10 . 開写像・閉写像
科目: 数学演習IIA( f組)
担当: 相木
前回のプリントで位相空間の間の写像に対して「連続性」を定義した.それは,以下 で与えられていたことを思い出そう.
位相空間の間の連続写像
(X,OX)と(Y,OY)を位相空間とする.写像f :X →Y が以下を満たすとき,f はX からY への連続写像であるという.
∀O ∈ OY, f−1(O)∈ OX
標語的に言えば「開集合の逆像が開集合」となるときに連続写像というのであった(この 標語は,連続写像の定義を覚えるのに便利かもしれないが,どの位相空間における開集合 であるかを意識しなくてはならないことに注意).
また,同値な命題として以下も前回のプリントで紹介した.
写像の連続性と同値な命題
(X,OX)と(Y,OY)を位相空間とする.写像f :X →Y が以下を満たすこととfが連 続写像であることは同値である.
Y の任意の閉集合Aに対してf−1(A)はXの閉集合である
つまり,「閉集合の逆像は閉集合」となることが連続であることと同値なのである.
ここで,連続写像に対してその像に関しても同様の性質が成り立つか?という疑問が 自然と浮かぶ.つまり,連続写像に対して「開集合の像は開集合」あるいは「閉集合の像 は閉集合」は一般に成り立つであろうか?
答えはNoである.実際,f : R→ Rをf(x) = x2で定めるとfは連続である.しか し,O= (−1,1)は開集合であるが,fによるOの像は
f(O) = {b∈R | ∃a∈O, b=f(a)}= [0,1)
となり,開集合ではない.「閉集合の像は閉集合」も一般には成り立たない(演習問題).
したがってこれら2つの性質は写像が連続であることと独立した性質であることが分か
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る.これを考慮して以下を定義する.
開写像
(X,OX)と(Y,OY)を位相空間とする.写像f :X →Y が以下を満たすとき,f はX からY への開写像であるという.
∀O ∈ OX, f(O)∈ OY
閉写像
(X,OX)と(Y,OY)を位相空間とする.写像f :X →Y が以下を満たすとき,f はX からY への閉写像であるという.
Xの任意の閉集合Aに対してf(A)はY の閉集合である
写像が開写像であることと閉写像であることも一般には一致しない.つまり,開写像であ るが閉写像でない写像は存在するし,閉写像であるが開写像でない写像も存在する.しか し,写像fに少し条件を課せば連続写像・開写像・閉写像の間に関連が出てくる(演習問 題参照).
予約制問題
(10-1) 連続写像であるが閉写像でないような例を1つ挙げよ.
(10-2) (X,OX)を位相空間とし,f :X →Rを実連続関数とする.このとき,以下の集 合が開集合・閉集合・どちらでもないかを判定し,それを示せ.
(i){x∈X | f(x) = 1} (ii) {x∈X | f(x)>0}
(10-3) Xを空でない集合とし,O1,O2をXの位相とする.恒等写像idX :X →Xに対 して以下が同値であることを示せ.
(i) idXは(X,O1)から(X,O2) への開写像である.
(ii) 位相O1は位相O2よりも弱い.
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(10-4) (X,OX),(Y,OY)を位相空間とし,f :X →Y を開写像とする.以下を示せ.
∀x∈Xに対して,V がXにおけるxの近傍ならばf(V)はY におけるf(x)の 近傍
早いもの勝ち制問題
(10-5) Xを空でない集合とし,O1,O2をXの位相とする.恒等写像idX :X →Xに対 して以下が同値であることを示せ.
(i) idXは(X,O1)から(X,O2) への閉写像である.
(ii) 位相O1は位相O2よりも弱い.
(10-6) (X,OX)を位相空間とし,f :X →Rを実連続関数とする.このとき,以下の集 合が開集合・閉集合・どちらでもないかを判定し,それを示せ.
(i){x∈X | 1< f(x)<2} (ii) {x∈X | 1≤f(x)≤2}
(10-7) (X,OX),(Y,OY)を位相空間とし,写像f :X →Y は全単射とする.以下が同値 であることを示せ.
(i) f は開写像である.
(ii) fは閉写像である.
(iii) f−1は連続写像である.
(10-8) (Xi,Oi) (i= 1,2,3)を位相空間とし,写像f :X1 →X2とg :X2 →X3は開写像 であるとする.このとき,合成写像g◦f :X1 →X3も開写像であることを示せ.
(10-9) (X,OX),(Y,OY)を位相空間とし,f :X →Y を連続写像とする.このとき,
x ∈Xに対してV がXにおけるxの近傍であってもf(V)はY におけるf(x)の 近傍になるとは限らない.例を1つ挙げてこれを示せ.
(10-10) (X,OX),(Y,OY)を位相空間とし,写像f :X →Y が以下を満たすとする.
∀x∈Xに対して,V がXにおけるxの近傍ならばf(V)はY におけるf(x) の近傍.
このとき,fは開写像であることを示せ.
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