第4学年3組 国語科学習指導案
指導者
A
1 単元名 場面の様子を想像して読む『ごんぎつね』
2 単元について
(1)単元観
本単元は,学習指導要領第3学年及び第4学年「C読むこと」の目標「目的に応じ,内容の中心をとら えたり段落相互の関係を考えたりしながら読む能力を身に付けさせるとともに,幅広く読書しようとする 態度を育てる。」,指導内容ウ「場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の性格や気持ちの変化,情 景などについて,变述を基に想像して読むこと。」オ「文章を読んで考えたことを発表し合い,一人一人 の感じ方について違いがあることに気付くこと。」を受けて設定した単元である。
『ごんぎつね』は,ひとりぼっちの小ぎつねが,かつて自分がいたずらをして困らせた「兵十」と心を 通わせようと努力しながらも,通わせきれない切なさを描いた作品である。この作品には,すぐれた情景 描写や人物の心情の変化などが的確に表現されており,物語の世界にたっぷりとひたって読み進むことが できる。4年生という発達段階にふさわしく,变述をもとにして,登場人物の性格や気持ちの変化,情景 などの想像したことを他者と交流することによって,互いの感じ方の違いに気づかせる学習を展開するに は格好の教材である。
児童がこの物語にひかれるのは,「ごん」の性格を身近に感じるからである。さみしい小ぎつねである
「ごん」に自分を重ねて心情を想像しながら読むことができると考える。また,孤独であるという共通点 をもちながら,最後まで心を通い合わせることができない「ごん」と「兵十」の関係に引き込まれながら 読み進めることができるであろう。そして,「ごん」を撃ったことによって,初めて「兵十」が「ごん」
の気持ちに気づくという切ない終末は,児童にとって一番深く心に残る場面である。この終末について深 く考え,感想を交流することで物語を読み味わう楽しさを感じることができると考える。
『ごんぎつね』には文章による「情景描写」がたくさん出てくる。「情景描写」をイメージ豊かに想像 する学習を通して,情景描写の大切さやその魅力を感じとることができると考える。さらに,複合動詞・
比喩表現・擬態語・擬声語の効果的な使い方を学ぶことで,場面の様子が生き生きと表現されていること に気付くのではないだろうか。絵やさし絵が減ってくる中学年から高学年にかけての物語や小説類を読む きっかけになる力を身に付けるにふさわしい教材である。
本単元を通して,自分の感想をきちんと持ち,他者との感じ方の違いを理解しながら,自らの気持ちを 明確に表現していくことができるような力を養いたい。
(2)児童の実態(男子19名,女子16名,計35名)
本学級の児童は国語に対しては意欲的である。しかし,自分の考えを積極的に話すことができる児童が 尐なく,自信がなかったり,恥ずかしがったりして発表できない児童が多い。特に,物語文の初発の感想 で自分の考えを発表できる児童は数名である。また,学習に長い間集中できない児童も尐なくないので,
聞く姿勢を確認しながら授業を進めている。
読むことについては,前単元の『一つの花』では,ゆみ子を思うお父さんとお母さんの気持ちを,想像 豊かに読み取って書くことがおおむねできた。しかし,中には「わからない」と言って想像のできない児 童も数名いる。ほとんどの児童が自分なりの考えを書こうとする意欲が見られる。しかし,中には「わか らない」と言って人物の気持ちを想像することのできない児童も数名いる。
最近の読書傾向を見ると,朝読書や空いた時間には,よく集中して読んでいる。以前よりも文字の多い 本を読む児童が増えてきた。読んでいる本は,物語文が多い。
本単元を行うにあたって作者でもある新美南吉の『てぶくろを買いに』を使った調査と,それとは別の 2種類の調査を行った。
『てぶくろを買いに』を使った調査 ①あらすじがわかる
主題にせまることのできた記述があり,おおまかなあらすじがわかる 3名 おおまかなあらすじがわかる 13名 あらすじというには,足りない 14名 書けない・できない 4名
・物語を聞いて大体のあらすじをつかむことのできた児童は半分近くである。うまくあらすじを捉えるこ とのできない児童も半分いる。本単元は,長い文章が特徴でもある。長い物語を読むのは本単元が初めて であるので,長い物語を読んで大体の内容がわかるかどうかを調査した。
②景色や場面の様子がきれいに描かれている文章がわかる きれいな景色や場面の様子に線がひける 28名 違う場所・ひけない 6名
・多くの児童がきれいに景色や場面の様子が描かれている部分がわかるということが調査できた。
③一度の読み聞かせで主題を読み取る
きつねの人間への思いが入っている記述 1名 その他 33名
・長い物語を1度聞いただけで主題を読み取ることができる児童は,ほぼいないことがわかる。
国語科アンケート 1 本を読むことは好きですか
① とても好き 20名 ②好き 8名
③ あまり好きではない 6名 ④好きではない 1名
大半の児童は本を読むことを好んでいるが,数名は好んでいないようである。朝読書の時間や,待ってい る時間には多くの児童が集中して本を読んでいる。
2 物語を読むときに,登場人物の気持ちを考えて読みますか。
① よく考える 14名 ②時々考える 14名
③あまり考えない 4名 ④考えない 3名
多くの児童は登場人物になりきって本の世界にひたって読んでいるが,数名は気持ちを考えずに読んでい るようだ。音読の前には読み取るポイントを確認してから,読ませたい。
3 物語を読んでいて,心を動かされることがありますか。
① よくある 11名 ②時々ある 12名
③あまりない 7名 ④ない 5名
本を読むことが好きな児童の中にも,心を動かされることがあまりないと答えた児童もいた。本単元の切 ない結末に心を動かされるような工夫をしていかなければならない。
4 『一つの花』を読んだ時,登場人物の気持ちを想像することができましたか。
① よくできた 14名 ②尐しできた 17名
③あまりできなかった 3名 ④できなかった 1名
ゆみ子を心配するお父さんとお母さんの気持ちが想像できた児童がほとんどである。
5 自分の知らない所で,誰かが自分のために何かをしてくれたら,あなたはどう思いますか。
6 自分は相手のために一生懸命何かをしているのに,それに気づいてもらえなかったら,あなたはどう思 いますか。
・がっかり,悲しい 20名 ・ひどい 4名 ・気づかれなくても満足する 3名 ・気づいて欲しい 3名 ・もっと一生懸命がんばる 2名 ・それならそれでいい 2名 ・もうしたくない 1名 ・ふつう 1名
<考察>
以上のことから,本学級の児童は,大体の読み取りで流れをつかむことはできるが,心を動かされるよ うな読み取りをするには登場人物の気持ちを場面ごとにていねいに追っていく必要がある。本単元の特徴 でもあるきれいな景色や情景については大半の児童が感じることができると考えるが,難しい児童には挿 し絵で想像させる手立てを講じる必要があるだろう。
6の設問は「ごん」の気持ちになりきれるかを図った問題であるが,多くの児童が自分の行動に気づい てもらえないことを「かなしい,気づいて欲しい,もっとがんばる」というように「ごん」に同化して考 えることができる解答をした。従って,「ごん」の気持ちになりきってこの物語を読み進めることのでき る児童は多いと考える。
(3)指導観
多くの児童は,この物語で償いを続ける「ごん」の気持ちを感じることができるであろう。しかし,主 題でもある償っても償っても報われないごんの切ない気持ちまで深く読み取ることは簡単なことではない と考える。
そこで,場面の様子を想像しながら,一人ひとりがごんになりきって読むことができるように,「ごん のほらあな日記」を学習活動の中心として取り組ませたい。まず,「ほらあな日記」を書く前に,自分で 絵を描いた表紙を作ることで,自分の意見を大切にし,発表したいと思える児童も増えてくると考える。
「ほらあな日記」では場面ごとにごんの心情の変化を追っていくことによって,前の場面のごんの気持 ちも含めて気持ちを想像していけるだろう。そして,想像したごんの気持ちを本文にはさんで発表するこ とで,物語にひたって味わわせていきたい。この音読を取り入れることで,美しい文章をより深く感じる ことができ,楽しく読み進めていけるだろうと考える。(仮説1)
また,場面の様子を想像して読めるように,「ごん」の位置を確認し,したこと・見たこと・聞いたこ となどを整理してから話し合わせたい。そうすることで,「ごん」の気持ちの変化もとらえやすくなり,
同時に变述に即して考える学習方法を身に付けることができると考える。この物語は,「ごん」の気持ち が表れている言葉がたくさんある。直接は表れていないが,きれいな景色の表現などから「ごん」の気持 ちが読み取れる言葉もいくつかある。また,色々な所に「ごん」の人間への距離感が表れている言葉があ る。そのような言葉に着目し,「ごん」の思いを読み取らせていきたい。そして,何箇所も出てくる「情 景描写」をイメージ豊かに想像させるために,情景以外にも風向きやにおいなど感じることはないかなど,
五感を働かせるような声かけをしていきたい。特に,「色による情景描写」や「人物の心情を暗示する情 景描写」に着目しイメージを話し合うことで,想像をふくらませていきたい。一部に難しく感じられる言 葉や風習などは,具体物や図版の助けをかりたり,挿し絵を有効に使ったりして想像をふくらませていき たい。(仮説2)
最後の「青いけむり」については,一人ひとりが想像をふくらませて自分の考えを持つことができ,友 だちの考えと交流して感想を深めるのに適した場面である。そこで,今までの「ほらあな日記」を振り返 り,話し合いをさせていきたい。友だちの感想にふれることで,一人ひとりの感じ方に違いがあることが わかり,話し合いの楽しさにも気付いてほしいと願っている。学習後には,動物と人間の関わりを主題と した本や,新美南吉の描くきれいな情景を感じさせるような作品を読む場を設定したい。児童が,「ごん ぎつね」で身に付けた物語の読み方を活用して,読書の幅を広げていってくれるように期待したい。(仮 説3)
3 目標
関心・意欲・態度 ・「ごん」や「兵十」の気持ちを進んで読み取ろうとする。
読む ・場面の移り変わりや情景を,变述を基に想像して読むことができる。
・登場人物の気持ちや,場面の様子がわかるように音読することができる。
伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項
・表現したり,理解したりするために必要な語句を増やすことができる。
4 指導計画(10時間扱い)
過程 学習活動 指導・支援(○) 評価(◎)
見
通
す
(2)
・単元全体の内容を確かめる。
・「ごんぎつね」を読み,初発の感想を書 く。
・初発の感想を交流し,場面毎にめあて を考える。
・ごんの日記帳を作るという課題を知り 学習の見通しを持つ。
○「場面の様子を想像して読む」という単元から「ご ん」と「兵十」の気持ちを想像して読むことがねら いであることをおさえる。
◎1番心に残った所を端的に書くことができたか。
○初発の感想を生かしながら,登場人物の心の変化や 情景などについて想像したことを交流させ,学習の めあてや方向を持たせる。
○日記帳の見本を提示してイメージをつかませる。
『ごんのほらあな日記』を作ろう
深
め
る
(5)
・1の場面(P28~32)を読み,ご んの性格や兵十の様子を読み取る。
・いたずらをするごんの気持ちを考え,
話し合う。
・ごんのほらあな日記を書く。
・2の場面(P32~34)を読み,ご んの様子と後悔の気持ちを読み取る。
○「ごん」はどんなきつねかわかるところに線を引か せ,ワークシートにまとめさせる。
◎「ごん」の境遇や性格がわかる变述を本文から見つ けることができたか。
○「ごん」はひとりぼっちの小ぎつねであるという境 遇や,性格を読み取らせ,いたずらをするごんの気 持ちを想像させる。
◎ごんの気持ちを变述から想像して,書くことができ たか。
○ごんの気持ちがわかる变述に線を引かせる。
○ごんの行動が兵十のおっかあの死を知ったことで変 わったことをおさえる。
○「~にちがいない」,「~しまった」,「ちょっ~しなけ りゃよかった」などの文末表現に着目させる。
○ごんの後悔の気持ちが表れている会話文(P34L 5)をごんの気持ちを想像しながら音読させる。
◎ごんの後悔の気持ちを想像して工夫して音読できた か。
◎ごんの後悔の気持ちを变述から想像して,書くこと ができたか。
んがつぐないをする様子とその気持ち を読み取る。
・4・5の場面(P37~P40)を読 み,ごんのやるせない気持ちを読みと る。
・6の場面(P40~41)を読み,撃 たれてしまったごんと,撃ってしまっ た兵十の気持ちを読み取る。
(本時5/5)
○「おれと同じ,ひとりぼっちの兵十か」「次の日もそ の次の日も」,「くりばかりでなくまつたけも」などに 着目させ,償いを続けるごんの気持ちを想像させる。
◎ごんの様子や気持ちの移り変わりについて,变述を もとに読み取ることができたか。
◎ごんの後悔の気持ちを变述から想像して,書くこと ができたか。
○ごんの目と耳がとらえた情景や会話を音読しながら,
ごんの行動を劇化することで,ごんの気持ちを想像さ せる。
◎ごんのやるせない気持ちを变述から想像して書くこ とができたか。
○兵十とごんの気持ちが分かる变述にサイドラインを 引かせる。
○ごんは前の場面からずっと償いを続けてきたことを 確認する。
○兵十の言動の節々に気持ちが表れていることから,気 持ちを想像させる。
◎兵十の言動から,撃ってしまった後の兵十の気持ちを 想像することができたか。
◎ぐったりとしたままうなずいたごんの気持ちを想像 して書くことができたか。
ま と め る
(1)
・青いけむりの暗示する意味について考 える。
○最後の「青いけむりがつつ口から~」という情景描写 がどんなことを表しているのかを考えさせる。
○周りの友達の意見と自分の意見の相違点を考えなが ら聞くように助言する。
◎自分なりの表現で,青いけむりの意味について書くこ とができたか。
広 げ る
(2)
・新美南吉の作品や,きつねをテーマに した作品を読み,紹介し合う。
○新美南吉の作品の情景の美しさはどんなところに表 れているのかを考えて読むように声をかける。
◎自分の気に入った本を友達にわかりやすく紹介する ことができたか
5 本時の学習(7/10)
(1)目標
関心・意欲・態度 ・ごんと兵十の気持ちを,進んで書いたり発表したりしようとする。
読む ・兵十に撃たれたごんの気持ちを読み取ることができる。
言語的な言語文化と国語の特質に関する事項
・ごんの気持ちが表れている情景を見つけることができる。
(2)展開
時配 学習活動と内容 支援(○)と評価(◎)
2
1
2
10
9
1 前時の学習を振り返る。
2 本時の学習のめあてを確認する。
○掲示物を使って,「ひきあわないなあ」と 思っているのに,また償いを繰り返すごん のひたむきな気持ちを振り返らせる。
うなずいた時のごんと,火なわじゅうをとり落とした時の兵十の気持ちを考え よう。
3 場面6を音読する。
・自由読み
4 兵十の気持ちがわかる所にサイドラインを 引き,話し合う。
・ごんを見つけた時と,ごんを撃ってしまって からの兵十の気持ちの変化を考える。
① こないだ,うなぎをぬすみやがったあのごんぎつねめが,ま たいたずらをしに来たな。
・怒っている ・恨んでいる ・憎んでいる
② 「ようし。」
兵十は,立ち上がって,なやにかけてある火なわじゅうを取 って,火薬をつめました。
・撃ってやる ・しとめてやる
③ 「おや。」と兵十はびっくりして,ごんに目を落としました 「ごん,おまえだったのか。いつも,くりをくれたのは。」
④ 兵十は火なわじゅうをばたりと,とり落としました
5 ごんの気持ちを考える。
○兵十とごんの気持ちがどこに表れているの かを考えながら読むように声をかける。
○言葉の節々から感じ取れる兵十の気持ちを 確認する。
○「~やがった」「~め」という言葉から,
兵十の憎しみの気持ちに気付かせる。
○「ようし。」に続く兵十の気持ちを考えさ せる。
○「おや。」という言葉から,兵十の気持ち が変化していることを読み取らせる。
○ばたりととり落とした時の兵十の気持ちを 想像させる。
◎兵十の気持ちになって考えることができた か。
○ごんの気持ちは兵十に通じたのかを考えさ せる。
20
1
6 ほら穴日記に書き,発表する。
・ごんは,ぐったりと目をつぶったまま,うな ずきました。←に続けて日記を読む。
7 次時の予告をする。
◎ごんと兵十の心情を考えて気持ちを書くこ とができたか。
○自分との相違点を考えながら,聞くように 助言する。
◎ごんの気持ちになりきって発表できたか。
(4)本時で目指す表現
・やっと気付いてくれた。よかった。
・これで,うなぎのつぐないができたかな。兵十は許してくれたかな。
・今までの償いがぼくだってわかってくれたんだ。うれしいよ。
ご ん ぎ つね
新 美 南 吉 兵十
ごん う な ぎを ぬ す みや が っ た あ の ご んぎ つ ね めが
・ に くい
・ う らん で い る
「よ う し
。」
う って や る
。
し とめ て や る。 ド ン とう ち ま した
。
「お や
。
」 兵
十 は火 な わ じゅ う を
ごん は
、 ぐっ た り ば た りと と り 落と し ま し
と目 を つ ぶっ た ま た
。
ま、 う な ずき ま し た。
う な ず い た 時 の ご ん と、 火な わ じ ゅ う を と り 落 と し た時 の 兵 十の 気 持 ちを 考 え よう
。