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ホンダベトナムの現地化戦略の評価 ―ASEAN、中国との比較分析のまとめ

第 4 章 ホンダ二輪車事業のアジア進出と現地化動向の分析 ―先行アジアの経験と資源能力のベトナム

4.5 ホンダベトナムの現地化戦略の評価 ―ASEAN、中国との比較分析のまとめ

本節は、4カ国におけるホンダ二輪車事業の現地化戦略の比較分析結果を基に、まとめとして タイホンダ、アストラ・ホンダ、ホンダ中国に対してホンダベトナムの 4 つの活動の現地化戦略 の特徴を明らかにし、ホンダベトナムの現地化戦略の評価を行う。

4.5.1 販売現地化の評価

図表4.9 を見ると、販売店数はほぼ各国の販売規模に準じて構成されている。販売体制におい ては、ホンダベトナムはタイホンダ、アストラ・ホンダと似ており、ホンダ中国と異なることが 分かる。ホンダの現地化に対する販売戦略は、併売店ではなく専売店方式を基本としている。タ イホンダは 5S 専売店により徹底した顧客に対するサービスを提供し、アストラ・ホンダは 5544 専売店でサービス、部品販売、二輪車のオイルなどのサービスを提供しているが、ホンダ中国は 併売店が一部存在している。

ホンダベトナムは 4S 専売店により全国消費者の需要に応えている。国内市場における専売店 数が最大であり、同社製品の販売、サービスなど流通の主要な工程をコントロールして、地域、

ニーズを問わず消費者に、ホンダベトナム製品へのアプローチを可能とし、購入しやすくしてい る。

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4.5.2 生産現地化の評価

生産の現地化においては、4カ国におけるホンダの生産方式は変化の過程が似ている。ホンダは 現地消費市場に対し、現地生産を基本にしている。現地化の過程では、最初は、日本や周辺国から の完成車輸入によりスタートするが、早い段階から現地生産に切り替えている。現地消費市場の拡 大や国産化政策の要請に伴い、現地生産をスタートする。最初は、日本や先行各国のホンダのエン ジンなどコア部品を輸入し、SKD 方式からスタートし、CKD 方式に移行する。SKD生産では二輪車の 構成要素を十数個のコンポーネントに分け、1セットとし、それを組み立てるだけの作業で製品に する。次いで一部現地生産部品を使い、次第に現地部品調達比率(現地で生産された部品の割合、

通常生産コストの金額ベースでカウントされる)を高めCKD に移行し、最終的には主要なコア部品 も現地生産という道を辿る(出水、2014)。

ホンダベトナムは、現地生産にあたっては内製化の割合は比較的早い段階から高い。2000 年頃 までにプレス、溶接、塗装、樹脂成形、機械加工、エンジン、シリンダーの鋳造など、コア部品の 多くは内製されており、製品の品質の維持、向上に貢献している103。ホンダベトナムは 2003 年に はベトナムオートパーツを設立し、二輪用アルミ部品(シリンダー、ミッションケース、ハブ、外 観部品、キャストホイール等)の製造も行っている104。同社の部品工場としては、2010 年にギア生 産工場、2014 年にピストン生産工場を設立した。ホンダベトナムは現地にコア部品を生産、内製 により、二輪車の差別化、高品質化などを達成している。

4.5.3 部品調達現地化の評価

部品調達の現地化は、生産の現地化と連動して展開される。ホンダは海外への参入初期には、部 品輸出より完成車輸出の輸入関税が高いため、多くの輸入部品を現地 SKD 方式で組み立てた。次 に、一部の部品の現地生産を行い、この際に、ホンダはコア部品を内製すると共に、多くの部品を 現地進出の日系サプライヤーと連携した。現地政府の国産化の要請に応じて、段階的に現地調達比 率を高める必要が生じ、ホンダは本格的な現地生産の際、エンジンなどコア部品生産は内製する が、その他の多くの部品は日系の他の外資系サプライヤーや地場系サプライヤーからも調達した。

多くのサプライヤーと連携し、技術指導や教育研修を行うことにより、ホンダは部品調達現地化比 率及びサプライヤーの技術を段階的にアップすることを実現した。

タイホンダは海外進出の初期の段階で長屋方式により現地生産をスタートさせている。長屋方式 は現地生産の規模が小さい段階で、サプライヤーの投資負担を軽減するための対策である。タイホ ンダでは、協力企業のショーワ、東洋電装、FCC、日本精機、ホンダロックなど数社のサプライヤ ーの共同体が組織された。タイホンダの指導の下で、AAP(エイシアン・オート・パーツ)が組織 され、同じ空間の工場で生産する形態である105

AAP は、海外生産初期の段階で、サプライヤーと共同で、ものづくり能力の強化を追求するため の組織である。タイホンダは長屋方式により海外進出を推進し、現地サプライヤーを支援し、メー

103 三嶋恒平(2007)「ベトナムの二輪車産業:グローバル化時代における輸入代替型産業の発展」『比較経済研 究』Vol.44, 1号 p.66

104 ホンダのホームページ(https://www.honda.co.jp/pressroom/1996/c96113.html)2021 年 7 月 15 日アクセス

105 出水力(2014)「ホンダの一次サプライヤーの長屋生産方式とはー海外進出当初の量産化に向けた工場運営につ いてー」『技術と文明』Vol.18, 2号 pp.27-28

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カーとサプライヤーが連携して、現地調達比率を高めることができ、海外経営やものづくり技術な どを指導することが出来た。タイホンダとサプライヤーは、連携してものづくり能力をアップする ことに成功した。

このタイにおけるホンダと日系サプライヤーとの連携による部品調達体制は、ASEAN 各国をはじ め新興国への進出の際の基本モデルでもある。ベトナムでも進出当初は、タイ方式がとられていた。

ホンダベトナムは、設立当初日系サプライヤーを中心に長屋方式の共同調達体制を組織し、段階的 に部品調達現地化比率を向上させてきた。ベトナムでは、1990 年代末低価格中国車に対抗するこ とが緊急課題となったため、従来のサプライヤーからの取引関係を見直し、大幅なコスト削減を実 施した。低価格・高品質製品Waveαの開発は、部品調達の現地化を一気に進める契機となった。

ホンダベトナムは、サプライヤーとして主に日系サプライヤーを中心に取引していたが、新製品 開発と連動し日系と台湾系、地場系のサプライヤーを競わせ、条件が合えば日系以外も登用した。

また社外調達部品として中国からの輸入部品を採用した。これにより、同社の新製品 Waveαの部 品調達費用を抜本的に削減することができ、低価格中国車に対抗する新製品の投入に成功した。

Waveαの開発では、従来の 1/3の低価格車の開発に成功した。これには部品調達の変更と現地化戦 略が果たした役割は極めて大きいと言える。

4.5.4 開発現地化の評価

ホンダ二輪車事業が、ベトナム市場でタイムリーに従来の 1/3の低価格・高品質製品を開発、投 入し、市場シェアの回復に成功したことは、新たな新興国の成功モデルとして評価できる。ホンダ ベトナムはそれまでホンダ中国、タイホンダ、アストラ・ホンダなどと同様に、進出初期には、高 所得層向けの高価格製品戦略に注目したが、低価格中国車の参入もあり、市場シェアの持続が厳し かった。ベトナム二輪車市場は 2000 年前後中国車の氾濫により低価格車が潜在市場の急拡大を主導 した。ホンダベトナムは高価格戦略を見直し、現地消費者の要望を再評価しなければならなかっ た。その結果、事業戦略を転換し、低価格・高品質製品Waveαを開発、投入し、巻き返しに成功し た。

開発の現地化を見れば、国際間で資源、能力、経験の分業が行われている。図表4.9 を見ると、

タイホンダには 2 研究所が設立されており、国内市場への対応のみならず、ASEAN 全体の開発研究 を担当していることが分かる。タイホンダは国内二輪車市場の拡大及び環境への対応のため、HRS- T を設立した。HRS-T はタイをはじめ、ASEAN の拠点にデザイン、設計、テストの現地化を促進する ための研究組織である106。2000 年までタイホンダの製品は、ほとんどが日本のホンダで開発された。

当初、ホンダは ASEAN 市場で高価格車路線を取っていたが、中国の低価格車の流入に対抗するため、

低価格車の開発、販売の必要に迫られ、タイホンダで 2000 年に 700~800 ドルのWave100 を先行開 発し、発売した。

ベトナム二輪車市場でもホンダは 2000 年まで高価格戦略を採用していた。当時ベトナム消費者 は低所得のため、バイクSuper Dream や Futureなどホンダの二輪車を購入できなかった。低価格 中国車は低所得のベトナム人に受け入れられ、急速に国内市場を席捲したのである。

106 天野倫文、新宅純二郎(2010)「ホンダ二輪車の ASEAN戦略 ―低価格モデルの投入と製品戦略の革新―」『赤門 マネジメント・レビュー 』Vol.9, 11号 p.793

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ホンダベトナムは、タイホンダのWave100 以上に本格的な現地化製品Waveαの開発に挑戦した。

WaveαはタイホンダのWave100 を基礎に開発された製品であるが、Wave100 のデザインに注目しな がらもベトナムの道路事情や消費者のニーズなどを考慮し必要な機能を絞り込んで開発された Wave100 以上の低価格車である。

3章のホンダベトナムの低価格・高品質製品Waveαの開発の事例研究及び本章で考察した ASEAN、

中国の現地化戦略の比較分析の結果をまとめると、タイホンダの成功事例、ホンダ中国の失敗例を 自社発展の糧としていること及び 4 活動の現地化の成功などによりホンダベトナムの評価は、日本、

アジアの資源・能力の連携、分業、有効活用の成果であると結論付けることができる。

Garis besar

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