第 5 章 実証調査分析 II 在中日米企業従業員の職場ストレス、職務満足感、組織サポー
2. 在中日米企業従業員の職場ストレス、組織サポートと職務満足感の差異分析
独立したサンプルの T 検定で検証した結果は表 81、82 に示す。5 尺度は Levene 検定の p 値はいずれも 0.05 以上であるため、2 組が等分散であると示され、等分散を仮定する欄の t 値を見る。在中日米企業従業員は職場ストレス全体において、有意な差は見られていない。
一方、各尺度において、役割の葛藤の p は 0.536 で 0.05 以上である以外に、他の尺度は いずれも 0.05 より小さい。役割の葛藤以外の尺度において、日米企業従業員が感じる職場 ストレスに有意な差が見られる。そのうち、仕事そのもの、役割の曖昧さ、人間関係の尺 度において、米国系企業従業員が感じるストレスが日系企業従業員より高いのに対し、組
織構造・風土とキャリア発達の尺度において、日系企業従業員が感じるストレスが米国系 企業従業員より高いことが明らかである。
表 81 日米による職場ストレスの差異(n=425+173=598)
変数/尺度 国別 サンプル数 平均値 平均偏差 平均値の標準誤差
仕事そのもの
日系 425 3.002 1.0034 .0487 米系 173 3.482 1.0629 .0808
役割の曖昧さ 日系 425 2.027 .9653 .0468
米系 173 2.353 .9650 .0734 役割の葛藤
日系 425 2.776 .8786 .0426 米系 173 2.825 .8720 .0663 人間関係
日系 425 2.094 .8380 .0406 米系 173 2.504 .8540 .0649 組織構造・風土と
キャリア発達
日系 425 3.109 .9051 .0439 米系 173 2.719 .8373 .0637 職場ストレス
日系 425 2.698 .6463 .0314 米系 173 2.750 .6624 .0504 出所:筆者作成
表 82 職場ストレスの日米による独立変数 T 検定結果(n=425+173=598)
等分散性のための Levene 検定 2 つの母平均の差の t 検定
F Sig. t df Sig.(双側)
仕事 そのもの
等分散を仮定する 2.989 .084 -5.215 596 .000
等分散を仮定しない -5.090 303.246 .000
役割の 曖昧さ
等分散を仮定する .365 .546 -3.735 596 .000
等分散を仮定しない -3.736 319.196 .000
役割の 葛藤
等分散を仮定する .068 .794 -.619 596 .536
等分散を仮定しない -.621 321.256 .535
人間関係 等分散を仮定する .740 .390 -5.398 596 .000
等分散を仮定しない -5.355 313.705 .000
組織構造・風土と キャリア発達
等分散を仮定する 2.749 .098 4.879 596 .000
等分散を仮定しない 5.042 343.018 .000
職場 ストレス
等分散を仮定する .118 .732 -.880 596 .379
等分散を仮定しない -.871 312.121 .385
出所:筆者作成
(2) 日米による職務満足感の差異
表 83 職務満足感の日米差(n=425+173=598)
変数/尺度 性別 サンプル 平均値 標準偏差 平均値の標準誤差
仕事 そのもの
日系 425 2.708 .9130 .0443 米系 173 3.247 .8945 .0680 仕事の
リターン
日系 425 2.368 .8389 .0407 米系 173 2.983 .9215 .0701
個人成長 日系 425 2.729 .8715 .0423
米系 173 2.983 .8420 .0640
仕事協力 日系 425 3.307 .8274 .0401
米系 173 3.462 .6796 .0517
経営管理 日系 425 2.558 .9391 .0456
米系 173 3.079 .8962 .0681
職務満足感 日系 425 2.732 .6869 .0333
米系 173 3.147 .6786 .0516 出所:筆者作成
表 84 職務満足感の日米による独立したサンプル T 検定結果(n=425+173=598)
等分散性のための Levene 検定 2 つの母平均の差の t 検定
F Sig. t df Sig.(双側)
仕事 そのもの
等分散を仮定する .001 .976 -6.583 596 .000
等分散を仮定しない -6.640 325.100 .000
仕事の リターン
等分散を仮定する 4.502 .034 -7.895 596 .000
等分散を仮定しない -7.588 294.043 .000
個人成長 等分散を仮定する .007 .935 -3.254 596 .001
等分散を仮定しない -3.301 329.296 .001
仕事協力 等分散を仮定する 7.210 .007 -2.182 596 .030
等分散を仮定しない -2.369 385.253 .018
経営管理 等分散を仮定する .726 .395 -6.227 596 .000
等分散を仮定しない -6.351 333.116 .000
職務 満足感
等分散を仮定する .146 .703 -6.707 596 .000
等分散を仮定しない -6.742 322.640 .000
出所:筆者作成
上記 2 つの表から分かるように、在中日米企業従業員が職務満足感全体においても、個 別尺度においても、有意な差が認められる。在中米国系企業従業員の職務満足感は日系企 業従業員のそれより高いことが示された。とくに仕事そのもの、仕事のリターンと経営管 理において、著しい相違が確認された。
(3) 日米による組織サポートの差異
表 85 組織サポートの日米差(n=425+173=598)
変数/尺度 性別 サンプル 平均値 標準偏差 平均値の標準誤差
仕事 サポート
日系 425 2.961 .8409 .0408 米系 173 3.200 .8692 .0661 価値への
承認
日系 425 3.873 .7665 .0372 米系 173 3.561 .8210 .0624 生活・福祉へ
の気遣い
日系 425 2.520 .8882 .0431 米系 173 2.836 .7831 .0595 組織
サポート
日系 425 3.118 .6382 .0310 米系 173 3.199 .6016 .0457 出所:筆者作成
表 86 組織サポートの日米による独立したサンプル T 検定結果(n=425+173=598)
等分散性のための Levene 検定 2 つの母平均の差の t 検定
F Sig. t df Sig.(双側)
仕事 サポート
等分散を仮定する 1.045 .307 -3.129 596 .002
等分散を仮定しない -3.085 309.778 .002
価値への 承認
等分散を仮定する 5.690 .017 4.424 596 .000
等分散を仮定しない 4.298 300.371 .000
生活・福祉 へ の 気 遣 い
等分散を仮定する 3.189 .075 -4.081 596 .000
等分散を仮定しない -4.303 359.359 .000
組織 サポート
等分散を仮定する .029 .866 -1.434 596 .152
等分散を仮定しない -1.470 336.964 .142
出所:筆者作成
上記 2 つの表から分かるように、在中日米企業従業員が組織サポート全体においては、
有意な差が認められていないが、個別尺度を見ると、いずれも有意な差が確認された。そ のうち、仕事サポートと生活・福祉への気遣いという下位尺度において、在中米国系企業従 業員が知覚する組織サポート感が高い一方、価値への承認という下位尺度において、日系 企業従業員が知覚する組織サポート感が顕著に高いことが明らかである。