• Tidak ada hasil yang ditemukan

第 6 章 研究結論と研究展望

第 4 節 日本的経営の強みと弱みを吟味する

1、日本的経営視点からの本調査結果の再分析

前記の日本的経営の強みに関する分析から、日本的経営の強みとしては、人間主義経営、

調和的人間関係の重視、およびチームワークや企業内の協働意識醸成による企業内の持続 的な改善、イノベーションなどが挙げられる。このような日本的経営の強みは日本経済の 高度成長を支え、日本の先進国仲間入りを達成させた。また、このような「人」を中心と する経営、柔軟な職務構造に基づいた企業内の協働意識を重視する仕組みは、より高度な 職場ストレスに対応できる体質であると言えるであろう。

今回の調査結果から見ると、在中日系企業従業員が感じる人間関係に由来するストレス が低く、とくに在中米国系企業従業員より著しく低く、仕事の協力に対する職務満足感が 高いことから、日本的経営のこの強みがよく反映されている。また、在中日系企業従業員 の自覚する価値への承認という組織サポートが高く、とくに米国系企業従業員より著しく 高いことから、日本的経営の「人間本位経営」という理念の徹底もよく示されている。

また、今回の調査結果から、在中日系企業の従業員が感じる仕事そのものに由来するス トレスが適当なものであり、米国系企業従業員より明らかに低い反面、在中日系企業従業 員の仕事そのものに対する満足感が低く、とくに米国系企業従業員より著しく低いことか ら、在中日系企業従業員の仕事そのものに由来するストレスをさらに高める必要があるこ とが示唆される。なぜならば、仕事そのものに由来するストレスが高いほど、日本的経営 の強みである「調和的人間関係」の緩和作用が発揮できるからである。仕事そのものから のストレスが高くない環境において、和気藹々の人間関係はかえって人のチャレンジ精神 を抑え、怠け心を助長し、組織にぬるま湯体質をつけさせやすくなる。

一方、このような企業内部の調和と仕事上の相互協調を慣行としてきた従来の日本企業 では、「柔軟な職務構造」と呼ばれる職務の曖昧さが特徴となる。即ち、各人の仕事分担が 不明確で、どこで自分の仕事が終わり、どこから他人の仕事が始まるのかが分からないと 言われている。同時に、米国企業がスペシャリストの育成に力を入れるのに対し、日本企 業はゼネラリストの人材育成により力をいれる一方、人事考課と評価の面において、アメ リカ企業が「職務中心」に評価するのに対し、日本企業は「職能中心」に評価するイメー ジが強い。どう見ても集団責任が問われる日系企業のほうが、従業員が感じる役割の曖昧 さに由来するストレスが大きいはずである。今回の調査で逆の結論が得られたことから、

中国に進出する日系企業は、伝統的な日本的経営のこの部分の導入に慎重的であることが 伺える。その原因については前記に分析したので、ここで贅言しない。

従来の日本企業における職務という概念は、特定個人の分担がはっきりしている領域と、

特定の個人の分担が明確になっていない「境界的な」領域、または「相互依存」の領域か らなっている。日本の組織では、明確な個人の分担領域は限られ、誰の分担がはっきりし ない相互依存の領域が広い。相互依存の領域を現実に誰が分担するかは、状況に応じて融 通無礙に決められる。上位の人または同僚との相互依存領域に間隙が生ずると思われる時 には自発的・弾力的に補完行動をとることが望ましいとされる。そのためにはたえず周囲 に対して気配りしていなければならない。狭い自己の領域だけに閉じこもる消極的な「気 の利かない」人間はダメなのである。アメーバのように状況即応的な、相互補完的な役割 行動が期待されている247。日本企業のこのような曖昧な職務と役割の設置は集団労働とい う大前提に基づいて築かれたと言える。また、このような柔軟な職務構造と集団労働に基 づいて従業員同士が協力し合って、それぞれの知恵と能力を発揮して持続的な知識創造活 動、イノベーションが可能となる。即ち、日本的経営の優位性を発揮するために、このよ うな曖昧な職務構造は必要不可欠である。これからこの部分の導入は在中日系企業にとっ て課題となっている。

一方、在中日系企業従業員が感じる組織構造・風土とキャリア発達に由来するストレス は高く、仕事のリターン、経営管理、個人成長に対する職務満足感が低く、とくに米国系 企業従業員より著しく低いことから、在中日系企業従業員が日系企業の経営手法に対する 違和感が多少示されている。とくに、前記分析したように、中国人は日本人より「個」を 重視し、仕事を通じたキャリアアップ、自己実現を求める傾向が強い。これに関しては、

日本的経営に現れる組織の構成員のものの考え方の単一化、個性への抑制といった弱みが 中国の従業員にとっては、抵抗感があることが伺える。

2、現段階中国企業の発展における日本的経営の必要性

前記の文献レビューにおいて、日本的経営の強みと弱みの先行研究と分析を行った。総 じて言えば、日本的経営の強みは、従業員と企業との緊密な連帯関係、従業員が企業に対 する強い忠誠心と献身的精神、集団主義に基づいたチームワーク重視、およびそれに基づ く従業員一人一人の知恵と能力を引き出す知識創造活動、持続的改善とイノベーション、

さらにこれらの知識、知恵と能力が従業員に共有され、長期的に伝承、蓄積されることに より、高い技術力と優れた経営ノウハウを生み出している、ということである。このよう な日本的経営の強みは現段階の中国企業に大きな示唆を与えてくれる。

中国では改革開放政策が実施されて30年を過ぎ、市場経済への移行はほぼ完成した。そ の中で、多くの中国企業は、市場経済の波に乗り、資本蓄積段階を終え、成長してきた。

しかし、中国企業の今までの発展過程を見ると、投資と輸出に過度に依存した構造が大き な特徴とされる。国有企業の場合、中国政府の大企業を残し、中小企業を放棄する、とい う「抓大放小」政策の下に、企業合併や買収、事業再編などによって急速に数が減り、規 模拡大してきたものがほとんどである。一方、中国経済の全般的な好調に頼って大いに発 展してきた民営企業は、労働集約型加工製造業を中心に外国市場向けのOEM生産を行うも のが多く、輸出への依存度が高い。一旦欧米などを初めとする先進国が経済不況に陥ると、

需要の冷え込みにより大きな打撃を受けやすい。

中国企業を代表する中国 500 強企業のデータを見ると、その規模に相応する実力がまだ

十分にできていないことが明らかになる。中国企業聯合会が発表した「2011年中国 500強 企業発展報告」によると、2011年の中国 500強企業の規模は拡大し、市場競争力は向上す る一方で、低い国際化レベル、コア競争力の不足などの問題が残されていることが明らか となった。また、世界的レベルを見ると、「世界トップ500社」にランクインした中国大陸 企業は殆ど資源独占、規模の経済、低コストの優位性がある23業種で集中されている一方、

労働生産性、利益を上げる能力および革新能力において世界の一流企業と比べてまだ大き な差がある248。2011年中国500強企業の一人当たりの営業収入は世界500強企業のそれの

僅か45.6%に相当し、米国 500強企業のそれの 45.5%になっている。特に中国企業は研究

開発能力に欠け、2011 年中国 500 強企業の研究開発費用が営業収入に占める割合は平均

1.41%であり、10%を超える企業はわずか1社となり、218社が1%未満である。即ち、こ

れまで多くの中国 500 強企業の成長において、合併や再編が突出した役割を果たしていた が、決して技術革新によって推進されたものではない249

前記のように、現在中国企業が当面する最大の問題点は、規模に相応しい実力を身に付 けず、独自のブランドおよびオリジナリティのある技術の研究開発能力が欠如しているこ とと、経営能力がまだ十分に整っていない、ということである。しかし、これらの能力を 身に付けないと、持続的な成長と発展は不可能になる。創業期と成長期の段階を経験して いた中国企業にとっては、今後如何に企業を持続的に発展させるか、が避けられない問題 となる。

このような背景を踏まえ、中国政府は、高度成長から、持続可能な成長へ転換しようと いう方向性を示し、企業の技術革新能力、製品の自主開発能力、エネルギーの節約を奨励 する制度、政策を次々を操り出している。特に2006年に公表された『国家中長期科学技術 発展計画綱要(2006~2020 年)』は、政府の方針として、「自主創新」を通じた「革新国」

作りという国策が中期戦略として具現化され、15年間の政策推進を通じて2020年に「革新 国」仲間入りすることを宣言した。

このような時こそ、中国と同様の後発強国日本の経験を謙虚に学び、特にそのイノベー ション強国の背後に支えられた日本的経営手法の強みは参照する価値が大きいと筆者は考 えている。今まで、多くの中国企業は、外的成長(規模の拡大・事業の再編)に強い米国 流のマネジメント思考や手法を学び、活用してきた。しかし、藤本が指摘したように、こ れらの目に見える表層の競争力より、生産性や組織能力などといった内的成長力、深層的 な競争力こそが、企業を長期的に存続させる原動力である。それは、高い開発能力と生産 技術と経営ノウハウの長期的に企業内の蓄積である。

3、中国に日本的経営を取り入れる際の難点

同じ「儒教文化圏」に属す日本と中国は、ときには両国民に「同文同種」と言われるほ ど共通性があるという幻想をもたらす。これもまた日本的経営が容易に中国に取り入れら れるのであろうという錯覚に陥りやすい。ここでは、日本的経営を支える土台である長期 雇用と組織メンバー間の集団主義、チームワークを中心に、日中両国の相違点を踏まえな がら、日本的経営を中国に導入する際の難点を論じたい。

(1) 長期雇用

前記の分析から分かるように、日本的経営の強みは、長期雇用という制度の確保によっ て作り出されるものである。かつて社会主義時代の中国では日本のような終身雇用制度を 国有企業主導で採用していた。しかし、日本と中国の歴史的・社会的背景が違うため、適