小児歯科学講座
プロフィール
1. 教室員と主研究テーマ
教 授 新谷 誠康 歯の形成不全の分子生物学的研究
講 師 米津 卓郎 ビデオマイクロスコープを用いた小児歯齦の直接的観察 辻野啓一郎 乳歯癒合歯の永久歯列への影響
今井 裕樹 日本人小児の歯と歯槽部の変化に関する研究
桜井 敦朗 口腔内細菌叢から見た口腔・全身疾患発症要因の検討 助 教 熊澤 海道 アモキシシリンとエナメル質減形成の関連に関する研究
本間 宏実 歯の発生機序における分子メカニズムの解明 荒井 亮 犬歯の萌出障害に関する三次元的検討
レジデント 米倉 智子 両生類 Xenopus laevis における DMP1 遺伝子の同定および発現解析 有泉由紀子 乳歯エナメル質形成不全の発症要因に関する研究
新居 由紀 Treponema denticola における TetR による遺伝子発現調節機構の解析 中内 彩乃 実験的作製炎症性嚢胞のマラッセ上皮遺残由来裏装上皮の動態観察 田代 紋子 乳歯齲蝕の罹患状態と発病因子に関わる経年的研究
大学院生 木村 基善 象牙芽細胞における DMP1 の発現と機能の解析について 新井 敬 生活習慣が口腔内細菌叢に及ぼす影響の解析
田中 亜生 象牙芽細胞の感覚受容機能発現における発生学的研究
楊 隆強 アテロコラーゲン/ゼラチン複合体スキャフォールドを用いて骨再生の 新技術開発
棚瀬 稔貴 酵素補充療法を行った低ホスファターゼ症(HPP)マウスの顎骨解析
2. 成果の概要
1)乳歯列期の歯槽部の成長発育に年代による差があるかを調査する目的で、1968 年から 1974 年生まれの 4 歳児の歯列石膏模型 93 組および 5 歳児の歯列石膏模型 88 組(70 年代群)と、2007 年から 2009 年生まれの 4 歳児の歯列石膏模型 61 組および 2006 年から 2008 年生まれの 5 歳児の歯列石膏模型 56 組(2000 年代群)
とを対象に歯列弓幅径、長径、高径を計測した。計測は株式会社 3D!社開発の 3D 計測システム(DORA®)を 用いて行った。それぞれの年代群間で 4 歳から 5 歳までの変化に違いがあるかを比較検討した。その結果、
乳歯列弓の幅径、長径、高径の 4 歳から 5 歳までの成長発育は、年代、性別によってさまざまな発育様式を 呈するが、変化量は 70 年代群と比較すると 2000 年代群のほうがより大きくなっており、約 40 年間で 4 歳か ら 5 歳までの 1 年間の発育がより顕著になったことが示唆された。
Bull Tokyo Dent Coll 2017; 58(1): 9-18
2)歯の形態形成に関する研究は歯の初期発生や歯冠形成に関するものが多く、歯根形成、特に多根歯形成に 関しては報告が少ない。ヒトでは多根歯形成の際に根分岐部相当部に髄下葉が出現して多根化が生 じるが、
髄下葉の形成機構には不明な点が多い。そこでヒトと同様の多根化形成様式をとるラット臼歯を用 いて髄下 葉を伴う根分岐部の形成について観察した。上顎第二臼歯歯胚を底面から実体顕微鏡観察、組織学 的および 抗 Pan-keratin 抗体、抗 Hsp25 抗体、抗 Shh 抗体を用いた免疫組織学的観察を行った。髄下葉は歯冠部象 牙質と同様に歯乳頭細胞から分化した象牙芽細胞により形成され、上皮−間葉相互作用により、歯乳頭細胞か ら分化することが示唆された。また、象牙質根間突起と髄下葉の境界部が根分岐部に出現する副根 管になる ことが示唆された。
Journal of Hard Tissue Biology 2017;26(2): 149-156
3)齲蝕を認めない 24〜36 か月の幼児 47 名について、real-time PCR 法を用いて唾液中の齲蝕原性菌を量的 に調査したところ、14 名(29.8%)の小児からS.mutans が検出された。そして、小児の月齢、萌出歯数、歯列 および咬合状態、生活環境とS.mutans の有無との関連性を統計学的に解析したところ、統計学的に有意差を 認めた項目はなかった。しかしながら、上顎乳切歯部に歯間空隙が無かった小児の 39.3%にS.mutans が検出 されたのに対し、空隙を認めた小児の検出率は 15.8%に過ぎなかった。また、生後 15 か月までに卒乳してい た小児の検出率は 22.7%であったが、19 か月まで授乳を継続していた小児の検出率は 46.2%と約2倍の検出
率であった。
Bull Tokyo Dent Coll 2017; 58(2): 111-116
4)真空凍結乾燥と熱架橋を用いて作製した、アテロコラーゲン/ゼラチン(ACG)スポンジの気孔径や気孔率、
細胞毒性に影響する因子(凍結温度、凍結時間、ゼラチン濃度、フルバスタチン添加)を検討した 。その結 果、凍結温度やゼラチン濃度は気孔構造に影響を与える一方で、凍結時間やフルバスタチンの添加 はそれに 影響を与えなかった。また、ACG スポンジの細胞毒性への影響については、in vitro での細胞増殖試験を行 い、その増殖能に影響がなかったことが確認された。ACG スポンジは適切な気孔構造を持ち、骨再 生のため にフルバスタチンを局所応用する際、良いドラッグデリバリーシステムになりうることが示唆された。
Dental Materials Journal 2017; 36(4): 429‒437
5)タロンカスプ(切歯結節、基底棘)は切歯舌面にみられる比較的稀な形態異常の一つである 。この異常結 節は、咬頭干渉、不正咬合、審美障害、破折による歯髄壊死などの多くの臨床的な問題の原因とな る。対応 法として経過観察、削合、抜髄、抜歯などがあげられている。今回我々は、上顎右側側切歯にタロ ンカスプ を認めた小児に、形態修正を目的に結節を除去し、意図的に露髄させ、部分的生活歯髄切断法を行 い良好な 結果を得た。患児は 11 歳女児。上顎右側側切歯舌面に歯頚部から歯冠の 2/3 程度に達するタロンカスプを認 め、歯冠の形態修正に必要な量の歯質を削合し、意図的に歯髄を露出させ、部分的生活歯髄切断法 を行うこ ととした。処置後、不快症状はなく、経過良好であった。術後5年経過後も不快症状なく、歯髄電 気検査に も生活反応を示している。このような異常結節への対応法として、意図的な部分生活歯髄切断法は 有効であ ると考えられた。
Bull Tokyo Dent Coll 2017; 58(4): 247-253
3. 学外共同研究
担 当 者 研 究 課 題
学 外 研 究施設
研 究 施 設 所 在
地 責 任 者 新谷 誠康
荒井 亮 上海市の歯科疾患実態調査 同済大学児童口腔医学 研究所
上海、
中国 石 四箴
4. 科学研究費補助金・各種補助金
研 究 代 表者 研 究 課 題 研 究 費 科 研 費の場合は種別も記
載
桜井 敦朗 MIH 大規模実態調査によるリスクファクター分析および早期 対応に向けた基盤構築
科学研究費助成事業・
基盤研究(C)本間班 本間 宏実 MIH 大規模実態調査によるリスクファクター分析および早期
対応に向けた基盤構築
科学研究費助成事業・
基盤研究(C)
永井 宜子 小児の有する成熟歯面バイオフィルム構成細菌種の解析 公益財団法人富徳会研究 助成金(小児歯科学部門)
5. 研究活動の特記すべき事項
受賞
受 賞 者 名 年 月 日 賞 名 テ ー マ 学 会 ・ 団体名
田代 紋子 2017. 6.30 若手奨励賞
1歳6か月および3歳時にお ける齲蝕罹患要因に関する研 究―特に授乳法と口腔の健康 管理に関する因子について―
日本小児保健協会
大澤 枝里 2017. 8.19 大会優秀発表賞
ラット臼歯における髄下葉を 伴った根分岐部形成の免疫組 織学的観察
硬組織再生生物学会
学会・研究会主催
主 催 者 名 開 催 年 月日 学 会 ・ 研究会名 会 場 開 催 地
大会長
新谷 誠康 2017. 7.30
4学会合同リレー講演 ジョイント4
―健やかに育ち親子をサポート する―
東京歯科大学 本館 東京都 千代田区
シンポジウム
シ ン ポ ジスト 年 月 日 演 題 学 会 名 開 催 地
新谷 誠康 2017. 7. 1
歯の形成不全:知っておきたい こと、やっておきたいこと「か かりつけ小児歯科医が伝えたい 歯科のトピックス」
第 64 回日本小児保健協会学
術集会 大阪市
新谷 誠康 2018. 1.14
歯科からみた低ホスファターゼ 症 ―小児科と小児歯科の連携 のために―
第2回千葉県小児臨床カン ファレンス
低ホスファターゼ症シンポ ジウム
千葉市
学会招待講演・特別講演・教育講演
講 演 者 年 月 日 演 題 学 会 名 開 催 地
新谷 誠康 2017. 6.11
安心確実な小児歯科臨床 ―齲 蝕に関連した治療について―
「小児歯科を極める」
第 70 回栃木県歯科医学会 東京都 千代田区
新谷 誠康 2017.11. 3 小児の歯科診療 ―大学で習っ
たこと、習わなかったこと― 第 70 回栃木県歯科医学会 宇都宮市 新谷 誠康 2017.11.19 齲蝕と間違えやすいエナメル質
形成不全
第 35 回日本小児歯科学会九
州地方会 佐賀市
学術学会に相当しない団体が開催するセミナー・研究会・カンファレンス等における発表・講演
講 演 者 年 月 日 演 題 会 合 の 名称 開 催 地
新谷 誠康 2017. 4. 9 歯科医師が関わる骨系統疾患〜
低ホスファターゼ症を中心に
千葉県小児歯科医会学術講
演会 千葉市
新谷 誠康 2017. 4.25
歳児の歯科健診 ―見逃しては 行けないこと、見て見ぬ振りを しても許されること
東京都中野区歯科医師会学 術講演会
東京都 中野区
新居 由紀 2017. 6.11
Investigation of gene
regulation associated with msp and prtP in T. denticola
小児歯科学講座同門会 東京都 文京区
永井 宜子 2017. 6.11
Oral microbiome analysis in children with colored dental biofilms(小児の有する成熟歯 面バイオフィルム構成細菌種の 解析)
小児歯科学講座同門会 東京都 文京区
中内 彩乃 2017. 6.11
Behavior of the lining epithelium that originates from Malassezʼs epithelial rest cells on an
experimentally created
inflammatory cyst in vivo and in vitro
小児歯科学講座同門会 東京都 文京区
新谷 誠康 2017. 9.10 低ホスファターゼ症 ―歯科医 師が鍵を握る骨系統疾患―
日本一般臨床医矯正研究会 例会
東京都 港区
今井 裕樹 2017. 9.10 基礎疾患のある人の処置 千葉県小児歯科医会
夏の勉強会 千葉市
新谷 誠康 2017.10.16
もう一度確認したい小児歯科2
―乳歯の歯内療法から保隙、咬 合誘導まで―
東京都杉並区学校歯科医会 講演会
東京都 杉並区
新谷 誠康 2017.10.22 若手歯科医師に伝えたい小児歯 科治療の考え方
第4回若手支援セミナー 日本大学歯学部同窓会・東京 歯科大学同窓会
東京都 千代田区
新谷 誠康 2017.11. 2 歯の形成不全 MIH を知ってい ますか?
第 12 回千葉県学校歯科保健
研究大会 千葉市
荒井 亮 2017.11. 5 その疑問、あなただけじゃない ですよ!
東京歯科大学同窓会 第5回新進会のつどい
東京都 千代田区
新谷 誠康 2018. 1.21 小児歯科の知識、アップデート していますか?
沖縄県歯科医師会
平成 29 年度歯科医療従事者 技術向上支援研修会
那覇市
新谷 誠康 2018. 2.14 低ホスファターゼ症 −歯科医 が関わる骨系統疾患−
東京都板橋区歯科医師会講 演会
東京都 板橋区
辻野啓一郎 2017. 2.22
学校健診で気がつきたいムシ歯 以外のこと ―将来に影響する 問題を見逃さないために―
板橋区教育委員会学務課 板橋区学校歯科医会 学校歯科講演会
東京都 板橋区
6. 教育講演等教育に関する業績、活動
教育に関する講演( 医 学 ・歯学における教育をテーマとするものに限る)
講 演 者 年 月 日 演 題 学 会 ・ 研究会・会議名 開 催 地
新谷 誠康 2017. 3.18 平成 28 年度に機構へ提出した不 採択問題のフィードバック
平成 28 年度日本大学歯学部 第 2 回 CBT 作問・ブラッシュ アップワークショップ
東京都 千代田区
新谷 誠康 2017. 5.20 共用試験の概要と CBT 問題作成 マニュアルの説明
平成 28 年度神奈川歯科大学 歯学系 CBT 問題作成 FD・ワ ークショップ
横須賀市
新谷 誠康 2017. 5.20 CBT 問題作成時の注意点
平成 28 年度神奈川歯科大学 歯学系 CBT 問題作成 FD・ワ ークショップ
横須賀市
教育ワークショップ・FD 研修
氏 名 年 月 日 ワ ー ク ショップ名 役 割 開 催 地
新谷 誠康 2017.3.18
平成 28 年度日本大学歯学部第 2 回 CBT 作問・ブラッシュアップワ ークショップ
共用試験実施評価機構歯学 系 CBT 問題作成 FD 専門部会 委員
東京都 千代田区
新谷 誠康 2017.5.20
平成 28 年度神奈川歯科大学歯学 系 CBT 問題作成 FD・ワークショ ップ
共用試験実施評価機構歯学 系 CBT 問題作成 FD 専門部会 委員
横須賀市
荒井 亮 2017.
12.15-16
小児歯科学会平成 29 年度教育ワ
ークショップ 参加者 札幌市
共用試験
氏 名 年 月 日 種 別 役 割 開 催 地
新谷 誠康 2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE 評価者 東京都
千代田区
米津 卓郎 2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE 評価者 東京都
千代田区 辻野 啓一
郎
2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE 評価者 東京都
千代田区
今井 裕樹 2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE 評価者 東京都
千代田区
桜井 敦朗 2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE ステーション責任者 東京都 千代田区
熊澤 海道 2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE 器材係 東京都
千代田区
本間 宏実 2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE 評価者 東京都
千代田区
荒井 亮 2018.
2.24-2.25
平成 29 年度東京歯科大学
第 4 学年 OSCE 器材係 東京都
千代田区
他の大学・研究機関等における学生・大学院生を対象とする講義
担 当 者 名 年 月 日 テ ー マ ・演題 大 学 ・ 機関 所 在 地
桜井 敦朗 2017. 5.23 「子どもの歯 子どもの歯と口の
健康を守るには」 大正大学 東京都
練馬区
新谷 誠康 2017.11.29 歯の形成障害
(非常勤講師として講義)
長崎大学大学院医歯薬
学総合研究科歯学部 長崎市