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行列式と符号つき体積

第 9 章 置換の符号と転倒数 ( よりみち ) 69

11.3 行列式と符号つき体積

前章と本章を通して,行列式を符号つき体積と見なしても,確かに幾何的な視点と両立することを見て きた. またその根拠はカヴァリエリの原理にあった. そして,カヴァリエリの原理と歪対称性から導かれ る性質さえあれば行列式の計算ができることを見た.

さて,未だ我々は「図形のn次元体積」という概念に定義を与えてはいない. しかしながら,仮にその ような概念があるとすれば,平行体の体積について少なくともカヴァリエリの原理が成り立つことに異 論はないだろう. そしてカヴァリエリの原理を認めることは,n本のn次列ベクトルに対して,それら が張る平行体の符号つき体積を対応させる写像」を考えたときに,この写像が多重線形性を満たすこと を意味する. また, 体積に符号がつくならば, それが歪対称性を満たすと考えるのは自然である1. そし て, 当然のことながらn次元単位立方体の体積は1n= 1であると誰しもが考えるだろう. 以上を満たす 写像が行列式以外にないことを次の定理は主張している. すなわち,行列式はn個の列ベクトルで張ら れる図形の体積を符号つきで表す量である.

定理 11.3.1. 実数を成分に持つn次正方行列全体の集合をMn(R)とする2. 写像D:Mn(R) Rが次 の性質をすべて満たすとき,Dは行列式に一致する:

a1,· · · ,anおよびbi,ciをそれぞれ任意のn次列ベクトルとする. (1) 多重線形性: 各i= 1,· · · , nについて,

(i) D[a1,· · ·, rai,· · · ,an] =rD[a1,· · · ,ai,· · ·,an],

(ii) D[a1,· · ·,bi+ci,· · · ,an] =D[a1,· · · ,bi,· · · ,an] +D[a1,· · · ,ci,· · · ,an].

1前節で見たように,n次元平行体の符号付き体積の計算は,平行四辺形の符号付き面積の計算に帰着できる. これに, 2本の ベクトルの入れ替えは対応する平行四辺形の辺の入れ替えに相当すること,および,平行四辺形の符号付き面積が歪対称性を満 たすことを合わせると,n次元平行体の符号付き体積も歪対称性を満たすと考えても不思議ではない.

2Mn(R)の括弧内にあるR,行列の各成分が実数であることを意味する. 複素数を成分とするn次正方行列全体の集合は Mn(C)と書く.

(2) 歪対称性: i < jについて,

D[a1,· · ·,ai1,aj,ai+1,· · ·,aj1,ai,aj+1,· · · ,an] =−D[a1,· · · ,an] (ただしi < j).

(3) 正規化: D(E) = 1.

この定理の証明も次章で与えよう(定理12.4.1).

まとめ(行列式の定義)

行列式を定義する方法は,大きく分けて二通りある. 一つは定義10.1.1にあるように,置換を用い て形式的に定義する方法である. あるいは, 置換の符号は転倒数を用いても定義できた. そこで, 行 列式の定義を学ぶことそれ自体が目的化した文脈では, ややこしい置換概念を避けて次式で行列式 を定めてもよい:

detA:= ∑

(k1,···,kn)Pn

(1)inv(k1,···,kn)a1k1a2k2· · ·ankn, ここでPnn-文字列全体の集合とする.

もう一つの行列式の定義は,列ベクトルで張られる平行体の符号つき体積である. ここで「符号つ き体積」を強いて定義づけるならば,それは多重線形性と歪対称性を満たすMn(R)上の正規化され た写像D:Mn(R)Rのことである. そして,このような写像Dが唯一つしか存在しないことは定

理11.3.1が保証している. ここで写像Dの存在性を問うべきかもしれない. これには「符号つき体

積」がアプリオリに存在すると考える人もいるだろうし,それを拒絶するのであれば,例えば上式で 与えた写像detが求めるものであることを示せばよい.

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12 章 行列式の性質(証明)

10章と11章で紹介した命題の証明を与える. また, 7.2節で言及した性質|AB|=|A| · |B|を証明する.

12.1 | A | = |

t

A | の証明

証明の準備として,次を示そう.

補題 12.1.1. 写像I :SnSnI(σ) :=σ1と定めれば,これは1対1の対応である. すなわち,σが 重複なくSn全体を動くとき,I(σ)も重複なくSn全体を動く.

【備考】上のIは,置換を代入すると別の置換が得られる写像である. つまり各σSnに対して, I(σ)もまた何 らかの置換となる. したがって,I(σ)にはXnの各元を代入することができて,I(σ)(1),· · · , I(σ)(n)1からnま での文字が重複なく並ぶ列である.

ここで,上の結論に現れる写像Iの性質は,次の二つの性質に換言できる. これらの詳細については19 章を見よ.

定義 12.1.2. σが重複なく動けばI(σ)も重複なく動くとき,Iを単射(injective)であるという. また, σSn全体を動けばI(σ)Sn全体を動くとき,Iを全射(surjective)であるという. 更にIが全射か つ単射であるとき,Iを全単射(bijection)である,あるいは11の対応であるという.

つまり,σが重複なくSn全体を動くとき,I(σ)も重複なくSn全体を動くこと」はI :SnSnが 全単射であることに他ならない. さらに,Iの単射性と全射性は,それぞれ次の条件に書き下すことがで きる:

単射性: σ1, σ2 Snについて,σ1 ̸=σ2 ⇒I(σ1)̸=I(σ2),

全射性: τ Snに対して,Iに代入するとτになる置換σ∈Snが存在する.

補題12.1.1の証明. 単射性と全射性を示せばよい.

(単射性): 対偶である「I(σ1) =I(σ2)⇒σ1 =σ2」を示す. I(σ1) =I(σ2)とすれば,σ11 =σ21であ る. この両辺の逆置換を取れば, (σ11)1= (σ21)1. つまりσ1 = (σ11)1= (σ21)1 =σ2である.

(全射性): 各τ Sn に対して, σ := τ1 とおこう. このσI に代入するとτ になる. 実際, I(σ) =I(τ1) = (τ1)1 =τ である.

定理 10.3.1 (再掲). 任意の正方行列Aについて, det tA= detA.

Proof. A= [aij], tA= [bij]とおけば,各i, jについてbij =ajiである. 行列式の定義およびsgn(σ1) = sgn(σ)から(練習8.5.5),

|tA|= ∑

σSn

sgn(σ)b1σ(1)b2σ(2)· · ·b(n)= ∑

σSn

sgn(σ)aσ(1)1aσ(2)2· · ·aσ(n)n (12.1.1)

= ∑

σSn

sgn(σ1)aσ(1)1aσ(2)2· · ·aσ(n)n. (12.1.2)

上の各項に現れる積aσ(1)1aσ(2)2· · ·aσ(n)nの並べ替えについて考えよう. まずσ(1),· · ·, σ(n)を小さい 順に並べ替える:

σ(k1) = 1, σ(k2) = 2, · · ·, σ(kn) =n.

このとき,

σ= (

k1 k2 · · · kn

1 2 · · · n )

, σ1= (

1 2 · · · n k1 k2 · · · kn

)

だから,各i= 1,· · ·, nについてσ(ki) =iおよびσ1(i) =kiが成り立つ. つまりaσ(ki)ki =a1(i)で あり,積の順序を並び替えると,

aσ(1)1aσ(2)2· · ·aσ(n)n=aσ(k1)k1aσ(k2)k2· · ·aσ(kn)kn =a1σ1(1)a2σ1(2)· · ·a1(n). (12.1.3) 写像I :Sn Snを補題12.1.1で与えたものとし,(12.1.2)および(12.1.3)を合わせると,

|tA|= ∑

σSn

sgn(σ1)a1σ1(1)a2σ1(2)· · ·a1(n)

= ∑

σ∈Sn

sgn(I(σ))a1,I(σ)(1)a2,I(σ)(2)· · ·an,I(σ)(n).

σが重複なくSn全体を動くとき,τ =I(σ)も重複なくSn全体を動く(補題12.1.1). ゆえに,上式のσ による総和は次のτ による総和に書き換えても良い:

τSn

sgn(τ)a1τ(1)a2τ(2)· · ·a(n) =|A|.