第 4 章 実証調査分析 I 在中日系企業従業員の職場ストレス、組織サポート、職務満足
第 1 節 研究目的と対象
第4章 実証調査分析 I 在中日系企業従業員の職場ストレス、組織
表 27 研究サンプルの概要(n=425)
項目 カテゴリ 人数(人) 百分比(%)
年齢(才)
30 以下 278 65.4
31~35 119 28
36~40 18 4.2
41~45 9 2.1
46~50 0 0
50 以上 1 0.2
性別 男 182 42.8
女 243 57.2
学歴
短大以下 26 6.1
短大 131 30.8
大学 235 55.3
大学院及びそれ以上 33 7.8
勤務年数(年)
5 以下 189 44.5
5~10 174 40.9
10~15 46 10.8
15~20 11 2.6
20 以上 5 1.2
月給(人民元)
3000 以下 52 12.2
3000~6000 244 57.4
6000~9000 85 20
9000 以上 44 10.4
婚姻状況
未婚 237 55.8
既婚子無 75 17.6
既婚子有 109 25.6
離婚 3 0.7
別居 1 0.2
死別 0 0
職務分野
生産管理 150 35.3
研究開発 53 12.5
営業マーケティング 159 37.4
人事総務 63 14.8
役職
一般社員 150 35.3
現場管理職 53 12.5
中間管理層 159 37.4
経営陣 63 14.8
出所:筆者作成
表 27 に示すように、研究対象者のうち、年齢について、30 才以下の従業員が占める割合 は最も多く、65.4%に達している。性別に関しては、男性と女性がそれぞれ 42.8%、57.2%
の割合を占めている。学歴について、大学の学歴を持つ従業員の占める割合が最も多く、
55.3%である。勤務年数においては、5 年以下と 5~10 年の従業員が占める割合は多く、そ れぞれ 44.5%と 40.9%である。月給の面については、3000~6000 元が最も多く、57.4%を占 めている。婚姻状況については、未婚者が 55.8%で第一位を占めている。職務分野において は、生産管理および営業マーケティングの占める割合が多く、それぞれ 35.3%と 37.4%であ る。役職については中間管理職の占める割合が最も多く、37.4%であり、一般社員がそれに 次いで 35.3%を占めている。
第 2 節 研究方法
1.研究手段
本格的な調査は前記の予備調査によって検証された職場ストレス尺度(5 下位尺度・21 項目)、職務満足感尺度(5 下位尺度・17 項目)及び組織サポート尺度(3 下位尺度・9 項 目)を使用した。それぞれの尺度の操作性定義と下位尺度の内容は記述の通りであり、こ こでは贅言しない。回答形式はリカートの 5 件法であり、各尺度の得点が高いほど尺度が 示す職場ストレッサー、職務満足感、組織サポートを強く自覚していることを示す。ただ し、組織サポート尺度の価値への承認、という下位尺度の項目は逆転項目であるため、統 計するときにまずデータを逆転処理して分析を行った。
2.統計方法
主な統計方法は記述統計、信頼性・妥当性分析、相関分析と回帰分析などがある。
(1) 記述統計
本研究では 3 つの部分で記述統計方法を用いる。第 1 の部分はサンプルの基本状況を記 述統計する。サンプルの性別、年齢、学歴、勤務年数、婚姻状況などの人口統計学変数や 制御変数上の分布状況が含まれる。第 2 の部分は職場ストレス、職務満足感、組織サポー トそれぞれの尺度に対する記述統計である。最大値、最小値、平均値及び標準差などが含 まれる。最後に、研究変数が人口統計学変数や制御変数による差異を究明するために、を 記述統計を行う。
(2) 信頼性・妥当性分析
尺度の信頼性と妥当性検証は内部一貫性係数と確認的因子分析を用いた。そのうち、内 部一貫性信頼性は Cronbacha 信度係数で検証を行った。
(3) 相関分析
相関分析(correlatinn analysis)とは、変数間の相互関連が存在しているか否かを研究 し、且つ関連性を有する変数間の相関方向及びその強さを分析する統計方法である。
本研究では職場ストレス、組織サポート、および職務満足感の各下位尺度で相関分析を 行い、Person 相関係数で検証する。
(4) 回帰分析
回帰分析(regression analysis)とは、相関する変数間の関係を調べる場合に、両変数を 同等に扱うのではなく、一方の変数の値から他方の変数の値を予測したり、一方の変数に おける変化が他方の変数にどのように影響を与えるかを調べたりするために使用される統 計方法である。本研究では重回帰分析で職場ストレスのそれぞれの下位尺度が、職務満足 感に対する影響を検証する。
また、本研究では、階層的重回帰分析で中間変数としての組織サポートが、職場ストレ
スと職務満足感との関連に及ぼす間接効果を検証する。
3.測定手段の信頼性・妥当性検証
前記の予備調査において、職場ストレス、職務満足感と組織サポートの測定尺度の信頼 性と妥当性が検証された。本格的な調査において、サンプルの規模による差異が生じる可 能性があるため、再び尺度の信頼性と妥当性を検証する必要があるとされる。その中には 測定尺度の記述統計及び信頼性、妥当性検証が含まれる。記述性統計には、職場ストレス 尺度、組織サポート尺度及び職務満足感尺度の各項目の平均値、標準差及び歪度と尖度な どの統計が含まれる。尺度の信頼性検証について、前記と同様に、内部一致性係数-
「Cronbach α係数」で検証する。妥当性について、前記の探索的因子分析により得られた 下位尺度を、確認的因子分析で本格的な測定尺度が予備調査の結果と一致しているか否か を検証する。
(1) 職場ストレス尺度
① 記述統計
職場ストレス尺度の 21 項目それぞれの平均値は 1.88~3.29 の間、標準差は 0.999~1.302 の間、歪度は-0.113~1.219 との間、尖度は-1.045~1.009 との間に介在している。
Mardia(1985)により、変数が正規分布であるか否かを調べるためには、データの歪度と尖 度係数は正負 2 との間に介在するのが好ましいと指摘された。本尺度の各項目はいずれも 受入れられる範囲内に入っている。
表 28 職場ストレス各項目の記述統計(n=425)
項目 平均値 標準差 歪度 尖度
A1 3.29 1.101 -.113 -.726
A2 3.02 1.176 .046 -.915
A3 2.69 1.302 .308 -1.045
A4 1.88 1.023 1.219 1.009
A5 2.05 1.103 .908 .022
A6 2.15 1.162 .882 -.081
A7 2.82 1.090 .216 -.624
A8 2.88 1.200 .233 -.795
A9 2.64 1.244 .290 -.892
A10 2.11 1.063 .955 .421
A11 2.28 1.140 .837 -.053
A12 2.03 1.045 1.021 .502
A13 1.97 .999 1.063 .834
A14 3.26 1.176 -.038 -.882
A15 3.11 1.206 -.018 -.905
A16 3.15 1.231 -.029 -.954
A17 3.08 1.196 .015 -.923
A18 3.29 1.189 -.076 -.985
A19 2.97 1.079 .203 -.544
A20 2.99 1.254 .123 -1.003
A21 3.03 1.192 -.008 -.875
出所:筆者作成
② 信頼性分析
職場ストレス尺度の 21 項目の全体的な Cronbachα係数は 0.891 であり、各尺度の Cronbachαを見るとやや低いものが見られるが、全体的には妥当な性質を備えることが示 された。
表 29 職場ストレス尺度信頼性分析
尺度 項目数 Cronbaehα係数
仕事そのもの 3 0.789
役割の曖昧さ 3 0.854
役割の葛藤 3 0.598
人間関係 4 0.797
組織構造・風土とキャリア発達 8 0.895
職場ストレス 21 0.891
出所:筆者作成
③ 妥当性検証
職場ストレス尺度の因子分析の適切性を判断ために、先ず KMO と Bartlett の球面性検定 を行い、KMO の値が大きければ因子分析に適する。結果により KMO 値は 0.885 であり、因子 分析に適合する。Bartlett の球面性検定で P は 0.000 で 0.05 以下であり、母グループの相 関行列の間に共通する因子が存在し、因子分析に適合すると示された。
表 30 職場ストレス尺度 KMO 及び Bartlett の検定結果(n=425)
KMO 標本妥当性の測度 .885
Bartlett の球面性検定
近似カイ 2 乗 4119.647
自由度 210
Sig. .000
出所:筆者作成
本研究では主成分分析法を用いて、SPSS17.0 ソフトで職場ストレス尺度に確認的因子分 析を行う。直接に 5 因子を抽出し、Kaiser の正規化を伴うバリマックス回転により因子分 析した結果、この 5 因子がデータの 64.704%の分散が説明でき、因子分析の結果、予備調 査の結果と一致している。
(2) 職務満足感尺度
① 記述統計
17 項目のそれぞれの平均値は 2.23~3.63 との間、標準差は 0.907~1.227 の間、歪度は -0.421~0.713 との間、尖度は-0.922~-0.044 との間に介在している。本尺度の各項目は 受入れられる範囲内であると示される。
表 31 職務満足感各項目の記述統計(n=425)
項目 平均値 標準差 歪度 尖度
1 2.71 1.054 .308 -.491
2 2.71 1.137 .364 -.671
3 2.66 1.072 .298 -.470
4 2.76 1.073 .207 -.551
5 2.40 1.046 .465 -.321
6 2.44 1.043 .348 -.574
7 2.26 .907 .480 -.063
8 3.04 1.087 -.029 -.544
9 2.23 1.039 .713 -.085
10 2.81 1.227 .042 -.922
11 2.84 1.038 .118 -.524
12 3.63 .951 -.421 -.044
13 2.88 1.061 .056 -.626
14 3.42 1.025 -.388 -.236
15 2.35 1.075 .444 -.521
16 2.59 1.063 .170 -.633
17 2.74 1.118 .208 -.589
出所:筆者作成
② 信頼性分析
職務満足感尺度の 17 項目の Cronbachα係数は 0.913 であり、各下位尺度の
Cronbachαも 0.7 の受入れられるレベルを超えている。職務満足感尺度の内部一貫性が高 く、妥当な性質を備えることが示された。
表 32 職務満足感尺度信頼性分析
尺度 項目数 Cronbaehα係数
仕事そのもの 4 0.863
仕事のリターン 3 0.788
個人成長 4 0.802
仕事協力 3 0.750
経営管理 3 0.832
職務満足感 17 0.913
出所:筆者作成
③ 妥当性検証
検証により職務満足感尺度の KMO 値は 0.908 であり、因子分析に適合する。Bartlett 性
球面検定 P は 0.000〈0.05 であり、母グループの相関行列の間に共通する因子が存在し、
因子分析に適合すると示された。
表 33 職務満足感尺度 KMO と Bartlett の検定結果(n=425)
KMO 標本妥当性の測度 .908
Bartlett の球面性検定
近似カイ 2 乗 3684.886
自由度 136
Sig. .000
出所:筆者作成
職務満足感尺度に対して同様に主成分分析法を用いて、SPSS17.0 ソフトで確認的因子分 析を行った。直接 5 因子を抽出し、Kaiser の正規化を伴うバリマックス回転により確認的 因子分析した結果、抽出された 5 因子がデータの 71.366%の分散が説明でき、尺度の 17 項 目の内容をよく概括したことが示された。因子分析の結果は予備調査の結果と一致してい る。
(3) 組織サポート尺度
① 記述統計
組織サポート尺度の 9 項目の平均値は 2.35~3.95 との間、標準差は 0.942~1.087 との 間、歪度は-1.020~0.694 との間、尖度は-0.695~1.184 どの間に介在している。本尺度の 各項目は受入れられる範囲内であると示される。
表 34 組織サポート各項目の記述統計(n=425)
項目 平均値 標準差 歪度 尖度
1 2.97 1.004 .183 -.673
2 3.15 1.027 -.164 -.571
3 2.76 1.065 .162 -.695
4 3.81 1.065 -.925 .374
5 3.95 .847 -.890 1.184
6 3.86 .942 -1.020 1.134
7 2.35 1.056 .694 -.050
8 2.55 1.087 .379 -.502
9 2.66 1.079 .230 -.557
出所:筆者作成
② 信頼性分析
組織サポートの 9 項目の Cronbachα係数は 0.805 であり、各下位尺度の Cronbachα係数 は 0.7 以上であり、内部一貫性が比較的に高く、妥当な性質を備えていることが示された。
表 35 組織サポート尺度の信頼性分析(n=425)
尺度 項目数 Cronbaehα係数
仕事サポート 3 0.747
価値への承認 3 0.723
生活・福祉への気遣い 3 0.769
組織サポート 9 0.805
出所:筆者作成
③ 妥当性分析
組織サポート尺度の KMO の値は 0.805 であり、Bartlett の球面検定で P は 0.000 で 0.05 以下であり、因子分析に適合であると示された。
出所:筆者作成
組織サポート尺度に対しても同様に主成分分析法を用いて確認的因子分析を行った。直 接に 3 因子を抽出し、Kaiser の正規化を伴うバリマックス回転により因子分析した結果、3 因子はデータの 67.637%の分散が説明でき、各項目が相応する尺度上の負荷値がともに 0.7 以上であり、因子構造が明確であり、比較的に高い説明力を有する。確認的因子分析の結 果は予備調査と一致している。