第 7 章 ホンダベトナムの競争優位・業績とその要因 ―仮説検証を中心に
付属資料 2 インタビュー調査の記録
2.2 アジア経済研究所へのインタビュー
インタビューの日時:2020 年 2 月 10日13:30~15:30
インタビューの場所:千葉市美浜区若葉3-2-2 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 インタビューの相手:地域研究センター・東南アジアII 研究グループ長
インタビューの担当:土屋勉男、井上隆一郎、ファン ティ テュイ チャン(PHAN THI THUY TRANG)
アジア経済研究所は、アジアの二輪車産業に関する多くの研究が行われている。先行研究をかね てホンダベトナム二輪車事業に関してインタビュー調査を行った。インタビューの内容は、ベトナ ムの二輪車産業、及びホンダベトナムの発展プロセス、現地向け製品 Waveαの特徴などである。そ の概要は、下記の通りである。
1. ベトナム二輪車産業の動向
ベトナムとアメリカの戦争から輸入車が流行した。
1950 年代日系の二輪車ではなく、イタリア系 スクーターVespaが輸入車として入ってきた。
1975 年代戦争が終わった後、国に二輪車が残っていた。
1980 年から 1990 年にかけドイモイ政策により多くの国の二輪車(中古二輪車を含め)が輸 入された。当時ベトナム消費者にとって二輪車が移動手段としてだけではなく、資産と思わ れた。
1990 年以前国内生産二輪車がなかった。1990 年以降日本やタイの二輪車が入って、市場が
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伸びた。
ベトナムの地場系企業は、1999 年では市場シェアが 57%を占め、大成長したが、市場シェ アが 2002 年以降減っていた。2010 年の時点で市場シェアが約 15%に下がった。
1990 年後半以降国産製品は輸入製品の代わりの状況となった。外資系二輪車企業は国有企業 と連携、二輪車生産が始まった。
一番早く進出した企業は台湾系 SYM であった。台湾のサプライヤーも進出した(十何社ぐら い)。
1995 年スズキベトナムの参入。
1999 年ヤマハベトナムの参入(合弁会社)。
台湾系VMEP(SYM)はエンジン、農業機械などの生産。
ホンダベトナム は合弁会社(資本金はホンダ:70%、ベトナム:30%)。
ベトナム二輪車市場は初期にわたり部品がほとんど調達できなかった。
2. 中国車バブル期
2000 年代前後経済が進んでいないベトナムにおける消費者がハイエンド二輪車を購入するこ とはできなかった。
中国二輪車企業はコピー車を重視している。中国の二輪車はコスト競争度が高いによりベト ナムにおける市場シェアは急拡大となった。
中国車のデメリットは品質が悪く、修理できなく、交通事故を起こした→ 消費者の信頼度 は早めになくなった。
地場系企業は 1999 年では市場シェアが 57%を占めた。
ベトナム政府の政策により、国産化率を上がるため、1998 年完成車輸入禁止政策のため、国 内組み立て企業は地場系企業として登録した→現地化率は約 60%以上(50%という意見もあ った)など色々な議論あった。
地場系企業製品は国産率が良く、低価格という優位性があった。地場系二輪車はヤマハやホ ンダなど有名なブランドと真似している。部品は中国からの輸入、自社の部品、他の地場系 サプライヤー部品
ホンダベトナムの新製品を発売すると、すぐ真似→低価格車のコスト競争力が高かった。
3. Waveαの開発
中国車は価格競争力が高かったが、壊れやすく、修理できないため、信頼度が下がった。
ベトナム消費者はホンダへの信頼度が高い、取得が低い人は仕方がないが、できるだけWave αを購入したかった。その状況によりホンダベトナムのシェアはますます伸びている。
ヤマハベトナムはデザインを重視し、スクーターの開発と共にベトナムの取得水準が上がる ことによりヤマハベトナムのシェアもますます伸びた。
100cc 未満二輪車は運転免許が不要、電動スクーターは日系企業が参入していない→地場系 企業は独占。
ホンダのサプライヤー:地場系、日系、中国系。
外資系サプライヤー企業で働いた人たちは自分のサプライヤー会社を作る可能性がある。
173
地場系サプライヤーは国産化を徹底にしてない。
現地の市場と合わせる製品。
タイホンダのモデルが基礎。
ホンダはサプライヤーに加え、国産化政策。
中国系部品の採用や地場系サプライヤーとの取引連携の割合を増やし、部品調達コストの大 幅な削減を断行した。
日系企業の部品調達は国内に限ったことではなく海外一般において共通するが、日本から現 地進出した自社のグループサプライヤーや日系サプライヤーから主要部品を調達することが 多く、その取引価格は日本での取引価格とそれ程変わらなかった。
現地調達→コストの減少。
コスト減少のため、中国サプライヤーは 2 社か 4 社、数年後なくなった。
中国社の影響はシェアが大きいという脅威
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付属資料3 SPSS 統計分析結果のまとめとベトナムの 15 二輪車企業のデータ表
3.1 モデル1(4変数モデル)
被説明変数: 販売台数 X1: 専売店数
X2: 部品内製化比率 X3: 部品調達現地化比率 X4: 新車種数
相関
販売台数 専売店数
部品内製化比 率
部品調達現地
化比率 新車種数 販売台
数
Pearson の相関係数 1 .983** .957** .913** .573**
有意確率 (両側) <.001 <.001 <.001 .003
度数 25 25 25 25 25
専売店 数
Pearson の相関係数 .983** 1 .965** .916** .523**
有意確率 (両側) <.001 <.001 <.001 .007
度数 25 25 25 25 25
部品内 製化比 率
Pearson の相関係数 .957** .965** 1 .833** .484* 有意確率 (両側) <.001 <.001 <.001 .014
度数 25 25 25 25 25
部品調 達現地 化比率
Pearson の相関係数 .913** .916** .833** 1 .421* 有意確率 (両側) <.001 <.001 <.001 .036
度数 25 25 25 25 25
新車種 数
Pearson の相関係数 .573** .523** .484* .421* 1 有意確率 (両側) .003 .007 .014 .036
度数 25 25 25 25 25
**. 相関係数は 1% 水準で有意 (両側) です。
*. 相関係数は 5% 水準で有意 (両側) です。
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載
モデルの要約
bモデル R R2 乗 調整済み R2 乗 推定値の標準誤差 Durbin-Watson
1 .989a .978 .974 13.904 .904
a. 予測値: (定数)、新車種数, 部品調達現地化比率, 部品内製化比率, 専売店数。
b. 従属変数 販売台数
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載
175
分散分析
aモデル 平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率
1 回帰 172669.573 4 43167.393 223.293 <.001b 残差 3866.427 20 193.321
合計 176536.000 24 a. 従属変数 販売台数
b. 予測値: (定数)、新車種数, 部品調達現地化比率, 部品内製化比率, 専売店数。
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載
係数a
モデル
非標準化係数 標準化係数
t 値 有意確率
共線性の統計量
B 標準誤差 ベータ 許容度 VIF
1 (定数) -61.293 18.371 -3.336 .003
専売店数 .160 .077 .441 2.082 .050 .024 40.958 部品内製化比率 4.732 2.322 .301 2.038 .055 .050 19.966 部品調達現地化比率 .982 .445 .214 2.204 .039 .116 8.602 新車種数 2.933 1.107 .106 2.649 .015 .678 1.474 a. 従属変数 販売台数
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載 3.2 モデル2(3変数モデル)
被説明変数:販売台数 X2:部品内製化比率 X3:部品調達現地化比率 X4:新車種数
相関
販売台数 部品内製化率
部品調達現地
化比率 新車種数 販売台数 Pearson の相関係数 1 .957** .913** .573**
有意確率 (両側) <.001 <.001 .003
度数 25 25 25 25
部品内製化率 Pearson の相関係数 .957** 1 .833** .484* 有意確率 (両側) <.001 <.001 .014
度数 25 25 25 25
部品調達現地化比 率
Pearson の相関係数 .913** .833** 1 .421* 有意確率 (両側) <.001 <.001 .036
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度数 25 25 25 25
新車種数 Pearson の相関係数 .573** .484* .421* 1
有意確率 (両側) .003 .014 .036
度数 25 25 25 25
**. 相関係数は 1% 水準で有意 (両側) です。
*. 相関係数は 5% 水準で有意 (両側) です。
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載
モデルの要約
bモデル R R2 乗 調整済み R2 乗 推定値の標準誤差 Durbin-Watson
2 .987a .973 .970 14.967 .945
a. 予測値: (定数)、新車種数, 部品調達現地化比率, 部品内製化比率。
b. 従属変数 販売台数
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載
分散分析
aモデル 平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率
2 回帰 171831.592 3 57277.197 255.680 <.001b 残差 4704.408 21 224.019
合計 176536.000 24 a. 従属変数 販売台数
b. 予測値: (定数)、新車種数, 部品調達現地化比率, 部品内製化比率。
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載
係数
aモデル
非標準化係数
標準化係 数
t 値 有意確率
共線性の統計量
B 標準誤差 ベータ 許容度 VIF
2 (定数) -71.970 18.990 -3.790 .001
部品内製化比率 9.121 1.048 .581 8.701 <.001 .285 3.511 部品調達現地化比率 1.712 .296 .373 5.792 <.001 .306 3.268 新車種数 3.707 1.122 .135 3.303 .003 .765 1.308 a. 従属変数 販売台数
出所:筆者が SPSS で実施した重回帰分析結果から転載 3.3 ベトナムの 15 二輪車企業のデータ表
図表付属−1 ベトナムの二輪車企業のデータ
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社名 国籍 販売活動 生産活動 部品調達活
動 開発活動
専売 店比 率
専売 店数
サ ー ビ ス 店 数
併売 店数
生産 能力
(千 代)
組 立 工 場 数
部 品 工 場 数
部品 調達 現地 化比 率
地場 サプ ライ ヤー 数
車 種 数
新エ ンジ ン累 計
シェ ア
販売 台数
(千 台)
HONDA 日本 100 801 0 0 2500 3 2 98 10 28 61 79.7 2140 YAMAHA 日本 82 550 124 0 1000 2 1 95 6 18 35 14 380
SYM 台湾 64 217 124 0 540 2 2 95 8 15 27 3.5 94 PIAGGIO イタリ
ア 59 85 58 0 500 2 1 70 5 11 15 1 27 SUZUKI 日本 100 154 0 0 300 1 0 90 4 10 18 0.6 16 KYMCO 台湾 100 170 0 0 400 1 0 70 7 5 14 0.3 8 VINFAST ベトナ
ム 73 110 40 0 500 1 0 100 5 7 10 0.3 8 DETECH
MOTOR
ベトナ
ム 100 389 0 0 200 1 1 100 6 12 15 0.2 5 LIFAN 中国 0 0 0 70 20 1 0 90 6 9 15 0.1 2.7 SUFAT ベトナ
ム 100 133 0 0 150 1 1 100 3 10 11 0.1 2.7 DVMOTOR ベトナ
ム 0 0 0 50 10 1 1 100 4 6 2 0.08 0.2 TIENLOC
MOTOR
ベトナ
ム 0 0 0 100 10 1 0 100 4 8 10 0.04 0.1 DONG
MINH
ベトナ
ム 0 0 0 40 10 1 1 100 3 7 11 0.03 0.08 T&T
MOTOR
ベトナ
ム 0 0 0 70 10 2 2 100 3 1 2 0.02 0.05 PHUONG
DONG
ベトナ
ム 0 0 0 40 10 1 1 100 3 4 4 0.01 0.03 出所:各資料を基に作成
注1:データは 2020 年のデータである。
注2:車種数のデータは 50cc のバイク及びスクーターを含めていない。
図表付属−1は、2020 年度各企業の単年度クロスのデータである。専売店数、サービス店数、併 売店数、組立工場数、部品工場数は、各社のホームページよりデータを収集した。生産能力は、ベ トナム二輪車協会、各社のホームページ 、ベトナムの有名新聞の記事により収集した。部品調達現 地化比率及び地場系サプライヤー数は、研究文献、各社のホームページ 、ベトナムの有名新聞の記 事、ベトナムの統計局、ベトナム登録局より収集した。車種数は、各社のホームページによりデー タを収集した。エンジン数は、ベトナム登録局により収集、またシェアは、ベトナム二輪車協会資 料及び各社のホームページより収集し、計算した。