第5学年3組図画工作科学習指導案
指導者 石出 聡史 展開場所 図工室 1 題材名 「そのば」くん登場
2 題材について
(1) 題材観
学習指導要領では,
とあり,表現の内容として感性,想像力,描写,伝達能力の向上が重点となっている。
本題材は,身近な場所から「顔」を探し,デジタルカメラで撮影する。見つけた「顔」や場所 の特徴をもとに場面を想像し絵に表す。印刷した「顔」の形や色,顔に見立てたものの本来の役 割や見つけた場所の雰囲気などからイメージを連想する。思いついたイメージがどのような場面 なのかが伝わるように工夫して表す。さらに「顔」を見つけた場所に作品を戻して鑑賞すること により,その場所ごとの特徴を代表していたり,「顔」を見つけた時には言葉で表現できなかった 雰囲気を形や色によって引き継いでいたりしていることに改めて気づく機会としたい。
(2)児童の実態(男子17名,女子11名,計28名)
本学級は,明るく素直で節度を守る児童が多く,何事にも意欲的に取り組む学級である。理解 や習得に少し時間がかかる児童もいるが,自発的に相互で協力し合いチームワークを大切にして いる雰囲気が感じられる。図画工作科の学習では,ほとんどの児童が関心をもって意欲的に取り 組んでいる。しかし,題材によっては戸惑いが見られたり,作業に時間がかかってしまったりす る児童も見られる。
この題材を指導するにあたり,事前にアンケート調査を行った結果以下のような実態が明らか になった。
① 図工の学習は好きです か。
好き 14名(50%)
普通 14名(50%)
嫌い 0名(0%)
② 図工でどんな学習が好き ですか。(複数回答)
工作 19名(68%)
絵画 12名(42%)
版画 3名(10%)
第5学年及び第6学年の目標と内容
(2)材料などの特徴をとらえ,想像力を働かせて発想し,主題の表し方を構想するとともに,様々 な表し方を工夫し,造形的な能力を高めるようにする。
A表現
(2)感じたこと,想像したこと,見たこと,伝え合いたいことを絵や立体,工作に表す活動を通 して,次の事項を指導する。
ア 感じたこと,想像したこと,見たこと,伝え合いたいことから,表したいことを見付けて 表すこと。
イ 形や色,材料の特徴や構成の美しさなどの感じ,用途などを考えながら,表し方を構想し て表すこと。
ウ 表したいことに合わせて,材料や用具の特徴を生かして使うとともに,表現に適した方法 などを組み合わせて表すこと。
③ 絵を描くときに見たもの をそのまま写すのと想像 して絵を描くのではどち らが好きですか。
見たものをそのまま写すのが好き 10名(36%)
<理由>
描きやすい 楽だから 写す難しさがいい 何回も見られる 動かない 色がすぐ決められる 立体的にかける 想像だとあ まりしっかりした絵にならない
想像して絵を描くのが好き 6名(21%)
<理由>
自分で考えたものや好きなものがかける 想像力がつく 登場人物の気持ちが分かる 理想の絵がかける いろいろなも のがかける すぐかける
両方 7名(25%)
*理由は上記に含む どちらでもない 4名(14%)
④ 自分の作品のイメージが わかないとき,何がある とよいと思いますか。(複 数回答)
教科書・作品例 うかぶヒントになるもの 本・アニメ 友達 からのアドバイス 画像・写真 何か集中できるもの 家にあ るもの 絵に表しやすいもの にているもの
⑤ 写真や絵を見るとき,お もにどこから見ていきま すか。
中心から 4名(14%)
まわりや背景から 5名(17%)
目立つ色のところから 1名(0.4%)
大きなものやはっきりしたところから 18名(64.6%)
⑥ 画用紙に自分のイメージ したことを表現するため に,どんなものを使った ことがありますか。(複数 回答)
絵の具 28名 (100%)
色えんぴつ 25名 (89%)
スクラッチ 4名 (14%)
クレヨンかクレパス 21名 (75%)
スタンピング 6名 (21%)
ブラッシング 0名 (0%)
マーブリング 0名 (0%)
ストローで 12名 (43%)
チョーク 1名 (0.4%)
その他~
水彩鉛筆 2名 (0.7%)
ステンシル 1名 (0.4%)
マーカー 1名 (0.4%)
まず,教科として図画工作科は嫌いと感じる児童は皆無だが,それほど意識する教科でもない という児童も半数見られた。さらに学習内容では,工作が多かったが図画も工作も両方好きとい う児童も5名含まれ,多様な学習活動がこの教科の人気を支えていることがわかる。中でも本題 材の分野である絵画についてはポスターや風景画の指導を行ってきたが,描写画と想像画をきち んと区別しているだけでなくそれぞれのよさを客観的にとらえていたり,国語科の学習の発展と してとらえていたりする児童も見られた。また作品を製作する見通しを立てる段階でイメージが わかない場合どのような支援を求めるか調査したところ図書やアニメなどが10名,友達からの
アドバイスなどが7名,画像・写真3名など日常生活の中で比較的自分との身近な関わりが重要 であることが見えてきた。絵画や写真を1つのフレームとしてどのような視点で見ているか調べ た結果については大半が大きさや鮮やかさに目が行き,色彩についてあまり注目度は見られなか った。最後に絵画の表現方法・技法について調査したところ,絵の具・色鉛筆・クレヨンは経験 が多いが,ストローやスタンピング,スクラッチなどの他の技法経験が少ないことが分かる。例 えば児童によっては自分のイメージが浮かばず描き始めるまでに多くの時間を費やし,安易な技 法ですませようとする傾向も考えられる。ある程度の技能を平均的に身につけていても,多様な 方法から選択し組み合わせる楽しさを味わう経験も,次回への意欲にもつながると考えられる。
(3)指導観
本題材では,「顔」に見えたものや場所に広く深く感じ取ったものが,「そのば」くんの登場と 活躍の着想に重要な関わりをもつため,物と場所への観察力を深める必要がある。
児童にとって「顔」は身近なものからたくさん見つけられたとしても,絵に表したい場面が思 いつかないことになると,ものや場面への深い観察が発揮されていないことになる。もともとど のように使われているものか,あるいはどのような場所なのかという起点を念頭に発見していく 活動であることをふまえる必要がある。こうした活動の趣旨から逸脱してしまう場合,何よりの 支援となるのが友だちの見方や感じ方,考え方である。自他の体験が響き合いながら,着想の起 点(ここでは,顔に見えたものとあった場所)に立った話し合いを有効に活用していきたい。導 入時はグループでの活動が主になるが,視点や向きを変えるなど児童相互に影響し合うことによ り意欲を高め発想力の向上を図ってゆく。さらに見つけた「顔」や「場所」についてイメージカ ードを作成し,グループやクラス全体で話し合う場面を設定することにより自他の感じ方、考え 方の共通点や違いのおもしろさに気づかせていきたい。こうした言語活動を通して自分のイメー ジをもつきっかけになればと考える。実態調査でも,自分のイメージをもつことが困難な場合,
どのような支援があるとよいか調査したところ図書やアニメ,写真などの資料のほか友達からの アドバイスも大きなウエイトを占めている。そこで,「顔」に見えるものと「顔」がある「場所」
を撮影させプリントアウトしたものをもとにグループ内で紹介し合い,さらにクラス全体でも紹 介し合うことにより見つけた「顔」と「場所」についてそこから連想する言葉から感じ方,考え 方の違いを共有し,作品の構想につなげていきたい。
描画の活動ではイメージカードで連想した言葉から想像したイメージをどういう手法によって 表現するか,児童が思い描いたイメージを追及できるような学習環境を設定したい。そのために は,児童が自分のイメージした「そのば」くんの活躍を効果的に表せるよういろいろ試したり組 み合わせてみたりできるように,幅広く描画材料や用具を共同で使用できる準備をしておきた い。描画の段階の前に,「ブラッシング」「スタンピング」「ぼかし」など様々な表現方法を紹介す るとともに,身近な材料や方法を児童自身にも考えさせ準備させるなど,児童が想像したイメー ジの主体的な具現化にもつなげていきたい。そして,自分のイメージに合った表現方法を選べる ようにしていきたい。
完成した作品を楽しく鑑賞する手立てとして,表した「そのば」くんを生まれた元の場所にあ らためて返してみる。元の場所に返すのは広げた発想を起点に戻すことであり,振り返ることに よって味わい,感じたことを伝え合う。
また,本題材の指導における言語活動の充実を通して図画工作科の思考力,判断力,表現力等 を育む学習指導のあるべき方向性を模索し検証していきたい。
3 題材の目標
・身近な場所に関心をもち,「顔」を探しながら表したいイメージを広げ,想像した世界を絵に表す ことを楽しもうとする。 (造形への関心・意欲・態度)
・見つけた「顔」の役割や「顔」があった場所の特徴などをもとに連想し,テーマや画面の組み立 てなど,表現の構想を練ることができる。 (発想や構想の能力)
・自分が想像した世界が効果的に現れるように,描画材料の扱いや表現方法を工夫することがで きる。 (創造的な技能)
・身近な場所の特徴や自他の感じ方,表し方の違いやよさを互いに見合うことができる。
(鑑賞の能力)
4 指導計画(6時間扱い)
時配 主な学習活動 評価規準(方法)
1 ・身近にあるものや場所の おもしろさや感じること を話し合う。
・様々な表情の「顔」や 面・物の写真を見て,身 近にも「顔」が潜んでい ることに気づく。
・学校の中の様々な場所か ら「顔」に見える場所を 探し,カメラで撮影す る。
・身近な場所にある様々な「顔」に見えるものや場所 の特徴に興味を持ち,視点や向きを変えて楽しもう としている。 (関)[観察・対話]
・様々な場所のものに「顔」のイメージがあることに 気づき、場所や役割を明確にすることにより構想の テーマを練ろうとしている。
(発)[イメージカード・観察]
2
(本時 2/6)
・見つけた「顔」やその場 所をもとに,連想したこ とや表したいことを考え イメージを画用紙に描 く。
・「顔」からイメージを広げ,自分の想像した世界を 絵に表すことを楽しもうとしている。
(関)[イメージカード・観察]
・「顔」からイメージを広げ,テーマや画面の組み立て など,表現の構想を練ろうとしている。
(発)[作品・観察]
2 ・自分のイメージに合わせ た描画材料や表現方法を 選び,工夫して絵に表 す。
・自分が想像した世界が効果的に現れるように,描画 材料や表現方法を工夫している。
(創)[観察・作品]
1 ・友だちの作品のよさや面 白さを見つける。
・テーマや表し方のよさに関心をもって,互いの作品 を見合う。 (鑑)[対話・ワークシート]
5 本時の指導(2/6)
(1)目標
・「顔」からイメージを広げ,自分の想像した世界を絵に表すことを楽しもうとする。
(関心・意欲・態度)
・「顔」からイメージを広げ,テーマや画面の組み立てなど,表現の構想を練ることができる。
(発想や構想の能力)
(2)展開
時配 学習内容と活動 指導・支援 ○評価 資料
8
15
10
10
2
1
2 3
4
5
6
前時の活動を振り返る。
・校内のいろいろな場所にどんな 役割の「顔」があったか紹介す る。
・本時のめあてをつかむ。
・撮影した場所の写真をモニ ターに提示する。
・見つけたところはもともと どんな場所か,「顔」に見え たものは普段どんな役割を しているものか確認させる。
TVモニター PC
SDカード
イメージカード
プリントアウト した写真
絵の具 スタンピング,
ブラッシング,
ステンシル,
ストロー,
スクラッチ ビー玉 各用具 顔や場所の特徴から「そのば」くんの活躍場面を想像しよう。
見つけた「顔」の写真やその場所 の特徴から連想し,「そのば」くん の活躍場面を考える。
・「コンセントは,いろいろな機械 にパワーを送るから力強いイメ ージかな。」
・「扉の取っ手は,中に入っている もののとりまとめ役だね。」
・「蛇口からは水だから,植物によ く水をやったね。」
プリントアウトしたも写真から
「顔」を切り抜き,画用紙上で配 置やレイアウトを考える。
・「タイヤは地面からとびだして,
いろいろな荷物を運ぶ宅配屋さ んだ。」
・「一輪車はバランスが大事。でも 空中を飛ぶとどうかな。」
「顔」の配置が決まったら,効果 的な表し方を考えながら背景など を下描きする。
次時の活動について知る。
・アイデアスケッチをもとに,画 用紙に描くことを知る。
・イメージがわかない児童に 対して,写真から連想する言 葉を話し合ったり,イメージ がわかない児童にグループ 内で話し合うようアドバイ スしたりする。
○「顔」からイメージを広げ, 自分の想像した世界を絵に 表すことを楽しもうとして いる。
(関)[イメージカード・観察]
○「顔」からイメージを広げ, テーマや画面の組み立てな ど,表現の構想を練ろうとし ている。
(発)[作品・観察]
・効果的表現方法・技法を話し 合ったり,アドバイスしたり する。
・次時の予告をする。
(3)板書計画
PC
顔や場所の特徴から「そのば」くん の活躍場面を想像しよう。
学
活躍の様子
<キーワード> (顔に見えるものの写真)
そのばくん( )
どこで <連想した言葉>
だれ(何)のために 花→ジャングル→動物園→飼育係 どんな活躍をする
モニター