第5学年○組 国語科学習指導案
指導者 F・T
1 つけたい力 登場人物の行動や言葉,情景描写から心情の変化を読み取る。
2 教材名 大造じいさんとがん 3 教材について
(1) 教材観
本教材は,学習指導要領第5学年及び第6学年の「C読むこと」の目標「目的に応じ,内容 や要旨をとらえながら読む能力を身につけさせるとともに,読書を通して考えを広げたり深め たりしようとする態度を育てる。」に基づき,指導事項エ「登場人物の相互関係や心情,場面に ついての描写をとらえ,優れた叙述について自分の考えをまとめること」を受けている。これ まで中学年では,文学的文章の解釈を一人一人の登場人物の行動や性格に基づき,場面の展開 に即して変化する気持ちを中心に捉えてきた。高学年では,中学年の段階を受けて新たに登場 人物の相互関係から人物像やその役割を捉えることによって,内面にある深い心情を捉えるこ とにつなげていく。登場人物の心情は,直接的に描写されている場合もあるが,情景などを通 じて暗示的に表現されている場合もある。このような表現の仕方にも注意し想像を豊かにしな がら読むことが大切である。また,同じ作者や同じ題材の作品を読み比べることによって,子 どもたちが自分で優れた叙述を味わうことができ,メッセージや題材を意識していくことがで きる。
本教材は,椋鳩十の作品であり,「生き方を見つめて読もう」という単元の中で位置付けられ ている。作品の内容としては,猟師である「大造じいさん」とがんの「残雪」との戦いを描い たものである。猟師である大造じいさんは,毎年様々な方法を考えてがんを捕ろうと試みるが,
頭領である残雪にことごとく見破られ敗れ去ってしまう。しかし,はやぶさと残雪との戦いを 見て,大造じいさんは残雪に対する気持ちが大きく変化し,残雪を良きライバルとして捉える ようになるのである。また,内容の展開は,時間の移り変わりや登場人物の行動から捉えやす いという特徴がある。情景描写からも登場人物の心情を反映している点についても作品を味わ うということでとても適していると考える。
(2) 児童の実態
本学級は,男子10名,女子11名,計21名で構成されている。学級全体の様子は,子ど もたち一人一人が明るく元気な状況である。読書や音読について意欲的に取り組むことができ ている。国語科学習においては,文章全体から登場人物の心情,理由・原因や結果についてそ の部分を適切に見つけ出すことができているが,自分の考えや意見を書くことに対して大きな 抵抗感がある。また,自分の考えや意見を発表することができる児童は限られている。その理 由として子どもたちの中で集団の中で自分の意見を発表することに対して抵抗感や自信がない ことなどが挙げられるのではないかと考える。
本教材の学習を行う上で,子どもたちに対してレディネステストと事前アンケートを行った。
以下にアンケートの結果を示す。
<事前アンケート結果(調査人数21名)>
①国語の学習は好きですか。 はい13名 いいえ8名 ②文章を書くことは好きですか。 はい8名 いいえ13名 ③椋鳩十の作品を知っていますか。(「大造じい はい1名 いいえ20名
さんとがん」以外の作品で)
④読書は好きですか。 はい18名 いいえ3名 ⑤発表することは好きですか。 はい3名 いいえ18名
<レディネステストの結果(調査人数21名)>
心情を読み取る問題においては,11名の子どもたちができていた。また,文章の中にある 言葉から登場人物の人物像について答える問題については,8名の子どもたちができていた。
このことから,半数の子どもたちが叙述に即して心情を読み取る力が不十分だと分かる。
また,本教材である「大造じいさんとがん」について事前に初発の感想をとった。主なもの は以下の通りである。
<大造じいさんについて>
・大造じいさんが残雪をうたなかったことは,やさしいことだと思う。
・四年目の春の朝,大造じいさんが残雪を逃がしてあげた時,大造じいさんは,とても 明るい心になった。
<残雪について>
・ハヤブサと戦った残雪は,とても勇気があると思う。
・仲間を守る残雪の姿は,たくましく心強いと思う。
主題となる残雪との出会いによって変わる大造じいさんの心の変化についての感想はなかっ た。
(3) 指導観
児童の実態を踏まえて,以下の二つの点を重視したい。
第一点目は,情景描写の描き方から登場人物の心情について理解を深めさせていくことであ る。なぜなら第5学年の文学的文章の学習において,初めて登場人物の心情を情景描写の中で 暗示的に表現されているからである。この情景描写の読み取りを丁寧に行い,子どもたちがさ らに豊かに場面をイメージしたり,心情を考えたりすることにつなげていきたい。
第二点目は,文学的文章の中で描かれている主題について子どもたち自身が自分自身のこと として捉えられるようにさせていくことである。
(仮説1)
文章全体のあらましをとらえ,課題を持つことができれば,主体的に読むことができる であろう。
① 挿絵や大段落の活用
大段落と挿絵の二つの側面から捉えることによって,文章全体のあらましを捉えていく。具体的 には,大段落の活用では,時を表す言葉に線を引かせて時間経過を読み取っていく。また,挿絵の 活用では,一枚一枚の挿絵が意味することについて読み取らせたり,挿絵を文章の組み立てと照ら し合わせながら文章全体のあらましを捉えたりする。
② 初発の感想の類型化
初発の感想を場面ごとに発表させていく。中心場面への感想が多いので,意見を交流させること で「読みの課題」へとまとめていく。
① 登場人物の言葉や行動に着目し,心情を考える。
登場人物の会話文と登場人物の行動に当たる部分に線を引かせ,そこから心情を考える。
② 情景描写から心情を考える。
情景描写に着目させ,登場人物の心情にどのように反映しているのか考えさせていく。
① 大造じいさんの日記による登場人物の心情の捉え
各場面で読み取ったことを日記に書き表す活動により,大造じいさんになりきって心情を考える。
② 作者の思いについて触れる指導
同じ作者の作品を読むことによって,作者のメッセージや優れた叙述を味わう。
4 教材の目標
関心・意欲・態度 ○物語文を通して積極的に自分の考えを持ち,進んで話し合うことが できる。
読むこと ○登場人物の行動や言葉,情景描写から心情の変化を読み取ることが できる。
言語事項 ○情景などの表現に着目し,その表現の効果を感じ取り,心情との関 連を考えながら読むことができる。
(仮説2)
読み取り方の基礎,基本を身につけ,読みとり方がわかれば意欲的になり楽しく読むこ とができるであろう。
(仮説3)
読み取ったことを表現していく場を工夫すれば,意欲的に読むことができるであろう。
5 指導計画(7時間扱い)
過程 育てたい力 学習活動(◆評価方法,評価規準) 形態 課題を持つ(1) ○文章全体を場面ごとに段落分けを行う。
○初発の感想を発表する。
○「ううむ!」・「ううん。」・「あ!」・「お うい。がんの英ゆうよ。~」の四つの大 造じいさんの言葉からあらましをつか み,大造じいさんの心の変化を捉える。
○登場人物の心情曲線を考える。
◆ワークシートに自分なりに考えた心情 曲線を書けているか。(ワークシート)
大造じいさんの心の変化をとらえよう。
・文章全体のあらましを つかむ。
・読みの課題をつかむ
大造じいさんの心は,どのように変化したのだろうか。
「つりばり作戦」に失敗したときの大造 じいさんの気持ちを読み取ろう。
○大造じいさんの心情が分かる文に サイドラインを引き,話し合う。
○「ううむ!」のときの大造じいさん の気持ちを考え,日記に書く。
・登場人物の言葉や行動か ら登場人物の心情につい て読み取る。
・情景描写から心情を読み 取ることができることを 知り,心情を読み取る。
追究する(4)
<読みの課題>
一斉
一斉
一斉
一斉
個 一斉
個
○大造じいさんの心情が分かる文にサイド ラインを引き,話し合う。
○「ううん。」のときの大造じいさんの気持 ちを考え,日記に書く。
◆サイドラインが引けたか。
◆大造じいさんになりきって日記が書けた か。
大造じいさんは,残雪のどんな行動に強 く心を打たれたのだろう。
本時(4/7)
大造じいさんが残雪を見送ったとき,
どんな気持ちだったのだろう。
作品に込められた作者の思いは何だろう。
○大造じいさんの心情が分かる文にサイドライ ンを引き,話し合う。
○大造じいさんの心情を考え,日記に書く。
◆大造じいさんになりきって日記が書けたか。
○大造じいさんが心を打たれた残雪の行動 を見つける。
○戦いの様子が表れるように音読する。
○「強く心を打たれる」というのは,どう いうことか考える。
○大造じいさんの心情の変化を考え,日記 に書く。
◆大造じいさんの心情の変化を捉えて日記 に書いているか(日記)
○椋鳩十の他の作品を読む。
○作者の思いについて考え,自分の言葉と してまとめる。
まとめる(2)
・「大造じいさんとがん」
の主題について考える
・作者の思いを自分の言 葉で表現する
「たにしばらまき作戦」に失敗したとき の大造じいさんの気持ちを読み取ろう。
◆サイドラインが適切に引けたか。
◆大造じいさんになりきって,日記が書け たか。
・登場人物の言葉や行動 や 情 景 描 写 か ら 心 情 について読み取る。
・登場人物の言葉や行動 や 情 景 描 写 か ら 登 場 人 物 の 心 情 に つ い て 読み取る。
・戦いの様子が表れるよ うに音読する。
・登場人物の言葉や行動や 情景描写から登場人物 の心情について読み取 る。
個 一斉 個
一斉
一斉 一斉
個
個 一斉
個
個
6 本時の指導(4/7)
(1) 目標
関心・意欲・態度 ○物語文を通して積極的に自分の考えを持ち,進んで話し合うことができる。
読むこと ○登場人物の行動や言葉,情景描写から心情の変化を読み取ることができる。
言語事項 ○情景などの表現に着目し,その表現の効果を感じ取り,心情との関連を考 えながら読むことができる。
(2) 展開
時配 学習活動 教師のかかわり 資料 (・支援,指導 ☆評価 ◆評価方法・規準)
1 本時のめあてを確認する。
大造じいさんは,残雪のどんな行動に強く心を打たれたの だろう。
2 強く心を打たれた残雪の 行動を見つけ,話し合う。
・はやぶさの目をくらま しながら,がんの群れ を率いて飛び去る行動 ・仲間を救うためにはや
ぶさと戦う行動 ・大造じいさんを前にし
てじたばたさわがない 行動
3 残雪とはやぶさとの戦い の場面を音読する。
2
10 ・残雪の行動の部分にサイドラインを引
かせる。
・情景をイメージできるために読み方の 工夫について考えさせる。
☆情景などの表現に着目し,その表現の 効果を感じ取り,心情との関連を考え ながら読むことができたか。
◆情景描写の効果を感じ取って音読す ることができているか。
・大造じいさんと残雪の挿絵を活用して 視覚的に気持ちの理解を促していく。
10
ワ ー ク シート
・これまでの場面について文章のあら ましを活用し,振り返らせる。
挿絵
・板書を使い,大造じいさんの心の変化 を確認する。
☆登場人物の行動や言葉,情景描写から 心情の変化を読み取ることができた か。
◆大造じいさんの気持ちの変化を読み 取ることができているか(日記)。
・板書を使い,大造じいさんの残雪に対 する気持ちの変化を机間指導の中で 指導していく。
4 強く心を打たれるとは どういう意味なのか考 える。
・感動した
5 大造じいさんの気持ち を日記に書く。
・ひきょうな手で勝ちた くない
・今回はやめておこう。
しかし,あきらめた くない。
6 大造じいさんの日記を 発表する。
・自分の言葉で具体的に説明させる。
☆物語文を通して積極的に自分の考え を持ち,進んで話し合うことができた か。
◆進んで考えを発表し,話し合うことが できているか。
・挙手できない児童も指名するようにす る。
15
5
3
日記 文 章 の あ ら ま し