市川総合病院 角膜センター
プロフィール
1. 教室員と主研究テーマ
講 師 比嘉 一成 1) メチルセルロースを用いた角膜輪部上皮オルガノイドの長期培養法の確立 2) 口腔粘膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果
3) 羊膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果 4) 結膜上皮モデルの作成とジクアホソルナトリウムの影響 5) ヒト結膜培養上皮細胞シートを用いたカルテオロール塩酸塩/
ラタノプラスト配合点眼液の評価 7) 羊膜バンクにおける供給実績の分析
コーディネーター 青木 大 6)当院におけるRoutine Referral Systemの運用分析 7) 羊膜バンクにおける供給実績の分析
8)ドナー特性とホスト予後の関係から考える新たなDSAEK用ドナー角膜の適応基準 佐々木千秋 6)当院におけるRoutine Referral Systemの運用分析
7)羊膜バンクにおける供給実績の分析
8)ドナー特性とホスト予後の関係から考える新たなDSAEK用ドナー角膜の適応基準 西迫 宗大 6)当院におけるRoutine Referral Systemの運用分析
7) 羊膜バンクにおける供給実績の分析
8)ドナー特性とホスト予後の関係から考える新たなDSAEK用ドナー角膜の適応基準 2. 成果の概要
1)メチルセルロースを用いた角膜輪部上皮オルガノイドの長期培養法の確立
我々はこれまでに角膜上皮の幹細胞と幹細胞を維持する環境であるニッシェを分離し、オルガノイド培養法 を用いることで長期培養を可能にしてきた。これにより、輪部機能不全を伴った難治性の疾患に対する適応 の拡大が期待される。本研究ではさらに再生医療として現実性を高めるため、すでに化粧品や医薬としても 利用されているメチルセルロースを用いて、オルガノイドのさらなる長期維持培養法の確立を目指している。
昨年度において形成したオルガノイドについて解析結果を報告したが、より良いオルガノイドを作成するた め、本年度はメチルセルロースにコラーゲンを配合した環境での培養を検討したところ、配合具合がメチル セルロース(0.85%-0.95%)とコラーゲン(0.13-0.05mg/ml)でオルガノイドを良く形成することがわかった。今 後はオルガノイドの保存法並びに移植法についても検討する予定である。
2) 口腔粘膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果
間葉系に属する細胞へ分化する能力を持つ間葉系幹細胞は様々な組織でもその存在の報告がなされており、
近年、再生医療でも注目されている。我々はこれまでに、口腔粘膜の上皮下組織から間葉系細胞を分離・培 養し、解析を行ってきた。今回我々は眼表面疾患モデルにおける細胞治療の効果を調べるため、口腔粘膜由 来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルへの移植を検討してきた。昨年度において、口腔粘膜由来間葉系幹細胞 を投与した眼表面では間接的に上皮の創傷治癒を促進していたことから、本年度において口腔粘膜由来間葉 系幹細胞の培養上清による効果を検討した。その結果、培養上清の点眼によっても上皮の創傷治癒を促進す ることがわかった。このことから、口腔粘膜由来間葉系幹細胞から放出された何らかの因子が上皮の創傷治 癒に効果をもたらすことが推察された。
比嘉一成 口腔粘膜由来間葉系細胞のウサギ角膜上皮創傷治癒モデルへの移植 角膜カンファランス 2020 学会雑誌. 一般演題(口演(ウェブ開催))P.59, 2020 比嘉一成 ウサギ角膜上皮創傷治癒モデルへの口腔粘膜由来間葉系細胞の移植
第 19 回日本再生医療学会 プログラム 一般演題(ポスター(ウェブ開催))P225, 2020 3) 羊膜由来間葉系幹細胞の眼表面疾患モデルにおける効果
我々は羊膜由来間葉系細胞が羊膜の持つ効果にどのように影響を与えているか明らかにするため、これまで に羊膜由来間葉系細胞の解析を行うとともに、in vitroならびにin vivoそれぞれの上皮創傷治癒モデルへの 影響を観察してきた。その結果、羊膜由来間葉系細胞は多分化能を示す間葉系幹細胞であり、その羊膜由来 間葉系細胞培養上清には、培養角膜上皮シートの未分化性を維持する効果と、培養角膜上皮とウサギ角膜上 皮それぞれの創傷治癒モデルにおいて創傷治癒促進効果があることを報告してきた。今年度においては昨年 度までのデータをまとめて論文投稿を行った
Higa Kazunari, Higuchi Junko, Kimoto Reona, Satake Yoshiyuki, Yamaguchi Takefumi, Tomida Daisuke, Shimazaki Jun. Effects of Amniotic Membrane-Derived Fibroblast Supernatant on Corneal Epithelium. Invest Ophthalmol Vis Sci. Sep 3;60(12):3718-3726.
4) 結膜上皮モデルの作成とジクアホソルナトリウムの影響
角膜上皮に対するジクアホソルナトリウムの効果はこれまでに数多く報告されているが、in vitro における 結膜上皮に対する影響はあまり報告されていない。そこで杯細胞を伴った結膜上皮シートを作成し、P2Y2受容 体を介したムチン分泌促進作用を持つジクアホソルナトリウムによる結膜上皮シートへの影響を観察してい る。これまでに、結膜上皮モデル作成において、数層に重層化した結膜上皮シートを作成することが可能で あり、血清を添加することによって、P2Y2受容体並びに MUC5AC を発現し杯細胞を伴った結膜上皮シートを作 成できることを報告した。本年度においてはさらに有用な培養条件を検討するため、盃細胞の分化に関連す る SPDEF をコントロールする TRAM34 の効果について検討中である。
5) ヒト結膜培養上皮細胞シートを用いたカルテオロール塩酸塩/ラタノプラスト配合点眼液の評価
緑内障治療のための点眼薬は防腐剤として使われる塩化ベンザルコニウムや点眼薬の主成分である・ブロッ カーにより細胞障害があり、角膜上皮細胞への影響が報告されている。これらの影響をなくすために、カル テオロール塩酸塩/ラタノプラスト配合点眼液が開発されているが、結膜上皮への影響についてはこれまで に検討がなされていないため、結膜上皮シートを作成し他の点眼薬との影響の比較を行っている。本年度に おいては点眼薬を培養中に添加することにより、カルテオロール塩酸塩/ラタノプラスト配合点眼液は他の 点眼薬と影響が異なることがわかってきた。今後はその詳細についてバリア機能や増殖能といった上皮に重 要なものについて比較検討していく予定である。
6)当院におけるRoutine Referral System の運用分析
2004年10月より運用を開始している全死亡例臓器提供意思確認システム(Routine Referral System:RRS)に ついて、運用開始から14年半の期間中、死亡退院連絡8,106件に対し、連絡を受けたのが7,294例、意思確認を 行ったのが4,595件(63.0%)、提供に至った例は418件(9.1%)であった。
提供意思を有する方および提供したいという遺族は、一定の割合で存在することが証明された。しかし、依然 ドナー不足が改善されたわけではない。今後は、ドナー数確保のために、更なるシステムの検討やより一層の 啓発活動を検討していく予定である。
佐々木千秋, 青木 大, 西迫宗大, 島﨑 潤. アイバンクにおける眼球提供意思確認システムの運用・
分析, ポスター「コーディネーション2」. 第55回日本移植学会総会, 広島市, 2019.10.10-12.
7) 羊膜バンクにおける供給実績の分析
東京歯科大学市川総合病院羊膜バンク(以下TDC)と京都府立医科大学組織バンク(以下KPUM)に集積された2018 年の移植報告データ(TDC107件、KPUM52件)を後ろ向きに分析した。
手術方式では、TDCでは羊膜カバーが6割を占めたが、KPUMでは0件、病態ではTDCでは上皮欠損に続いて角膜輪 部機能不全が多いのに対し、KPUMでは結膜欠損が殆どを占め瞼球癒着が続いた。またTDCでは特徴的に角膜移 植術、KPUMでは翼状片切除術が羊膜手術と同時に施行されていた。2施設で実施された羊膜手術の結果は、特 色が分かれた形となった。移植施設毎の特色のほか、術式や疾患の違いによって、移植医が希望する羊膜のニ ーズには違いがあることが予想されるため、今後、羊膜バンクとしては、グラフトの厚みや大きさ、形状等、
より移植医のニーズに応えるグラフトを供給できるよう可能性を検討していく予定である。
佐々木千秋.西迫宗大.青木大.市川総合病院羊膜バンクと京都府立医科大学羊膜バンクの供給 実績の比較からみえてきたこと 第18回日本組織移植学会・学術集会 学会雑誌. 名古屋市, 2019/8/2-4.
8) ドナー特性とホスト予後の関係から考える新たな DSAEK 用ドナー角膜の適応基準
DSAEK予後に関連するドナー危険因子の抽出とそれらのレシピエント原疾患毎の評価を実施した。当院におい てDSAEK術を施行した584眼を用いて後ろ向きに検討した。単因子・多因子解析の結果、ドナーの白内障手術 歴・Endothelial foldsが移植後のグラフト生存に独立して寄与する危険因子として抽出された。術後の12か 月後の内皮細胞密度変化は、白内障手術歴・graft ECD・endothelial folds・疾患で統計学的有意差を認め た。ドナーグラフトにおける白内障手術歴・Endothelial foldsの有無によるリスクスコアーの累積生存曲線 を原疾患で比較した結果、フックス内皮ジストロフィ以外の疾患で、統計学的有意差を認めた。アジア人で はフックス内皮ジストロフィ以外の疾患が多数を占める。本データは、わが国におけるより最適なDSAEKグラ フトの斡旋に寄与するものと考えている。
西迫 宗大 ドナー関連因子がDSAEK予後に及ぼす影響-因子解析と予後予測モデルの構築-
角膜カンファランス2020 学会雑誌. 一般演題(口演(ウェブ開催)), 2020.2.25-27
3. 学外共同研究
担当者 研究課題 学外研究施設
研究施設 所在地 責任者
比嘉一成 島﨑 潤
ヒト iPS 細胞由来角膜内皮様細胞のウサ ギ角膜への移植
慶應義塾大学医学部 眼科学教室
東京都 新宿区
羽藤 晋 榛村重人 比嘉一成
島﨑 潤
ヒト結膜培養上皮細胞シートを用いた カルテオロール塩酸塩/ラタノプラス ト配合点眼液の評価
慶應義塾大学医学部 眼科学教室
東京都 新宿区
小島隆司 村戸ドール 坪田一男 4. 科学研究費補助金・各種補助金
研究代表者 研究課題 研究費 科研費の場合は種別も記載
比嘉一成 メチルセルロースを用いた角膜輪部上皮オルガノイドの長期 培養法の確立
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
島崎 潤 羊膜由来間葉系細胞エクソソームの分離と眼表面における効果 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
坪田一男 ヒト結膜培養上皮細胞シートを用いたカルテオロール塩酸塩/
ラタノプラスト配合点眼液の評価
大塚製薬
研究者主導研究支援 島崎 潤 ドナー特性とホスト予後の関係から考える新たな DSAEK 用ドナ
ー角膜の適応基準 ノバルティス研究助成
5. 研究活動の特記すべき事項
学術学会に相当しない団体が開催するセミナー・研究会・カンファレンス等における発表・講演
講演者 年月日 演題 会合の名称 開催地
青木 大 2019.11.22
-24 組織提供について 第 18 回日本移植コーディネー ター協議会(JATOCO)総合研修会
東京都 大田区
6. 教育に関する業績、活動
教育に関する講演(医学・歯学における教育をテーマとするものに限る)
講演者 年月日 演題 学会・研究会・会議名 開催地
青木 大 2019. 7. 8 眼科学「アイバンク」 東京歯科大学 第 4 学年 東京都 千代田区 比嘉一成 2019. 7. 8 眼科学「角膜の再生」 東京歯科大学 第 4 学年 東京都
千代田区 青木 大 2019.11.18 眼科学「アイバンク」 東京歯科大学 第 3 学年 東京都
千代田区 比嘉一成 2019.11.18 眼科学「角膜の再生」 東京歯科大学 第 3 学年 東京都
千代田区 教育ワークショップ・FD 研修
講演者 年月日 ワークショップ名 役割 開催地
青木 大 2019. 4.24 角膜移植とアイバンク. 東邦大学医学部見学中学生
職場体験講義 講師 東京都
大田区
講演者 年月日 ワークショップ名 役割 開催地
佐々木千秋 2019. 4.24 角膜移植とアイバンク. 東邦大学医学部見学中学生
職場体験講義 講師 東京都
大田区
青木 大 2019. 5.15
組織バンクと組織移植コーディネーターの役割 (公社)日本臓器移植ネットワーク新人コーディネー ター研修会
講師 東京都 港区
比嘉一成 2019. 6.10
角膜の再生について
東邦大学医療センター大森病院眼科アイバンク見学 実習会
講師 市川市
青木 大 2019. 6.10
角膜センター紹介 アイバンクと角膜移植
東邦大学医療センター大森病院眼科アイバンク見学 実習会
講師 市川市
佐々木千秋 2019. 6.10
ダミーヘッドを用いての摘出術 東邦大学医療センター大森病院 眼科アイバンク見学実習会
講師 市川市
佐々木千秋 2019. 8. 7
アイバンクとコーディネーターの仕事. (公社)千葉 県看護協会主催
ふれあい看護体験 2019(東京都および千葉県内高等 学校)
講師 市川市
佐々木千秋 2019.11.14 角膜コーディネーターの仕事. 職場体験学習(船橋
市立行田中学校) 講師 市川市
佐々木千秋 2019.11.20 臓器移植. 千葉県警察学校入校生講義 講師 東金市 佐々木千秋 2019.11.21 アイバンク・羊膜バンク活動の現状. 第 19 回東京
歯科大学眼科イブニングセミナー 講師 市川市 他の大学・研究機関等における大学生・大学院生を対象とする講義・実習
担当者名 年月日 テーマ・演題 大学・機関 所在地
青木 大 2019. 4.22 角膜移植とアイバンク 東邦大学医学部 第 3 学年眼科学
東京都 大田区 7. 社会的貢献・社会に対する活動
医学の啓蒙を目的とする講演会(市民を対象とするもの)
講演者 年月日 演 題 講演会名 開催地
佐々木千秋 2020. 2.15 『白内障手術で明るい視界、
明るい人生』 市民のための健康講座 市川市
その他メディア等への掲載・出演
氏 名 年月日 タイトル 掲載誌・放送局番組名・URL
2020. 1. 5 「広げよう、アイバンク」 南日本(鹿児島)新聞朝刊 2020. 1. 6 「広げよう、アイバンク」 大分合同新聞朝刊 2020. 1. 7 「献眼への理解広めよう」 岩手日報
氏 名 年月日 タイトル 掲載誌・放送局番組名・URL 2020. 1. 7 「広げよう、アイバンク」 下野新聞(栃木)朝刊
2020. 1. 8 「アイバンク」提供減少 神戸新聞(兵庫)夕刊 2020. 1. 8 「広げよう、アイバンク」 徳島新聞夕刊