市川総合病院 角膜センター
プロフィール
1. 教室員と主研究テーマ
助 教 比嘉 一成 1)自己少量角膜輪部組織の幹細胞―ニッシェスフェロイド維持培養法の確立 2)口腔粘膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果
3)羊膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果 4)結膜上皮モデルの作成とジクアホソルナトリウムの影響 コーディネ ーター 青木 大 5)当院におけるRoutine Referral System
6)当院における羊膜バンクの活動
8)人工前房装置内の圧力調整装置を用いた角膜内皮移植用グラフト作製 佐々木千秋 5)当院におけるRoutine Referral System
6) 当院における羊膜バンクの活動
7) 本邦における羊膜移植〜バンクからの供給実績とその分析〜
8) 人工前房装置内の圧力調整装置を用いた角膜内皮移植用グラフト作製 西迫 宗大 5) 当院におけるRoutine Referral System
6) 当院における羊膜バンクの活動
8) 人工前房装置内の圧力調整装置を用いた角膜内皮移植用グラフト作製
2. 成果の概要
1)自己少量角膜輪部組織の幹細胞―ニッシェスフェロイド維持培養法の確立
これまでに角膜輪部組織から長期培養可能な 1000 個近くのニッチ様構造を維持したスフェロイドを作 成し、その1つのスフェロイドから上皮シートの作成も可能であることを報告した。また、低酸素培養 したスフェロイドの未分化性の維持には HIF-1 alpha が関与している可能性が考えられることを報告し た。今回は、1ヶ月間培養したスフェロイドを少量の保存液でも保存可能か検討するため、直接液体窒 素が触れることがない2段階容器を用いて保存を行った。1年間の長期保存では-80C ではほとんど増殖 が見られなくなっていることがわかってきた。また、1ヶ月培養したスフェロイドが In Vivo で生着し、
上皮を供給することができるか観察するため、ウサギ輪部機能不全モデルを作成し、角膜輪部へスフェ ロイドの移植を行った。移植1週間後において、メラニン色素を有したスフェロイドから、上皮が角膜 へ向かって進展しているのを確認することができた。
2)口腔粘膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果
間葉系に属する細胞へ分化する能力を持つ間葉系幹細胞は様々な組織でもその存在の報告がなされて おり、近年、再生医療でも注目されている。我々はこれまでに、口腔粘膜の上皮下組織から間葉系細胞 を分離・培養し、解析を行ってきた。今回我々は眼表面疾患モデルにおける細胞治療の効果を調べるた め、細胞移植条件の検討についても行ってきた。移植後の細胞を追跡するため、まず MRI コントラスト 造影剤として使われている SPION(Supper Paramagnetic Iron Oxide Nanoparticles (Fe3O4:四酸化三 鉄))でラベル可能かどうか、培養細胞で検討した。その結果、SPION は培養中に細胞に取り込まれ、鉄 の染色で使用するベルリンブルーで染色することが可能であることが解ってきた。また、SPION でラベ ルした細胞をウサギ結膜下に投与し追跡可能かどうかを観察するため、投与後の組織を回収し、組織の 観察を行った。その組織中にベルリンブルーで染色される投与された細胞が存在し、生着していること が確認できた。
3)羊膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果
我々は羊膜由来間葉系細胞が羊膜の持つ効果にどのように影響を与えているか明らかにするため、in vitro 上皮創傷治癒モデルへの影響を観察し、羊膜由来間葉系細胞にも創傷治癒促進効果があることを 報告した。今回は、さらに羊膜から分離培養した間葉系細胞(AMMCs)を解析し、ウサギ角膜上皮欠損モデ ルに対する羊膜由来間葉系細胞培養上清の効果を観察した。フローサイトメトリーにおいて、AMMCs は いわゆる間葉系幹細胞と少し異なる発現パターンを示し、炎症性物質分解酵素である CD10 や神経堤由来 関連因子(CD49d、PDGFRa)、線維芽細胞マーカー(FSP-1)の発現が観察された。AMMCs の培養上清を点眼 または結膜下注射することにより、ウサギ創傷治癒モデルにおける上皮化が促進される傾向を観察した。
以上のことから羊膜の持つ創傷治癒促進効果は羊膜に存在する間葉系細胞が一部役割を担っている可能 性が考えられた。
比嘉一成 羊膜由来間葉系細胞培養上清のウサギ角膜上皮創傷治癒モデルへの影響 角膜カンファランス 2018 学会雑誌.P.53, 2018
比嘉一成 ウサギ角膜上皮創傷治癒モデルにおける羊膜由来間葉系細胞培養上清の効果 第 17 回日本再生医療学会 プログラム 一般演題(ポスター)2 日目 P5, 2018
4)結膜上皮モデルの作成とジクアホソルナトリウムの影響
角膜上皮に対するジクアホソルナトリウムの効果はこれまでに数多く報告されているが、in vitro に おける結膜上皮に対する影響はあまり報告されていない。そこで杯細胞を伴った結膜上皮シートを作成 し、P2Y2受容体を介したムチン分泌促進作用を持つジクアホソルナトリウムによる結膜上皮シートへの 影響を観察した。結膜上皮モデル作成において、数層に重層化した結膜上皮シートを作成することがで きた。また、血清を添加することによって、杯細胞を誘導することが可能であり、P2Y2受容体並びに MUC5AC を発現した結膜上皮シートできることがわかった。さらに、UTP 添加によって杯細胞が増加する 傾向を観察することができた。今回作成した結膜上皮シートは杯細胞を伴った結膜上皮モデルとして有 用である可能性が考えられた。現在、さらに有用な培養条件を検討中である。
5)当院におけるRoutine Referral System
11年3ヶ月の期間中、死亡退院5889例に対し、5414例(91.9%)の連絡があり、3453例(63.8%)の意思 確認を実施し、347人(10.0%)が献眼に至った。献眼者の特徴として、性比は男性204人(58.8%)・女性 143人(41.2%)であり、男性が多い結果となった。年齢組成は80歳代が最も多く108人(31.4%)次いで70 歳代93人(27.0%)・60歳代64人(18.6%)となった。死因は悪性新生物が最も多く149人(43.3%)・心 疾患56人(16.3%)・その他の疾患56人(16.3%)となった。提供承諾について意思表示カードあり16人
(4.6%)・なし331人(95.4%)であった。
2017年度において、院内の本システムにおけるドナー対応数は24件であった。またそのうちコーディネ ーターによるオプション提示22件、眼科医師によるものは2件の結果となった。
6)当院における羊膜バンクの活動
認定バンクを取得後、2017年度においては8名のドナーからの294枚の羊膜の提供を頂いた。使用枚数 については、年度累計104枚となった。当院では、アイバンクのノウハウはあったものの、羊膜バンクに 関しては、生体からの提供という特徴から、関係部署との協議の上、全体を横断するシステム構築を行う 事に苦慮した。更には、バンクとしての標準作業手順書(SOP)、クオリティーアシュアランス、クオリ ティーコントロールの確立、トレーサビリティの確保に関わる書類の整備は、他科と横断するために、よ り安全に正確に行えるよう配慮し行った。これらの実績を踏まえ、全国へのシッピングを目指して体制を 整備し、院外シッピングを予定している。
7)本邦における羊膜移植〜バンクからの供給実績とその分析〜
難治性眼表面疾患に対する羊膜移植術が保険適応され 3 年が経過した。保険診療で羊膜移植術を行う ためには、日本組織移植学会の認定バンクから供給を受ける事とされ、2017 年 3 月現在 6 カ所の羊膜バ ンクが活動し、当院バンクがその一つを担っている。6 羊膜バンクの供給先施設、供給総組織数、供給 組織を使用した移植手術件数はすべて大幅に増加した。伴施手術は全体の半数以上を占めている。全国 で増加する羊膜のニーズに応え、安定的供給を安全に行うためには、各バンクの活動性の向上と連携が 必要である。JSTT 認定コーディネーターが中心となり、バンク運営上の問題に共通認識で取り組むこと、
バンク運営基準を揃えることによりクオリティ・コントロールを確実に行うこと、ドナーの発掘と精製 技術の向上による移植用羊膜の安定的組織数確保に取り組む必要があると考えられた。
日本組織移植学会雑誌 第 16 号 No.1 P40, 2017
8)人工前房装置内の圧力調整装置を用いた角膜内皮移植用グラフト作製
角膜の厚みを含めた安定的な角膜内皮移植用グラフト作製を目指し、人工前房内圧力に着目し、圧力 の設定および圧変化が作製されたグラフトの厚みに与える影響を検討した。
研究用ヒト角膜 30 眼を用い、5 通りのプロトコルでプレカット試験を実施した。試験群は、加圧パッ トを用いて人工前房内に 100mmHg(Group Ⅰ)、200 ㎜ Hg(Group Ⅱ)の圧力をかけてからカットする群、
Moria 社製 Artificial Chamber Pressurizer(ACP)を用いて 100mmHg(Group Ⅲ)、200 ㎜ Hg(Group Ⅳ)
の圧力にセットし、常に一定の圧力下でカットする群の4群、またヘッド操作を自動化する One use- plus Automated DSAEK Handpiece:OUP-A)を用いて Group Ⅳと同条件でカットする GroupⅤにてグラフ ト作製を行った。その結果、ACP で 200mmHg にコントロールした上で OUP-A を用いたⅤ群の CV 値が最も 小さく、厚みの安定性に優れていた。ACP を用い、200mmHg の圧力を一定にすることでより安定した厚み でのカットができることが示唆された。
日本組織移植学会雑誌 第 16 号 No.1 P38, 2017
3. 学外共同研究
担 当 者 研 究 課 題
学 外 研 究施設
研 究 施 設 所 在 地 責 任 者
比嘉 一成 羽藤 晋
ヒト iPS 細胞由来角膜内皮様細胞の ウサギ角膜への移植
慶応義塾大学医学 部眼科学教室
東京都
新宿区 榛村 重人 比嘉 一成
山下 和哉
ヒト臍帯由来間葉系幹細胞のウサギ 角膜への移植
慶応義塾大学医学 部眼科学教室
東京都
新宿区 榛村 重人
4.科学研究費補助金・各種補助金
研 究 代 表者 研 究 課 題 研 究 費
比嘉 一成 自己少量角膜輪部組織の幹細胞̶ニッシェスフェロイド維 持培養法の確立
科学研究費助成事業・
基盤研究(C)
5. 研究活動の特記すべき事項
学会招待講演・特別講演・教育講演
講 演 者 年 月 日 演 題 学 会 名 開 催 地
青木 大 2017. 8. 5 現在までの JSTT コーディネーター の変遷(学会設立から現在まで)
第 16 回日本組織移植
学会総会・学術集会 京都市 佐々木千秋 2017. 8. 5
人工前房装置内の圧力調整装置を 用いた角膜内皮移植用グラフト作 製
第 16 回日本組織移植
学会総会・学術集会 京都市
西迫 宗大 2017.10. 7
Comparison of donor tissue preparation methods for
Descemetʼs stripping automated endothelial keratoplasty.
XXXV Congress of the ESCRS, Lisbon, Portugal
リスボン
(ポルト ガル)
学術学会に相当しない団体が開催するセミナー・研究会・カンファレンス等における発表・講演
講 演 者 年 月 日 演 題 会 合 の 名 称 開 催 地
青木 大 2017. 6.14 組織バンクと組織移植コーデ ィネーターの役割
公益財団法人 日本臓器 移植ネットワーク 新人研修
東京都 港区
青木 大 2017. 8. 5 組織各論(皮膚)
平成 29 年度第1回日本 組織移植学会認定医・認 定コーディネーター合同 セミナー
京都市
西迫 宗大 2017.10. 8 Innovation in DSAEK
Moria Distributors Meeting, Lisbon, Portugal(10/8)
リスボン
(ポルト ガル)
青木 大 2017.
12. 1- 3 「組織移植について」 第 16 回 JATCO 総合研修 会
東京都 大田区
青木 大 佐々木千秋
2018.
2.10-11 組織各論(皮膚)
平成 29 年度第 2 回日本 組織移植学会認定医・認 定コーディネーター合同 セミナー
福岡市
6. 教育講演等教育に関する業績、活動
教育に関する講演(医学・歯学における教育をテーマとするものに限る)
講 演 者 年 月 日 演 題 学 会 ・ 研 究 会 ・ 会 議 名 開 催 地
青木 大
佐々木千秋 2017. 6.29 眼科学「アイバンク」 東京歯科大学 第 4 学年 東京都 千代田区 比嘉 一成 2017. 6.29 眼科学「角膜の再生」 東京歯科大学 第 4 学年 東京都
千代田区
教育ワークショップ・FD 研修
講 演 者 年 月 日 ワ ー ク シ ョ ッ プ 名 役 割 開 催 地
佐々木千秋 2017. 4.14 角膜センター紹介,アイバンク と角膜移植.
東京歯科大学市川総合病 院 新人看護師オリエン テーション
市川市
青木 大 2017. 6.10 角膜センター紹介,アイバンク と角膜移植.
東邦大学医療センター大 森病院眼科
アイバンク見学会
市川市
佐々木千秋
西迫 宗大 2017. 6.27 角膜センター紹介,アイバンク と角膜移植.
東京歯科大学市川総合病
院 薬剤部学生研修 市川市 佐々木千秋
西迫 宗大 2017. 7.18 角膜センター紹介,アイバンク と角膜移植.
東京歯科大学市川総合病
院 検査科研修 市川市
佐々木千秋 2017. 8. 5
手続きと関連ガイドライン
「羊膜移植講習会」
第 16 回日本組織移植学会総 会・学術集会
講師 京都市
佐々木千秋 2017.
10.12-15
手続きと関連ガイドライン
「第 9 回羊膜移植講習会」
第 71 回日本臨床眼科学会
講師 東京都
千代田区
佐々木千秋
2017.10.27 角膜センター紹介,アイバンク と角膜移植.
東京歯科大学市川総合病
院 薬剤部学生研修 市川市
佐々木千秋 2018.
2.15-17
手続きと関連ガイドライン
「羊膜移植講習会」
第 42 回日本角膜学会総会・第 34 回日本角膜移植学会
講師 広島市
他の大学・研究機関等における学生・大学院生を対象とする講義
担 当 者 名 年 月 日 テ ー マ ・ 演 題 大 学 ・ 機 関 所 在 地
青木 大 2017.10. 3 「アイバンクについて」 東邦大学大学院修士講義 東京都 大田区 青木 大 2017.12. 5 「アイバンクについて」 東邦大学医学部講義 東京都 大田区
7. 社会的貢献・社会に対する活動
医学の啓蒙を目的とする講演会(市民を対象とするもの)
講 演 者 年 月 日 演 題 講 演 会 名 開 催 地
青木 大 2017. 5.13 アイバンク最前線 角膜移植患者の会
第 20 回定期総会 市川市 佐々木千秋 2017. 8. 2 アイバンクとコーディネー
ターの仕事 ふれあい看護体験 市川市
その他メディア等への掲載・出演
氏 名 年 月 日 タ イ ト ル 掲 載 誌 ・ 放 送 局 番 組 名 ・ URL
島﨑 潤 佐々木千秋 西迫 宗大
2017. 8.20 脳腫瘍・角膜移植・胃がん 食道がん〜.
BS 朝日
命を救う!スゴ腕ドクター3.
青木 大
西迫 宗大 2017.10. 9 息子の「角膜提供」決断し た母の思い.
フジテレビ FNN スピーク 島﨑 潤
青木 大 佐々木千秋
2017.12. 5 ゆうがた診療所 テレビ東京
ゆうがたサテライト.
青木 大
西迫 宗大 2018. 3.22
人生 100 年時代に光を灯 す!すご腕ドクターの最新 医療スペシャル
テレビ東京 カンブリア宮殿