第3学年3組 国語科学習指導案
指導者 S.F
1 単元名 本の世界を広げよう 2 単元について
(1) 単元観
本単元は,学習指導要領第3学年及び第4学年の目標「C読むこと 目的に応じ,内容の中心をと らえたり段落相互の関係を考えたりしながら読む能力を身に付けさせるとともに,幅広く読書しよう とする態度を育てる。」に基づき,指導事項(1)「ア 内容の中心や場面の様子がよく分かるように 音読すること。」「ウ 場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の性格や気持ちの変化,情景など について,叙述を基に想像して読むこと。」「カ 目的に応じて,いろいろな本や文章を進んで読むこ と。」をねらいの中心とした単元である。
本単元は,『のらねこ』と『「読書クイズ」を出し合おう』という2つの教材で構成されている。第 1教材の『のらねこ』は,「かわいがられる」ことを知らないのらねこと,ねこが好きなリョウとのユ ーモアと優しさが感じられる作品である。のらねことリョウの会話や,一人と一匹の様子もおもしろ く,軽快な独特の文体で語られているこの作品に子どもたちは,共感できるだろう。『のらねこ』では,
まず第1に,登場人物の気持ちや様子が聞き手によく伝わるような音読を目指し,楽しんで音読する ことをねらいとする。そして,「のらねこクイズ」を解く中で,作品の細かいところまで気を配って読 み,面白さを味わったり,新たな発見をしたりすることで,読みを深めて,他の本への関心を高めて いける教材である。
第2教材の『「読書クイズ」を出し合おう』では,学年のおすすめ30冊を中心に,読んだ本を「読 書クイズ」を取り入れながら紹介し合い,興味を持った本を,さらに読み合うことで,本への興味を 高めて,読書の幅を広げていくことを目指す。本教材で取り組んだことをきっかけとして,子どもた ちが日常生活の中でも,互いに本を紹介し合ったり,本の情報を発信し合ったりして,読書の幅を広 げていくことが期待される教材である。
(2) 児童の実態
本学級の児童は,男子15名,女子16名,計31名である。男子は明るくて元気だが,じっくり 考えるのがやや苦手で,女子はおとなしいがじっくり考えることは得意である。国語の学習では,文 字を読むのも書くのも苦手で,国語は嫌いだと感じている子が5名おり,すべて男子である。国語は 好きだと感じている子は14名いる。この子たちは,授業の中でよく発表する子だったり,自分の思 いを文章にすることが得意だったり,自分の好きな本を積極的に読んでいる子たちである。残り12 名の子どもたちは,時には好きであったり,苦手だったりと教材や内容によって揺れ動くようである。
読むことに関しては,登場人物の性格や気持ちの変化,情景などが叙述に基づいて読み取れる子ど もが増えてきている反面,文章を読んでも,その情景や気持ちを思い浮かべたり,考えたりすること が難しい子や文字の読み書きそのものに抵抗がある子も数名おり,個人差を感じる。音読は,全体的 に好きな子どもが多く,気持ちを込めて読める子どもが増えてきている。
書くことに関しては,書く目的をとらえ,必要に応じて理由などを書くことができる子や自分の経 験したことや考えをどんどん書ける子もいるが,書くことに抵抗があり,何を書くのか明確にできず 書く意欲を持てない子もいる。
話す・聞くに関しては,人前で話すことに抵抗を感じている児童が多い。尐しずつ挙手したり,発 表したりするようになってはきているが,友だちの話を聞くことを好む傾向がある。また,逆に,話 すルールをわきまえずひたすら自分の話をする児童もおり,話し方のルールを徹底させて,みんなが
安心して発言できる環境を目指しているところである。
読書活動に関しては,ほとんどの児童が「読書は好き。」と思っている。しかし,文字の多い本に は手が伸びず,まだまだ絵本中心である児童が多い。また,自分の好きなシリーズ本を次々に読む など積極的に読書をしている児童もいるが,読書の幅がなかなか広がらない子が多いので,今回の 学習は大変有効と考える。
本単元を学習するにあたって,以下のような実態調査を行った。
1 国語の学習の中で,すきなことに○をつけましょう。(複数回答あり)
物語の読み取り 8名 説明文の読み取り 3名 音読 13名 漢字 18名 作文 7名 読書 20名 文章からいろいろなことを想像すること 4名
登場人物の気持ちを考えること 6名 自分の感想を書くこと 13名 発表したり スピーチしたりすること 5名
2 国語の学習の中で,苦手なものに○つけましょう。(複数回答あり)
物語の読み取り 11名 説明文の読み取り 11名 音読 7名 漢字 6名 作文 13名 読書 2名 文章からいろいろなことを想像すること 8名
登場人物の気持ちを考えること 6名 自分の感想を書くこと 6名 発表したりス ピーチしたりすること 11名
3 「のらねこ」という言葉を知っていますか?
はい 24名 いいえ 7名
4 「のらねこ」の生活について,知っていること,思いつくことを書いて下さい。
自分で生きていてすずめなどをとって食べる 1名 かい主がいないねこ 2名 ゴミ箱をあさる 2名 かわれていないねこ 1名 だらだらしていて,魚を取りにいっている 1名 ただ歩いている 1名 やねの上にいて,自分で食べ物をとる 1名
無回答・わからない 20名
5 人前で話すことは好きですか?
はい 13名 いいえ 18名 そのわけ
「はい」と答えた人
話すことが楽しいから 6名 思いをつたえるとすっきりするから 2名 自分の意見を発表できるから 2名 生きていて話さないのはもったいないから 1名 わかってもらえるとうれしいから 1名 自分の意見を発表できるから 1名
「いいえ」と答えた人
人前だと恥ずかしいから 7名 きんちょうするから 2名
自分の気持ちを伝えられないから 1名 話そうと思っても話せなくなるから 1名 話すのがいやだから 1名 やる気がでないから 2名
6 人の話を聞くことはすきですか?
はい 27名 いいえ 4名 そのわけ
「はい」と答えた人
いろいろなことを知ることができるから 9名
聞くのが楽しいから 6名 人の気持ちがよくわかるから 1名 友だちの意見も聞きたいから 3名 わからないことのヒントになるから 1名 聞くと意味がわかるからおもしろい 1名
いろいろと自分では考えられないことを発言してくれて勉強になるから 1名 「いいえ」と答えた人
長い話だとずっと聞かなきゃいけないから 1名 聞くのがきらいだから 1名 <考察>
上記の結果からもわかるように,「のらねこ」という言葉は知っているが,のらねこの生活や行 動までは知らない児童が多かった。『のらねこ』の話の中にあるリョウとのやりとりを理解するに は,のらねこの生き方や生活抜きには考えられないので,そこは,教師の方で押さえておくこと が必要だと考える。
また,アンケートをとったのが『わすれられないおくりもの』の学習直後だったのにもかかわ らず「物語の読み取りが苦手」と答えている子が11名もおり,魅力あるわかりやすい授業にな っていなかったのではないかと反省されるところである。意外だったのは,「人前で話すことが好 き」と答えた子が13名いたことである。話すことが苦手という子が多いのにかわりはないが,
子どもたちの中で,伝えたいという思いがでてきたのは嬉しいことである。また「聞く」ことに 関しても友だちの考えが聞きたいという積極的な聞き方ができる子が多くいて嬉しいことである。
(3)指導観
本単元でねらいとしていることは,様々な本を読んで読書の幅を広げることだと考える。そのために 仮説1を踏まえ,「読書クイズをしよう」という活動を目標にすることにより,児童の興味関心を高め,
読書への意欲を喚起したい。読書クイズを作るためには,まず,第1教材の『のらねこ』で,「のらねこ クイズ作り」に取り組む。「のらねこクイズ」を作るには,内容の理解がかかせない。そこで,『のらね こ』では,音読を中心にして内容を読み取らせ,のらねこの気持ちや様子に着目した問題作りができた らと考える。
また,選書の幅を広げるために,「おすすめ30冊」を教室に用意しておきたい。『のらねこ』の学習 後ならではの「ねこ」が登場するおすすめの本をブックトークする時間をとり,読書の幅が広がるよう に支援したい。本を読んで意味のわからない言葉に出会ったら,辞書を使って調べることも取り入れて いきたい。
『のらねこ』の学習では,仮説2を踏まえて,音読ノートを作りたい。そして,音読ノートに考えた ことや,感じたこと,音読する時の自分なりの注意など,学習したことを書き込んでいきたい。叙述に 即して内容を深く読み取ることで,音読に生かしていけると考えるので,①誰がどういう気持ちで言っ た会話なのかを考える。②リョウの性格を読み取る。③のらねこの様子や性格を読み取る。④リョウと のらねこの交流の場面でののらねこの気持ちを想像する。という4点を中心に音読ノートに書き込んで いき,内容の理解を助けていきたい。
仮説3については,『のらねこ』の音読の練習や発表,「のらねこクイズ」の作成の話し合いや,クイ ズを解く時に,一人ひとりの読みが,グループになることで深まるようにしていきたい。考えを持って いても,なかなか口にすることができなかったり,友だちに言えなかったりする子もいるので,音読ノ ートに書いたことで自信を持って言えるように,個別に支援していきたい。
3 目 標
関心・意欲・態度 ・自分の読み取ったことを進んで,話したり書いたりしようとすることができる。
・読書の量を増やして,分野を広げて読もうとすることができる。
話す・聞く ・自分の読み取ったことや作ったクイズなどを,相手に伝わるように,筋道を立 てて,話すことができる。
・話の中心に気をつけて聞き,質問をしたり感想を述べたりすることができる。
書く ・読んで感じたことや面白かったことなどが,相手に伝わるように,工夫して文 章を書くことができる。
読む ・内容の中心や場面の様子がよく分かるように音読することができる。
・場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の性格や気持ちの変化,情景など について叙述を基に想像して読むことができる。
言語 ・言葉と言葉の結びつきを考え,区切りに気をつけて音読する。
4 指導計画(17時間扱い)
教材 過程 学 習 活 動 支援(○)と評価(◎)
の
ら ね
こ
見 通
す
(2)
・単元全体の内容を確かめ,学習 の見通しを持ち,学習計画を立 てて,学習のねらいを確認す る。
・本をたくさん読んで読書の幅を 広げていくこと,読書クイズを することを知る。
・『のらねこ』の初発の感想を書 く。
・新出漢字,難語句調べをする。
○読書クイズを行うことを知らせ,興味 や関心を高める。
○『のらねこ』を通読して,「のらねこ」
について気づいたこと,もっと知りた いこと,一番心に残ったことを書く。
○正しく読み取りができるように,辞書 を使って難語句を調べさせる。
深
め
る
(6)
・全文を読んで『のらねこ』の最 初の様子や性格を読み取る。
・リョウにかんづめをもらった時 ののらねこの様子を読み取る。
・交流の場面でののらねこの気持 ちの変化を読み取る。
(本時3/6)
・屋根の上でじっとリョウたちを 見つめるのらねこの言葉を想 像する。
・グループで音読したい場面を話 し合い,役割を分担して,練習 する。
・グループごとに発表して,聞き 合い,それぞれのグループのよ いところを見つける。
○誰が言った会話文かを確認して,音読 ノートに書き込む。
○のらねこの性格や様子について考え る。
◎登場人物の様子や性格を叙述に基づ いて読み取ることができたか。
◎リョウにかわいがられた時の,のらね この気持ちを想像して書くことがで きたか。
◎屋根の上でリョウたちを見つめる時 ののらねこの気持ちを想像して書く ことができたか。
○自分が選んだ場面の様子や,気持ちが 聞き手に伝わるように音読の工夫を させる。
○他のグループの発表を聞くことで,そ れぞれのグループの工夫や良さに気 づかせる。
◎それぞれのグループの音読のよいと ころを見つけることができたか。
読 書 ク イ ズ を 出 し 合 お う
ま
と
め
る
(3)
・教材文を読んで,「読書クイズ」
の内容を理解する。
「ダウトをさがせ」
「物語あべこべ」
・グループごとにそれぞれ音読を 発表した場面で「読書クイズ」
を考える。
・「ダウトをさがせ」と「物語あ べこべ」の2つの「読書クイズ」
を行う。
○既習の教材をもとに教師が見本を作 っておく。
○グループごとに音読した場面でクイ ズを考えさせる。
○「読書クイズ」の目的をはっきりさせ て,問題作りに取り組ませる。
◎自分が読み取ったことをもとにグル ープで協力して2つのクイズを作る ことができたか。
○「ダウトをさがせ」は,グループごと に作った問題を全員で解かせ,「物語 あべこべ」は,グループごとに問題を 出し合って解かせる。
○クイズの内容が聞き手に伝わるよう に,はっきりと言わせる。
◎自分たちが作った問題を,聞き手にわ かりやすく伝えることができたか。
広
げ
る
(6)
・読書を広げていくために,ブッ クトークを聞き,自分が読みた いと思った本を読む。
・今まで読んだことのない本に挑 戦して,読書の幅を広げる。
・「のらねこクイズ」では,やっ ていないクイズのやり方を知 り,読んだ本の中で,自分がぜ ひ紹介したい本を選んで,読書 クイズを作る。
・互いに読んだ本を読書クイズを 通して紹介する。
○3年生のおすすめ30冊と『のらね こ』を学習した後に,ぜひ読んでもら いたい本の中から,何冊かを選んでブ ックトークをし,読書が広がっていく ように支援する。
○読む時間をしっかりと確保させる。
○いろいろなクイズの方法や内容があ ることを助言する。
○今回は,グループではなく,一人で問 題を作り,本を紹介することを知ら せ,細かいところまでしっかり読むこ とを意識させる。
○本の紹介を聞くことによって,自分が まだ読んでいない本を読もうとする 意欲や興味を持つことができるよう にする。
◎いろいろな読み物に興味を持って,読 むことができたか。
◎自分の紹介したい本で「読書クイズ」
を作ることができたか。
◎自分の書いた紹介文とクイズを,聞き 手にわかりやすく伝えることができ たか。
5 本時の学習(5/17)
(1) 目標
関心・意欲・態度 ・読み取ったことをもとに,サイドラインを引いたり,発表したりすることが できる。
読む ・リョウの優しさによって心を開いていくのらねこの気持ちの変化を読み取るこ とができる。
言語 ・リョウの優しさとのらねこの気持ちがわかるように音読することができる。
(2) 展 開
時配 学習活動と内容 支援(○)と 評価(◎)
2
2
4
7
6
5
1 前時の学習内容を簡単に振り返る。
・リョウから食べ物をもらった時ののらねこ の気持ちを振り返る。
2 本時の学習のめあてを確認する。
・リョウについにかわいがられることになる のらねこの気持ちの変化を読み取ってい く。
3 第4場面を音読する。
・一人で音読する。
・気持ちの変化を考えながら音読する。
・指名読みをする。
4 第4場面の中で,のらねこの気持ちの変化 があらわれていることを見つけて,音読ノ ートに赤でサイドラインを引き,その時の 気持ちを書き込む。
・かわいがられてみようかと思う気持ちか らどう変わっていくか読み取る。
5 サイドラインを引いたところを発表させ て,その時の気持ちの変化をまとめてい く。
6 のらねこの気持ちを変えたものは,何かを 考える。
・のらねこの気持ちを変えたものは,リョウ の優しい言葉ということに気付く。
○掲示物を利用して前時の学習内容を振り返 らせる。
○のらねこの気持ちが一番変わった場面だと いうことを押さえて,学習問題を確認する。
○気持ちの変化に気をつけて,音読するように 意識させる。
○第4場面の始めののらねこの気持ちを全員 で押さえ,その気持ちから変わったところを 見つけて赤でサイドラインを引かせる。
○線が引けない子には,個別指導すると同時 に,のらねこのしたことや言ったことを見つ けさせて,4つの気持ちの変化が表れている ことを知らせる。
○気持ちの変化を見つけられた子には,サイド ラインを引いたところの詳しい気持ちを考 えさせて,書き込みをさせる。
◎のらねこの気持ちの変化がわかるところに 線を引けたか。
○のらねこの気持ちの変化がわかるように,出 た意見をまとめていく。
◎サイドラインを引いたところを発表できた か。
○やっぱり「こわい」と思ったのらねこの気持 ちを変えたリョウのやさしさのあふれる言 葉を2つ見つけさせて,青でサイドラインを 引かせる。
のらねこの気持ちの変化を読み取ろう。
6
12
2
「じゃあいい。そこから,前足だけのばし て。ぼくも前足だけのばす。」
「こわくない。こわくない。」
7 サイドラインを引いた言葉を発表し,その 言葉の中にある優しさを考える。
・自分の手を前足と言うのはなぜか ・「こわくない。こわくない。」という言葉 の読み方
6 のらねこの気持ちや,リョウの優しさがわ かるように音読する。
・気持ちが変化した後半P34L13から P36L6まで読む
・役割り読みをする。
・地の文にも工夫できるところがあること を知る。
のらねこは,じっとしています。
風がそよそよふいてきます。
・個人読みをする。
・何人か音読を発表させて,みんなで聞き 合う。
7 次時の学習の予告をする。
◎リョウのやさしさあふれる言葉にサイドラ インを引くことができたか。
○自分の手を前足と言ってのらねこを安心さ せるリョウの優しさに気付かせる。
○「こわくない。こわくない。」という言葉の 読み方を考えさせる。
◎サイドラインを引いた言葉を発表すること ができたか。
○学習したことを生かしながら,工夫して音 読の練習をさせる。
○のらねこの気持ちがわかる地の文があるこ とに気付かせ,読み方を考えさせる。
○友だちの音読を聞き,自分の読みと比べさ せる。
◎気持ちがあらわれるように工夫して音読す ることができたか。
○次の時間は,リョウの飼い猫があらわれて からの,のらねこの気持ちを想像すること を知らせる。
(3)板書計画
『 の ら ね こ 』
め あ て
三 木 卓
のら ねこ
リョ ウ
・か わい がら れ てみ よう かな
。
「か わい がら れる
」
「へ え。 そ んな も のか
。
とい うこ とを ちょ っと わか ら ない が
教 える やっ てみ てく れ
。」
・や っぱ り, こ わい な
。
「じ ゃあ い い。 そこ から
「 よせ
。そ れい じ ょう 近
前足 だけ のば して
。 づく な。
」
ぼく も前 足 だけ の ば す
。」
・ じっ と して か わい がら れ る。
「 こう か。
」
「こ わ くな い。 こわ く ぴく っと しま す
。
ない
。」
小 さな 声 で, なだ め るよ うに
の ら ね こ の 気 持 ち の 変 化 を 読 み 取 ろ う
のら ねこ は
,じ っ とし て いま す
。 風が そよ そ よふ いて きま す。