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インドネシアにおけるホンダの進出動向と現地化戦略の特徴

第 4 章 ホンダ二輪車事業のアジア進出と現地化動向の分析 ―先行アジアの経験と資源能力のベトナム

4.2 ASEAN 主要国におけるホンダ二輪車事業の進出動向と現地化戦略の特徴

4.2.3 インドネシアにおけるホンダの進出動向と現地化戦略の特徴

(1)インドネシア二輪車市場の概要

現在インドネシアの二輪車産業は世界第 3位である。インドネシア、タイ、ベトナムの二輪車産 業は産業の発展過程がよく似ており、産業基盤のないところに組立生産が日本の技術によって移植 されて始まった(佐藤、他、2006)。

人口規模は国内消費市場及び労働力に大きく影響する。2020 年 5 月の時点でインドネシの人口は 約 2億7300万人であり、世界第4 位である(国連)。インドネシアは、人口規模が大きく、人口ボ ーナスが相対的に長く続く。低コストで豊富な労働力を提供できる84。インドネシは賃金水準が低 いという魅力により、日系製造企業は次々進出した。二輪車産業においても同じである。人口規模 が大きいインドネシアでは、二輪車のニーズが大きく、労働力も豊富である。インドネシアの所得 水準は、1980 年は約 491 ドル、1990 年は約 585 ドル、2000 年は約 780 ドル、2010 年は約3122 ド ル、2018 年は約3893ドルに達した(Worldbank)。経済成長に伴う所得の向上と共に、二輪車市場 規模が拡大したと思われるが、先進国と同様に、インドネシアでは近年自動車ニーズが拡大してい ることが、国内二輪車の規模に影響を与えている。インドネシア国内市場は 2014 年から 2017 年に かけ販売台数が減ったが、それ以降は増えつつある(前掲図表4.4)。

二輪車産業基盤のないインドネシアには、日系企業が先行的に進出し、現在では市場の 9割以上 を占めている。ホンダとヤマハは 2019 年にインドネシア二輪車市場シェアの 94%を占めた。イン ドネシア二輪車市場における日系組立企業の支配力が強いが、タイと比べ、日系サプライヤーの集 積が少ない。これがインドネシア二輪車産業の特性である。しかし、最近新たな外資系企業がイン ド、ヨーロッパ、アメリカなどからわずかながら進出している。

1970 年代アジアでは、多くの国で輸入代替による工業化政策が実施され、二輪車産業育成は工業 化のための重要なステップと見なされた。タイ、インドネシアなどASEAN各国では、完成品輸入が 禁止され、1977 年から 1980 年にかけて KD部品の組み立てによる国産化が進められた。日本の二輪 車産業のアジア展開は、国別の国産化対応と工業化促進の過程で生産工場が建設され、現地化がす すめられた(佐藤、他、2005)。

インドネシアの二輪車市場は、1993年の自由化移行を契機に急速に拡大したが、1998 年アジア通 貨危機の影響により二輪車販売台数は約 43 万台に減少した。1999 年インドネシアでは二輪車国産 化政策は廃止され、完成車と部品の関税率が引き下げられ、自由に輸入できるようになった85。 2000 年までインドネシア市場では、日系企業の販売シェアが 90%以上であったが、低価格の中国車 の輸入が急増し、短期的には、中国車は販売シェアが 18%に拡大した(トラン、他、2007)。しか し、中国車には、品質など種々の問題があり、成長は長く続かなかった。

ホンダなど日系二輪車企業は、低価格二輪車を国内市場向けに開発し販売することにより中国車 を圧倒し、市場シェアは 90%強に回復した。日系企業はコスト競争力を高めるために、現地部品調 達を拡大した。2003年から 2005 年にかけ、インドネシアの日系完成車企業の部品調達は輸入に代 わり、現地部品調達率が 44%から 91%へと増加した86。2011 年にインドネシアの二輪車販売台数は

84 佐藤百合(2011)『経済大国インドネシア』中公新書 p.54

85「インドネシアの投資環境」株式会社国際協力銀行2019 年 12 月 p.163

86 佐藤百合、大原盛樹(2006)『アジアの二輪車産業―地場企業の勃興と産業発展ダイナミズムー』アジア経済研 究所 p.290

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約 801万台と急激に増加したが、2012 年以降インドネシアの二輪車販売台数は減りつつある。2016 年以降インドネシアの二輪車販売台数は 600万台前後で推移している(前掲図表4.4)。二輪車販 売台数が減少した背景には、インドネシアでは二輪車の販売を支えるローンの審査が厳しくなった こと、また、所得水準の向上と共に、多くの消費者は二輪車から自動車へのシフトが進んでいるこ とがある。2019 年現在、インドネシアの二輪車輸出台数は約 81万台に達している(インドネシア 二輪車協会)。

(2)インドネシアにおけるホンダ二輪車事業の進出動向

図表4.6 を見ると、1971 年ホンダはインドネシアに現地組み立て会社 PT Astra Honda Motor

(以下、アストラ・ホンダ)を設立したことが分かる。アストラ・ホンダは、日本の熊本製作所 でしか手掛けてこなかったスポーツバイクの生産にも乗り出すなど、東南アジア全体のマザー工 場的な役割をも担っている87

図表4.6 インドネシアにおけるホンダ二輪車事業の発展プロセスの概要

1971 年 設立(当時の社名は PT Federal Motor)

1971〜1980 年 SKD方式、生産能力は約3万台 1981 年 累計100万台

1996 年 第二工場の設立、2 工場の生産能力は 200万台

2001 年 PT Federal Motor と他の子会社の連携により PT Astra Honda Motor の設立 2005 年 第三工場の設立、3 工場の生産能力は 300万台

2014 第四工場の設立、4工場の生産能力は 530万台 フィリピンへの初の輸出製品は Honda BeAT

2019 年 エレクトリックテクノロジーの製品の発表 出所:アストラ・ホンダのホームページより筆者作成

アストラ・ホンダは 1971 年 PT Federal Motorという社名で設立された。同社は、当時タイホン ダと同様に、SKD 方式で二輪車を生産していた。ほとんどの部品は日本から輸入された。初年の生 産台数は 1500台であったが、次年以降年産台数は急増し、1980 年の生産能力は3 万台となった。

現在アストラ・ホンダの生産能力は約 505万台に達しており、ホンダの海外生産拠点の中でイン ドに次いで、第2 位となる(前提図表4.1)。

インドネシアの二輪車市場では、日系企業の二輪車の流通販売を担うのは地場資本であり、ブラ ンド別の販売専門店が主流になっている。インドネシア二輪車市場におけるホンダは専売店体制で

87 日系ビジネス https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/122000985/ 2020 年4月 25 日アクセス

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販売しており、ヤマハ、スズキは約3分の 2 が専売店である88。2020 年の時点でアストラ・ホンダ の専売店数は国内市場最大で 5544店舗である89

ホンダはインドネシア二輪車市場のトップ企業であり、生産及び販売の No.1 としての戦略を 活用し、国内市場をリードしている。2010 年時点でインドネシアの二輪販売市場はホンダとヤマ ハでシェアをほぼ二分していたが、2011 年以降は両社の差は広がり、 ホンダがヤマハよりも 50ポ イントほど上回っている90。さらに、ホンダは、各国の国産化政策の強化や完成車の輸入禁止など 政府の政策に対応し、現地部品調達の促進に取り組んでいる。

インドネシア政府が 1999 年に国産化規制を完全撤廃した直後に、低価格中国車が大量に輸入 され、アストラ・ホンダはそれに対抗して、本格的な部品調達の現地シフトへ移行し、コスト削 減を実施した。日系企業はインドネシア国内の部品調達率において、2001 年以前は約 44%であ り、日本やアジア域内からの輸入が多かったが、2003年から 2005 年にかけ内製部品や国内部品 調達の割合が約 91%に増加した。ホンダの一次サプライヤーの現地部品調達率は、2004 から 2005 年にかけ、約 77%に達し、ホンダだけでなく一次サプライヤーでも部品調達の現地化が進 んでいる91。2019 年にインドネシア二輪車市場でアストラ・ホンダのシェアは約 75%である。

(3)インドネシアにおけるホンダ二輪車事業の現地化戦略の特徴

インドネシアでホンダは SKD生産の組立拠点の設立からスタートした。インドネシアは大きな消 費市場を持っている。ホンダはインドネシア政府の二輪車の政策に対応しながら国内消費者の要望 に応える安価で高品質の製品を投入し、国内No1 の高いシェアを獲得している。アストラ・ホンダ の現地化戦略の特徴についても 4 つの活動の現地化の軸で考察していく。

販売活動では、アストラ・ホンダは現地消費者のニーズに応えるため、国内市場の最大規模の販 売網となる約 5544 専売店(部品販売、オイル交換など)を構築している。同社は、最大の専売店体 制により、全国土の消費者にアプローチしやすくなっている。日本二輪車市場の場合は、併売店が 多く見られているが、インドネシア市場は、タイ市場やベトナム市場と同様に、専売店体制を構築 した。中国コピー車の存在もあり、購入者にとっては、ホンダの専売店で購入するほうが安心であ る。また、専売店のアフターサービスも購入者の満足度を満たしている。

生産活動では、アストラ・ホンダはタイホンダ と同様に参入初期には同社の輸入車販売であった が、次の段階で、SKD 方式で生産し、CKD 方式の生産へ転換した。コア部品においては、同社は当初 日本ホンダからの輸入エンジンを採用した。その後は、生産規模の拡大や政府の国産化政策への対 応や二輪車の製品差別化の向上のため、エンジン生産を促進した。

部品調達活動では、アストラ・ホンダは現地部品調達の拡大によりコスト競争力を向上させてい る。ホンダは日本の本社が直接・間接に出資する数社の一次部品企業が調達額で高い比重を占め、

現地部品生産体制の中核をなしていた。また、中国車バブル期から低価格志向の市場が拡大したこ とから、アストラ・ホンダは 1977 年以来二輪車部品国産化政策への対応のため進めてきた部品調達

88 佐藤百合、大原盛樹(2006)『アジアの二輪車産業―地場企業の勃興と産業発展ダイナミズムー』アジア経済研 究所 p.285

89 アストラ・ホンダのホームページ(https://www.astra-honda.com/dealer?provinsi=all&jenis- layanan=all&jenis-dealer=all)2020 年4月 26 日アクセス

90「インドネシアの投資環境」株式会社国際協力銀行2019 年 12 月 p.164

91 佐藤百合、大原盛樹(2006)『アジアの二輪車産業―地場企業の勃興と産業発展ダイナミズムー』アジア経済研 究所 pp.290-292

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