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中国人児童に対する「国語」教科の指導 - GSJAL

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年少者日本語教育実践研究      報告日 2004 年 8 月 31 日 

中国人児童に対する「国語」教科の指導

 

―語彙・意味指導を中心として― 

実践報告者: 塙  誠一郎

名前  H.Y. 

在籍学年  小学校 6 年 

指導開始時の在日期間  1 年 3 ヶ月 

言語環境  中国語(北京語) 

家庭内言語  中国語(北京語) 

言語使用状況  年齢相応の発達と思われる。 

 

日本語 

[JSL バンドスケール] 

学校、友人関係にのみ日本語を使用。 

子どもの様子  性格は特に活発でもなく、おとなしくもない。どちら かと言えばのんびり屋。授業中(入り込み指導、取り出 し指導時とも)時々上の空になったり、あくびをしたり、

注意力散漫に見えることがある。事実忘れものが多い らしい。 

クラスには良く溶け込んでおり、孤立している様子は 見られないが、理科実験の際など、ややマイペースで グループ活動は余り好きではない模様。 

指導を受ける態度は真面目で従順。水を向ければ自 分の経験を積極的に話す。 

今までの支援の有無  筆者以前の「わにっ子クラブ」による支援   

2003 年 5 月〜2003 年 5 月(担当:森元  桂子) 

2003 年 10 月〜2004 年 2 月(担当:間橋  理加) 

測定日 聞く 話す 読む 書く 7月16日 5 5 5 4〜5

 

実践の概要 

期間  2004 年 5 月 18 日〜2004 年 7 月 16 日(全 7 回) 

時間  原則  毎週火曜日  第 5 時限  形態  原則  取り出し指導(*) 

目標  国語教科指導を通じて語彙を豊富にすること 

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(*)  実践形態  ;取り出し指導(国語)。ほかに、参与観察(第 1 回  理科実験、第 2 回  英語)。原則毎週火曜日第5 時限(13:45〜14:30)または第 6 時限(14:35〜15:20)  に実施。 

2004 年度第 1 学期の時間割では第 5,6 時限とも理科であり、担任のS先生は、当初入り込み指導(第5時限;理科) および取り出し指導(第6時限;国語)を希望していたが、結局第 3 回目からは、第5時限または第 6 時限に週 1 回、

45 分間の国語取り出し指導のみを行うことになった。取り出し指導は 6 年 1 組隣の活動室で行った。 

 

実践報告;  指導内容としては、  5 月中旬、担任のS先生が家庭訪問の際、両親に会って確認し たところ、「語彙が不足しているので、語彙の学習を中心に国語教科の指導を行って 欲しい」との希望があった。初回の際、本人は算数が得意で、学校の勉強より進んだ 事をやりたいといっていたが、結局国語をやる事になった。 

 

担任との事前打ち合わせ;  5 月 7 日(金)    15:00-16:00  於  職員室 

4 月 28 日、川上先生に同行して、小学校を訪問し、校長(4 月赴任)、教頭に挨拶、簡単なうちあ わせ。その日は担任に会えなかったので、5月7日(金)  担任のS先生と、約1時間打ち合わせた。

「6年1組(各学年1クラスのみ)の23名中、外国籍児童3名(中国2名、韓米1名)が在籍するが、H 君のみ支援を依頼したい。私は新任なのでまだわからない部分もあるが、H君は、日常会話には 支障はないし、日本語が不自由なため教科学習が遅れていることも無さそうだ。言葉の問題で同 級生のいじめ等はないとおもう。(*)」と。 

(*)前任者は「昨年6月ごろ言葉がおかしいと同級生にからかわれ、以後急激に学習意欲をな くし、学級崩壊に加担している」と書いている。 

      H君が書いた「今年の目標」を見せてくれた。「新しく音楽集団係をやることになったのでしっかり やりたい。国語の勉強を頑張りたい。1 年間勉強とスポーツを頑張りたい」との 3 つの目標が書いて あった。S先生によれば「はじめ、「新しい」と書いてきたので、「新しく」となおした。その他の点では 内容は問題なかったが、音楽の楽が簡体字らしいものになっていた。」 

      S先生は 35 歳前後の男性教諭。今年の 3 月まで大学院で国語教育専攻のため 2 年間小学校を 休職していた。(「外国人児童の日本語教育には興味をもっている」と。)本年 4 月に復職したばか りなので、H君の昨年 2 月の来日当時から今年 3 月までの様子は直接タッチしていない。 

次週は担任による家庭訪問のため、再来週 5 月 18 日(火)から指導を行うこととした。 

 

  第1回指導;5月18日(火)  13:30−15:20    第5時限  理科実験、第6時限  国語 

第5時限開始時に、6 年 1 組の生徒に紹介された。「H君の日本語のお手伝いをして下さる塙先 生」と紹介したところ、一番前の席に座っていた本人が「あれ、僕だけ?C君(*)は?」と。また、クラ スメートも口々にC君は?」と。先生は「まあそれはいろいろあるし。今言ってもいいか分からないか ら」と逃げていた。  (*)C 君はH君より半年前に来日、成績上位で、本年 7 月帰国予定) 

第5時限は2階理科室で実験、「酸素と物の燃え方」について、教科書に添って説明した後、6 班にわかれて、酸素がないとローソクの火がきえることを確認。先生の線香、濡れ雑巾の使い方の 説明に対し、児童から線香は「先公」、濡れ雑巾ではなく「ぬれタオル」だなどと笑い声と叫びでや

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かましい。S先生と一緒に各班を回り、先生の指示どおりに実験を進めているかチェック。 

  H君はと見ると、ノートも教科書も開いていない。忘れてきたらしく先生から後で注意を受けていた。

(あとで聞いてみたところ、昨日たくさん宿題があり、理科のノートと教科書をカバンに入れ忘れた と)  H君は、先生の話をよく聞いていない様子があり、注意力やや散漫と見える。実験そのものは まずまず真面目にこなしていたが、マイペースで仲間と協働しながら活動するチームプレーは苦手 との印象を受けた。 

今日の授業を観察した限りでは、このクラスは小学校高学年らしく騒がしいが、前任者が指摘す るような「学級崩壊」はみられず、「H君が加担して騒ぎ回っている」様子はなかった。 

 

☆  15:00―15:20    本来第5時限は、14:30 までであるが、15 時まで大きく食い込み、取り出し授 業は 20 分間。お互いに簡単な自己紹介の後、S先生からもらった国語ワークブック「うつしまるく ん」をやった。(S先生からは授業について事前の連絡なく、理科のみやると思っていたので、当方 は教材を用意できなかった。)     

H君は余りスムーズにしゃべる方ではないが特に詰まることもなく、当方の言うことは分かってい るようだ。前任者が指摘していた「助詞が抜ける癖」「接続詞が使えない癖」は当日の会話では全く 気がつかなかった。    H君から途中2回「C君はどうして一緒じゃないの?」と聞かれた。 

  「うつしまるくん」の、5 年生で習った漢字33題の書き取り。桜、成績、大統領など中国の簡体字と 異なるものを間違えていたが、その他は正解。「漢字は得意だろうけど、中国の漢字と違うものに気 をつけようね」と。H君にとって、歩、角度、単など間違い易いものと門構え、貝偏、言偏,糸偏など 間違い難いものとあるようだ。 

 

  第2回指導;5月25日(火)13:30―15:20  第5時限  国語、第6時限  英語  第5時限  理科の時間を国語に振替、取り出し指導。 

前回の理科実験授業「物の燃え方」の振り返りを促した。物が燃えるためには空気が必要なこと は理解しているが、酸素、二酸化炭素の単語がすぐ出てこない。「理科は余り好きじゃない。おもし ろくない」と。 

当日、小学校6年理科教科書「たのしい理科6年上、下」(大日本図書)、国語教科書6年(上)創 造、6年(下)希望(光村図書出版)を、持参した。H君は私が理科、国語の教科書を持っているの に驚いた様子であった。(新宿区で共通使用しているもので、川上研究室から貸与を受けた) 

俳句の特徴、17音と季語について確認したあと、「山路来て何やらゆかしすみれ草      芭蕉」他 3句を「視写」した。すみれ草、法隆寺、日陰と日向、ひねもす、の意味について確認した。「国語 教科書」の「短歌と俳句」(31ページ)を朗読させたところ、殆んどつっかえず読むが、発音がもう少 し明瞭だとなおよい感じがする。万葉集、最古、階層、祖先、江戸時代などから、階段、農民、天皇、

奈良、京都、雪靴、最高、最低気温、最新、最後、最初などの語彙を展開した。東京と北京の四季 の違いについて会話した。H君の語彙を豊富にするにはどうしたらよいか。単発的な文脈がない所 で語彙・意味を一方的に教えるのではなく、教科書の内容にそった「内容重視(content-  based)は 当然として、まず出てきた重要単語の類義語、反意語、連想などから広げていくことのがよいので はないかと思う。 

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  まずH君との人間関係を作りあげることが大事と思うが、今日は前回に比べて大分リラックスして 北感じがする。H君は学年相当の認知力、理解力はあると思われる。 

 

☆  第6時限    英語の時間。2階の集会室でオーストラリア人の教師。1年に10回、各学年別に授 業があり、6年生は今学期初めてとのこと。S先生から「英語と日本語で違うかも知れませんが、参 考になるかもしれません。どうぞ」といわれ参観した。 

Where  am  I  from?  に生徒にアメリカ、イギリス、ニュージーランドなどと口口に答える。H君 がオーストラリアを正解し、黒板にオーストラリアの図を描かされる。23名全員に、My  name  is 

〜〜を言わせる。英語は名前を先に言うんだとの声が聞こえる。 

My  name  is  〜〜.What  is  your  name?  〜〜.  Nice  to  meet  you.Nice  to  meet  you,too.の練習でH君が最初に手を上げて前に出て実演。 

audio−lingual形式で、Repeat  after  me.H君が全くクラスに溶け込んでいて安心したが、

英語については、H君も他の生徒と全く同じ立場なので却って伸び伸びと活動できる面もあるかも しれない。それにしても6年生はうるさいく、仲間のちょっとしたミスでぎゃあぎゃあ騒ぎ、悪ふざけを する。 

 

  第3回指導;6月1日(火) 13:45-14:30  国語 

第6時限が「リズム体操」の時間に振り替えられたため、第5時限のみの指導となった。10分間ス ピードチェック『火星に生命を探る』の抜粋を視写する訓練。読み、書きとも正確さは一応問題ない と思う。H君から「読むのは好きなんだ」とのコメントがあった。教科書の本文に戻り、火星、火星の 生命、何故火星の水の存在が生命の存在と関係があるか。H君と火星人、微生物、人間の先祖か ら猿、恐竜、火星人の話を展開した。この文章の要旨はどう言うことか話させたところ、火星に生命 があるかは水があるかどうかで確認できること、水そのものは見つからなかったが、川らしい跡があ ったので生命が存在した可能性があることなどを順序よく話してくれて、習ったばかりのこともあるが 良く内容はつかんでいると思った。火星に生命があるかは水が決め手に関し、「だって、火星人は 地球の人間と違って水がいらないかもしれないよ。」。とのコメント。北極と南極、赤道などの語彙を 展開した。今日は火星の生命の話から、水の大切さ、火星人や微生物の話など、水を向けたらど んどん話してくれた。 

教科書35―37ページ―の「似ている漢字」(任命と仕事、講演と公演など)の練習。46ページ 反意語の練習、「勝利と敗北」など。ワークブックの「火星に生命をさぐる」の視写をさせたところ、日 本語の原稿の使い方が分かっていない。段落の一字空け(中国は 2 字空け)はいいが、句読点や カッコの升目の中の位置(右上)を注意。「中国では横書きだけだから最初縦書きは困っただろう」

と言ったら「もう慣れたよ」と。 

 

  第 4 回指導;6 月 8 日(火)  13:30-14:15  国語 

第6時限が理科のテストとなったため、第5時限(15 分繰り上げ)のみの指導となった。 

学校の玄関先でピックアップした「鶴巻の風」に、5 月 16 日に榎町地域センター祭りのオープニ ング・セレモニーでH君他 8 名が「ぶち合わせ太鼓」(和太鼓)の演技を披露した記事と写真が出て

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いた。これを話題にして和太鼓の合同練習の様子や「ぶち合わせ太鼓」のたたき方を話してもらっ た。音楽の授業でH君などが講師になってクラス全員が太鼓をたたけるよう取り組んでいるとのこと である。 

学校での進度に合わせ、「うつしまるくん」18 ページの「敬語の使い方」、丁寧語、尊敬語、謙譲 語のテスト。敬語の区別はよく分かっているが使う機会は余りないだろう。秘密、ぶどう酒、頂く、い て座から占い、星座、ワイン、ビール、もらう。あげるなどの語彙を復習した。勉強した日、6 月 8 日 から、「ついたち、ふつか」から「はつか」まで復習した。「ようか」と「よっか」がちょっと危なかったが、

「ついたち」から「とおか」までスムーズにいえた。 

日本語の学習について筆者から「5歳くらいの時2,3年日本に住んでいてもなかなか日本語は 身につかないが、H君のように10歳くらいで来て、しっかりやれば必ず身につくと思う。日本にいて も、中国に帰っても中学に入ると英語も習うから、日本語と英語と2ヶ国語が出来るようになるからい いね。頑張ってね」といったら、「そりゃそうだけど」と。 

 

  第5回指導;6月15日(火)13:45-14:30  国語 

第6時限が明後日から行われる「宿泊授業」(千葉県館山市)の準備のため、第5時限のみの指 導。 

音読みと訓読み;中国人の常で音読みは比較的できるが、訓読みがなかなか出来ない。(額、

仏さま、退く、群がる。など)  「音読みは古い中国語の読みから来ているから、今の中国語の発音 に似ていることも多いね」といったら、大きくうなずいていた。教科書47ページの「次の文から、「採 取」「無害」と、それぞれ同じ構成の熟語を探そう」の課題の意味を理解していなかったらしく、同じ 意味の言葉と、害がないのような「語構成」について解説したら、「ああ、そう言う意味か」と納得し、

優先、増加、無言、道路など6題とも正解。同じ意味を並べたり(増加)、主語述語の関係(生物)、

動詞目的語の関係(読書)など、「語構成」の知識と応用は語彙学習の重要な要素である。

鎌倉へ行く話(館山?ではない)、鶴岡八幡宮見学、ハイキング、キャンプファイアなどをやる予 定とのこと。「都会では空気が汚れているし、高いビルも多いので、星は余り見えないが、田舎へ行 くと見える」  太陽系の全惑星の名前、衛星の数、土星の輪の話から、北京にいた時、金持ちの友 人宅で天体望遠鏡で土星を見た話などしてくれた。 

 

  第6回指導;6月22日(火) 13:45−14:30  国語 

第6時限が、明日の「目白大学留学生と5,6年生の交歓会」準備のため第5時限のみの指導。  今 まで、教科書と「うつしまるくん」を中心としての指導であったため、「自由会話」としては、関連する2,

3の質問ややり取りだけで、H君とじっくり話したことが無かったので、約 40 分間を対話にあてた。

話題は家庭環境、放課後(H君は学習塾や水泳などのスポーツ、習い事には行っていない。最近 の特に都会の 6 年生はほとんど塾に行っているのではないか。といっても私立を受験するでもない 外国人児童には塾は縁がないとも言える)や休日の過ごし方(サッカー)、好きな遊び(カード;攻撃 力と守備力、テレビゲームは先月壊れて修理していない)、好きなテレビ番組(アニメやトリビアの泉 など)、好きな学科(算数)と嫌いな学科(理科、国語―漢字はいいが、内容が分からないことがある という)とまあまあ(社会科)、中国の小学校との違い(上履き、体操着、給食がある、昼休みが短く、

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昼寝の時間がない)、日本に来て困ったこと、東京の交通機関の便利さ、速さ、先週2泊3日で行っ た館山市塩見海岸の様子、夏休みの予定(親子で中国へ一時帰国する?)など。後半はH君がか なり積極的に話題を展開した。H君には、「あとで聞いて日本語のアドバイスをしたいから」と断って MD録音した。 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

(*)  次回 6 月 29 日(火)は、筆者の修士論文中間発表のため、休みとすることの担任の諒承を得た。

担任より、7 月 20 日(火)は第一学期終業式のため休みとしたいと。その結果、あと 2 回    (7 月 6 日と 7 月 13 日)の指導を残すのみとなった。 

(**)6 月 23 日(水)  筆者は、「年少者日本語教育実践」クラスで、4 ページのレジュメ(毎回の指導終 了後その日のうちに作成している「実践研究メモ」を半分に圧縮した)をもとに「実践報告」を行った。 

レジュメの最後の部分で、 

  現時点での課題と問題意識 

a)  1週間1回、45分の指導で一体何が出来るか。 

b)  来日から1年4ヶ月たったH君のような児童の場合、日常生活では殆んど不自由ないと思うが、

どのような事を到達目標においたらよいか。 

c)  H君の語彙を豊富にするにはどうしたらよいか。(国語だけではなく、社会科、理科特有の語 彙がある。) 

d)  日本語の4技能能力をある程度正確にはかるにはどうしたらよいか。 

2004年 6 月 23 日現在における、「JSL バンドスケール」によるH君の4技能能力に関する、私 の判定結果は、次の通りであった。 

聞く;5、        話す;5、        読む;6、        書く;5   

①  川上先生より、上記「1 週間 1 回、45 分の指導で一体何が出来るか」の部分について、「時間の 長短の問題ではなく、週 1 回、短時間でも集中して児童生徒の学ぶ力、方法を刺激することで効 果を挙げている例もある」とのコメントがあった。筆者としても 45 分間では何も出来ないという無力感 から述べたわけではなく、毎回工夫して語彙を豊富に身につくようするためにはどうしたらいいか考 えながら実施したつもりであり、説明不足であった。しかし、実際に指導していて 45 分はやはり短く、

時間切れでやりたいことが中途半端に終わって(その当否は別として、2 コマ 1 時間半あればと)残 念な気持ちが残ったことが何度もあったのは事実である。 

②  今までの他の報告者もふくめ、川上先生より、「JSL バンドスケール」の読み方、子どものチェッ クポイントについて再度お話しがあった。H君のレベル判定のため「JSL バンドスケール」を熟読し たつもりであったが、再読すると、「小学校中高学年  読む力  レベル6」の要求する「第二言語習得 のストラテジーおよび言語運用上の特徴」で挙げているポイントは相当なレベルであり、再検討が 必要である。また「書く力」については、現在まで判断の材料を持っているわけではないのであと 2 回の指導の中で簡単な作文を書かせることを実施したい。 

③  「実践報告」レジュメに必要な修正を加えてS先生に指導の中間報告メモとして送付した。 

S先生から、より、「わざわざ資料を送ってくださり、どうもありがとうございます。私の学級指導が 行き届かず、また充分な見通しを示せなかったにもかかわらず、塙先生が丁寧な指導を行ってくだ

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さる様子が、よく伝わってきました。お忙しいところ足を運んでいただき、また短い時間の中でご指 導、本当にありがとうございました。」と。  お世辞半分以上としても嬉しかった。H君本人はどう思っ ているのだろうか。 

 

(***)7 月 3 日、S先生より、「7 月 6 日(火)は習字の特別授業のため、また 7 月 13 日(火)は保護 者会と親子リクリエーションのため指導は休みにしてほしい、その代わり、筆者の都合がいい日時にあと 1 回最後の指導をして欲しい」とのメールが来て正直、落胆した。 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

 

第 7 回指導;7 月 16 日(金)  8:50-9:35  国語 

6 月 22 日の「自由会話に」ついて、筆者からフィードバック。「テープを聞いてH君の話し方の欠点 がないか確認したけれど、小さい「つ」(促音)や長い音(長音)も大丈夫。(H君曰く「日本語の発音 はやさしいや」)。「が」や「に」や「を」等の使い方も大体いい。問題は文章と文章を繋げる「しかし」

「だから」「それから」「それで」「ので」「から」等(=接続詞、接続助詞)が非常に少ないので、話が 上手く繋がっているように聞こえない(単発的、単文的)ことがある。  話し言葉では、「て」形の作り 方や、形容詞の過去形など文法上の大きな問題点はないので、あとは単語・語彙をどうやって増 やすかが課題だ。なかまの言葉(類義語)、反対の意味の言葉(反意語)、連想で関連する言葉を 一緒に覚えたり、未知、無言、道路など単語の構成(語構成)から考えたりして少しずつ覚えること、

また、覚えたことばは早速使ってみることが大事だよ」と話した。 

《注》H君が接続詞や接続助詞の使い方が少ないのは、これらを出来るだけ省略して簡潔な表 現を心がける中国語の影響なのか、私の乏しい中国語の知識では断定は出来ない。中国人の日 本語が男女に拘わらずややぶっきらぼうな響きを与えるのは簡明直截な表現を是とする中国語の 影響と言う説も聞いたことがあるが、これも正否は分からない。 

一方、小学校6年生男子の大人に対する話し方としては、こんなものかな(愛想がない、気が乗 らないと最小限のことしか話さない)と言う感じもする。 

次に、同じ訓を持つ漢字(例;暑い,厚い、熱い)の練習。商品を納める、学問を修める、を間違 えたので、納品、修学、治国などの漢字を思い出して判断するのも有効であることを教えた。 

最後に自由連想法で単語を書かせて見た。白紙に「太陽」と書いて渡したら、「太陽といえば」―

――といいながら円環状に、太陽系、地球、人間、心臓、紅い、リンゴ、甘い、蜂蜜、蜂、痛い、怪 我、危ない、高い所、ビル、住民、人、日本人、日本語、簡単、歩く、音、音楽、口、舌、味、ご飯、

米、太陽と完成した。「〜〜〜といえば」というこの遊びは経験があるのかもしれない。H君はゲーム 好きのようだ。  9 時35分になったので、筆者の指導は今日で終わり、これからも頑張ってねといっ たところ、「どうも有難うございました」とにっこり笑った。「東京にはいつまでいる予定?」と聞いたら

「少なくても、少なくとも来年 3 月、小学校が終わるまではいる」と答えた。帰途、S先生、および校長、

H教頭に「私の指導は今日で終わります。ありがとうございました。」と報告し、礼をのべた。 

 

★  7 月 16 日現在の「JSL バンドスケール」による、H君の日本語4技能に関する筆者の判定は次の 通り。   

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聞く;5、話す; 5、読む; 5、書く;4〜5     

「読む」については、6 月 23 日の判定を既述のとおり再考し、5 とした。「書く」については、残念な がら 7 月 6 日、13 日に予定していた作文が実現しなかったので分からない部分があるが、漢字書き 取りは90点前後取れるので一応 4〜5 としておいた。   

 

4.考察と展望 

①  H君は学年相当の認知力、理解力はあると思われる。但し、生活言語能力の発達と、学習言 語能力の発達はずれがあるから、彼のように先生や同級生とのコミュニケーションに支障がないか らと言って教科学習も何ら問題ないと言うわけではない。来日以来1年5ヶ月経過して表面上は日 本語運用能力に何ら問題がないように見えるので指導上難しい時期ではある。日中の「学校文化」

のずれや友人関係での戸惑いの時期は過ぎており、  生活適応から学習適応、更に異文化適応 の時期であるが、来年3月帰国と言うのが事実ならばそろそろ中国へ帰国してからの適応も考え始 めなければ行けない時期でもある。 

また、H君は来日時11歳現在実年齢13歳であるから、発達途上とはいえ、母語の基礎はほぼ 完成しているといえる時期である。従って視覚的方法よりも概念的・抽象的手法、メタ言語能力  に 重点をおいた学習方法も可能である。   

②  H君の中国小学校における学業成績は不明である。筆者を含めて日本語指導者は勘違いし やすいが、母国で成績が中位であったものが、日本語が出来るようになったからと言って急に成績 が上がるものでもないし、母語話者に比しても上位の成績をあげられるようにする責任があるわけ でもない。教科のレベルの違いなどもあるが、仮に母国語で同じ内容の授業をやったとしても理解 力、認知力が急に上がって成績も上昇するわけではない。しかし、日本語力が不十分であるため に本来できることができないのであれば、それは残念であり何とかしてあげたいと思うのは当然であ る。 

③  日本語力は国語だけでなく他の教科の理解にも大きく関係する。H君が算数が得意なのも(中 国でも得意だったらしいが)、日本語の力がそれほど必要でなくても理解出来るからかもしれない。

日本語力は国語だけでなく社会科や理科の理解にも関係するし、それらの教科の中でも身に付け られる。6年生の社会科や理科ではその教科特有の術語が多数登場する。H君も二酸化炭素や 窒素などの単語がなかなか覚えられないようであった。国語の授業では、先生の言うことは一応理 解しているようであり、少なくとも「おちこぼれ」の状態ではないと思うが、他の教科は不明である。 

④  外国人児童に対する国語教科指導 

日本語を母語としないH君に対しては、「国語」教科であっても、「国語」ではなく「外国語」として の日本語を教えるべきであるのは当然であり、更に第二言語として「日本語」を教える視点を強調し なければならない。教育目標を設定したカリキュラム開発や異文化適応を内包したことばの教育の 実現が課題である。(池上;1994) 

今回の指導では両親から「語彙が不足しているので語彙学習を中心に国語教科を見て欲しい」

との要望があり、それに従って指導をした。言語教育の目的はことばによる受発信を行って他者と のコミュニケーションを図ることであるから、語彙学習もそのために役立つものでなければならない。

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教師が知識そのものを伝授するのでなく、学習者が「学習する方法を学ぶ」という観点から、どうし たら語彙を豊富にすることが出来るかについてH君自身が体得する必要がある。 

⑤  学習者にどのような語彙能力を育成しようとするか 

このことについては、「小学校  学習指導要領」によれば、第5学年および第6学年の国語の目標 は、(話すことについて)  「目的や意図に応じ、考えた事や伝えたい事などを的確に話すことや相 手の意図をつかみながら聞くことができるようにするとともに、計画的に話し合おうとする態度を育て る。」  としている。従って、語彙の学習もこの目標に応じたものである必要がある。 

学習者が興味・関心を持つ事象から語彙を学ぶことが語彙を身につける最良の方法であるが、

何に興味を持っているかについて教師は思い込みを持っていてはいけないであろう。筆者の例で も、日本独自の文化的背景を持っているものには学習者は興味を持たないだろうと思い込んで、

俳句や敬語は恐らく関心がないだろうし、年少学習者にはそれほど必要がないと考えていたら、H 君は意外にもこれ等に相当の興味があることが分かって慌てたことがあった。 

⑥  語彙は文法や音声のような体系がないといわれ、その範囲は無限である。学習者は母語話者 と同じように数万語の語彙数を持つのは不可能であり、またその必要もない。中上級になれば「理 解語彙」が急増し、抽象的、概念的語彙も増える。語彙教育の理想としては、教師は学習者に挫 折感を与えないためにも生活や学年に応じた理解語彙、表現語彙の区別と取り上げる範囲を慎重 に見極める必要がある。常に既習語を思い出させ、新出の語句との比較をする、反意語、対照語、

自動詞・他動詞、共起する語彙などを適切な例文をもって示すことなどが肝要である。(浅野;

1998)       

    ⑦  今回の語彙・意味を中心とした学習では、「文脈化の原則」に従って教科書やワークブックに出 てくる語句を中心に、意味を掴み、反意語、類義語、上位語・下位語、連想する言葉、派生語、関 連語を探す。「語構成」の理論を理解させ、言葉の作り方を学ぶことを基本とした。  これでは、テキ ストの新出語句、難語句についての学習であって、語彙の系統的な学習にはならないが現実的に はやむを得なかった。 

残念なこととしては、今回は、その言葉を使って文章を作り、話したり書かせたりする活動のうち、

語彙習得のための当該語句を使った例文や短作文など「書く」活動については殆んど何もできな かった。また、辞書での確認、語彙を増やす方法としての「辞書の使い方」の学習も全く出来なかっ た。 

他方、指導者が母語に精通していれば、学習者の母語を活用した語彙学習が工夫できるであろ うが、今回は望むべくもなかった。 

         

参考文献 

浅野  百合子(1998)  「語彙の指導」『講座  日本語と日本語教育』  第 7 巻  明治書院 

池上  摩希子(1994)「「中国帰国生徒」に対する日本語教育の役割と課題――第二言語教育とし ての日 

本語教育の視点から」『日本語教育』83号 

石黒  広昭  (2000)「『異文化』の中にある子どもの言語発達」『言語  vol29』  大修館書店 

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岡崎  敏雄  (1995)「年少者言語教育研究の再構成――」年少者日本語教育の視点から」『日本 語教育』  86号 

甲斐  睦朗  (1998)「語彙指導」『講座  日本語と日本語教育』  第6巻  明治書院 

川上  郁雄  (2002)「年少者のための日本語教育」  細川英雄編『言葉と文化を結ぶ日本語教育』

凡人社 

川上  郁雄  (2003)  「年少者日本語教育における「日本語能力測定」に関する観点と方法」『早稲 田日本語教育研究』第2号、早稲田大学日本語教育研究科       

国広  哲弥(2002)「類義語・対義語の構造」  『現代日本語講座  第4巻』  明治書院  国立国語研究所(1998)『語彙の研究と教育(下)』  財務省印刷局 

縫部  義憲(1999)『入国児童のための日本語教育』  スリーエーネットワーク 

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指導案3 本単元の構成 配時 学習活動と予想される子供の反応 教師の具体的な支援 90 45 45 1 既習の学習を振り返り,初発の感想を交流したりしながら,単元の めあてを立てる。 (1)既習の学習を振り返り,初発の感想から単元のめあてをたてる。 (2)単元のめあてを基に問いを分類・整理し,学習計画を立てる。 2

う表現が意味を持つとともに,悲しい結末に一筋の明るい希望を見ることができるであ ろう。 4 教材の目標 関心・意欲・態度 ○読み取ったことを進んで話すことができる。 読む ○場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の性格や気持ちの変化,情 景などについて,叙述をもとに想像しながら読むことができる。

安心して発言できる環境を目指しているところである。 読書活動に関しては,ほとんどの児童が「読書は好き。」と思っている。しかし,文字の多い本に は手が伸びず,まだまだ絵本中心である児童が多い。また,自分の好きなシリーズ本を次々に読む など積極的に読書をしている児童もいるが,読書の幅がなかなか広がらない子が多いので,今回の 学習は大変有効と考える。

第6学年○組 国語科学習指導案 指導者 I.N <単元名> 新しい世界を求めながら読もう『ぼくの世界,きみの世界』 <育てたい力> ○筆者の考えと自分の考えを比べながら読むことができる。<関心・意欲・態度> ○書かれている内容について事象と感想,意見を押さえ,自分の考えを明確にしながら,筆者の考えと 自分の考えを比べながら読むことができる。

3.単元の目標 ○自動車のはたらきや仕組みに興味を持ち,知ることの楽しさを味わいながら,楽しく文章を読ん だり書いたりしようとする。 (関心・意欲・態度) ○乗り物を見たり乗ったりした経験を思い出しながら,その乗り物のことを事柄の順序に従って, わかりやすく書くことができる。 (書く)

とができる。 言語 ○本を読んで,自分の考えが相手に伝わるように,話したいことの中心を 整理して読書座談会のメモを書くことができる。 5 指導計画 (10時間) 過程 育てたい力 ○学習活動(◆評価方法,評価規準) 形態 課 題 ・読書座談会の目的や進め方 「読書座談会」のやり方を知ろう。 持 を知り,進んで読書をしよ つ うとする。

3年-1 第3学年国語科学習指導案 1 単元名 まとまりやつながりに気をつけて読み,『生き物の特長事典』を作ろう 教材名 『くらしと絵文字』 (読む) 『生き物のとくちょうを説明しよう』(書く) 2 単元について (1)単元観 本単元は,学習指導要領第3学年及び第4学年の次の指導事項に重点を置いて設定した。 「C読むこと」(2)内容 ①指導事項 イ

第6学年3組 国語科学習指導案 指導者 K.M 1 単元名 読みたくなるような紹介文を書いて紹介しよう『川とノリオ』 2 単元について (1) 単元観 本単元は,学習指導要領第5学年6学年の目標「C 読むこと」の内容(1)エ「登場人物の相互関 係や心情,場面についての描写をとらえ,優れた变述について自分の考えをまとめること」と「B書く