを示せ。
[1-6]Rを可換環とする。多項式環R[X]は自由R加群であることを示せ。
[1-7]Rを可換環とする。べき級数環R[[X]]はRの可算個の直積とR加群として同形 であることを示せ。
[1-8]M をR加群とし、M1, M2をMの部分R加群とする。
1. R加群の準同形ϕ:M1⊕M2 →Mをϕ(x1, x2) :=x1+x2で定義する。ϕの像 は和M1+M2と等しく、核はM1∩M2と同形であることを示せ。
2. MがM1とM2の直和であるためには、M1+M2 =MかつM1∩M2={0}で あることが必要十分であることを示せ。
[1-9]M をR加群、Mλ (λ∈Λ)をR加群の族とする。以下の自然な同形を与えよ。
1. HomR(⊕
λ∈ΛMλ, M)∼=∏
λ∈ΛHomR(Mλ, M).
2. HomR(M,∏
λ∈ΛMλ)∼=∏
λ∈ΛHomR(M, Mλ).
[1-10] F をbλ (λ∈ Λ)を基底とする自由R加群とする。任意のR加群M とその元 mλ (λ∈Λ)が与えられたとき、bλをmλに送るR加群準同形f :F →M がただ一 つ存在することを示せ。
[1-11] Z加群の準同形Z2 →Z2を、f(1,0) = (4,8), f(0,1) = (6,12)で定める。
1. fの核の基底を求めよ。fの像の基底を求めよ。
2. fに準同形定理を適用して得られる同型を求めよ。
3. fの余核(cokernel)の構造を決定せよ。
[1-12] 0 → M1 →f M2 →g M3 → 0 をR-加群の完全系列とする。R-加群N に対し、
f∗ : HomR(N, M1) → HomR(N, M2)をf∗(h) := f ◦hで、f∗ : HomR(M2, N) → HomR(M1, N) をf∗(h) :=h◦f で定義する。gについても同様の定義をする。
(1) 次が完全系列であることを示せ。
0→HomR(N, M1)→f∗ HomR(N, M2)→g∗ HomR(N, M3), 0→HomR(M3, N)→g∗ HomR(M2, N)→f∗ HomR(M1, N).
(2) 上のg∗ とf∗ が全射でない例を与えよ。
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