第3学年2組 国語科学習指導案
指導者 小松田 徹 1 単元名 本の世界を広げて読む 『のらねこ』『「読書けいじ板」を作ろう』
2 単元について
(1) 単元観
本単元は,学習指導要領3学年及び4学年の「C読むこと」の目標(3)「目的に応じ,内容の中 心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読む能力を身に付けさせるとともに,幅広く読 書しようとする態度を育てる。」に基づき,内容(1)「ア内容の中心や場面の様子がわかるように 音読すること。」と「ウ場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の性格や気持ちの変化,情景な どについて,变述を基に想像して読むこと」を受けて設定されている。
本教材『のらねこ』は,三木 卓作品『ぽたぽた』の中の短編集の中に含まれている。主人公の リョウの回りには,動物や飲み物,遊び道具まで友達となり,楽しい会話で話が展開していく物語 である。ファンタジーの側面も十分感じられるが,『のらねこ』では,かわいがられることに慣れて いないのらねこと,可愛がりたいリョウが出会い,ぎこちない心のふれあいがあるものの最後には,
切ない別れ方で終わるというラストシーンがあるので,今までに感じたことのない読後感を味わう ことになるだろう。傷つかずに愛ある関係にはなれないが,勇気を出して一歩を踏み出して欲しい という作者の願いも込められている作品である。
この教材は,ほんのりとあたたかいユーモアを感じることもでき,子ども達の共感する場面もた くさん出てくる。この学習を通して,物語のおもしろさを味わい,『「読書けいじ板」を作ろう』で も意欲的に取り組んでいけるように指導していきたい。
(2) 児童の実態
本学級は,男子14名,女子13名,計27名で構成されている。明るい子が多く活発でおしゃ べりの好きな児童が多い。しかし,私語は多いものの,みんなの前でスピーチをしたり,発表した りすることが苦手な児童が多い。国語科の学習では,黙々と書き進め大切な言葉を使って書けるが,
学級全体に広げていく発表が尐ないのが悩みとなっている。読書は好んでする傾向があり,朝読書 や休み時間など夢中になって読んでいる姿を多く見ることができる。音読も好んでするが,聞き手 に伝わらないような小さな声で読む子もいて支援をしている。
意識調査 (調査人数 27名 平成24年11月2日実施)
<教材に関する実態>
『ぽたぽた』の中に含まれている話の中の『からす』をアンケートに取り入れ子ども達に聞い てみた。『からす』の話の中には,リョウも登場し,ゆうびんポストやからすも会話の中に登場 する。話の内容は,ゆうびんポストが悪口を言っているとねこがいってきたので行ってみると,
出したはがきがさかさ字になっているというのである。からすのしわざと思っていたが,知恵 のあるからすがおばあさんに出すはがきに「おいしいほしにくをおくってね」と書きたしてい て,リョウがいそいで家に帰ると,ほしにくがとどいていてリョウとからすが仲良く食べ合っ ているというストーリーである。
この話の中のからすやねこは,『のらねこ』にも登場するので次のような調査をしてみた。
1 『からす』を読み感じたことは何ですか。
また,国語に対する意識調査では,今まで書く作業をたくさん取り入れて授業をしてきた。『わ すれられないおくりもの』や『くらしと絵文字』などで,日記やまとめ文として書いてきた。と ても意欲的にどの子もしっかり書くことができていた。意識調査では,尐し難しかったという意 見があったものの,しっかり自分の考えを書いていけるという点では良かったという子ども達も 多くいた。『のらねこ』では,この書く作業を「ツイッター」というつぶやきの技法を通してのら ねこの心理状況や気持ちをとらえさせていきたい。読み手である子ども達が,のらねこになって つぶやくことによって本音も出てくるだろうし,気持ちにつながる言葉も大切にするように支援 していきたい。
<つけたい力>
○会話を通して登場人物の気持ちを読み取る力
○物語のおもしろさを感じとり,幅広く本を読もうとする力 3 仮説との関連
<仮説①>
子どもたちに目的を明確にもたせて読ませれば,自分の考えをもつことができるだろう。
このお話『のらねこ』に登場する人物のリョウは人間であるが,動物であるのらねこやからす,そ して家でかっているねこと,自然な形で会話が進んでいく。この会話こそがのらねこの気持ちを読み 取っていくために重要なことである。また,芝居でいえばト書きの部分ものらねこの心情を読み取る 大切な役割をもっている。
目的を明確にしていくために,一つは,会話文とト書きのところを分けて役割をもって読ませてい きたい。のらねこの気持ちの要点を授業の中でまとめた後で,子ども達自身がのらねこになりきって つぶやいていくツイッター「のらねこ」に本音を書きやすい環境作りをしていきたい。つぶやくこと で自然に自分の考えをもつことができるだろうと期待している。
<仮説②>
表現活動の場を工夫すれば,目的に応じた表現することができるだろう。
目的を達成するために,まず音読のしかたを工夫していきたい。音読は一斉読みの他に,今までは 指名読みを中心に行ってきた。この『のらねこ』では,不思議な要素を含みながら,リョウとのらね この会話とト書きの構成になっている。リョウとふれあいたいという気持ちがだんだん高まってくる が最終的には,リョウのうちのねこが近づいてきたら,とつぜんいなくなるのらねこの気持ち,そし て屋根の上からリョウたちを見つめるのらねこのせつなさを読み取るためには,役割読みを取り入れ て行っていきたい。役割による読みをさせることにより,リョウやのらねこの気持ちを深く読み取っ ていくことを期待している。また,ツイッター「のらねこ」を書いた文をみんなの前で発表しあうこ とで自分の考えも確かなものとなっていくと考える。
4 単元の目標
○読み取ったことを進んで話そうとしている。(関心・意欲・態度)
○場面の移り変わりや情景を,变述をもとに想像しながら読んでいる。(読むこと) ○内容の中心や場面の様子がよく分かるように音読している。(読むこと)
○ 新出漢字を読んだり書いたりして,文や文章の中で使っている。
(伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項)
・ふしぎな感じ(11名) ・リョウがかわいそう(5名)
・おもしろい話(5名) ・リョウがうれしそう(2名)
・意味がよくわからない(4名)
2 リョウは,どんな子だと思いますか?
・しんせつ・やさしい(10名) ・おっちょこちょい(5名)
・かわいそう(3名) ・へんな子(2名)
・その他(ふつうの子,頭があまりよくないなど)(7名)
3 これからリョウの出てくる「のらねこ」を勉強しますが,楽しみですか?
・はい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25名 (理由)どんな話か知りたい(6名) おもしろそう(5名)
リョウの活躍を知りたい(3名) からすが楽しそう(3名)
国語が好きだから(3名)
・いいえ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2名
(理由)物語が好きではない(1名) ねこがひっかくから(1名)
<国語の意識に対する調査>
1 国語で好きな勉強は何ですか? (複数回答)
・漢字の書き取り(15名) ・説明文(7名)
・物語文(9名) ・文を書くこと(15名)
2 書くことを今までたくさんやりましたがどうでしたか?
・良かった(8名) ・尐しむずかしかった(18名) ・すごくむずかしかった(1名)
(3)支援・指導
実態調査は,二つの意図をもって実施した。一つは,独特の情景描写とファタジーあふれる三 木 卓作品を子ども達は,どのように受け止め,何を楽しみにしているかということであり,ま た読み取り方もどのように読み取っているかという点である。国語に対する意識調査もあわせて アンケートをとった。
まず,三木 卓作品の調査であるが,いろんな動物や身の回りのものが主人公であるリョウと の会話を通して『ぽたぽた』は進行していくが,ほとんどの子ども達にとっては,何ともふしぎ な感じがすると同時に,おもしろい話と感じている。一方,よく意味がわからないという子ども 達もいて,この理由は現実感のないことや,場面の移り変わりが多く登場人物の気持ちが読み取 れないことにあるようである。また,主人公のリョウについては,親切でやさしい子という面も あり,おっちょこちょいでへんな子と受け止めていた。かわいそうな子という理由は,からすに だまされたことにあるようである。今後,学習する『のらねこ』の子ども達の期待度も,ほとん どが楽しみにしており,その理由としては,内容面もあるが,登場人物に関して知りたいという 意見も多かった。
『のらねこ』の学習時間は,5時間と短い指導時間ではあるが,以上のことをふまえてまずは,
登場人物の気持ちや心理状況をおさえて進めていきたい。また,リョウに関わる全てのものや,
動物が会話していく不思議な感じを自然に子ども達の心に受け止めて学習できるようにさせてい きたい。
5 指導計画(10時間扱い)
過程 時間 学 習 活 動 ○支援 ◇評価
つ か む
(1)
1 ○全文を読み,文章の姿を考える。
(仮説1)
○『のらねこ』を読み,登場人物や,
場面を考え,音読する。
◇『のらねこ』を場面を考えながら読 もうとしている。
表 す
・ 深 め る
(3)
1
○一の場面を読み,のらねこの外見や性 格について話し合う。
○話し合ったことをもとにツィッター
「のらねこ」を書く。
(仮説1・2)
○のらねこの外見や性格を読み取る。
・真っ黒くて,大きくて立派。毛なみ もつやつや。(外見)
・ぱっと起き上がる。リョウの様子をうか がって「こら待て。これ以上近よるな。」
(用心深い)
◇のらねこになってツイッターを書 いている。
1
○二と三の場面を読み,リョウとのらね このやりとりから,のらねこの気持ち を話し合う。
○話し合ったことをもとにツィッター
「のらねこ」を書く。
(仮説1・2)
○リョウとのやりとりから,のらねこ の気持ちを読み取る。
・ホールドアップ,問題はポケットだ。ゴ ムのパチンコ。(リョウをうたがうのらね こ)
・一口くれたら,かわいがらせてやっても いいよ。(かんづめを見つめ,かんづめの 中身を食べるのらねこ)
◇リョウをうたがっているのらねこ の気持ちをツイッターに書いてい る。
1
○四の場面を読み,リョウにかわいがら れるのらねこの気持ちを話し合う。
○話し合ったことをもとに,ツィッター
「のらねこ」を書く。
(仮説1・2)
○リョウにかわいがられるのらねこ の気持ちを読み取る。
・一人と一ぴきは顔を見合わせます。(かわ いがられることになれていないのらねこ)
・こわい。それ以上近づかれると,にげ出 すか,とびかかるかもしれない。(過去に ひどいめにあったことを想像できる)
・「あ。」と声を出した意味。
◇リョウにかわいがられているとき の気持ちや,「あ。」と声を出した意 味をツィッターに書いている。
ま と め る
(1)
1
(本時)
○屋根の上からリョウたちの様子を見 ているのらねこの気持ちを話し合う。
○屋根の上から,リョウたちの様子を見 ているときののらねこの気持ちをツ ィッターに書く。
(仮説1・2)
○リョウとリョウの家のねこの様子 を読み取る。
・きげんよく しっぽをぴんと立てて
・三人で遊ぼうか
◇リョウたちの楽しい様子をじっと 見ていたのらねこの気持ちをツィ ッターに書いている。
広 げ る
(5)
1
○『のらねこ』のおもしろいところを「お すすめカード」に書き,グループで発 表し合う。
○「おすすめカード」の書き方を提示 して取り組ませる。
○友だちの発表を聞き,色々な感じ方 があることを確認する。
◇自分がおもしろいと感じたところ やその訳を「おすすめカード」に書 いている。
2
○「わくわく読書発表会」に向けて,自 分で紹介したい本の「おすすめカー ド」を書く。
○前時の学習をもとに,書くポイント をおさえ,「おすすめカード」を書 かせる。
○グループで発表しあい,良かった点 や改善点を話し合う。
◇おもしろさや紹介したい理由が友 だちに伝わるように「おすすめカー ド」を書いている。
1
○友だちの意見をもとに「わくわく読書 発表会」の準備をして「わくわく読書 発表会」をする。
(仮説2)
○友だちの意見をもとに「おすすめカ ード」を書き直す。
○グループごとに「わくわく読書発表 会」をする。
◇聞いている人を意識して,自分の感 想やあらすじなどわかりやすい「お すすめカード」を書いている。
1
○「わくわく読書発表会」を思い出した り,「読書掲示板」を見たりして,読 んでみたい本を選んで読み,感想カー ドに書く。
○読んでおもしろかったところを感 想カードに書き,紹介してくれた友 だちに知らせる。
◇「おすすめカード」をもとに本を選 び楽しく読書をしている。
6 本時の指導(5/10)
(1) 目標
○読み取ったことを進んで話そうとしている。(関心・意欲・態度)
○リョウたちの様子から,ツィッター「のらねこ」を書いている。(読むこと)
(2)展開
時配 学 習 活 動 と 内 容 ○指導上の留意点 ◇評価 5
20
10
8
1 前時までの学習を想起する。
2 本時の学習課題を確認する。
3 五の場面を音読し,リョウたちの様子 を読み取る。
・一斉読み,役割読みをする。(仮説2)
・リョウやリョウの家のねこの気持ちの わかるところに線をひく。
4 屋根の上でじっとリョウたちの様子 をみているのらねこの気持ちを,ツィ
ッター「のらねこ」に書く。
(仮説1)
5 ツィッター「のらねこ」の発表をする。
(仮説2)
○「あ。」と,のらねこが突然声を出したこ とにふれ,のらねこの変化を想起して,
本時に入っていけるようにする。
○会話文とナレーターの部分を区別させな がら読ませる。
○前時の,とつぜんいなくなったこととつ ながっていることを考えさせる。
・はっとして
・「どうしたんだろう。」
・庭の一方のはしから,リョウの家のねこがきげ んよくやってくる。
(のらねこがいなくなった理由)
・きげんよい・・・しっぽをぴんと立てて
・「やあ,リョウ。今晩のおかずはかれいのにつけ だって。・・・」
・「・・・それはよかった。・・・」
・「・・・・・・三人で遊ぼうか。」
・三人・・・リョウ,リョウの家のねこ,からす
・のらねこの場合・・・一人といっぴき
◇リョウたちの様子を見て,のらねこの気 持ちを表すツイッターを書いている。
○机間巡視をして,指名計画をたて,発表 させる。
屋根の上からリョウたちの様子を見ているのらねこの気持 ちを考えよう
2 5 次時の学習の予告をする ○ねこや動物に関する本について紹介し合う ことを知らせる。
いいな。リョウのねこは,おいしいものを食べられて。
みんな楽しそうでうらやましいな。
でも,人間と仲良くするとまた,いじめられて大変なことになりそうだし,今のまま でいいのかな。
でも,いつかは,みんなと仲良くしたいな。
かわいがられるってなんか,よさそうだから。