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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2025

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氏 名 松ま つEA AEも とEA まきや 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第573号

学 位 授 与 年 月 日 平成31年3月20日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当

学 位 論 文 名 マウスの「慰め様行動」の神経機構:オキシトシン受容体の働き

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 須 田 史 朗

(委 員) 教 授 高 瀬 堅 吉 教 授 阿 部 隆 明

(委 員) 教 授 中 田 正 範

論文内容の要旨

1 研究目的

傷ついた他者を気遣いケアする慰め行動はヒトでよく見られる行動である。相手の負の情動状 態を理解し、それを和らげようとする慰め行動は、円滑な人間社会を構成するための重要な要素 である。しかし、慰め行動がどのような神経回路に基づいて制御されているかは不明な点が多い。

慰め行動は相手の状況を理解しそれに対し適切な対処をするための高次の認知能力が必要と考 えられる。このため、遺伝子操作が簡便な実験動物を用いたモデルが報告されておらず、その詳 細はわかっていなかった。

これまで、慰め行動と関連した行動として、他者に対するケア行動である母性行動が研究され てきた。その結果、仔にたいする毛繕い行動を含む母性行動に内側視索前野のオキシトシン受容 体が関与していることが示されている(Yoshihara C, et al. 2018, Okabe S, et al. 2017)。さ らに一夫一婦制を示す齧歯類であるハタネズミが、ストレスを受けたつがいの相手に対し慰め様 の毛繕い行動を示すことが報告されている(Burkett, et al. 2016)。この報告によると、つがい の相手に対する慰め様の毛繕い行動に、前帯状回のオキシトシン受容体が関与していることが示 されている。しかし、遺伝子操作が容易であり、神経回路の解明に適したマウスを用いた慰め様 行動のモデルは報告されていなかった。そこで、本研究では、マウスを用いた「慰め様行動」の 実験モデルを構築し、その神経メカニズムをオキシトシン受容体に着目し解明することを目的と した。

2 研究方法

1.マウスを用いた「慰め様行動」実験モデルの確立

実験には雌マウスを用いた。同種同性のマウスを4週間ペアで同居させた。その後、ペアの うち片方のマウスをケージから取り出し、攻撃的なマウスと一緒にさせ、社会的敗北ストレス を与えた。この社会的敗北ストレスを受けたマウスを、ケージメートがいる元のケージに戻し た。戻ってきたマウスに対し毛繕いや寄り添いなどの慰め様の行動を示した総時間と、匂い嗅 ぎ行動の総時間を計測した。対照群として、攻撃的なマウスと一緒にせずに元のケージに戻し た群を用い、同様に毛繕い行動、寄り添い行動、匂い嗅ぎ行動の時間を計測した。

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2.「慰め様行動」中に活性化されるオキシトシン受容体発現細胞の同定

オキシトシン受容体プロモーター制御下で緑色蛍光蛋白質Venusを発現する遺伝子改変マウ スである、オキシトシン受容体Venusノックイン雌マウスを用いた。神経活動マーカーである Fos蛋白質と、Venusの二重免疫染色化学により、慰め様の行動中に活性化されるオキシトシン 受容体発現細胞を同定した。

3.オキシトシン受容体ノックアウトマウスを用いた検討

オキシトシン受容体ノックアウトマウスを用い、「慰め様行動」がオキシトシン受容体の欠損 により阻害されるかを検討した。

4.雄マウスを用いた検討

雄マウスにおいても、同性の仲間に対する「慰め様行動」が誘発されるか検討するため、精 巣を除去したあるいは無処置の野生型雄マウス、オキシトシン受容体ノックアウト雄マウスを 用いた同様の実験を行った。

3 研究成果

1.マウスを用いた「慰め様行動」実験モデルの確立

雌マウスは、社会的敗北ストレスを受け戻ってきた仲間のマウスに対し、毛繕いと傍に寄り 添うという慰め様の行動を、社会的敗北ストレスを受けていないマウスに対してに比べてより 長時間示した。匂い嗅ぎ行動を示した時間は有意には変化しなかった。

2.「慰め様行動」中に活性化されるオキシトシン受容体発現細胞の同定

ストレスを受けた仲間のマウスに暴露された雌マウスにおいて、帯状回、島皮質、内側扁桃 体のオキシトシン受容体発現細胞が、神経活動マーカーである Fos蛋白質を有意に多くの割合 で発現していた。島皮質および内側扁桃体においては、Fos 蛋白質発現オキシトシン受容体発 現細胞の割合と、仲間のマウスに対する毛繕い行動の総時間との間に正の相関がみられた。

3.オキシトシン受容体ノックアウトマウスを用いた検討

オキシトシン受容体ノックアウト雌マウスでは、ストレスを受けた仲間のマウスに対する毛 繕い行動が野生型マウスと比較し有意に減少していた。

4.雄マウスを用いた検討

雄マウスは社会的敗北ストレスを受けた精巣除去マウス、無処置マウスに対し毛繕い行動と 寄り添い行動を示した。オキシトシン受容体ノックアウト雄マウスも同程度にこれらの行動を 示し、野生型マウスと比較し有意な差は見られなかった。

4 考察

1.マウスを用いた「慰め様行動」実験モデルの確立

げっ歯類における毛繕い行動は不安緩解作用を持つと報告されている。本研究において、社 会的敗北ストレスを受けて戻ってきた仲間に対し、毛繕いと傍に寄り添う行動が観察された。

これらの結果は、マウスにおいても社会的に傷ついた仲間の相手に対して「慰め様の行動」を 示すことを示唆している。同性の仲間を慰めケアする行動は、母性行動や生殖行動のように自 分の遺伝子を残すというメリットを直接的には伴わない向社会的な行動であると考えられる。

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2.「慰め様行動」中に活性化されるオキシトシン受容体発現細胞の同定

ストレスを受けた仲間のマウスに対する毛繕い行動は、島皮質と内側扁桃体のオキシトシン 受容体発現細胞の活性化と相関していた。これらのデータは、島皮質と内側扁桃体のオキシト シン受容体発現細胞がストレスを受けた仲間に対する「慰め様行動」に重要な役割を担うとい う考えに合うものである。島皮質は、ヒトにおいて他者の痛みを共感する領域であることが示 唆されている(Singer, et al. 2006)。また、内側扁桃体は、社会的認知記憶に関与することが 示されており(Takayanagi, et al. 2017)、この領域のオキシトシン受容体発現細胞が4週間 共に暮らした仲間に対する親和的認知に関与することで、毛繕い行動を促進させたという可能 性が考えられた。一方、母性行動に関与する内側視索前野ではオキシトシン受容体発現細胞の 活性化は見られず、慰め様行動は母性行動とは異なる神経回路を介していることが示唆された 3.オキシトシン受容体ノックアウトマウスを用いた検討

雌マウスにおいてストレスを受けた仲間に対する毛繕い行動は、オキシトシン受容体の欠損 により阻害された。オキシトシン受容体発現細胞はストレスを受けた仲間に対する雌の毛繕い 行動に必須であることが示唆された。

4.雄マウスを用いた検討

雄マウスではオキシトシン受容体の欠損により慰め様行動が阻害されなかった。このデータ は、慰め様行動の神経機構に雌雄差があることを示唆している

5 結論

本研究の結果から、一夫一婦制ではないマウスがストレスを受けた同性の仲間に対し慰め様の 毛繕い行動を示すことが示唆された。さらにこの時、帯状回、島皮質、内側扁桃体のオキシトシ ン受容体発現細胞が活性化しており、島皮質と、内側扁桃体のオキシトシン受容体発現細胞の活 性化と毛繕い行動との間に正の相関関係があった。

雌マウスではオキシトシン受容体欠損により毛繕い行動が阻害されたのに対し、雄マウスでは 阻害されないことから、オキシトシン受容体は毛繕い行動において雌に選択的に関与しているこ とが示唆された。さらに、オキシトシン受容体発現細胞の活性化の検討により、島皮質と内側扁 桃体のオキシトシン受容体発現細胞が関与している可能性が考えられた。

他者の負の情動を感じ取り、それをケアする慰め行動は、高次の認知能力を有する動物において 観察される行動と考えられてきた。本研究では、マウスにおいても「慰め様行動」がみられるこ とが示唆され、さらに、この「慰め様行動」に、島皮質および内側扁桃体のオキシトシン受容体 が関与する可能性が示された。本研究の成果は、高度な社会の形成に寄与する慰め行動の神経機 構を解明するための端緒となり、また、社会行動の変異の神経機構の解明に向けた基礎的知見で ある。

論文審査の結果の要旨

申請者の論文は、マウスを用いた「慰め様行動」実験モデルを確立し、「慰め様行動」を生じた 雌マウスにおいて、帯状回、島皮質、内側扁桃体のオキシトシン受容体発現細胞が活性化される こと、島皮質および内側扁桃体においては、オキシトシン受容体発現細胞の活性化と「慰め様行

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動」の総時間との間に正の相関が見られることを示した。また、オキシトン受容体ノックアウト 雌マウスでは、「慰め様行動」が減少すること、雄マウスではオキシトン受容体をノックアウトし ても「慰め様行動」が減少しないことを示した。

これらの研究結果から申請者は、雌マウスの「慰め様行動」は島皮質および内側扁桃体のオキ シトシン受容体発現細胞の活性化が関与すること、「慰め様行動」の神経回路には性差があること を示唆した。また、これまで他者の負の情動を感じとることができる高次の認知能力を持つ動物 においてのみ観察されると考えられてきた「慰め様行動」が比較的遺伝子改変の容易であるマウ スにおいても認められることを示唆するとともに、この研究成果が社会行動の変異の神経機構の 解明に向けた基礎的知見となりうることを指摘している。本論文はマウスにおける「慰め様行動」

実験モデルを確立した点に独創性があり、その神経回路におけるオキシトシン神経系の活性化の 関与の可能性を示した点に学問的意義、新規性がある。

論文は研究背景、研究方法、結果および討論が明瞭簡潔に記載されており、図も明解である。

一部の心理学的用語で使用法の誤り、研究方法・結果の記載の不十分さ、討論における整合性の 問題が指摘されたが、これらは試問後に適切に修正された。

論文は全体として明確に論理立てて記述され、新規の発見を含んでおり、学位論文として十分 にふさわしいと満場一致で判断された。

最終試験の結果の要旨

発表は、「慰め様行動」における先行研究の解説から始まり、次いでマウスを用いた「慰め様行 動」実験モデルの確立の過程、「慰め様行動」を生じた雌マウスにおいて、帯状回、島皮質、内側 扁桃体のオキシトシン受容体発現細胞が活性化されること、島皮質および内側扁桃体においては、

オキシトシン受容体発現細胞の活性化と「慰め様行動」の総時間との間に正の相関が見られるこ と、オキシトン受容体ノックアウト雌マウスでは、「慰め様行動」が減少すること、雄マウスでは オキシトン受容体をノックアウトしても「慰め様行動」が減少しないことが明解かつ論理的な研 究結果により示された。

引き続き、先行研究における「慰め様行動」と本論文における「慰め様行動」の相違点とその 生物学的意義、社会的ストレスと身体的ストレスの相違点、オキシトン受容体ノックアウトマウ スの行動特性、「慰め様行動」の性周期における変動、「慰め様行動」の性差の生物学的意義、今 後の研究計画についての質疑応答がなされた。候補者はこれらの質問に真摯な姿勢で適切に回答 した。

候補者は関連領域にわたり幅広い知識と教養を持ち合わせており、博士(医学)の学位に相応 しい研究能力と思考力を有していると満場一致で判断された。

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