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ホンダ二輪車事業のアジア経営

第 4 章 ホンダ二輪車事業のアジア進出と現地化動向の分析 ―先行アジアの経験と資源能力のベトナム

4.1 ホンダ二輪車事業のアジア経営

第4 章 ホンダ二輪車事業のアジア進出と現地化動向の分析 ―先行アジアの経験と資源能力のベ トナムへの適用

ホンダ二輪車事業は日本、北米、欧州、アジアの中で、アジア市場に圧倒的な販売シェアを持ち、

80%超となっている。本章は、ホンダ二輪車事業のアジア経営の概況や ASEAN 主要国タイ、インド ネシアと中国におけるホンダの現地化戦略の特徴などを明らかにする。前章ではホンダベトナムの 現地化の動向を、「中国車バブル期の脅威を乗り切るため、低価格・高品質製品 Waveαの開発」に 焦点を当て、分析した。その際にホンダベトナムでは、先行アジアの成功、失敗経験を活かした現 地化が展開されたことを述べた。本章は、先行アジアの現地化動向を分析し、ベトナムに適用した 成功、失敗の体験も合わせて説明する。またタイ、インドネシア、中国のホンダ二輪車事業とホン ダベトナムの現地化の比較を行う。比較分析結果を通じ、タイ、インドネシアと中国のホンダに対 して、ホンダベトナムの現地化戦略の差異を明らにする。

4.1 ホンダ二輪車事業のアジア経営

4.1.1 ホンダのフィロソフィー -ホンダベトナムを含む

1956 年ホンダのフィロソフィーは社是を中心としたが、基本理念は「人間尊重」と「3つの喜 び」である(土屋、2006)。

現在の時点で、ホンダのフィロソフィーは3つある。第1 は基本理念であり、この理念が人間尊 重・3つの喜びを規定している。第2 は社是、第 3は運営方針である64

基本理念では、人間尊重を重視しており、自立、平等及び信頼に注目している。これらはグロー バル化し異文化の従業員から成り立つホンダ職場の特徴を反映したものである。社内の従業員は他 人の力を尊重しながら、自分の能力を徹底的に高めていく。3つの喜びは、買う喜び、売る喜びと 創る喜びに注目している。この理念ではホンダが顧客の満足度を重視し、同社と顧客の信頼関係を 高めることを意味している。これはホンダの経営の成功要因の一つと言える。

また、「社会の中で HONDA という企業の存在理由は何か」を社員が理解するための考え方であ る。ホンダの社員は、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価 格で供給することに全力を尽くすことを求められている。この理念はホンダのグローバル経営の活 動目標でもある。同社は日本国内をはじめ、世界中の顧客に最も良い移動手段を提供することを目 標としている。

運営方針は、従業員が日々の業務を遂行する上での指針である。それは、ホンダが「常に夢と若 さを保ち、理論とアイディアと時間を尊重し、仕事を愛しコミュニケーションを大切にし、調和の とれた仕事の流れをつくり上げ、不断の研究と努力を忘れないこと」である。ホンダはクリエイテ ィブな職場で従業員の能力向上を目指すこと、また従業員の協力により優秀な製品を作り出せるよ う努力することを重視している。現在でも、ホンダは創業者の経営理念を誇りにして大切に守り、

それを経営に生かす不断の努力を続けている。それが結果として同社を他社と差別化したユニーク な経営スタイルを持つ企業に育て上げてきた65

64 ホンダのホームページ(https://www.honda.co.jp/guide/philosophy/)2020 年4月 5 日アクセス

65 土屋男勉(2006)『日本ものづくり優良企業の実力 新しいコーポレート・ガバナンスの理論』東洋経済新報社 p.70

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4.1.2 ホンダ二輪車事業のアジア経営

日本製造業は、グローバル化の強化により世界的に高い市場の位置付けとなっている

(Sakamoto、他、2017)。1980 年代から日本製造業のグローバル化が進展した。多国籍企業は、グ ローバル化を進め、バリューチェーンの様々な工程を世界中に配置し、国際市場における強力なエ ージェントとして振る舞った66。Porter、他(2000)によると、多くの企業は高いレベルのイノベ ーションと企業者精神が集積している場所に諸活動を配置させようと試みるという。

二輪車業界の企業も同様である。世界二輪車事業第1 位のホンダは、グローバル化で成長した企 業である。ホンダは、フィロソフィーに基づき、グローバル化を通じて成長してきた。今口、他

(2016)によれば、ホンダを含め、日本二輪車企業は基本的に 5段階で海外進出から現地生産に至 る発展を実現しているという。第1段階は、1965 年から 1970 年代かけ輸出主導型発展の時代であ る。第2段階は、1980 年代前半特異な国内販売の急増期である。第 3 段階は、1980 年代半ばから 1990 年代初頭かけ国内生産の急減と海外生産による輸出の減少である。第4段階は 1990 年代初頭 から 1990 年代末かけアジア市場の勃興と海外生産の本格化である。第5段階は、2000 年以降の国 際分業体制の確立である。

(1)ホンダ二輪車事業のグローバル経営の現状

図表4.1 ホンダ二輪車事業の国別生産拠点

国別 社名

完成車生産

部品生産/研究所 備考

生産能 (万台) アメリ

Honda R&D Americas, Inc. 二輪車の研究・開発 ドイツ Honda R&D Europe

(Deutschland) G.M.B.H.

二輪車の商品開発に必要な調査・研

メキシ

Honda De Mexico, S.A. De C.V.

10 ブラジ

Moto Honda Da Amazonia Ltda.

2 160 アルゼ

ンチン

Honda Motor De Argentina S.A.

1 14 ペルー Honda Selva Del Peru S.A. 1 3.5

イタリ

Honda Italia Industriale, S.P.A.

1 10 Honda R&D Europe (Italia)

S.R.L.

ヨーロッパ地区における二輪車及び これらに関する製品の研究開発

66 G.ジョーンズ(安室憲一、梅野巨利訳)(2014)『国際経営講義 多国籍企業とグローバル資本主義』有斐閣。

Geoffrey Jones. Multinationals and Global Capitalism from the Nineteenth to the Twenty First Century. (Oxford University Press,2005.) p.142

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スペイ

Montesa Honda, S.A.

(Sociedad Unipersonal)

完成車

と部品 の生 産、年 産能力 の表示 がない

ケニア Honda Motorcycle Kenya Limited

2.3 ナイジ

ェリア

Honda Manufacturing (Nigeria) Ltd.

12.5

日本 熊本製作所 1 27.5

Honda R&D Co.,Ltd. ホンダ製品の研究開発 Honda Research Institute

Japan Co.,Ltd.

生産システムから生産ラインの設定 および工作機械の開発

中国 Sundiro Honda Motorcycle Co., Ltd.

2 85 Wuyang-Honda Motors

(Guangzhou) Co., Ltd.

2 125 Honda Motorcycle R&D China

Co., Ltd.

中国における二輪車の研究開発及び 調査

Honda Engineering China Co., Ltd.

生産システムから生産ラインの設定 および工作機械の開発

タイ Thai Honda Manufacturing Co., Ltd.

1 170 Honda R&D Southeast Asia

Co.,Ltd.

アセアンにおける二輪車及びこれら に関する製品の研究開発

Honda Engineering Asian Co., Ltd.

生産システムから生産ラインの設定 及び工作機械の開発

バング ラデシ

Bangladesh Honda Private Limited

1 10

インド Honda Motorcycle And Scooter India Pvt. Ltd.

4 640 Honda R&D (India) Private

Limited

インドにおける二輪車、汎用製品及 びこれらに関する製品の研究開発 インド

ネシア

P.T. Astra Honda Motor 5 505 マレー

シア

Boon Siew Honda Sdn.Bhd 1 30 Hicom-Honda Mfg. Malaysia

Sdn. Bhd.

二輪車エンジン製造 フィリ

ピン

Honda Philippines Inc. 1 53 パキス

タン

Atlas Honda Limited 2 135 Honda Vietnam Co., Ltd. 3 250

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ベトナ

Vietnam Autoparts Co., Ltd 二輪用アルミ部品製造 出所:ホンダのホームページより筆者作成

ホンダの経営理念は、需要のあるところで生産することである。ホンダの二輪車事業は、その理 念の下、グローバル化で成長してきた。「売り」では世界各国で商売し、「作る」では世界でマス プロ生産する、この両論を並行し、成長していくことにより、世界二輪車業界のトップ企業に成長 してきた67

ホンダは 1948 年に創業し、70 年以上かけ世界二輪車産業の第1 位となっている。ホンダの二輪 車事業は、世界の3分の 1 のシェアを持ち、世界二輪車生産累計は、2019 年 12 月初旬に 4億台を 達成した68。図表4.1 を見ると、ホンダ二輪車事業は北米・中南米、欧州、アフリカ、アジア・大 洋州にわたる 18カ国に生産工場を持っている。そのうち、アジア市場ではホンダ二輪車事業は日本 を除き、9カ国に進出し、完成車企業としては 10 企業、22 工場及び部品生産企業としては 2 企業が あることが分かる。最大の年産国は、インドであり、640万台である。次に、インドネシアの 505 万台、ベトナムの 250万台、中国の 210万台、タイの 170万台の順である。

土屋、他(1999)によると、日本企業のアジア展開はアジア各国の輸入代替国産化政策に対応 し、日本からの輸出を現地生産に切り替えることからスタートした。その後は各国が自国の国産化 を促進するために段階的に現地部品調達率を向上させる政策を打ち出したという。ホンダ二輪車事 業も各国の方針に対応しアジア市場に最初は SKD 方式で参入し、その後は各国での国産化を推進し ていった。

ホンダ二輪車事業はアジア市場を中心に経営していると言われるが、図表4.1 を見ると、北米・

中南米の諸国のうち、ブラジルではホンダ二輪車の年産能力は最も大きく、160万台もある。2019 年世界二輪車市場第8 位のブラジル二輪車市場におけるホンダはシェアの 80%超を持ち、約 108万 台を販売している(Motorcyclesdata)。欧州とアフリカではホンダ二輪車生産台数は非常に少ない と見られる。

ホンダ二輪車事業はグローバル化の初期には台湾、欧米先進国に輸出した(出水、2002)。各国 の経済成長や消費者のニーズなどを考慮し、海外販売、海外生産を進めていた。その後、特に潜在 成長性の高いアジア二輪車市場に注目し、多くの生産・販売拠点を設立し、発展している。

(2)ホンダ二輪車事業のアジアの販売動向

ここでは、ホンダ二輪車事業のアジアの販売動向を見てみる。図表4.2 を見ると、アジアにおけ るホンダの販売台数は、リーマンショック前後を除くと順調に成長し、2005 年に比べ、2019 年の販 売台数は約 2倍に増加していることが分かる。2020 年には経済環境は、新型コロナウイルス感染症 の拡大や世界的な半導体供給不足の影響などにより、厳しい状況が続いたため、ホンダ二輪車事業 のアジアの販売台数は大幅に縮小した。このような状況下でもホンダ二輪車事業の世界の販売台数

(15132千台69)に対するアジアの比率は約 88%を占める。

67 出水力(2011)『二輪車産業グローバル化の軌跡 ホンダのケースを中心にして』日本経済評論社 p.189

68 ホンダのホームページ(https://www.honda.co.jp/news/2019/2191219.html)2020 年4月 5 日アクセス

69 https://www.honda.co.jp/content/dam/site/www/investors/cq_img/library/report/FY202103_yuho_j.pdf 2021 年 6 月 10 日アクセス

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