第5学年2組国語科学習指導案
指導者 H ・ A 1 単元名 本の世界を深めよう『雪わたり』
2 単元について
(1)単元観
本単元は,学習指導要領第5学年及び第6学年の「C読むこと」の目標「目的に応じ,内容や要旨をと らえながら読む能力を身に付けさせるとともに,読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度 を育てる。」に基づき,「C読むこと」の指導事項ア(音読に関する指導事項)「自分の思いや考えが伝わ るように音読や朗読をすること。」,指導事項エ(文学的な文章の解釈に関する指導事項)「登場人物の相 互関係や心情,場面についての描写をとらえ,優れた叙述について自分の考えをまとめること。」と指導 事項オ(自分の考えの形成及び交流に関する指導事項)「本や文章を読んで考えたことを話し合い,自分 の考えを広めたり深めたりすること。」を受けて設定されている。
本単元で扱う教材文『雪わたり』は,美しい雪の野原を背景に,子ぎつねと人間の子どもとの心温まる 交流を描いた作品である。自然の情景描写に優れ,独特のリズムで展開されていく点や,人間と動物との やりとりの中でしだいに心を通わせていく点など,宮沢賢治ならではの魅力にあふれた作品となっている。
本教材のねらいは,本の世界を広げ,深め合っていくことである。『雪わたり』との出会いをきっかけ として,宮沢賢治の世界を読み味わい,隣接学級児童への音読発表をし,さらには宮沢賢治作品の『読書 すいせん会』を通して交流をしていく。その活動を通して,宮沢賢治作品の独特な表現方法やその面白さ,
作品にこめられた筆者の願いを自分なりに受け止め,表現していくことで本の世界を深め,これからの読 書活動をより豊かなものにしていきたい。
(2)児童の実態(男子15名 女子16名 合計31名)
本学級の児童は,男子15名女子16名,合計31名で構成されている。話すこと・聞くことに関し ては,自分の考えを積極的に話そうとする児童が3分の1程度で,恥ずかしがったり自信がなかったりし て発言できない子も少なくない。しかし,『すいせんのスピーチをしよう』などの教材で,自分が発表す る内容を整理したりメモを活用する学習を通して,最後まで自信をもって話すことができる児童は多くな ってきている。友達の発言に対しては,よく聞いている子が多いが,友達の発言に対しての反応はやや薄 い。書くことに関しては,自分が想像した物語を書く学習では,4分の3程度の児童が想像を広げてオリ ジナルのストーリーを書き上げることができた。4分の1の児童は,想像を広げて書く事が難しかったり,
表現の仕方が乏しく,支援が必要である。
読むことに関しては,朝の読書や休み時間に進んで本を読む児童の姿が見られる。また,朝の会では詩 の音読も行い,回を重ねるごとに情景を浮かべながら音読できる子も増えてきた。物語の読み取りにおい ては,主人公の心情を想像することができる児童が学級の半数程度である。『大造じいさんとがん』では,
登場人物の心情になりきるために日記作りに取り組んだ。登場人物の心情を深く読み取り,登場人物の生 き方にまで目を向けることができる児童がいる一方,教科書に書かれている言葉のみで気持ちを表そうと し,表現に広がりがない子も半数程度いる。また,内容を全く理解できていない子も数名いる。
高学年になり,読み取ったことを進んで表現することに対して恥ずかしさを感じている子もいるようで あるが,自分なりに考え,友達と意見を交換する中で,よりよい音読の仕方を考え,自信をもって表現で きるようにしたい。
本単元を学習するにあたって以下の実態調査を行った。(30名回答)
1 宮沢賢治さんを知っていますか。
①全く知らない10名 ②名前は知っている17名 ③くわしく知っている3名
2 音読は好きですか。
①好き7名 ②どちらかというと好き11名 ③どちらかというと嫌い8名 ④嫌い4名
3 どうしたら音読が上手になると思いますか。
気持ちを込めて読む3名 場面や人物の気持ちを考えながら読む14名 繰り返し読む5名 たくさんの本を読む5名 強弱や間を考える3名
4 読書をどれくらいしていますか。
毎日7名 週に5~6日4名 週に3~4日8名 週に1~2回8名 ほぼ読まない3名
5 どのような本の種類が好きですか。
ファンタジー17名 民話・昔話5名 推理もの9名 伝記5名 ノンフィクション3名 その他3名(漫画,スポーツ)
〈考察〉
宮沢賢治については全く知らないという児童も多く,名前は知っていてもどんな作品を書いたかなどに ついてはほとんど知らなかった。詳しく知っている児童に関しては,教師を経て作家になった彼の人生や,
有名な作品についてよく知っており,印象は「おもしろい」,「飽きない」と作品に魅力を感じているとい うことがわかった。
音読については,約半数の児童が好きと答えたが,その理由としては,「物語の理解が深まる,登場人 物の気持ちがわかって楽しい」,「自由な気持ちになる,どきどきする」,「声に出して伝えるのが好き」と いう回答が多かった。反対に嫌いと答えた児童は,「感情をこめるのが難しい,強弱をつけるのが難しい」,
「面倒くさい,時間がかかる」という回答であった。しかし,嫌いと回答した中にも「自分の心の中で読 むのがすき」と本を読むことは好きと答えた児童も2名程いた。よって,ただ読むのではなく音読発表や 音読すいせん会を行う目的意識を持ち,どのように読むと良いか考えたり練習したりする活動を通して,
音読に対する意欲が高まっていくのではないかと考える。
読書に関しては,比較的本を読んでいる児童が多かった。「ほぼ読まない」という児童も習い事で忙し いという回答であり,読むこと自体が嫌いという児童はごくわずかであった。
(3) 指導観
今回学習する『雪わたり』は,文語調で書かれていることや,普段近代作家の作品に触れる機会が少 ないこと,また16ページに渡る長文であることなどから,ともすると「難しい」「長い」という印象に なりがちである。しかし,情景描写の美しさや人間と動物とのテンポのよい会話,思わず体が動き出して しまいそうなリズミカルな歌や踊りなど,児童の興味をひきつける要素がたくさんある。読み進める中で この作品の面白さを十分味わえるように,音読活動を工夫していく。
そこで,学習の始めに「隣接学級児童へ向けて読書発表会をする。」という目標を提示しておくことで,
音読への工夫を意識づけし,表現の幅を広げられるようにしたいと考える。また,一人一人が楽しく読み 伝える活動を目標とすることで,音読に対する意欲を高めていきたい。
そして,『雪わたり』の一番の楽しさは,繰り返し出てくる「キックキックトントン」という歌や踊り にあると考える。「キックキックトントン」から,主題となる人間ときつねとの心の交流や,互いに分か り合えた喜びを読み取ることができるようにしたい。そして,宮沢賢治特有の言葉の使い回しである比喩 や擬声語,擬態語にも目を向け,想像を広げ読み進めるようにしたい。
全体を通して,読み取ったことは常に音読に生かせるように,お互いの表情や動きも見合えるようにし,
交流を通してお互いの読みの違いや良さに気づき,読みを深めていきたいと考える。また,「読書すいせ ん会」は,宮沢賢治の作品にテーマを絞って行う。できるだけたくさんの作品を読む中で,自分の好きな 作品やそれぞれの作品に共通することや,筆者の作品にこめた願いなどに気付かせ,読書したことをもと に互いに意見を交流し合うことで自分の考えを広げ,読書活動をより深められるようにしていく。そこで,
『雪わたり』を読んでいる時から,他の作品を平行読みしていけるように,読書環境を整えていく。今ま で馴染みの薄かった宮沢賢治の作品に出会い,その叙述の美しさや楽しさから想像をふくらませて読み味 わい,感じたことを自分なりに表現していけるようにしたい。
3 目標
関心・意欲・態度 ・話し合いに進んで参加したり,読み取ったことを自分なりに工夫して表 現しようとする。
読むこと ・登場人物の心情や場面についての描写などがよく伝わるように音読する ことができる。
伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項
・文語調の文章について,比喩や反復などの表現の工夫に気付き音読を することができる。
4 指導計画(10時間扱い)
過程 学 習 活 動 支援(○) と 評価(◎)
・美しい叙述や会話の面白さなど, ○本文から意味のわからない語句を見つけ,辞 見 物語の楽しさを自分なりに見つけ 書を使って調べさせておき,全体で確認する。
る。
通 ・自分の感想と友達の感想との共 ◎自分の好きな表現や場面にサイドラインを 通点や相違点を感じながら,話し 引いたり,ノートに書いたりしているか。
す 合う。
(美しい雪野原が想像できる表現 ◎自分の感想を発表し,話し合いに参加するこ
(2) 情景を比喩している表現 とができたか。
キックキックトントン 心が通じ合えた場面)
○四郎・かん子,紺三郎・きつねたちとの会話
・初発の感想を発表し合い,文章の や心の交流が分かる表現に着目し,文章の姿
姿をとらえる。 をとらえる。
(四郎・かん子と紺三郎と のやり ◎文章の姿をとらえ,自分の考えをまとめるこ とり、キックキックトントン) とができたか。
・読書発表会をするという,課題を ○どのように読書発表会をするか知らせる。
知り,学習の見通しを持たせる。
・森の世界の入り口であるきつねと ○挿絵を掲示し,森の中からどんな歌が聞こえ の初めての出会いの場面の様子を てくるか考えさせる。
読み取り音読する。1,2場面 ○難語句は確認しながら情景描写からどのよう
深 (P42 ~P45L16まで) な森の風景が広がっているか想像を広げる。
(本時1/4) ○きつねとの会話を追い,四郎とかん子がきつ ねと少しずつ打ち解けてい様子を読み取らせ
め る。
◎情景描写や擬声語,擬態語,会話文を工夫し て音読することができたか。
る
・きつねから幻灯会の誘いを受けて,○会話文から四郎・かん子と紺三郎とのやりと やりとりする中で打ちとけていく りを想像し,工夫して音読させる。
(4) 様子をとらえる。 ○会話に着目しなぜ紺三郎が四郎とかん子をげ ん灯会に招待したかを考えさせる。
○「キックキックトントン」とは,どんな踊り かを考えさせる。
◎打ち解け合っていく気持ちが伝わるように工 夫して音読ができたか。
・幻灯会に出かけ,きつねに迎えら ○きつねの服装や場面の様子,きつねの言い回 れる場面を読み取る。 しから,どのような幻灯会か想像させる。
◎幻灯会にいくまでの気持ちの高まりと不思議 な幻灯会の世界を想像しながら音読することが できたか。
・きつねが出したきびだんごを食べ,○「キックキックトントン」の踊りに表れるき 互いに心を通わせる場面を読み取 つねたちの気持ちや,きつねの涙について考
る。 えさせる。
◎情景や場面,気持ちが伝わるように音読がで きたか。
ま ・どのようにしたら楽しい音読にな ○どのようにしたら楽しい音読になるかをメモ るかを考え,自分なりに工 夫を考 しながら,場面ごとに工夫して音読練習をす
と える。 るよう助言する。
◎友達と協力し,よりよい音読の仕方を考え
め 進んで練習をしているか。
◎情景や場面,気持ちが伝わるように音読がで
る きたか。
(4) ・『 雪 わ た り 』 の 楽 し さ を 伝 えら ○自分たちで考えた工夫を取り入れ,音読でき れるように音読をする。 るよう助言する。
◎情景や場面,気持ちが伝わるように音読できた か。
・ポップの作り方を知る。 ○『読書すいせん会』をするにあたってポップ
・進んで宮沢賢治の作品を読む。 作りの作り方を知る。
◎ポップの作り方を知り,進んで読書をするこ とができたか。
・紹介する本の順序や話す内容の組 ○宮沢賢治の作品を読んで,作品の好きな場面 み立てなど効果的な紹介の仕方を やテーマなどを書き出し,ポップにする。
意識して,文章に書く。 ◎進んで読書をし,自分なりに組み立てを考え て書くことができたか。
・自分の考えをわかりやすく人に伝 ○宮沢賢治の作品の中で,共通するテーマ等を えたり,友達の考えを聞いたりし 見つけ,作品に込めた願いなど,宮沢賢治と て,そのよさを認め合う。 いう人物についても考えていく。
◎自分なりに発表の仕方を工夫して,宮沢賢治 の作品を紹介できたか。
5 本時の学習(1/4)
(1)目標
関心・意欲・態度 ・話 し 合 い に 進 ん で 参 加 し た り , 読み 取 っ た こと を 自 分な り に 工 夫して表現しようとする。
読む ・登場人物の心情や場面についての描写などがよく伝わるように 音 読することができる。
伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項
・文語調の文章について,比喩や反復などの表現の工夫に気付き,音 読をすることができる。
(2)展開
時配 学習活動と内容 支援(○)と評価(◎)
2 1 前時の学習を想起する。 ○掲示物を使って,登場人物や場面の様子を確認 する。
1 2 本時の学習のめあてを確認する。
雪野原からどんな歌が聞こえるかを想像して読もう。
12 3 P43L上3までを音読し,雪野原や森 ○美しい雪野原の様子や,普段は歩くことのでき の様子を想像する。 ない雪野原を歩ける四郎とかん子のわくわくし
・森の様子がわかるところに線を引く。 た様子を読み取らせる。難しい児童には挿絵を ヒントにし,森の様子を想像させる。
○比喩や,反復の表現が森の様子を印象深くして いることに着目させる。
○難語句は掲示物で確認する。
17 4 P45上L16までを読み,森からどん ○歌を通して四郎たちと紺三郎が会話しているこ な歌や会話が聞こえたか話し合う。 とに気付かせ,次第に距離が近づいていること
・会話文に誰が話しているか書き込む。 を捉えさせる。
・紺三郎との心の距離がどうなっているか 考える。
・歌の音読の仕方を考える。 ○歌の部分は教師が単調に読むことを演示し,様
「かた雪かんこ,しみ雪しんこ。」 子が伝わりづらいことを確認してから,実際に どのように読んだらよいか考えさせる。
・役割を選び,どのように音読すれば様子 ○会話文の前後の文にも着目し,読み方に生かす に合うか考え,話し合う。(一人,グルー ようにしたり,動作も入れるとさらに様子が伝
プ) わることを助言する。
高くさけびました。
しっかり足をふんばってさけびました。 ○一人ずつ考えた後,グループで話し合わせ,大 銀のはりのようなおひげをピンと一つひね きく読んだり小さく読んだりするところなどを
って言いました。 メモさせたり,お互いにアドバイスさせる。
笑って言いました。
おもしろそうに言いました。 ◎進んで様子を想像し,自分の考えを話すことが
そっと歌いました。 できたか。
おどろいてたずねました。
熱心に言いました。
さけびました。
5 5 音読の練習を行う。 ○メモを参考にし,どのように読むと様子がよく
・グループごとに役割を決めて練習をする。 伝わるか考えながら,練習させる。
◎ 気 持 ち の 伝 わる 読み 方 を考 え な がら , 音 読 できているか。
5 6 心情を思い浮かべながらP43下L1か ◎ち ょ う ど よ い 声 の 大 き さ や 速 さ で , 情 景や らP45上L16までを音読する。 場面, 気 持 ち が 伝 わ る よ う に 音 読 ができた
・役割読み か。
3 7 次時のめあてを確認する。
(3)板書計画
(4)本時で目指す表現
本の世界を深める
雪わたり
宮沢賢治
「きつねこんこん、きつねの子、およめが
いらなきゃもちやろか。」
(笑ってって書いてあるからリズムよく
楽しそうに読もう。)
「きつねこんこん、きつねの子、きつねの
だんごはうさのくそ。」
(そっとっていうことは、今までよりも小
さく読もう。)
「いいえ、決してそんなことはありません。
あなたがたのような立派なおかたが、う
さごの茶色のだんごなんかめしあがるもんですか。わたしらは、ぜんたい、今ま
で人 を だ ま す なん て、
あ ん ま り 無 実 の 罪
をきせられていたのです。」
(最初は笑いながら読んで、最後の方は強調したいから強く真剣な声で読もう。) 雪野原からどんな歌が聞こえるかを想像して読もう。 本の世界を深める
雪わたり
宮沢賢治
雪野原と森の様子
・雪がすっかりこお
って大理石よりもかた「かた雪かんこ、しみ
くなり雪しんこ」
・お日様が、真っ白
に燃えて・木なんかみんなザ
ラメをかけたよう「かた雪かんこ、しみ
・小さな鏡のように雪しんこ」
キラキラキラキラ
・重そうに体を曲げてお「かた雪かんこ、しみ
りました。雪しんこ。きつねの
子ぁ、よめぃほしい、ほしい。」
足をふんばってさけびま「きつねこんこん白ぎつ
した。(大きく)
ね、
およ め ほ し け り ゃ
とってやろよ。」銀のはりのようなおひ「四郎はしんこ、かん子
げをピンと一つひねっ
はかん
こ
、 お ら は およ
て言いました。めはいらないよ。」
(動作をつけて) 絵挿 歌 雪野原からどんな歌が聞こえるかを想像して読もう。
どのように読むか